便に血が混じっているのに気づいたとき、「もしかして病気?」と、不安に思う方は少なくありません。
血便の原因は痔などの身近なものから、大腸がんなど命に関わる病気や難病に指定されている炎症性腸疾患まで多岐にわたります。色や出血の量、伴う症状によって、危険度や受診の緊急性も変わります。
この記事では、血便の主な原因や病気ごとの特徴、受診すべきタイミング、検査や治療の流れをわかりやすく解説します。正しい知識を持つことで、不安に振り回されず、自分の体を守る行動が取れるようになります。
気になる症状に早く気づき、安心できる日常を取り戻しましょう。
血便の色と病気の関係
血便の色は、出血している場所を推測するための重要なサインです。鮮やかな赤色の血便は下部消化管(肛門・直腸)からの出血、黒っぽい便は上部消化管(胃・十二指腸・小腸など)からの出血が疑われます。
それぞれの特徴を整理すると以下のとおりです。
- ● 鮮血便:便の表面に明るい赤い血が付着する
- ● 暗赤色便・黒色便(タール便):便全体が暗赤色や黒色で粘り気がある
鮮やかな赤い血は肛門の出口付近の出血であることが多いですが、出血量が多い・繰り返す場合や、原因が不明なときは軽視できません。黒っぽい便は消化された血液が混ざっている証拠であり、放置すると命に関わることもあります。
血便の色は体からの警告サインです。少量でも自己判断せず、早めに医療機関を受診することで、重大な病気の早期発見につながります。
血便の主な原因となる病気6つ
血便のなかには自然に治るものもありますが、放置すると症状が悪化したり、命に関わったりするケースもあります。血便の代表的な原因は以下の6つです。
- ① 肛門の病気
- ② 大腸の病気
- ③ 炎症性腸疾患
- ④ 感染性腸炎・虚血性腸炎
- ⑤ 胃・十二指腸潰瘍
- ⑥ 薬の副作用
①肛門の病気
血便の原因として、頻度が高いのが痔に代表される肛門の病気です。
肛門の病気に見られる特徴は以下のとおりです。
| 特徴 | 具体的な内容 |
| 血便の色 | 多くは鮮やかな赤色(鮮血) |
| 出血の仕方 | ・硬い便の表面に血が付着する ・排便のあとに、便器に血がポタポタと垂れる ・おしりを拭いたトイレットペーパーに血が付く |
| 伴う症状 | ・切れ痔(裂肛)では、排便時にナイフで切られたような鋭い痛みを感じる ・いぼ痔(痔核)では、痛みがないことも多く、出血して初めて気づくこともある |
出血量が少ないからといって軽視していると、大腸がんなどの病気を見逃すことにつながります。痔だと思っていても、初めて血便に気づいた場合や出血が続く場合は、まずは医療機関を受診してください。
②大腸の病気
大腸からの出血も血便の原因になります。注意が必要なのが、大腸ポリープや大腸がんです。初期段階では自覚症状がほとんどなく、血便や健康診断の便潜血検査をきっかけに発見されることが少なくありません。
大腸の病気に見られる特徴は以下のとおりです。
| 特徴 | 具体的な内容 |
| 血便の色 | ・ポリープや、肛門に近い直腸・S状結腸にできたがんの場合は、鮮やかな赤色(鮮血)に近いことがある ・大腸の奥のほう(上行結腸など)にできたがんの場合は、血液が排出されるまでに時間がかかるため、少し黒ずんだ暗赤色になる |
| 出血の仕方 | ・便全体に血液が混じり込んでいるように見える ・粘液と血液が混じった粘血便として出ることもある ・出血量はわずかで、見た目ではわからない便潜血のことも多い |
| 伴う症状 | ・初期は無症状であることが多い ・便秘と下痢を繰り返す ・便が以前より細くなった ・お腹が張る感じがする ・排便後も便が残っている感じがする(残便感) |
大腸がんは、早期発見であれば、生存率が非常に高い病気です。(※1)症状がなくても、40歳を過ぎたら定期的に大腸がん検診を受けることが、ご自身の健康を守るうえで大切になります。
③炎症性腸疾患
炎症性腸疾患は、腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気で、腹痛や下痢、血便を伴うことが多いのが特徴です。主に潰瘍性大腸炎とクローン病の2種類があります。遺伝・食生活・ストレス・免疫異常などが関係すると考えられていますが、原因は明らかではありません。特に10〜30代の若い世代に多く見られます。
血液と粘液が混じった便や暗赤色便が現れ、下痢・腹痛・体重減少・発熱・倦怠感を伴うこともあります。症状は良くなったり悪化したりを繰り返すため、腸の不調と誤解されがちです。
数週間以上続く下痢や血便がある場合は、早めに消化器内科を受診し、正確な診断と治療を受けることが大切です。
④感染性腸炎・虚血性腸炎
突然の腹痛や下痢とともに血便が出た場合、感染性腸炎や虚血性腸炎の可能性があります。
感染性腸炎や虚血性腸炎に見られる特徴は以下のとおりです。
| 疾患名 | 特徴 |
| 感染性腸炎 | ・サルモネラ菌、カンピロバクター菌、O-157などの病原性大腸菌や、ノロウイルスなどのウイルス感染で起こる ・激しい下痢や腹痛、発熱、嘔吐などを伴うことが多く、便に血が混じることがある |
| 虚血性腸炎 | ・便秘や動脈硬化などが原因で、大腸への血液の流れが一時的に悪くなることで炎症が起こる病気 ・高齢の方に多く、突然の強い左下腹部痛と下痢、そのあとに鮮血便が見られる |
感染性腸炎や虚血性腸炎は、脱水症状がひどい場合や重症化した場合は入院が必要になることもあります。激しい腹痛や高熱を伴う血便は、すぐに医療機関を受診してください。
⑤胃・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸など、食道に近い上部消化管で出血が起こると、血液が胃酸によって酸化され、黒くてドロドロとした便(タール便)が出ます。
胃・十二指腸潰瘍は、ピロリ菌の感染や痛み止めの薬の副作用などが原因です。以下のような症状が現れます。
- ● みぞおちの痛み(特に空腹時や夜間)
- ● 胸やけ、胃もたれ
- ● 吐き気、嘔吐
- ● 吐血(色が赤黒い場合もある)
胃・十二指腸潰瘍の出血を放置すると、貧血が進行し、潰瘍が悪化して胃や十二指腸に穴が開く穿孔(せんこう)を起こす危険があります。緊急手術が必要になるケースもあるため、注意が必要です。黒い便に気づいたら、迷わず消化器内科を受診しましょう。
⑥薬の副作用
病気の治療や予防のために服用している薬が、意図せず血便の原因となることがあります。特に注意が必要な薬は、以下のとおりです。
| 種類 | 特徴 |
| 抗血小板薬・抗凝固薬 | ・心筋梗塞や脳梗塞の予防に使われる血液をサラサラにする薬 ・副作用として消化管から出血し、血便が出ることがある |
| 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | ・関節痛や頭痛などの痛み止めとして広く使われている ・胃や腸の粘膜を保護する物質を減らしてしまうため、粘膜が荒れて潰瘍を作り、出血の原因となることがある |
薬を服用中に血便が出ても、自己判断で薬をやめるのは避けてください。血液をサラサラにする薬は、中断することで命に関わる血栓症(血の塊が血管に詰まる病気)を引き起こすリスクが高まります。
薬を処方した主治医に相談し、指示を仰ぐようにしてください。
血便が出たときの受診の目安
血便が出たときに、「少し様子を見よう」と判断するのは危険です。出血の量や症状によっては、早急な受診が必要な場合もあります。
特に注意すべき受診の目安として、以下が挙げられます。
- ● 強い腹痛や貧血症状を伴っているとき
- ● 大量の血が出た・繰り返し血便が続いているとき
- ● 明確な原因がなく、便に異常が続いているとき
強い腹痛や貧血症状を伴っているとき
血便とともに、強い腹痛や、貧血を疑う症状がある場合は、緊急性の高い病気が隠れているサインです。体内で大量出血が起きているケースもあり、放置は危険です。
以下の項目に当てはまる場合は、すぐに医療機関を受診し、必要に応じて救急車の要請も検討してください。
| 項目 | 具体的な内容 |
| 全身の症状 | ・冷や汗や脂汗が止まらない ・顔色が悪く、唇が青白い ・めまいや、立ち上がった瞬間に目の前が暗くなる立ちくらみがする ・意識が遠のくような感じがする ・安静にしていても脈が速い、動悸がする |
| お腹の症状 | ・お腹を抱えてうずくまるほどの激しい腹痛 ・吐き気や嘔吐を伴う |
大腸への血流が悪くなる虚血性腸炎や、重症化した感染性腸炎では、激しい腹痛とともに血便が見られます。まれに、ウイルス感染などが引き金となり、全身の血管に炎症が起きるIgA血管炎で、重篤な消化管出血を起こす場合もあります。(※2)
危険なサインを見逃さず、夜間や休日でも迷わず救急外来へ向かいましょう。
大量の血が出た・繰り返し血便が続いているとき
大量の血便や、出血が繰り返し続く場合は注意が必要です。消化管のどこかで出血が止まらず続いているサインであり、早めの検査が必要になります。便器の水が真っ赤に染まる、どろっとした血の塊が出る、排便後も血がポタポタ垂れるときは出血量が多い状態です。
少量だとしても、何度も出血する場合は油断できません。体内ではじわじわと出血が続き、知らないうちに貧血が進行していることもあります。
大腸の袋状のくぼみから出血する大腸憩室出血や、腸に炎症が起こる炎症性腸疾患などが原因となることがあります。出血が続くときは、自己判断せず、消化器内科や肛門科を早めに受診しましょう。
明確な原因がなく、便に異常が続いているとき
原因がはっきりしない血便や便の異常が続く場合は、病気のサインの可能性があります。
大腸ポリープや大腸がんは初期には痛みが出にくく、血便が唯一の症状であることも少なくありません。特に、大腸がんは世界的にも発症率が高く、早期発見・早期治療が重要です。(※3)
以下に当てはまる方で血便が見られた場合は、特に注意が必要です。
- ● 年齢が50歳以上
- ● 家族に大腸がんの既往がある
- ● 肥満傾向がある
- ● 喫煙習慣がある
- ● アルコールを多く飲む
血便以外でも次のような便の変化が続くときは受診を検討してください。
- ● 便に粘液が混じる 大腸の炎症や腫瘍がある可能性が考えられます。
- ● 便が細くなった 腸内が腫瘍などで狭くなっている可能性が考えられます。
- ● 便秘と下痢を繰り返す 腸の動きが病変によって妨げられている可能性があります。
- ● 排便後に残便感がある 直腸付近に炎症や腫瘍などの病変がある可能性が考えられます。
原因のわからない便の異常が続くときは、軽く見ずに消化器内科を受診しましょう。
血便の検査と治療法
血便があるときは、出血の原因を特定することが大切です。見た目の色や量だけでは、出血部位や病気の種類を正確に判断できません。医療機関で行われる主な検査と治療法について、次の4つの観点で解説します。
- ● 血便の原因を調べる主な検査方法
- ● 鎮静剤を使った内視鏡検査の流れ
- ● 原因別の治療法(大腸ポリープ・痔・炎症性腸疾患など)
- ● 再発を防ぐための生活習慣の改善ポイント
血便の原因を調べる主な検査方法
血便の診断には、出血の場所と原因を探るために以下のような検査を組み合わせて行います。
| 検査名 | 特徴 |
| 便潜血検査 | ・便の中に目に見えないほど微量な血液が混ざっていないかを調べる検査 ・専用のスティックで便の一部を採取し、血液中のヘモグロビンを検出する ・健康診断でも広く行われており、大腸がんやポリープの早期発見を目的としている |
| 大腸内視鏡検査(下部消化管内視鏡) | ・肛門から細いカメラを挿入して、大腸の内部を直接観察する検査 ・粘膜の炎症やポリープ、がんなどを確認でき、必要に応じてその場で組織を採取(生検)したり、ポリープを切除したりできる |
| 腹部CT検査・造影CT | ・腹部全体を画像化して、腸の壁の厚みや出血の位置を確認する ・腸の炎症や出血源が内視鏡で届かない部位にある場合に有効 ・検査時間は10分程度で、痛みはほとんどない ・急な大量出血や強い腹痛があるときに選択される |
便潜血検査はスクリーニング(初期発見)目的、大腸内視鏡は確定診断、CTは緊急時や広範囲の確認に用いられます。症状の程度や持病の有無によって、検査を組み合わせて判断します。
鎮静剤を使った内視鏡検査の流れ
鎮静剤を使った内視鏡検査では、ウトウトしているような、リラックスした状態で検査を受けられるため、苦痛や不安を感じにくいのが特徴です。
前日の夜は腸管刺激性の下剤を服用し、当日は絶食で、腸をきれいにする腸管洗浄剤を服用します。検査時間はおよそ15〜30分ほどで、終了後は鎮静剤の影響が残るため、1〜2時間休んでから帰宅します。
検査当日は車の運転ができないため、公共交通機関や家族の送迎を利用しましょう。鎮静剤を使った内視鏡の導入が進み、血便の原因をより正確かつ安心して調べることが可能になっています。
原因別の治療法(大腸ポリープ・痔・炎症性腸疾患など)
血便の治療は、原因となる病気によって大きく異なります。代表的な疾患の特徴と治療法は以下のとおりです。
| 疾患 | 特徴と治療法 |
| 痔(いぼ痔・切れ痔) | ・軽度の場合は、軟膏や座薬で炎症や痛みを抑え、便通を整える生活改善で治まることが多い ・出血や痛みが強い場合には、硬化療法(注射)や手術で根本的に治療することもある |
| 大腸ポリープ | ・内視鏡検査中にそのまま切除可能 ・切除後は日帰りまたは短期入院で経過を観察する ・放置すると大腸がんに進行する可能性があるため、早期発見・除去が重要 |
| 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病) | ・免疫の異常が原因で腸に炎症が起こる病気 ・治療には、ステロイド薬や免疫調整薬、生物学的製剤などを用いて炎症を抑える ・症状をコントロールしながら、再発予防のために定期的な通院と内視鏡検査を行う |
| 大腸がん・胃潰瘍・消化管出血 | ・出血の範囲や進行度によって、手術・内視鏡的止血・抗がん剤治療などが行われる ・貧血や体重減少を伴う場合は、早めの精密検査が必要 |
検査により原因を特定し、正しい治療を受けることが大切です。
再発を防ぐための生活習慣の改善ポイント
血便を繰り返さないためには、腸内環境を整える以下のような生活習慣が大切です。
| 生活習慣 | 具体的な内容 |
| 食物繊維をしっかりとる | 野菜・海藻・きのこ・豆類を積極的に取り入れることで、便通が整い、痔や便秘を予防できる |
| 十分な水分補給 | 1日1.5〜2Lを目安に水分を摂取し、便をやわらかく保つ |
| 規則正しい生活 | 不規則な食事や睡眠不足は腸の働きを乱すため、毎日同じ時間の食事と排便を心がける |
| ストレス管理 | ストレスは腸の動きを鈍らせ、炎症性腸疾患の再発にもつながるため、軽い運動や趣味の時間を取り入れて心身のバランスを保つ |
| 定期検診の継続 | 便潜血検査や内視鏡検査を定期的に受けることで、再発や新たな病変を早期に発見する |
血便は、一度治まっても原因が残っていれば再発することがあります。生活改善とあわせて、症状が続く場合は迷わず医療機関を受診し、専門的な治療を受けましょう。
まとめ
便に血が混じっているときに自己判断で様子見するのは避けましょう。大腸がんなどの早期治療が大切な病気のサインを見逃すことにつながるため、とても危険です。
血便は、体からの重要なサインです。強い腹痛を伴う場合や出血が続くときは、ためらわずに消化器内科や肛門科を受診しましょう。原因を正しく知ることが、不安を解消し、ご自身の体を守るための確実な第一歩となります。
参考文献
- Chakrabarti S, Peterson CY, Sriram D, Mahipal A.Early stage colon cancer: Current treatment standards, evolving paradigms, and future directions.World J Gastrointest Oncol,2020,12(8),p.808-832.
- Konstantopoulou A, Tsoliakos I, Berikopoulou MM, Kiorsavva A, Theochari M, Drosatou P, Messaritaki A, Dimopoulou D.A case-based review of IgA vasculitis complicated with gastrointestinal infections: insights from a norovirus-associated case in an adolescent.Rheumatology International,2025,45(5),p.114.
- Tsukanov VV, Vasyutin AV, Tonkikh JL.Risk factors, prevention and screening of colorectal cancer: A rising problem.World Journal of Gastroenterology,2025,31(5),p.98629.
この記事を監修した医師
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わだ内科・胃と腸クリニック 院長
和田 蔵人
「お子さまからご高齢の方まで、ご家族皆さんが安心して通えるクリニックでありたい」
体の不調や心に抱える不安に対し、親身になってサポートする和田院長に、ぜひ一度ご相談ください。