健康診断の結果に「再検査」と書かれているのを見て、胸がざわついたことはありませんか?
「何か重い病気だったら」と不安になるのは当然です。2022年の調査では、健康診断を受けた方の約6割に何らかの異常所見が指摘されており、異常が見つかることは珍しいことではありません。(※1)
この記事では、再検査と精密検査の違い、再検査になる主な理由、受診前に知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。正しい知識を持てば、過度に心配することなく、自分の体と向き合うきっかけにもなるでしょう。
健康診断結果の再検査・精密検査の違い
健康診断では、体調や食事などの影響で一時的に数値が高くなることがあります。そのため、まず同じ検査をもう一度行い、本当に異常があるのかを確かめるのが「再検査」です。
数値の異常が続いたり、病気の可能性が高いと判断されたりした場合に行うのが「精密検査」になります。CTや内視鏡などを使い、原因や病気の有無を詳しく調べます。
それぞれの検査には、以下のように目的や内容、医師の考えに明確な違いがあります。
| 項目 | 再検査 | 精密検査 |
| 目的 | 数値が一時的か確認する | 原因や病気の有無を特定する |
| 検査内容 | 血液・尿検査など(健診と同じ) | 詳細な血液検査、CT・MRI・内視鏡など専門的な検査 |
| 医師の意図 | 念のため確認する | 詳しく調べて診断を確定する。早期治療を実施する。 |
早期に医師の判断を仰ぐことが、ご自身の健康を守る第一歩となります。
健康診断で再検査になる主な理由
ここでは、健康診断で再検査になる主な理由について見ていきましょう。
再検査・精密検査と判定された項目がある
再検査・精密検査と判定された場合は、現時点で何らかの異常が疑われているサインです。すぐに大きな病気とは限りませんが、放置せずに確認することが大切です。この判定が出るのは、次のようなケースが多く見られます。
- 血糖値、コレステロール、尿酸値などが基準値を超えている
- 肝機能や腎機能に異常が見られる
- 血圧が高い、または心電図に乱れがある
- X線やエコーで影が見つかった
- 心電図検査で異常がみられた
これらの項目で異常があった場合、医師は状況に応じて「再検査」または「精密検査」と判断します。どちらの判定も「体の変化を早めに見つけるためのチャンス」です。自己判断で放置せず、医師の案内に沿って受診しましょう。
判定区分B〜Eに該当し異常の可能性がある
健康診断の結果は、健康状態をわかりやすく示すため、多くの場合A〜Eのアルファベットで評価されます。判定区分と状態の目安は、以下の表のとおりです。
| 判定 | 状態の目安 | 医師からのメッセージと推奨される対応 |
| A | 異常なし | 健康状態です。現在の良い生活習慣を続けましょう。 |
| B | 軽度異常 | 今すぐ治療は不要ですが、将来の病気のリスクが少しあります。生活習慣を見直す良い機会です。 |
| C | 再検査 | 異常が一時的かを確認する必要があります。3〜6か月後など、指定された時期に再検査を受けましょう。 |
| D | 精密検査 | 病気が隠れている可能性があります。放置せず、速やかに専門の医療機関で詳しい検査を受けてください。 |
| E | 治療中 | 現在治療を受けている項目です。引き続き、かかりつけ医の指示に従って治療を継続してください。 |
注意が必要なのは、CとDの判定です。
B(軽度異常)は生活習慣改善のきっかけですが、CやDは、医師が詳しく調べる必要があると判断したサインです。放置せずに医療機関を受診することが、ご自身の健康を守るうえで重要です。
ただ、健康診断を実施する医療機関によっては、判定区分がさらに詳細に別れる場合があります
血圧・血糖・脂質などが基準値を超えている
血圧・血糖・脂質の数値が基準値を超えるのは、生活習慣の乱れが体に負担をかけているサインです。
これらの数値が高い状態を放置すると、動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気を引き起こす可能性があります。自覚症状がほとんどないまま進行するため、「サイレントキラー」とも呼ばれています。
主な原因は、塩分や脂質の多い食事、運動不足、飲酒や喫煙、ストレスなど、日常生活の積み重ねです。再検査の通知を受けたときは、単に数値を気にするのではなく、生活習慣を見直すきっかけにしましょう。
早めに改善に取り組むことで、体の回復や将来の病気予防につながります。
放置すると病気に進行するリスクが高い
健康診断で見つかる異常の多くは、病気の初期段階であり、この時点では症状がないことが多いです。しかし、体の中では静かに病気が進行している可能性があります。
放置することで以下のような病気が進行するリスクがあります。
| 健康診断で見つかった異常 | 進行後の病気 |
| 高血圧 | ・脳卒中 ・心筋梗塞 ・大動脈瘤破裂 ・腎不全 |
| 糖尿病(高血糖) | ・網膜症による失明 ・腎不全による人工透析 ・神経障害によるまひ、足の切断 |
| 脂質異常症 | ・心筋梗塞 ・狭心症 ・脳梗塞 |
| 便潜血陽性 | 大腸がん |
| 胸部X線異常影 | ・肺がん ・肺結核 |
| 肝機能異常 | ・脂肪肝 ・肝硬変 ・肝がん |
健康診断の再検査は、これらの病気を未然に防いだり、手遅れになる前に治療を始めたりするための機会です。医療機関を受診することが、ご自身の未来の健康、大切なご家族との時間を守ることに直結します。
健康診断の再検査前に知っておきたい4つのポイント
健康診断の再検査前に知っておきたいポイントは以下の4つです。
- 検査を受ける医療機関の選び方
- 検査項目別に適した診療科の確認
- 費用の目安と健康保険の適用範囲
- 再検査当日の流れと注意点(食事・服装・持ち物)
検査を受ける医療機関の選び方
再検査を受ける医療機関をどこにするかは、その後の診断や治療の流れを大きく左右します。検査設備や医師の専門性、普段の通いやすさなどを考慮して選ぶことが大切です。
以下の表でそれぞれの特徴を確認してみましょう。
| 医療機関の種類 | メリット | デメリット・注意点 |
| かかりつけ医 | ・普段の体調や生活習慣を理解しており、変化を判断しやすい ・信頼関係があるため相談しやすく、必要に応じて専門医を紹介してもらえる | ・CTやMRIなどの専門的な検査機器がない場合がある ・専門外の項目は別の医療機関を紹介されることもある |
| 健康診断を受けた医療機関 | ・健診データがすでにあるため、説明がスムーズ ・どの診療科を受けるべきか案内してもらいやすい | 専門医がいない場合や、精密検査に必要な設備が整っていないことがある |
| 専門のクリニック・総合病院 | ・専門医が在籍し、CTや内視鏡など高度な検査が可能 ・診断から治療まで一貫して受けられることもある。 | ・紹介状が必要な場合があり、待ち時間が長い傾向 ・初診料が高くなることもある |
基本的には、まずかかりつけ医に相談するのがおすすめです。まだいない場合は、健康診断を受けた医療機関に問い合わせてみましょう。必要に応じて、専門病院への紹介を受けることを推奨しています。
検査項目別に適した診療科の確認
健康診断の結果票には、どの項目で異常が指摘されたかが記載されています。その項目に応じて、専門とする診療科は異なるため、適切な診療科を受診することが大切です。
以下の表を参考に、ご自身の結果に合った診療科を確認してください。
| 異常が指摘された検査項目 | 受診が推奨される診療科 | 主に調べる病気や状態 |
| 胸部X線(レントゲン) | 呼吸器内科 | ・肺がん ・肺炎 ・肺結核 ・気管支炎 |
| 便潜血検査 | 消化器内科 | ・大腸がん ・大腸ポリープ ・痔 |
| 肝機能(AST,ALT,γ-GTP) | ・消化器内科 ・肝臓内科 | ・脂肪肝 ・ウイルス性肝炎 ・アルコール性肝障害 ・薬剤性肝障害 |
| 腎機能(クレアチニン,eGFR) | ・腎臓内科 ・泌尿器科 | ・慢性腎臓病(CKD) ・腎炎 |
| 血糖値、HbA1c | ・糖尿病内科 ・内分泌内科 | ・糖尿病 |
| 血圧 | 循環器内科 | ・高血圧症 ・心臓や血管への負担(心肥大など) |
| 脂質(コレステロール、中性脂肪) | ・循環器内科 ・内分泌内科 | ・動脈硬化の進行 |
| 尿検査(尿蛋白,尿潜血) | ・腎臓内科 ・泌尿器科 | ・腎炎 ・結石 ・膀胱炎 |
複数の項目で異常が見つかったり、どの診療科に行くべきか判断に迷ったりする場合は、幅広い領域を横断的に診察しましょう。まずは必要な専門科へつなぐ役割を担っている総合診療科を受診するのがおすすめです。
費用の目安と健康保険の適用範囲
健康診断の結果に基づいて行われる再検査や精密検査は、「病気の疑い」に対する診察とみなされるため、原則として健康保険が適用されます。
検査の種類と自己負担額の目安は以下のとおりです。
| 検査の種類 | 自己負担額の目安(3割負担の場合) |
| 血液検査 | 約2,000~3,000円 |
| 尿検査 | 約500~1,000円 |
| 胸部CT検査 | 約5,000~8,000円 |
| 腹部超音波(エコー)検査 | 約1,500~2,500円 |
| 上部消化管内視鏡(胃カメラ) | 約4,000~15,000円(鎮静の有無、組織検査の有無による) |
| 心電図 | 約500~1,000円 |
再検査当日の流れと注意点(食事・服装・持ち物)
再検査当日は、受付を済ませたあとに問診があり、その後で診察と必要な検査が行われ、最後に結果の説明を受けます。
食事については、指定された絶食時間を必ず守ってください。水や無糖のお茶は飲めますが、ジュースや牛乳、砂糖入りの飲み物は検査に影響するため避ける必要があります。
服装は、腕をまくりやすく、上下が分かれたものを選ぶとスムーズに検査を受けられます。
持ち物としては、健診結果票、保険証(またはマイナンバーカード)、診察券、お薬手帳、紹介状を忘れないようにしてください。支払い方法が限られている医療機関もあるため、現金を持っていくと安心です。
再検査後に気をつけたいこと
再検査後は結果をどう受け止め、どのように生活を整えていくかが大切です。ここでは、再検査後に意識したいポイントを解説します。
結果を受けたあとの過ごし方・不安との向き合い方
再検査で「異常なし」と言われた場合でも、今の健康を維持するために生活習慣を整える意識を持ちましょう。健康診断は、今の生活を振り返るきっかけでもあります。
「要経過観察」とされた場合は、医師が指定する時期に再受診することが重要です。数値の変化を見ながら、食事や運動、睡眠など日常の習慣を少しずつ改善していきましょう。
治療が必要と判断された場合は、医師の説明をもとに、どのような治療が必要なのかを確認することが大切です。早い段階で問題が見つかれば、選択できる治療の幅も広く、早期治療につながります。
検査結果に応じて生活習慣を見直す
検査結果に応じて、生活習慣を見直すときのポイントは以下のとおりです。
| 項目 | なぜ重要か | 見直すべきポイント |
| 食生活 | 血圧・血糖・脂質に関わるため | ・減塩 ・野菜から食べる(ベジファースト) ・週に2日以上の休肝日を設ける |
| 運動習慣 | 運動は、血圧を下げ、血糖値をコントロールするインスリンの働きを助けるため | ・今より10分多く歩く ・軽い筋トレを週2回 ・1日1万歩 |
| 睡眠 | 睡眠不足は、血圧を上げる交感神経を高め、食欲を増進させるホルモンバランスを乱すため | ・就寝・起床時間を一定にする ・寝る前のパソコンや、スマートフォン操作を控える |
| 禁煙 | 動脈硬化を進行させるため | ・禁煙開始日を決める ・禁煙外来を頼る |
かかりつけ医は、あなたの病気の治療だけでなく、生活習慣改善をサポートします。生活で気になる点があれば相談してみましょう。
まとめ
再検査や精密検査という結果は、ご自身の健康と向き合うための大切なサインです。自覚症状がないからといって自己判断で放置してしまうのは危険です。
再検査は病気を未然に防いだり、手遅れになる前に治療を始めたりするための機会と捉え、医療機関を受診してください。
どこへ行けば良いか迷ったときは、まず普段の体調をよく知るかかりつけ医に相談するといいでしょう
参考文献
- 厚生労働省「定期健康診断実施結果報告」
