目次
- 1 はじめに
- 2 Q湿度が高くなるこれからの季節、ダニの繁殖が心配です。子供がいるのですが、ダニの喘息などへの影響を教えてください
- 3 Qアレルゲンについて、もう少し詳しく教えてください
- 4 Qどういった場合に、ダニが原因の喘息が疑われますか?
- 5 Qダニ対策はどのようにすればいいでしょうか?
- 6 Qダニを少なくする部屋作りのポイントはありますか?
- 7 Qダニ以外のアレルゲンなど、喘息を悪化させない対策を教えてください
- 8 Q喘息かどうかわからないのですが、急いで病院に連れて行ったほうがいいのは、どのような場合ですか?
- 9 Q喘息の治療はどのように行われますか?
- 10 Q先生の美学を教えてください
- 11 この記事を監修した医師
はじめに
体長1ミリ以下のため肉眼では確認しにくいですが、家中のいたるところに生息するダニ。ジメジメとした梅雨時から夏にかけて爆発的に繁殖し、その糞や死骸がアレルゲン(アレルギーの原因物質)になると言われます。隙間風が吹いていた昔の木造住宅と違い、最近の住宅は高気密・高断熱で空気がこもったまま。これもダニ発生に拍車をかけているそうです。
今回は、急増している喘息などのアレルギー疾患の症状やダニ発生を防ぐ普段の生活環境づくりについて、小児アレルギーの専門家であるユアクリニックお茶の水の杉原 桂院長に語ってもらいました。検査や投薬といった西洋医学に頼り過ぎないアレルギー疾患の治療法についても紹介してもらいましたので、ぜひ参考にしてください。
Q湿度が高くなるこれからの季節、ダニの繁殖が心配です。子供がいるのですが、ダニの喘息などへの影響を教えてください
ダニは湿度60%以上、室温20度以上、人間の髪の毛、フケ、アカなどがある環境を好みます。また、気密性の高い日本の住環境は、ダニが繁殖しやすく、喘息やアレルギー性鼻炎など、ダニがアレルゲン(アレルギーの原因物質)になっている可能性があります。
ダニ以外では、カビ、ペットの毛などもアレルゲンになります。また、タバコや花火の煙などのような環境中の刺激物質、気象の変化や冬の冷気、気温の急激な変化、風邪も喘息発作のきっかけになります。
Qアレルゲンについて、もう少し詳しく教えてください

アレルゲンは前述の通り、アレルギーの原因物質です。人によってアレルゲンは異なります。なお、アレルギー疾患は、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎のほか、食物アレルギーもあり、子供の食物アレルギーでは、年齢によってもアレルゲンが異なります。たとえば、0歳では、鶏卵、牛乳、小麦がトップ3ですが、1、2歳では鶏卵、木の実類、魚卵がトップ3になり、3〜歳では木の実類、魚卵類、落花生の順となります。(「杉崎千鶴子ほか:アレルギー72(8):1032-1037、2023」より)。
Qどういった場合に、ダニが原因の喘息が疑われますか?
布団で寝ると咳が止まらなくなったり、喉がゼーゼーしたりする。布団の周りにぬいぐるみがたくさんある。こういう場合、喘息を疑う症状があれば、ダニとの関連を考えたほうがいいかもしれません。
喘息などのアレルギー疾患は、風邪と症状の出方が異なります。アレルギー疾患では、アレルゲンに触れる機会が多い時に、症状が強く出ます。布団で寝ると症状が出るのは、布団にダニが繁殖しやすいからです。ペットの毛のアレルギーであれば、普段は何も問題がないのに、ペットを飼っている家に遊びに行ったりすると咳が出たり、ゼーゼーしたりします。
一方、風邪は、発症している間は「症状が出たり出なかったり」ということはありません。また、子供の風邪では熱がよく出ますが、アレルギー疾患で熱が出ることは多くありません。
Qダニ対策はどのようにすればいいでしょうか?
ダニ対策は、ダニそのものとダニの死骸、そしてダニの餌になる人間の髪の毛、フケ、アカなどに気をつけなくてはなりません。きれいに掃除しているつもりでも、ダニ対策としては不十分なことも結構あります。
まず、基本は掃除機がけです。掃除機をこまめに、部屋の隅々までかけましょう。ロボット掃除機は便利ですが、かけ残しがあるかもしれません。特殊な掃除機は必要ありませんが、紙パック方式であれば、頻繁に交換するようにしてください。
掃除中は窓を開け、通気をよくします。週1〜2回、1平方メートルにつき20秒以上を目安に、入念に掃除機をかけます。畳の場合は畳の目に沿ってかけます。布製の椅子やソファにも掃除機をかけます。
次に、布団干しもダニ対策の基本です。シーツ類、カバー類、ベッドパッド類はこまめに洗濯します。ダニ対策を謳った布団カバーを使うのも手です。
天日干しや布団乾燥機などで布団を乾燥させます。可能であれば、裏表と布団の両面に太陽が当たるようにしましょう。これらでダニが死んでも、ダニの死骸が残ります。掃除機を表面にかけて、ダニの死骸も取り除きます。1〜2週間に1回が目安です。
Qダニを少なくする部屋作りのポイントはありますか?
できる限り、ダニが繁殖しにくい環境を作ることです。
お子さんのために、と買ったぬいぐるみが、ダニの繁殖を促している可能性はあります。
ぬいぐるみがあるならこまめに洗濯をするようにしてください。
絨毯やカーペットは敷かないほうが良いです。同じく、ソファは布製以外が望ましいです。家具を減らし、掃除機がけの時の死角を減らしましょう。カーテンは短めで、薄手で、洗濯しやすいものを。
Qダニ以外のアレルゲンなど、喘息を悪化させない対策を教えてください
部屋の掃除は一生懸命やっているのに、家族のだれかが喫煙者……これは絶対にNGです。お子さんの前でたばこを吸わなくても、たばこの煙の成分は喫煙者の方の髪の毛や衣類に吸着しているため、お子さんの喘息に悪影響を及ぼします。たばこの煙が喘息治療薬の効果を減弱させることも研究で明らかになっています。たばこは、喘息だけでなく様々な害を及ぼします。いい機会と捉え、喫煙者本人と家族のために、禁煙をしてください。
ペットを飼っている方にとって、ペット対策をどうするかは難しい問題です。ペットの毛が原因で喘息を発症したなら、基本的にはペットの飼育はお勧めできません。ただ、ペットも「家族」になってしまうと、簡単に手放すわけにもいかないでしょう。「屋外で飼う」「定期的にペットを洗う」といった方法でペットアレルゲンを多少は減らせますが、それでも症状がひどい場合は、お話を伺った上で、ともにベターな方法を考えていくようにしています。
また、喘息を悪化させやすいアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎があるようなら、その治療を。風邪が喘息の引き金になることもありますので、風邪を引きにくくするために、外出から戻った時のうがい、手洗いなどを心がけてください。
Q喘息かどうかわからないのですが、急いで病院に連れて行ったほうがいいのは、どのような場合ですか?
話したり歩いたりできない、食事が取れない、眠れないといった時や、顔色が悪い、またはぼーっとしている時、ゼーゼーして見るからに苦しそうな時は、ぜひすぐに病院を受診してください。
Q喘息の治療はどのように行われますか?
明らかに緊急の治療が必要な場合は別として、私は通常、お子さんが何に対して困っているかを知るところから始めます。これは喘息に限ったことではありません。困っていることに応じて、治療計画を立てます。
併せて、いつ、どういう時に、どういう風に症状が出たかを記録する「喘息日記」もつけてもらいます。それを見れば、何に対してアレルギー反応が出ているのかがわかる場合が多いのです。
小児科医の中には、アレルゲンを調べる検査を最初の段階から行う人が少なくありません。しかし、検査ではっきりとアレルゲンがわかるわけではありません。血液を採取するのでお子さんにとっては怖くて痛い検査です。必要な時以外は、できるだけ避けたいのです。
また、食物アレルギーの場合ですと、血液検査の結果だけを見て「鶏卵を食べないように」とお母さんに言ったり、発疹があるからとすぐに薬を出したりする小児科医もいます。私はそうではなく、原因は何か、どうしたらアレルギーが出やすい食品とうまく付き合っていけるか、お子さんが最も幸せになる方法をアドバイスするようにしています。
Q先生の美学を教えてください
大人も子供も、病気を治すには理由があります。早く治して元気に保育園に行きたい、みんなと楽しくおいしく食事をしたい、旅行に行きたいなどです。私はそれらを重視した医療を行いたい。
病気の治癒だけに重きを置くと、患者さんの「治したい理由」が見えなくなることはままあります。治すためには入院しなくてはならない、◯◯○をしてはいけない、と言うのは簡単ですが、医療は人生のためにあり、そこを勘違いしてはいけないと思うのです。それが私の美学です。