「便秘が続く」「お腹が張って苦しい」といった症状に心当たりはありませんか?もしかしたら、それは落下腸のサインかもしれません。
落下腸とは、腸が本来あるべき位置から下がってしまい、消化吸収の機能が低下する状態です。加齢や出産、運動不足など、様々な要因が絡み合って発症します。自覚症状が少ないケースも多いですが、放置すると日常生活に大きな影響を及ぼすことも。
この記事では、落下腸の定義や原因、具体的な症状、そして最新の検査方法と治療法までを網羅的に解説します。ご自身の状態と照らし合わせながら読み進め、腸の健康を見直すきっかけにしてみてください。
落下腸を理解する:定義・原因・症状

落下腸は、名前の通り腸が本来あるべき位置から下がってしまう状態です。自覚症状が少ない場合もありますが、放置すると日常生活に大きな影響を及ぼす可能性もあります。
この章では、落下腸の定義、原因、そして主な症状について詳しく解説します。
落下腸とは何か?医学的な定義とメカニズム
落下腸とは、大腸が正常な位置よりも下がっている状態を指します。特に、お腹の上部を横切るように位置する横行結腸と、その下につながるS状結腸が下垂しやすい部分です。
本来、腸は腸間膜と呼ばれる膜によって支えられ、お腹の中で適切な位置に保たれています。しかし、様々な要因によってこの腸間膜が緩んだり、伸びたりすると、腸が本来の位置から下にずり落ちてしまうのです。
腸は、食べた物を消化・吸収し、不要なものを便として体外に排出する重要な役割を担っています。腸が下垂すると、この消化・吸収・排泄の過程がスムーズに行われなくなり、様々な不調が現れる原因となります。
腸が下がる原因:加齢、出産、腹圧上昇など
腸が下がる原因は多岐にわたりますが、主な要因として下記が挙げられます。
- 加齢:年齢とともに腸間膜や筋肉の弾力が低下し、腸を支える力が弱まる。
- 出産:出産時に骨盤底筋が伸び、腸を支える機能が低下しやすくなる。
- 腹圧の上昇:重い物の持ち上げや慢性的な咳・くしゃみにより、腹圧が高まり腸が押し下げられる。
- 運動不足:腹筋や骨盤底筋が衰えると、腸を支える力が弱まりやすくなる。
- 食生活の乱れ:食物繊維不足や便秘によるいきみ、急激な減量が腸機能を低下させ、下垂を招く。
落下腸で起こる症状:便秘、下痢、腹痛、残便感
落下腸になると、様々な症状が現れる可能性があり、その症状は人によって様々です。自覚症状がほとんどない軽度の落下腸の方もいれば、日常生活に支障をきたすほどの症状に悩まされる方もいます。
代表的な症状として下記が挙げられます。
- 便秘
- 下痢
- 腹痛
- 残便感
- ガスがたまりやすい
- 下腹部膨満感
- おならが臭い
これらの症状は、他の消化器疾患でも見られるため、自己判断はせずに、医療機関を受診して適切な検査を受けることが重要です。
落下腸の検査
落下腸を診断するにあたっては、まずは問診をします。
問診では、便秘の頻度や便の性状、腹部膨満感、排便時の痛み、生活への影響などを確認します。また、過去の病歴や食事・運動習慣などの生活背景も重要な情報です。
続いて行われるのが、身体診察です。腹部の触診を行い、腸の位置や緊張、圧痛の有無などを確認します。落下腸の場合、下腹部に腸が触知されることがあります。
また腸の形や位置をより正確に把握するために、以下の画像検査が行われることがあります。
- 腹部X線検査: 腸内のガスの分布や腸の下垂を確認できます。落下腸では、腸管が骨盤内まで下がっている所見が見られることがあります。
- CT検査: 腸の断面を詳細に描出でき、周囲の臓器との位置関係も把握できます。落下腸の診断だけでなく、他の病変の鑑別にも有用です。
- 大腸内視鏡検査:肛門から内視鏡を挿入し、大腸内を直接観察します。粘膜の炎症、ポリープ、腫瘍などの病変を評価できるため、落下腸の有無に加え、他の消化器疾患の早期発見にも役立ちます。必要に応じて鎮痛・鎮静薬を併用し、苦痛の軽減を図ります。
落下腸の治療:まずは生活習慣の改善から

多くの場合、まずは生活習慣の改善や運動といった保存療法から始めます。
主な治療法:保存療法
ほとんどの落下腸による症状は、日常生活の工夫で改善を目指します。身体への負担が少なく、ご自宅でも取り組みやすいのがメリットです。
食事療法
食物繊維をしっかり摂りましょう。野菜、果物、海藻、きのこなど、食物繊維が豊富な食品を積極的に食事に取り入れてください。
これらは便のかさを増やし、腸の動きを活発にする効果が期待できます。
また、水分をしっかりと補給しましょう。 十分な水分摂取は、便を柔らかくし、スムーズな排便を促します。
運動療法
適度な運動を習慣に: ウォーキングやジョギング、水泳など、無理なく続けられる運動は、腹筋や骨盤底筋を鍛え、内臓を支える力を高めます。
腸の動きも活発になるため、便秘の改善にもつながります。
骨盤底筋体操
骨盤の底にある骨盤底筋は、排便のコントロールや内臓を支える重要な役割を担っています。この筋肉を鍛えることで、落下腸による症状の改善が期待できます。肛門を締めたり緩めたりする簡単な動作を繰り返す体操で、入浴中や寝る前など、いつでも手軽に行うことができます。
その他(セルフケア)
もし、なかなか便が出ない場合は、無理にいきむのは避けましょう。いきむと腹圧が上がり、落下腸を悪化させる可能性があります。
どうしても出ない場合は、温かい飲み物を飲んだり、軽くお腹をマッサージしたりするなど、リラックスして排便を促すようにしましょう。
また、排便姿勢も重要です。足台を使って膝を高くすることで、排便しやすくなります。
手術療法について
落下腸そのものに対する手術は、一般的ではありません。
非常に稀なケースとして、落下腸が原因で腸閉塞(腸が完全に詰まってしまう状態)など、生命に関わるような重篤な合併症を引き起こし、かつ保存療法では対応できない場合に、緊急で手術が検討されることがあります。
しかし、これは極めて特殊な状況であり、便秘や下腹部の不調といった一般的な落下腸の症状に対して手術が行われることは、ほとんどありません。
もし手術の選択肢が提示された場合は、その必要性やリスク、得られる効果について、医師と十分な話し合いを行い、納得した上で判断することが大切です。
まとめ
落下腸は、大腸が骨盤内に下垂した状態で、加齢や腹圧の上昇などが原因とされます。
便秘、腹部膨満、残便感など多彩な症状を引き起こしますが、X線やCTなどの検査で診断が可能です。
治療は食事・運動・骨盤底筋体操などの保存療法が中心で、重症例では手術が検討されます。予防には生活習慣の改善が重要です。異変を感じた際は早めに医療機関を受診しましょう。