目次
- 1 はじめに
- 2 ★スギ花粉の飛散時期が早まれば、スギ花粉のシーズンは早く終わりますか?
- 3 ★薬の服用はギリギリまで我慢したい。くしゃみ・鼻水が止まらなくなってからでもいいですか?
- 4 ★症状が出ている時だけ薬を飲む方法でも、症状は抑えられますか?
- 5 ★市販薬でも大丈夫でしょうか?
- 6 ★薬を飲んだのに、くしゃみや鼻水が止まりません。
- 7 ★抗ヒスタミン薬で猛烈に眠くなった経験があり、二の足を踏んでいます。
- 8 ★飲み薬が苦手です。
- 9 ★皮膚のかゆみをなんとかしたいです。
- 10 ★薬を飲み続けているのに、効果がイマイチです。
- 11 ★薬の種類がたくさんあって、何を選んで良いかわかりません。
- 12 ★重症花粉症向けの薬があると聞きました。
- 13 ★花粉症を完治させたいです。
- 14 【動画で大久保公裕先生が解説】花粉シーズン中の症状を軽くする「初期療法」
- 15 この記事を監修した医師
はじめに
花粉症の人にとってはつらい季節に備えて、何を知っておくべきか?日本医科大学大学院医学研究科頭頸部感覚器科学分野 教授で、NPO法人花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会理事長の大久保公裕医師に話を聞いた。
★スギ花粉の飛散時期が早まれば、スギ花粉のシーズンは早く終わりますか?
それは違います。ある一定の気温を超えなければ、スギ花粉のシーズンは終わりません。地上では気温が早い時期に高めになっても、山の上では例年とそう変わらない。5月の連休が明ける頃まで、スギ花粉が飛んでいると考えるべきです。
★薬の服用はギリギリまで我慢したい。くしゃみ・鼻水が止まらなくなってからでもいいですか?
シーズン中、花粉症の症状をできる限り軽いままでキープするには、初期療法が非常に重要です。
「薬を極力飲みたくない」「忙しくて病院に行く時間がなかなか取れない」といった理由から、くしゃみや鼻水が出てきても薬を飲まずにいると、花粉症の症状は徐々にひどくなっていきます。くしゃみが連続で何回も出て、鼻をかんでもかんでも鼻水がツツーッと流れてくる。集中力が阻害され、学業や仕事に支障が出ます。
この段階で薬を飲み始めても、効果をすぐに感じられません。薬が効くまで1週間ほどかかります。1種類の薬では効かず、何種類も処方してもらわなければならなくなる場合もあります。その都度病院へ行かなければならず、時間もお金もかかります。
しかし、くしゃみが1日1〜2回、鼻をかむのが4〜5回といった症状の出始めに薬を飲み始めると、非常に効き目が良いのです。薬の種類も少なくて済みます。
花粉症は、最初から重い症状になることはありません。最初は軽く、中盤で重くなり、最後になると軽くなる。症状の程度の強さと発症からの期間をグラフで示すと、山のような曲線になるでしょう。初期療法とは、症状の出始めから治療を開始し、山をつぶすようなもの。花粉症で苦しむのが嫌なら、ぜひとも初期療法を始めるべきです。
さらにもっと良いのが、症状が出る前から薬を服用することです。
花粉症の症状は、花粉が鼻や目、口から体内に入り、ヒスタミンなどのアレルギー誘発物質が肥満細胞から放出。目や鼻の粘膜細胞にあるヒスタミン受容体に結合することで引き起こされます。花粉症のメインの薬である抗ヒスタミン薬は、ヒスタミン受容体とくっつき、ヒスタミンとヒスタミン受容体の結合を防ぐ(花粉症の症状が出ないようにする)わけですが、早めに抗ヒスタミン薬を飲み始めることで、受容体自体が変化し、ヒスタミンが放出されても結合しなくなる。結果、症状がより出にくくなるのです。
花粉症の人は、この号を読んだらすぐに薬を飲み始めるべきですよ。
★症状が出ている時だけ薬を飲む方法でも、症状は抑えられますか?
花粉症の薬は、花粉が飛散している期間、継続して飲み続けることが基本です。薬の成分の血中濃度を一定に保つことで、症状が出るのを抑えられます。
★市販薬でも大丈夫でしょうか?
スイッチOTCという言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。医師から処方される医療用医薬品のうち、副作用が少なく安全性の高いものを、市販薬(OTC医薬品)として買えるようにしたものを「スイッチOTC(医薬品)」といいます。
花粉症の処方薬には、スイッチOTCもたくさんあります。自分の花粉症の症状に効く薬がわかっているなら、スイッチOTCを使うのも手です。ただ、処方薬と比べてやや割高です。花粉症の薬は数カ月間にわたって服用するので、どうしても病院に行けない人はとりあえず市販薬を服用し、時間を見つけて病院で薬を出してもらうのがベターではないでしょうか。
★薬を飲んだのに、くしゃみや鼻水が止まりません。
初期療法について前述しましたが、薬を飲み始めるタイミングが遅いと、効果を感じるまで1週間ほどかかります。
★抗ヒスタミン薬で猛烈に眠くなった経験があり、二の足を踏んでいます。
それは、ずいぶん前のことではないでしょうか?現在、主に処方されている抗ヒスタミン薬は第二世代。かつての第一世代は、薬効成分が脳内にも行くので眠気やだるさが生じました。第二世代は薬効成分が脳にほとんどいかず、眠気もほぼありません。第二世代の抗ヒスタミン薬は種類が複数あり、例えばAという薬で眠気が生じても、Bという薬ではそうならないことも。また、もし眠気が心配なら、受診した医療機関で「眠くならない第二世代の抗ヒスタミン薬を処方してほしい」と強調してはどうでしょうか。
★飲み薬が苦手です。
貼るタイプの抗ヒスタミン薬が登場しています。1日のうち、いつ貼ってもよく、一度はれば24時間効果を一定に保てます。
★皮膚のかゆみをなんとかしたいです。
第二世代の抗ヒスタミン薬には、皮膚のかゆみにも効果があるものがあります。
★薬を飲み続けているのに、効果がイマイチです。
花粉症の症状は、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ、鼻詰まり。このうち、くしゃみや鼻水がひどい典型的な花粉症であれば、抗ヒスタミン薬で症状を抑えられる可能性が高いでしょう。しかし鼻詰まりがひどいなら、抗ロイコトリエンを使ったり、抗ヒスタミン薬の中でも鼻詰まりに強い薬を服用したりした方がいい。飲み薬だけで鼻の症状が治らなければ、鼻噴霧用ステロイドを追加する。目のかゆみを抑えるには、点眼薬も使うべきでしょう。
★薬の種類がたくさんあって、何を選んで良いかわかりません。
患者さんの症状にあった薬を選ぶのは耳鼻咽喉科医です。そして薬の種類はおっしゃる通りたくさんあり、だからこそ、自分の症状に合ったものを処方してもらえれば、花粉症のつらさを感じることなく、花粉症シーズンを過ごせるはずです。
花粉症で悩んでいるなら、できれば花粉症シーズン前、遅くても花粉の飛散が始まったら早い段階で、花粉症をたくさん診ている耳鼻咽喉科医を受診する。そして、自分が花粉症でつらいと思う症状をすべて伝えることです。
★重症花粉症向けの薬があると聞きました。
ゾレアですね。2020年に登場した皮下注射の抗体治療薬です。花粉症が起こるのはIgE抗体がマスト細胞に結合するから。このIgE抗体をブロックするのがゾレアです。
ゾレアは従来の治療では効果がなかった重症患者さんが対象になります。検査でIgE抗体が少ないと使えないことも。ゾレアが必要なほどの重症花粉症は全体の10%ほどで。大半の人は、従来の治療を適切に受けることで症状を抑えられます。
★花粉症を完治させたいです。
スギ花粉のエキスを少しずつ体内に入れる免疫療法という治療があります。皮下に注射で投与していく皮下免疫療法と、舌の裏側に載せて投与していく舌下免疫療法があり、どちらも保険適用です。一時的に症状を抑えるのではなく、完治が期待できる唯一の治療法ですが、治療を受けた人全員が完治するわけではありません。治療期間も3〜5年と長期にわたります。