「食後にズボンがきつくなる」「お腹がパンパンに張って苦しい」などの腹部膨満感を、「いつものことだから」と軽く考えていませんか。腹部膨満感は、単なるガスだまりだけでなく、胃がんや大腸がん、婦人科系の病気が隠れている重要な警告サインかもしれません。
この記事では、お腹が張るさまざまな原因を徹底解説します。すぐに試せるセルフケアから、命に関わる病気の見分け方までを知り、正しく対処しましょう。
腹部膨満感の原因
「お腹が張って苦しい」「食後にズボンがきつくなる」などのお腹の張りは腹部膨満感と呼ばれます。多くの方が経験する症状ですが、原因はさまざまです。
原因は大きく、ガスが溜まっているだけのケースと疾患が隠れているケースの2種類に分けられます。
①ガスだまり
腹部膨満感の主な原因の一つが、腸にガスが過剰に溜まる状態です。(※1)
ガスが溜まる仕組みは、主に以下の2つが考えられます。
| ガスが溜まる原因 | 内容 | 原因 |
|---|---|---|
| 空気を飲み込む(呑気症・空気嚥下症) | 無意識に唾液と一緒に空気を飲み込み、げっぷとして出し切れなくなる | ・早食い、よく噛まずに飲み込む ・麺類を勢いよくすする ・炭酸飲料をよく飲む ・ストレスや不安で歯を食いしばる ・会話しながら食事をする |
| 腸内でガスが発生 | 腸内環境の乱れで悪玉菌が増え、食べ物が異常発酵する | ・腸内細菌のバランスが悪化 ・ガスを発生しやすい特定の食品(豆類、イモ類、野菜、乳製品など)の摂りすぎ |
②疾患
慢性的なお腹の張りや、ほかの症状も伴う場合、単なるガスだまりではなく、何らかの病気のサインかもしれません。腹部膨満感は、体が発する重要な警告の可能性があります。
| 分類 | 疾患の例 | 特徴・お腹が張る原因 |
|---|---|---|
| 消化器系(機能性の病気) | ・過敏性腸症候群(IBS) ・機能性ディスペプシア(FD) | 内視鏡などで異常は見つからないが、胃腸の働きが悪く、ガスが溜まりやすい |
| 消化器系(器質的な病気) | ・便秘 ・腸閉塞 ・胃がん ・大腸がん | 臓器に腫瘍・狭窄などの明らかな異常があることで腸の通り道が狭くなり、ガスや内容物が溜まる |
| 婦人科系の病気 | ・子宮筋腫 ・卵巣嚢腫 | 子宮や卵巣の腫れ・腫瘍で腸が圧迫される |
| その他の病気 | ・肝硬変 ・心不全 ・腎臓病など | 体内の水分バランス異常で腹腔内に液体(腹水)がたまり、お腹が膨れる |
腹部膨満感の原因は多岐にわたります。症状が長引いたり、腹痛や体重減少などほかの症状があったりする場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
腹部膨満感から考えられる病気
腹部膨満感はありふれた症状ですが、以下の7つのような病気が隠れている可能性があります。
- ①過敏性腸症候群(IBS)
- ②腸閉塞
- ③急性胃腸炎
- ④逆流性食道炎
- ⑤機能性ディスペプシア
- ⑥胃がん・大腸がん
- ⑦子宮筋腫・卵巣嚢腫など婦人科系の病気
①過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群(IBS)は、腹部膨満感から考えられる病気の一つです。大腸カメラなどの検査では明らかな異常が見つかりませんが、腹痛やお腹の不快感が慢性的に続きます。便秘や下痢を繰り返すなど、排便に関する悩みを伴うことが多い病気です。
IBSになる背景には、ストレスによる自律神経の乱れが深く関わっています。近年の研究では、腸内細菌バランスの乱れも原因の一つとされています。(※2)
腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス)とは、腸内の善玉菌(ビフィズス菌など)が減り、悪玉菌が増える状態です。このバランスの乱れが、腸の動きや知覚に影響を与え、生活の質(QOL)を大きく下げます。
②腸閉塞
腹部膨満感から考えられる病気の一つに、腸閉塞があります。
腸閉塞は、腸の中が物理的に、あるいは機能的に塞がってしまう状態です。腸が塞がると、食べ物や消化液、ガスなどが腸を通過できなくなるため、お腹がパンパンに張り、以下のような症状が現れます。
- 我慢できないほどの、差し込むような激しい腹痛
- 吐き気や、実際に食べたものを吐いてしまう
- 便やおならが全く出なくなる
腸閉塞の原因として多いのは、過去に受けたお腹の手術による腸の癒着です。(※3)ほかにも、大腸がんなどの腫瘍が原因で腸が塞がれることもあります。
腸閉塞は命に関わることもある危険な病気です。絶対に放置せず、夜間や休日でもためらわずに医療機関を受診してください。
③急性胃腸炎
ウイルスや細菌の感染によって、胃や腸の粘膜に急性の炎症が起こる急性胃腸炎も、腹部膨満感の原因です。一般的にお腹の風邪や食あたりとも呼ばれ、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などが主な症状です。
ウイルスや細菌に感染すると、腸の動きが一時的に悪くなるため、ガスが溜まりやすくなります。その結果、腹部膨満感を伴うことも少なくありません。原因となる病原体には、以下のように季節によって流行の違いが見られます。
| 季節 | 流行しやすいウイルス、細菌の例 |
|---|---|
| 冬場 | ・ノロウイルス ・ロタウイルス |
| 夏場 | ・サルモネラ菌 ・カンピロバクター |
治療の基本は、胃腸を休ませるための安静とこまめな水分補給です。特に高齢の方やお子さんは脱水になりやすいため、注意が必要です。水分が全く摂れないほど症状がひどい場合は、点滴治療が必要になります。
④逆流性食道炎
逆流性食道炎は、強い酸性の胃液や胃の中の食べ物が食道へ逆流する病気であり、腹部膨満感の原因です。逆流性食道炎になると、食道の粘膜が胃酸によって傷つき、炎症(ただれ)が起こり、胸やけや酸っぱいものがこみ上げてきます。
胸焼けなどの症状に加え、胃の働き自体が弱まることもあるため、胃もたれや腹部膨満感を覚える方もいます。
食後すぐに横になったり、ベルトでお腹を強く締め付けたりすると、逆流性食道炎になりやすく、注意が必要です。加齢や肥満、姿勢の悪さも、原因の一つとして挙げられます。
⑤機能性ディスペプシア
腹部膨満感があるものの、胃カメラ検査をしても胃潰瘍やがんのような明らかな異常がない方は機能性ディスペプシアかもしれません。機能性ディスペプシアは慢性的に胃もたれやみぞおちの痛みが続く病気で、食後のお腹の張りや、すぐに満腹になる症状が現れます。
機能性ディスペプシアは、胃の運動機能や知覚に問題が生じることで起こります。近年では、胃の神経筋疾患(GNDs)の一つとして捉えられており、具体的には以下のような不調が起きている状態です。
| 胃の異常 | 内容 |
|---|---|
| 胃の運動機能の低下 | 食べた物を十二指腸へスムーズに送り出せない |
| 胃の拡張不全 | 食事の際に、胃が食べ物を受け入れるために十分に広がらない |
| 胃の知覚過敏 | 通常では気にならない程度のガスの存在や胃の動きに、不快感や痛みを感じてしまう |
これらの異常には、ストレスや不規則な生活による自律神経の乱れが大きく影響しています。
⑥胃がん・大腸がん
長く続く腹部膨満感は、悪性腫瘍のサインである可能性も否定できません。胃がんや大腸がんは、初期の段階では自覚症状がほとんどないことが多いです。そのため、お腹の張りは、検査を受けるきっかけとなる重要な症状です。
がんが進行すると、以下のような仕組みで腹部膨満感を引き起こします。
| 分類 | 原因 |
|---|---|
| 消化機能の低下 | がんの影響で胃腸の働きそのものが弱まる |
| 通過障害 | がんが大きくなり、食べ物や便、ガスの通り道を物理的に狭くする |
| 通過障害 | がんがお腹の中に散らばると(腹膜播種)、お腹に水が溜まる |
お腹の張りに加え、以下のような症状がある場合は特に注意が必要です。
- 原因不明の体重減少
- 食欲がわかない
- 便に血が混じる、あるいは便が黒い
- 健康診断で貧血を指摘された
- 以前より便が細くなった気がする
これらのサインを見逃さず、早めに消化器内科で詳しい検査を受けましょう。
⑦子宮筋腫・卵巣嚢腫など婦人科系の病気
女性の場合、腹部膨満感の原因は消化器だけとは限りません。子宮や卵巣などの婦人科系の臓器の病気が原因の可能性も考えられます。例えば、子宮筋腫や卵巣嚢腫が代表例です。
大きくなった腫瘍が、物理的に腸を外から圧迫することがあります。その結果、便通が悪くなったり、ガスが溜まりやすくなったりし、お腹がぽっこりと出て、膨満感として自覚することもあります。
消化器の症状に加えて、次のような症状があれば婦人科の病気が疑われます。
- 月経痛がだんだんひどくなってきた
- 経血の量が増えた、レバー状の塊が出る
- 月経以外の時期に出血がある(不正出血)
- 下腹部痛や腰痛がある
- トイレが近くなった、便秘がちになった
特に、過去に子宮筋腫などの診断を受けたことがある方は注意が必要です。まれな疾患の可能性も視野に入れる必要があるため、定期的な経過観察が大切です。消化器内科で異常がないといわれた場合は、一度婦人科を受診することをおすすめします。
腹部膨満感を和らげるセルフケア
ここでは、ご自宅で無理なく試せる腹部膨満感のセルフケアとして、以下の方法を紹介します。
- 整腸薬・ガス駆除薬を飲む
- 消化に良い食事を摂る
- 規則正しい生活とストレス対策を行う
これらの方法は、あくまで一時的な症状緩和や体質改善を目的としたものです。試しても改善しない、あるいは悪化するなら、自己判断を続けず、医療機関を受診してください。
整腸薬・ガス駆除薬を飲む
お腹の張りが気になるときは、市販薬を上手に活用するのも選択肢の一つです。薬局やドラッグストアでは、さまざまな種類の薬が販売されています。それぞれの薬の働きは、以下のとおりです。
| 薬の種類 | 主な成分 | 作用の仕組み | 期待できる効果・特徴 |
|---|---|---|---|
| 整腸薬 | 乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌など | 腸内の善玉菌を補い、腸内フローラのバランスを整える | 腸内環境の改善により、悪玉菌の増殖やガス発生を抑える |
| ガス駆除薬(消泡剤) | ジメチルポリシロキサンなど | ガスの泡の表面張力を下げて合体させ、排出を促す | 腸内のガスを物理的に除去し、張りを直接的に軽減 |
| 漢方薬・ハーブ | 六君子湯、半夏瀉心湯などの漢方ペパーミント、フェンネルなどのハーブ | 胃腸の動きやガスへの耐性を整え、体質から改善を目指す | 胃腸の機能を総合的に調整し、膨満感や不快感を軽減 |
市販薬は腹部膨満感を和らげられますが、漫然と使い続けるのは避けましょう。症状が続く場合は、背景に病気が隠れているサインかもしれません。まずは薬剤師に相談し、改善しない場合は消化器内科を受診してください。
消化に良い食事を摂る
腹部膨満感を和らげるためには、胃腸に負担をかけない食べ方と食べ物を意識することが大切です。
早食いは、食べ物と一緒に余計な空気を飲み込み、ガスだまりに直結する原因になります。一口ずつよく噛み、時間をかけてゆっくりと食事を楽しみましょう。一度に満腹まで食べず、腹八分目を心がけることも胃腸の負担軽減におすすめです。
お腹の張りが気になるときは、ガスを発生させやすい食品を避けるのが賢明です。ご自身の体調を観察しながら、お腹に優しい食事を心がけてみてください。
| 避けたほうが良い食品の例 | 消化に優しい食品の例 |
|---|---|
| 炭酸飲料、ビール、人工甘味料 | 水、麦茶、ハーブティー |
| 豆類、ごぼう、玉ねぎ、イモ類 | 大根、かぶ、ほうれん草、白菜 |
| ラーメン、揚げ物、脂身の多い肉 | うどん、おかゆ、鶏のささみ、白身魚 |
| 牛乳、ヨーグルト(乳糖不耐症の場合) | 豆腐、豆乳、味噌などの発酵食品 |
揚げる・炒めるといった油を多用する方法は、消化に時間がかかるため、煮る・蒸す・茹でるなどの方法で調理しましょう。
規則正しい生活とストレス対策を行う
規則正しい生活とストレス対策も、腹部膨満感を和らげる対策です。
胃腸の働きは、自律神経によって繊細にコントロールされています。自律神経は、活動モードの交感神経と休息モードの副交感神経から成り、ストレスや不規則な生活でバランスが乱れると、胃腸の機能はすぐに低下します。
まずは、乱れがちな生活リズムを整えることから始めましょう。生活リズムを整えられる対策を以下の表にまとめました。
| 対策 | 具体的な方法 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 十分な睡眠をとる | 毎日なるべく同じ時間に就寝・起床する | 自律神経のバランスをリセットし、胃腸機能を回復 |
| 決まった時間に食事を摂る | 朝・昼・夜の食事時間を一定に保つ | 胃腸の体内時計を整え、消化リズムを安定させる |
| 排便の習慣をつける | 毎朝トイレに座るなど、便意がなくても習慣化 | 腸が規則正しく動くリズムを作る |
| 適度な運動 | ウォーキングやストレッチなど軽い運動を取り入れる | 腸を刺激して動きを活発にし、血行を促進 |
| リラックスする時間を作る | ぬるめの入浴・音楽・深呼吸など | 副交感神経を優位にし、胃腸をリラックス状態に導く |
| お腹のマッサージ | 仰向けでおへその周りを時計回りに「の」の字を描く | 腸の動きを促し、ガスや便の排出を助ける |
腹部膨満感で受診が必要なサイン
ほとんどの腹部膨満感は一時的なものですが、なかには病気が隠れているサインの場合もあります。いつもと違う症状や、お腹の張り以外にも気になる症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。
ここでは、特に注意が必要な危険信号として、以下の4つのサインを詳しく解説します。
- ①激しい腹痛や突然の体重減少
- ②嘔吐・血便・黒色便がある
- ③発熱や強い倦怠感を伴う
- ④数週間以上続く慢性的な膨満感
①激しい腹痛や突然の体重減少
腹部膨満感に加えて、これまで経験したことのないような激しい腹痛がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。特に、冷や汗が出たり、動けなくなったりするほどの痛みは、腸閉塞や腹膜炎など、緊急手術が必要な病気の可能性があります。
食事制限や運動をしていないのに、急に体重が減ってきた場合も注意が必要です。意図しない体重減少は、胃がんや大腸がんといった消化器系のがんや、その他の消耗性の病気が隠れているサインかもしれません。(※4)
がんが進行すると、消化吸収機能が低下したり、気づかないうちに出血して貧血になったりすることで、体重が減少することがあります。
特に注意したい危険信号を以下の表にまとめています。
| 危険なサイン | 具体的な症状 |
|---|---|
| 我慢できないほどの激しい腹痛 | 差し込むような痛みが、波のように繰り返し襲ってくる |
| お腹が板のように硬くなる冷や汗や吐き気を伴う腹痛 | 押してもへこまないほど、お腹全体がカチカチに張っている |
| 冷や汗や吐き気を伴う腹痛 | 痛みだけでなく、全身症状として現れている |
| 特別な理由なく、ここ数か月で急に体重が減った | ダイエットをしていないのに、ズボンがゆるくなった |
これらの症状が一つでも当てはまる場合は、放置せずにすみやかに消化器内科などを受診しましょう。夜間や休日であれば、救急外来の受診もためらわないでください。
②嘔吐・血便・黒色便がある
腹部膨満感とともに嘔吐が続く場合、食べたものが腸で詰まってしまう腸閉塞の可能性があります。何度も吐くことで体内の水分と電解質が失われ、脱水症状を引き起こす危険もあり注意が必要です。
便に血が混じる血便や、便が黒くなる黒色便も、消化管のどこかで出血が起きている重要なサインです。大腸がんや大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などが考えられます。
消化管からの出血が続くと、体は徐々に貧血状態になります。貧血が進行することで、めまいや立ちくらみ、動悸、息切れなどの症状も現れます。
嘔吐や便の色の異常に気づいたら、消化管からの危険信号と捉え、すぐに医療機関を受診してください。
③発熱や強い倦怠感を伴う
お腹の張りに加えて、37.5度以上の熱が出たり、体が鉛のように重く感じるほどの強い倦怠感があったりする場合も、医療機関での受診が必要です。これらの症状は、体の中で何らかの感染や炎症が起きているサインと考えられます。
例えば、ウイルスや細菌による急性胃腸炎では、腹痛や下痢、嘔吐とともに発熱を伴うことがあります。また、胆嚢炎(たんのうえん)や憩室炎(けいしつえん)といった、お腹の中の臓器で炎症が起きている可能性も考えられます。
単なる風邪だと思って市販の解熱剤で様子を見ていても、原因となっている病気が治らない限り、症状は改善しません。むしろ、治療が遅れることで重症化してしまう恐れもあります。
特に、高齢の方は症状がはっきりと現れにくく、微熱や倦怠感だけがサインということも少なくありません。お腹の張りと一緒に発熱や強いだるさが続く場合は、内科や消化器内科を受診し、原因を調べてもらいましょう。
④数週間以上続く慢性的な膨満感
お腹の張りが数週間以上も続いている場合は、何らかの原因が隠れている可能性があるため医療機関を受診しましょう。
慢性的な腹部膨満感の原因としては、IBSや機能性ディスペプシアのように、ストレスや生活習慣が関わる病気が考えられます。これらの病気は命に直接関わるものではありませんが、つらい症状が続くことでQOLを大きく下げてしまいます。
見逃してはならないのが、胃がん、大腸がん、卵巣がんなどの悪性腫瘍で、がんの初期症状として腹部膨満感が現れることがあります。特に、食欲不振や便秘、下痢などを伴う場合は注意が必要です。
検査をすることで、がんなどの重篤な病気を早期に発見できる可能性があります。つらい症状を我慢せず、専門医に相談することが、的確な診断と治療につながります。
医療機関での腹部膨満感の検査・治療内容
ここでは、腹部膨満感が見られたときの医療機関での検査方法や治療法を解説します。
検査内容
腹部膨満感の原因は多岐にわたるため、以下のような検査で原因を正確に特定することが重要です。
| 検査 | 内容 | 調べられること | 補足 |
|---|---|---|---|
| 問診・身体診察 | ・症状の経過や生活習慣、便通・食事内容などを詳しく確認 ・聴診や触診でお腹の状態をチェック | 腸の動き、ガスの有無、圧痛(痛みの場所)などを把握 | 最初に行う基本的な診察で、症状の方向性を見極める鍵になる |
| 血液検査 | 体の状態を数値で評価する基本的な検査 | 炎症・貧血・肝臓・腎機能などを確認し、消化管出血の可能性を見つける手がかりにする | 体全体の健康状態を把握できるが、重度の貧血には要注意 |
| 腹部エコー(超音波)検査 | 超音波でお腹の中をリアルタイムに観察 | ・肝臓や胆のう、腸内ガス、腹水などを確認 ・女性では子宮筋腫や卵巣疾患も評価可能 | 痛みや放射線被ばくがなく、安全性が高い |
| レントゲン検査 | X線でお腹の構造を撮影 | 腸内ガスの分布、腸閉塞の有無を大まかに確認 | 短時間で広範囲を把握可能で、初期スクリーニングに有用 |
| CT・MRI検査 | 体の断面を詳細に撮影 | 小さな病変や腫瘍、臓器の異常を精密に確認 | レントゲンやエコーで不明な場合に行う診断確定に重要な検査 |
| 内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ) | カメラ付きの管で胃や大腸の粘膜を直接観察 | 胃がん・大腸がん・ポリープ・炎症の有無を正確に診断 | 鎮静剤を使うことで楽に検査を受けることも可能 |
治療法
検査で腹部膨満感の原因が特定されたら、薬物療法による原因の除去を行います。薬物療法で使われる主な薬の種類は、以下のとおりです。
| 薬の種類 | 主な働き |
|---|---|
| 整腸剤 | 善玉菌を増やし、乱れた腸内環境のバランスを整える |
| 消化管運動機能改善薬 | 胃腸の動きを活発にし、消化を助け、ガスの排出を促す |
| 消化酵素薬 | 食べ物の消化や吸収がうまくいかない場合に、その働きをサポートする |
| 胃酸分泌抑制薬 | 逆流性食道炎など、胃酸の分泌が過剰な場合に処方される |
| 神経調節薬 | 機能性ディスペプシアなど、脳と腸の過敏な信号伝達を調整する薬 |
薬による治療と並行して、食事療法・生活習慣の改善も重要です。医師だけでなく、管理栄養士などの専門家と連携しながら指導を行います。
腸閉塞や大きな腫瘍、がんなどの病気が見つかった場合は、手術を行うことがあります。専門の医療機関を受診し、医師の指示に従いましょう。
まとめ
お腹の張りは、食生活やストレスが原因のことも多いですが、胃がんや大腸がん、婦人科系の病気などの重大な病気のサインである可能性も忘れてはいけません。
まずは、食事や生活習慣を見直すなどのセルフケアから始めてみましょう。しかし、激しい痛みや体重減少などの危険なサインがある場合や、症状が長引くようであれば、我慢しないでください。
自分の体の小さなサインを見逃さず、不安なときは早めに消化器内科などの専門医に相談することが大切です。腹部膨満感がある方は、気軽に近くの医療機関を訪問してください。
参考文献
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases:「Symptoms & Causes of Gas in the Digestive Tract」.
- Lin Wang, Nuha Alammar, Rajdeep Singh, Julie Nanavati, Yiran Song, Rahul Chaudhary, Gerard E Mullin.Gut Microbial Dysbiosis in the Irritable Bowel Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis of Case-Control Studies.J Acad Nutr Diet,2020,120(4),565-586.
- Pradeep Ghimire, Shailesh Maharjan.Adhesive Small Bowel Obstruction: A Review.JNMA J Nepal Med Assoc,2023,61(260),390-396.
- Brian D Nicholson, Willie Hamilton, Constantinos Koshiaris, Jason L Oke, F D Richard Hobbs, Paul Aveyard.The association between unexpected weight loss and cancer diagnosis in primary care: a matched cohort analysis of 65,000 presentations.Br J Cancer,2020,122(12),1848-1856.