「ねじれ腸」…なんとなくお腹の調子が悪い時に思い浮かべる方もいるかもしれません。実は日本人の約8割がねじれ腸もしくは落下腸だといわれています。
腸がねじれて便の通り道が狭くなっているので、放っておくと腹痛や腹部膨満感だけでなく、深刻な腸閉塞を引き起こす可能性もある状態です。
この記事では、ねじれ腸の定義、原因、症状、そして改善策までを分かりやすく解説します。自分の腸の状態を知り、健康な毎日を送るためのヒントにしてください。
ねじれ腸とは?
「ねじれ腸」…なんとなくお腹がグルグルしているようなイメージを持つかもしれません。実際、お腹の調子が悪いと「もしかしてねじれ腸?」と心配になる方もいるでしょう。
実は「ねじれ腸」は医学用語ではなく、主に大腸の一部がねじれて、便の通り道が狭くなっている状態を指す俗称です。
生まれつき腸が長い、あるいは加齢や運動不足といった生活習慣が原因で起こると考えられています。便がスムーズに流れにくくなるため、便秘や腹痛といった不快な症状を引き起こすことがあります。
ねじれ腸の主な症状

ねじれ腸では、以下のような様々な不快な症状が現れます。
- 頻繁な便秘・ガスが溜まりやすい
- 下腹部の張りや痛み
- 食後の腹部膨満感・吐き気
- 便が細くなる、排便後の残便感
これらの症状は、単独で現れることもあれば、いくつかが組み合わさって現れることもあります。ご自身の症状を把握し、適切な対処をするためにも、まずはどのような症状が現れるのか、詳しく見ていきましょう。
頻繁な便秘・ガスが溜まりやすい
ねじれ腸になると、腸管が狭くなったり、曲がったりするため、便やガスがスムーズに流れにくくなります。ホースがねじれると水の流れが悪くなるのと同じような状態です。
その結果、便秘になりやすくなり、お腹にガスが溜まりやすくなります。その結果、便秘になりやすくなり、お腹にガスが溜まりやすくなります。
スッキリしない状態が続くことで、食欲不振や集中力の低下など、日常生活にも影響が出るかもしれません。
下腹部の張りや痛み
腸内にガスや便が溜まると、下腹部が張ってきます。張りが強くなると、鈍い痛みや、お腹をぎゅっと締め付けられるような圧迫感を感じることもあります。また腸がねじれている部分に便が詰まると、その部分にチクチクとした痛みや、キリキリとした鋭い痛みを感じるケースもあります。
痛みの程度はねじれの程度や詰まっている便の量などによって異なり、軽い痛みを感じることもあれば、立っていられないほどの激痛に襲われることもあります。
痛みの場所も、下腹部の右側、左側、中央など、人によってさまざまです。痛みが移動することもありますので、痛みの場所や程度、持続時間などを記録しておくと、医療機関を受診する際に役立ちます。
食後の腹部膨満感・吐き気
ねじれ腸になると、便が腸内をスムーズに移動しにくくなります。そのため、食後に腹部が膨満したり、吐き気をもよおすことがあります。これは便が腸に長時間留まることで、発酵してガスが発生したり、腸の動きが悪くなることで胃の動きも停滞し、胃酸が逆流したりすることが原因と考えられます。
特に、脂肪分の多い食事や、一度にたくさんの量を食べた後に症状が出やすいです。また、消化の悪い食品、例えば食物繊維の多い食品なども、症状を悪化させる可能性があります。
吐き気は、実際に嘔吐する場合もあれば、吐き気だけを感じる場合もあります。吐き気が慢性的に続く場合は、脱水症状や栄養不足に陥るリスクもありますので、注意が必要です。
便が細くなる、排便後の残便感
腸がねじれていると、便の通り道が狭くなるため、便が細くなることがあります。
また、便がスムーズに出ないため、排便後も残便感があることがあります。これは、便が腸内に残っているにも関わらず、うまく排出できないことが原因です。何度もトイレに行きたくなったり、排便に時間がかかったりすることもあるでしょう。
なぜ腸がねじれるのか?原因とリスク要因
ねじれ腸は、先天的な体質、生活習慣、加齢など、様々な要因が複雑に絡み合って起こります。それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
先天的な腸の形状(S状結腸の長さなど)
生まれたときから腸が長かったり、S状結腸(大腸の一部)が人よりも長かったりすると、ねじれ腸になりやすい傾向があります。
これは、収納スペースに対してコードが長すぎると絡まりやすくなるのと同じ原理です。お腹の中の限られたスペースに長い腸が収まっていると、どうしても動き回る際にねじれてしまうリスクが高まります。
姿勢の悪さ・座りすぎ
デスクワークなどで長時間座りっぱなしの姿勢や、猫背は、お腹を圧迫し、腸の動きを悪くします。
腸は蠕動(ぜんどう)運動という、収縮と弛緩を繰り返すことで内容物を運んでいます。しかし、姿勢が悪いとこの蠕動運動が阻害され、腸がねじれやすくなってしまうのです。特に、座っている状態では腸が圧迫されやすく、ねじれの原因となることがあります。
運動不足・加齢による筋力低下
運動不足や加齢によって腹筋や腸の周りの筋肉が弱くなると、腸を支える力が弱まり、ねじれやすくなります。
腹筋や腸の周りの筋肉は、腸を支える役割を果たしています。これらの筋肉が衰えると、腸が本来の位置からずれたり、ねじれたりするリスクが高まるのです。加齢に伴う筋力低下も、ねじれ腸の要因の一つです。
食生活の乱れ(食物繊維不足・水分不足など)
食生活の乱れ、特に食物繊維の不足は、ねじれ腸のリスクを高めます。
食物繊維は便のかさを増やし、腸の蠕動運動を促す働きがあります。食物繊維が不足すると、便の量が少なくなり、腸の動きが鈍くなります。すると、便が腸内に長くとどまり、ねじれの原因となるのです。
また、水分不足も便を硬くし、排便を困難にするため、ねじれ腸のリスクを高める可能性があります。
ストレスによる腸の運動異常
ストレスは自律神経のバランスを崩し、腸の運動に悪影響を与えます。腸は自律神経によってコントロールされているため、ストレスの影響を受けやすい臓器です。
過剰なストレスは、腸の動きを過敏にしたり、逆に鈍らせたりすることがあります。これらの運動異常は、ねじれ腸の悪化要因となる場合があります。ストレスをうまく解消し、リラックスした時間を過ごすことも、ねじれ腸の予防・改善につながります。
ねじれ腸のチェックリスト|自分で気づける?

「ねじれ腸かな?」と思ったら、ご自身の腸の状態をチェックし、健康な腸を維持するために、以下のチェックリストを活用してみてください。
簡単セルフチェック
以下の項目にいくつ当てはまるか、確認してみましょう。
- 便秘が1週間以上続いている。
- 以前は毎日あった排便が、2〜3日に1回、あるいはそれ以下になっている。
- 排便の際に強い力みが必要で、苦しい。
- 便が細くなったり、ウサギの糞のようなコロコロとした小さな便が出る。
- 排便後も残便感があり、スッキリしない。
- お腹が張って苦しく、ガスが溜まりやすい。
- 特に食後にお腹の張りや吐き気を感じることがある。
- 運動不足になると便秘が悪化する傾向がある。
- 子供の頃から便秘気味である。
これらの項目に複数当てはまる場合は、ねじれ腸の可能性があります。1つでも当てはまる項目があれば、まずは生活習慣の見直しから検討しましょう。
受診の目安とタイミング
セルフチェックでねじれ腸の疑いがある場合、あるいは以下の症状がある場合は、医療機関への受診をおすすめします。
- 非常に強い腹痛があり、我慢できない。
- 38度以上の発熱を伴う。
- 黒っぽい便や血便が出る。
- 吐き気が強く、嘔吐が続く。
- 食欲不振が続き、体重が減少している。
- 便秘が改善しない、あるいは悪化している。
- 市販薬を服用しても症状が改善しない。
これらの症状は、ねじれ腸だけでなく、他の重大な病気が隠れている可能性も考えられます。自己判断せずに、早めに医師に相談することが大切です。
内視鏡や画像診断の有無
ねじれ腸の診断には、問診や触診に加え、画像検査が行われることがあります。検査には、主に以下のものがあります。
- レントゲン検査:腸閉塞の有無や腸管の状態、ガスの溜まり具合などを確認できます。
- 大腸内視鏡検査:腸内部の状態を直接観察し、ねじれ腸の診断や他の大腸疾患(ポリープ、がんなど)の有無を確認できます。
- CTコロノグラフィー:CTを使って大腸の立体的な画像を撮影し、ねじれ腸の診断に役立ちます。仮想内視鏡検査とも呼ばれ、大腸内視鏡検査に比べて苦痛が少ない検査です。
これらの検査は、医師が必要と判断した場合に実施されます。検査を受けることで、より正確な診断が可能となり、適切な治療方針を決定することができるでしょう。
ねじれ腸の治療法・改善方法
お腹の不調が続くと、日常生活にも影響が出てしまい不安ですよね。
この章では、ねじれ腸の改善策について、病院での治療法から、ご自身で取り組める日常生活でのケアまで、幅広く解説します。軽症の方から重症の方まで、ご自身の状態に合った方法を見つけて、少しでも快適な毎日を送れるように、一緒に考えていきましょう。
病院での治療(軽度:薬・重度:手術の可能性も)
ねじれ腸の治療法は、症状の重症度によって大きく異なります。
まず、比較的症状が軽い場合は、下剤や整腸剤などを用いた薬物療法が中心となります。下剤には、便を柔らかくして排便しやすくする効果や、腸の動きを活発にして排便を促す効果があります。整腸剤は、腸内環境を整えて善玉菌を増やし、腸の働きを正常化させることで、お通じの改善をサポートします。
一方、ねじれ腸が重症化し、腸閉塞などの合併症を引き起こしている場合は、手術が必要となることもあります。腸閉塞は、腸管が完全に詰まってしまい、内容物が全く通過できなくなる状態です。
手術では、ねじれて閉塞した腸管を元の位置に戻したり、場合によっては腸の一部を切除したりする処置を行います。手術が必要かどうかは、医師による診察と検査結果に基づいて慎重に判断されます。
腸もみ・マッサージの効果はある?
腸もみやマッサージは、お腹を優しく刺激することで腸の動きを活性化し、便通を促す効果が期待できます。便秘の改善を目的としたマッサージは、古くから様々な方法が試されてきました。
ただし、自己流のマッサージは、かえって腸を傷つけたり、症状を悪化させるリスクも伴います。安全かつ効果的に行うためには、医師の指導を受けることが大事です。
食生活の見直し(食物繊維・水分・発酵食品)
食生活の改善は、ねじれ腸の症状緩和に重要です。バランスの良い食事を摂ることは、腸の健康を維持する上で欠かせません。
まず、食物繊維は、便のかさを増やし、腸の蠕動運動を促す働きがあります。野菜、果物、海藻、きのこ類などに多く含まれています。例えば、ごぼうやブロッコリー、ひじきなどは食物繊維が豊富です。
次に、水分は、便を柔らかくして排便しやすくする効果があります。1日に1.5~2リットルを目安に、こまめに水分を摂るようにしましょう。
さらに、発酵食品は、腸内環境を整え、善玉菌を増やす効果が期待できます。ヨーグルト、納豆、キムチ、味噌などは、発酵食品の代表的な例です。ただし人によっては反対に、下痢を引き起こすこともありますので、ご自身に合った食材を選ぶようにしましょう。
運動・ストレッチ・姿勢改善
適度な運動は、腸の動きを活発にし、便秘の解消に効果的です。ウォーキングやジョギング、ヨガ、水泳など、無理なく続けられる運動を選び、習慣的に行うことが大切です。
ストレッチは、腸の周りの筋肉をほぐし、血行を促進することで、腸の働きをサポートする効果があります。特に、体をひねるストレッチは、ねじれ腸の改善に有効です。
また、正しい姿勢を保つことも、腸への負担を軽減し、ねじれを予防するために重要です。
ストレスを溜めない生活
ストレスは、自律神経のバランスを崩し、腸の運動に悪影響を与える可能性があります。自律神経は、私たちの意思とは無関係に、内臓の働きや呼吸、体温などを調節する神経です。
ストレスを溜めないように、意識的にリラックスする時間を作ったり、趣味を楽しんだり、十分な睡眠をとるように心がけましょう。
医師に相談するべきケースとは?
日常生活でできるケアを続けても症状が改善しない場合や、激しい腹痛、吐き気、嘔吐、発熱、血便などの症状が現れた場合は、速やかに医師に相談しましょう。
また、便秘が慢性的に続いている場合や、セルフケアだけでは不安な場合も、自己判断せずに医療機関を受診し、専門家のアドバイスを受けることが大切です。
まとめ
ねじれ腸は医学用語ではなく、腸のねじれによって便の通りが悪くなっている状態を指します。便秘や腹痛、お腹の張り、ガス溜まりなどが主な症状です。先天的な腸の形や、姿勢の悪さ、運動不足、食生活の乱れ、ストレスなども原因として考えられます。
「ねじれ腸かな?」と思ったら、まずはセルフチェックを行いましょう。便秘が続いたり、便が細くなったり、お腹の張りやガス溜まりが気になる場合は要注意です。
少しでも不安な場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、専門家の適切なアドバイスを受けましょう。食生活の改善や適度な運動、ストレッチなども症状緩和に役立ちます。ねじれ腸は放置すると悪化することもあるので、早めに対処し、快適な毎日を送りましょう。