毎日しっかり歯を磨いているのに、「歯ぐきが腫れる」「出血する」「口臭が気になる」と悩んでいませんか?
実は、通常の歯ブラシだけでは、歯周病の温床となる歯と歯の間のプラークを約6割しか除去できないともいわれています。(※1)歯ブラシの選び方や磨き方が少し違うだけで、ケアの効果は大きく変わってしまうのです。
この記事では、歯周病を防ぐための歯ブラシ選びのポイントと正しい磨き方、電動歯ブラシの活用法までわかりやすく解説します。今日から実践できる正しい知識を身につけて歯ぐきを健康に保ち、口元から自信を取り戻しましょう。
手磨き歯ブラシの選び方
歯周病対策の基本は、毎日の丁寧な歯磨きです。その効果を高めるには、お口に合った歯ブラシを選ぶことが大切です。
ドラッグストアにはさまざまな歯ブラシがあり、選択に迷う方も多いでしょう。ここでは、手磨き歯ブラシを選ぶ際に押さえておきたいポイントとして、以下の3つを解説します。
①毛の硬さの目安
②ヘッドサイズ
③ネック・柄の形状
①毛の硬さの目安
歯ブラシの毛の硬さは、プラーク(歯垢)の除去効率と、歯や歯ぐきへのやさしさとのバランスで選ぶことが大切です。市販の歯ブラシの硬さは、以下の3種類に分けられます。
| 毛の硬さ | おすすめの方 | 特徴 |
| やわらかめ | ・歯周病が気になる方 ・歯ぐきから出血しやすい方 ・知覚過敏の方 | ・歯や歯ぐきへの刺激が少なくやさしい磨き心地 ・しなやかな毛先が歯周ポケットに入り込み汚れをやさしく除去するのに適している |
| ふつう | 歯や歯ぐきが健康な方 | 適切な洗浄力と歯ぐきへのやさしさのバランスが取れている |
| かため | 頑固な汚れが気になる方(注意が必要) | ・プラーク除去力は高いが歯の表面(エナメル質)や歯ぐきを傷つけるリスクも高まる ・強い力で磨くと歯ぐきが下がる原因になる可能性あり |
症状がなければまず「ふつう」の硬さを選ぶのがおすすめです。
歯肉退縮のリスクが高い方の場合、手磨き歯ブラシの使用自体が、歯肉退縮の悪化に関係する可能性も示唆されています。(※2)無意識に強く磨いてしまう方は、意識的に「やわらかめ」を選ぶことが歯ぐきを守るうえで重要です。
②ヘッドサイズ
歯ブラシのヘッド(毛が生えている部分)の大きさは、磨き残しをなくすために重要な要素です。歯周病予防には「コンパクトヘッド」が基本です。
ヘッドが大きいと、奥歯の奥側や歯並びの凹凸、歯と歯ぐきの境目まで毛先が届きにくく、結果的にプラーク(歯垢)が残りやすくなります。小回りの利くヘッドは、磨き残しを防ぎ、歯ぐきの健康を保ちやすくなります。
コンパクトヘッドの主なメリットは次の3つです。
- 奥歯の奥まで毛先が届く
- 歯面にフィットしやすく細部まで磨ける
- 一本一本の歯を意識して丁寧に磨ける
ヘッドサイズを選ぶ目安としては、上の前歯2本分ほどの幅が適切です。植毛列は3列程度のものが、歯面にしっかりフィットして磨きやすくおすすめです。大きなヘッドは一見効率的に思えても、実際には磨き残しの原因になりがちです。
口が小さい方や嘔吐反射が強い方も、コンパクトヘッドを選ぶことでより快適にケアができます。
③ネック・柄の形状
歯ブラシの操作性を左右するのが、ヘッドと柄をつなぐ「ネック」と持ち手の「柄(グリップ)」です。磨きにくい場所にしっかり毛先を届かせるため、これらの形状にも注目しましょう。ネックと柄のそれぞれの形状の特徴は以下のとおりです。
【ネックの形状】
| 形状 | 特徴 |
| ストレートタイプ | 基本的な形状で、力が歯に直接伝わりやすく操作性が高い |
| カーブタイプ | ネックに角度があり、奥歯や裏側にも自然に毛先が届く |
| フレキシブルネック | ・力を入れすぎた際にしなって圧力を逃がすため、歯や歯ぐきを傷めにくい ・ブラッシング圧が強い人に適している |
【柄(グリップ)の形状】
| 形状 | 特徴 |
| ストレートで細いタイプ | 鉛筆を持つように握る「ペングリップ」に向いており、余計な力をかけずに細かく磨ける |
| 太めでラバー付きのタイプ | ・握りやすく滑りにくいため、安定したブラッシングが可能 ・手の力が弱い人や高齢者にも使いやすい |
形状や機能に違いはありますが、大切なのは自分の手にしっくりと馴染むことです。持ちやすく操作しやすい歯ブラシを選ぶことで、毎日のケアを無理なく続けられます。
電動歯ブラシの選び方
電動歯ブラシは、手磨きでは落としきれないプラークを効率的に除去できる便利なツールです。スイッチ1つで安定した動きを再現できるため、磨き残しを減らし、歯周病予防にも効果が期待できます。
電動歯ブラシには複数のタイプがあり、動き方やブラッシングの刺激が異なります。ここでは、主なタイプごとの特徴と効果について以下の4つを解説します。
- 回転式の特徴
- 音波式の特徴
- プラーク除去の効果
- 歯肉退縮への影響
回転式の特徴
回転式の電動歯ブラシは、丸型のブラシヘッドが高速で回転・反転を繰り返すのが特徴です。歯を一本一本包み込むようにフィットし、粘着性の高いプラークを物理的にこすり落とします。パワフルな動きで、歯の表面のぬめりや着色汚れをしっかり除去したい方におすすめです。
回転式は、その構造上、歯の曲面にフィットしやすく、特に奥歯や歯並びの悪い箇所の汚れを物理的にこすり落とす力が強い傾向にあります。歯並びが複雑な部分や磨きにくい奥歯にも、小さな丸型ヘッドが届きやすいのがメリットです。
回転式の電動歯ブラシの使い方のポイントは以下のとおりです。
| ポイント | 説明 |
| 動かさない | ・手磨きのようにゴシゴシ動かす必要はない ・磨きたい歯の表面に2~3秒ほどやさしく当てるだけ |
| 押し付けない | ・歯や歯ぐきに強く押し付けると摩耗や退縮の原因となる ・毛先が軽く触れる程度の力加減を意識する |
| 角度を意識する | 歯と歯ぐきの境目や歯と歯の間に毛先が当たるよう少し角度を調整する |
音波式の特徴
音波式の電動歯ブラシは、ブラシヘッドが音波領域で高速に振動するのが特徴です。この高速振動が口内の水分と歯磨き粉を撹拌し、きめ細かな音波水流を発生させます。
この水流が、ブラシの毛先が直接届きにくい歯周ポケットの奥や、歯と歯の間のプラークにアプローチします。汚れを物理的にかき出すだけでなく、水流の力で洗い流す効果も期待できるのが特徴です。
回転式に比べて歯や歯ぐきへの刺激が少ないため、歯周病で歯ぐきが腫れていたり、知覚過敏があったりする方にも推奨されます。使い方も手磨きに近く、ブラシを軽く歯に当ててゆっくり動かすだけなので、電動歯ブラシが初めての方にも適しています。
プラーク除去の効果
電動歯ブラシは、手磨きよりも効率的にプラークを除去できることが研究で確認されています。(※4)ある臨床試験では、歯周病の初期段階にある患者さんが歯科医院で専門的なクリーニングを受けた後の経過を比較しました。
その結果、自宅で電動歯ブラシを使い続けたグループは、手磨き歯ブラシのグループに比べて、歯肉炎の症状やプラークの量が大幅に改善したと報告されています。(※4)
手磨き歯ブラシと電動歯ブラシの効果の違いをそれぞれ表にまとめています。
| 比較項目 | 手磨き歯ブラシ | 電動歯ブラシ |
| 動きの質 | 個人の技術に依存し磨き方にムラが出やすい | 高速で均一な振動・回転で、安定した清掃が可能 |
| プラーク除去 | 正しい磨き方を習得しないと効果が下がる | 誰でも比較的高い効果を得やすい |
| 歯周病ケア | 治療後の良い状態を維持するには高い技術が必要 | 歯肉炎の改善や治療後の状態維持に有効との研究結果が豊富 |
電動歯ブラシは歯科医院での治療効果を長持ちさせ、再発を防ぐための強力なパートナーとなり得ます。回転式・音波式のどちらも手磨きより優れたプラーク除去能力があるため、ご自身の好みや口内環境に合わせて選ぶことが大切です。
歯肉退縮への影響
適切な使い方を守れば、電動歯ブラシが歯肉退縮を引き起こす心配はほとんどありません。歯肉退縮のリスクを減らせる可能性を示唆する研究結果も出ています。(※2)
歯肉退縮のリスクがある方を対象にした3年間の長期的な調査では、驚くべき結果が報告されました。手磨き歯ブラシを使ったグループよりも、特定の電動歯ブラシを使ったグループのほうが、歯肉退縮の進行が有意に抑えられたのです。この研究では、手磨き歯ブラシの使用自体が歯肉退縮の悪化に関係する危険因子である可能性も示唆されています。(※2)
近年の電動歯ブラシの多くは、力が入りすぎると光や音で警告する「押し付け防止センサー」が搭載されています。このような機能を活用すれば、無意識に強く磨いてしまう癖がある方でも、歯ぐきにやさしいブラッシングを習得しやすくなります。
大切なのは、ブラシを歯にそっと当てるように使い、決してゴシゴシとこすらないことです。
正しい磨き方のポイント
歯周病対策では、高価な歯ブラシを選ぶこと以上に、どう磨くかが重要です。なんとなく歯を磨いているだけでは、歯周病菌の温床となるプラークが残ってしまいます。
歯磨きの効果を高めやすい正しい磨き方のポイントは以下の5つです。
①力を入れすぎず、短いストロークで磨く
②毛先を歯と歯ぐきの境目に45度で当てる
③磨く順序を決めて磨き残しを防ぐ
④歯と歯の間や奥歯を丁寧に磨く
⑤デンタルフロスやタフトブラシを併用する
①力を入れすぎず、短いストロークで磨く
歯周病対策の基本は「強く磨くこと」ではなく、「やさしく丁寧に磨くこと」です。力を入れすぎると歯ぐきが傷つき、歯の表面を削ってしまうなど、トラブルを招く原因になります。
力の入れすぎが引き起こす代表的な問題は次のとおりです。
| トラブル | 影響 |
| 歯ぐきを傷つける | 強い圧力で磨くと歯ぐきが下がる「歯肉退縮」を起こしやすくなる |
| 歯が削れる | エナメル質が摩耗して、冷たいものがしみる「知覚過敏」につながる |
| プラークが落ちない | 毛先が寝てしまい、汚れをかき出せなくなる |
歯ブラシを歯に軽く当て、毛先が広がらないくらいが理想です。鉛筆を持つように握る「ペングリップ」を意識すると、自然と力が抜けやすくなります。
磨くときは歯を1〜2本ずつ、5〜10mmほどの幅で小刻みに動かすのが基本です。大きく動かすと磨き残しが増えるため注意しましょう。電動歯ブラシの場合は、手で動かさず毛先を軽く当てるだけで十分です。
②毛先を歯と歯ぐきの境目に45度で当てる
歯周病を防ぐためには、歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目に45度の角度で当てることが大切です。
これは「バス法」と呼ばれるブラッシング法で、毛先を歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の溝)に軽く差し込み、プラークをやさしくかき出すことができます。歯周病はこの溝に汚れが残ることで進行するため、境目をしっかり磨けるかどうかがケアの鍵です。
バス法は以下の流れで行います。
- 歯と歯ぐきの境目に45度の角度で毛先を当てる
- 毛先を歯周ポケットに軽く差し込むように意識する
- 力を入れずにその場で小刻みに振動させる
この磨き方を続けることで、歯の表面だけでなく歯ぐきの中の汚れまで除去でき、歯周病の予防効果を高めやすくなります。鏡で毛先の位置を確認しながら行うと、正しい角度を保ちやすくなります。
電動歯ブラシを使う場合も、同様にヘッドを45度に当てることを意識しましょう。
③磨く順序を決めて磨き残しを防ぐ
磨き残しを減らすためには、歯磨きを始める前に「磨く順序」を決めておくことが大切です。毎日同じように磨いているつもりでも、無意識のうちに磨きやすい部分ばかりに手が向き、汚れが残る場所が出てしまいます。
磨く順序の一例は次のとおりです。
- 右上の奥歯の外側から前歯へ向かって磨く
- そのまま左上の奥歯の外側まで進める
- 続いて左上の奥歯の内側から右上の内側へ戻る
- 上の歯全体の噛み合わせ面を磨く
- 下の歯も同じ順序(外側→内側→噛み合わせ面)で繰り返す
利き手側の奥歯の外側や下の前歯の内側は、磨き残しが多い部分です。順番を決めておくことで、意識が届きにくい箇所もしっかり清掃できます。
研究では歯磨きの習慣が長期的な健康維持と関わりがある可能性も示されています。若い頃から確立された磨き方のルールは、将来的に口腔の健康を保つうえで重要な基盤となります。(※5)
④歯と歯の間や奥歯を丁寧に磨く
歯と歯の間や奥歯の周辺は、歯ブラシの毛先が届きにくく、プラークが残りやすい場所です。特に奥歯の後ろや歯並びの重なった部分は、歯周病が進行しやすい要注意エリアです。これらを丁寧に磨けるかどうかが、日々のセルフケアの質を大きく左右します。
磨く際は、歯ブラシを少し縦に持ち替え、ヘッドの「つま先」や「かかと」を使って細かく動かすことがポイントです。奥歯の外側は口をやや閉じ気味にすると、頬の筋肉に邪魔されず磨きやすくなります。
歯並びが悪い部分は、歯を1本ずつ意識してブラシを当てましょう。歯ブラシだけでは落としきれない汚れもあるため、デンタルフロスや歯間ブラシを併用して清掃すると、より清潔な状態を維持できます。
⑤デンタルフロスやタフトブラシを併用する
歯ブラシだけで落とせる歯と歯の間のプラークは、約6割とされています(※1)。残りの汚れを取り除くためには、デンタルフロスや歯間ブラシ、タフトブラシなどの補助清掃用具を取り入れることが大切です。
補助清掃用具にはそれぞれ特徴があり、歯の隙間の広さやお口の状態に応じて使い分けることが大切です。以下の表で代表的な種類と使い方をまとめています。
| 補助清掃用具 | おすすめの方 | 主な使い方 |
| デンタルフロス | 歯と歯の隙間が狭い方、歯ぐきが健康な方 | 歯の側面に沿わせて上下に動かし、歯と歯の接触面の汚れをこすり取る |
| 歯間ブラシ | 歯の隙間が広い方、歯ぐきが下がっている方、ブリッジを使用している方 | 隙間の大きさに合ったサイズを選び、歯ぐきを傷つけないよう水平に出し入れする |
| タフトブラシ | 奥歯の後ろ、歯並びが悪い部分、生えかけの親知らず、矯正装置の周り | 磨きたい箇所に毛先を当て、円を描くようにやさしく動かす |
これらの補助用具を併用することで、歯ブラシだけでは届かない細かな汚れまで取り除くことができ、清掃の精度が高まります。継続することで、歯ぐきの健康を守り、歯周病の進行を防ぎやすくなります。
毎日のケアで意識したいポイント
歯周病を防ぐためには、正しい磨き方に加えて、毎日の習慣をどう整えるかも大切です。歯ブラシの交換時期や磨くタイミング、使う歯磨き粉の種類など、少しの工夫で口内環境は大きく変わります。
ここでは、今日から意識したい5つのポイントを紹介します。
①歯ブラシは1か月を目安に交換する
②食後すぐのブラッシングでプラーク付着を防ぐ
③就寝前のケアを丁寧に行う
④歯磨き粉は歯周病予防に役立つ成分入りを選ぶ
⑤舌・歯肉マッサージで血行を促進する
①歯ブラシは1か月を目安に交換する
歯ブラシの交換の目安は「1か月に1回」と覚えておきましょう。歯ブラシは消耗品であり、定期的な交換が歯周病ケアの効果を維持するうえで不可欠です。まだ使えるように見えても、毛の弾力性は日々失われています。
毛先が開いた歯ブラシを使い続けると、以下のような問題が生じます。
| 問題 | 原因 |
| プラーク除去率の低下 | ・毛先にコシがなくなり歯と歯ぐきの境目や歯と歯の間にきちんと届かなくなる ・磨き残しが増えて歯周病のリスクが高まりやすくなる |
| 歯ぐきを傷つけるリスク | 広がった毛先が歯ぐきに不規則に当たりデリケートな組織を傷つけてしまうことがある |
交換時期は、見た目でも確認できます。歯ブラシのヘッドを裏側から見て、毛先がヘッドの側面からはみ出して見えるようになったら交換のサインです。
口腔内の細菌がブラシに付着し、時間とともに増殖する衛生的な問題もあります。使用後の歯ブラシは流水でよく洗い、風通しの良い場所でしっかり乾燥させて清潔に保ちましょう。
②食後すぐのブラッシングでプラーク付着を防ぐ
食後は、なるべく早く歯を磨くことが大切です。食後の口腔内では、細菌が食べ物の糖を分解して「プラーク(歯垢)」を作ります。プラークはねばねばしていて、放っておくと硬い「歯石」になり、歯周病の原因になります。
ただし、みかんやお酢、炭酸飲料など酸っぱいものを食べた直後は、注意が必要です。口の中が酸性になると、歯の表面のエナメル質が一時的に柔らかくなります。このとき強く磨くと、歯を傷つけてしまうことがあります。酸っぱいものを食べた後は、まず水で口をすすぎ、30分ほど待ってからやさしく磨きましょう。
外出先などで歯磨きができないときは、水やお茶で口をゆすぐだけでも問題ありません。食べかすを流し、プラークの付着を防ぐ助けになります。
③就寝前のケアを丁寧に行う
1日の終わりには、その日の汚れをすべて落とすつもりで丁寧に歯を磨きましょう。就寝前のケアは1日3回の歯磨きのなかでも特に重要です。
眠っている間は唾液の分泌が大きく減り、口の中の「自浄作用(じじょうさよう)」が弱まります。このため、細菌が増えやすく、歯周病菌が活動しやすい環境になります。
寝る前のケアでは、次の3つのポイントを意識しましょう。
- 時間をかける:いつもより少し長めに、5分以上を目安に丁寧に磨く
- 補助清掃用具を使う:デンタルフロスや歯間ブラシを併用して、細部まで清掃する
- 鏡で確認する:奥歯の裏や歯の内側など、磨き残しやすい部分を目で確かめながら磨く
就寝前の丁寧なケアは、口の中の清潔を保つだけでなく、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。さらに、近年では歯周病と認知機能の関係も注目されており、毎晩のケアが全身の健康を守る大切な習慣になります。(※5)
④歯磨き粉は歯周病予防に役立つ成分入りを選ぶ
歯周病が気になる方は、予防に役立つ薬用成分が配合された歯磨き粉を選びましょう。歯磨き粉は、毎日のブラッシングをサポートします。パッケージの成分表示を確認し、ご自身の症状に合ったものを見つけることがポイントです。
以下の表では、歯周病予防に役立つ主な薬用成分をまとめています。
| 目的 | 成分例 | 主な働き |
| 殺菌 | 塩化セチルピリジニウム(CPC)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP) | 歯周病の原因菌を抑え、プラークの増加を防ぐ |
| 抗炎症 | トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム | 歯ぐきの炎症を鎮め、腫れや出血を防ぐ |
| 歯ぐきの活性化 | ビタミンE(酢酸トコフェロール) | 血行を促し、歯ぐきの修復を助ける |
| 歯質強化 | フッ化ナトリウム(NaF)、モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP) | エナメル質を強くし、根元の虫歯の予防にもつながる |
研究では、フッ素入り歯磨き粉の普及が歯の喪失を減らす大きな要因と報告されています(※6)。歯周病と虫歯、両方の予防を考えるなら、フッ素配合タイプを選ぶのがおすすめです。
⑤舌・歯ぐきマッサージで血行を促進する
歯磨き後に、舌の清掃や歯ぐき(歯肉)のマッサージを取り入れることで、口の中全体の健康を保ちやすくなります。
歯ぐきの血流が悪くなると、栄養が届きにくくなり、細菌への抵抗力が低下します。マッサージで血行を促すことで、歯ぐきを引き締め、健康な状態を維持できます。
舌・歯ぐきマッサージは、それぞれ以下の流れで行います。
【舌の清掃の手順】
- 舌専用クリーナーまたは毛のやわらかい歯ブラシを用意する
- 舌の奥から手前に向かって、軽い力で2〜3回かき出す
- 強くこすらないように注意する(舌の表面を傷つける原因になる)
【歯ぐきマッサージの手順】
- 手を清潔に洗う
- 人差し指の腹を使い、歯と歯ぐきの境目にやさしく当てる
- 力を入れず、「の」の字を描くようにゆっくりマッサージする
これらを毎日の習慣に加えることで、口臭の予防だけでなく、歯ぐきの健康維持や歯周病の早期発見にもつながります。
まとめ
歯周病を防ぐために大切なのは、「ご自身のお口に合った道具で、やさしく丁寧に磨くこと」です。特に、歯ブラシだけでは約6割の汚れしか落とせません。(※1)デンタルフロスや歯間ブラシを組み合わせて使うことで、歯と歯の間まで清潔に保ちやすくなります。
毎日の小さな積み重ねが、将来の歯を守り、全身の健康を支える大切な土台になります。まずは今日から、歯ブラシの選び方や磨き方を見直してみましょう。「これで合っているかな?」「歯ぐきの状態が気になる」と感じたときは、迷わず歯科医院へ相談しましょう。
正しいケアを続けることで、健康な歯ぐきを長く保つことができます。
参考文献
- 公益社団法人 日本歯科医師会:「歯の学校」vol74
- Sutor S, Graetz C, Geiken A, Straßburger M, Löwe C, Holtmann B, Conrad J, Sälzer S and Dörfer CE. “Effect of a powered and a manual toothbrush in subjects susceptible to gingival recession: A 36-month randomized controlled clinical study.” International journal of dental hygiene 23, no. 1 (2025): 26-36.
- Jenkins W, Starke EM, Nelson M, Milleman K, Milleman J and Ward M. “The effects of scaling and root planing plus home oral hygiene maintenance in Stage I/II periodontitis population: A 24-week randomized clinical trial.” International journal of dental hygiene 22, no. 3 (2024): 727-735.
- Saji N, Matsushita K, Takeda A and Sakurai T. “Association between periodontal disease and age-related cognitive impairment: a narrative review.” BMC oral health 25, no. 1 (2025): 373.
- Kocher T, Meisel P, Baumeister S and Holtfreter B. “Impact of public health and patient-centered prevention strategies on periodontitis and caries as causes of tooth loss in high-income countries.” Periodontology 2000, no. (2024): .
