健康診断で「血圧が高め」と指摘されたことはありませんか。高血圧は自覚症状がほとんどないため「サイレントキラー」とも呼ばれ、気づかないうちに心臓病や脳卒中といった深刻な病のリスクを高めます。
この記事では、体内の余分な塩分を排出する働きを持つ「カリウム」に焦点を当て、高血圧対策と日々の食事で上手に取り入れる具体的な方法を詳しく解説します。
カリウムは多くの食品に含まれており、日常の食事に取り入れるのは難しくありません。ご自身やご家族の健康のために、適切な摂取量や方法を知りましょう。
高血圧とは?
血圧とは、心臓が血液を全身に送り出す際に、血管の壁にかかる圧力のことです。この圧力が、常に基準値よりも高い状態が続くことを「高血圧」と呼びます。症状がないからと安心していると、気づかないうちに血管に負担がかかり続けます。
高血圧について、以下の3つについて解説します。
①原因
高血圧の原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って起こります。高血圧の原因は、ほとんどが特定できません。高血圧の約90%は、特定の原因が明確でない『本態性高血圧』です。(※1)
高血圧の要因となる生活習慣は、以下の6つです。
- ● 塩分(ナトリウム)の摂りすぎ
- ● 肥満
- ● 運動不足
- ● ストレス
- ● アルコール
- ● 喫煙
生活習慣以外で高血圧となる要因は、他の病気が原因で起こる「二次性高血圧」です。腎臓の病気やホルモンの異常などが原因で、血圧が高くなります。生活習慣を改善しても血圧が下がらない場合は、このような病気が隠れていないか調べることが重要です。
②症状
高血圧の最も注意すべき点は、初期段階では自覚症状がほとんどないことです。血圧がかなり高い状態でも、本人は気づかずに生活していることが少なくありません。ただし、高血圧が進行したり、急激に血圧が上昇したりすると、以下のような症状が現れることがあります。
高血圧で起こりうる症状は、以下の5つです。
- ● 頭痛、頭が重い
- ● めまい、ふらつき
- ● 肩こり
- ● 耳鳴り
- ● 動悸、息切れ
疲労などでも起こる症状が多く「いつものことだから」と自己判断で済ませてしまうのはとても危険です。症状がないからと高血圧を放置すると、命に関わる重大な合併症を引き起こすリスクを高めます。(※2)
③治療法
高血圧の治療は「生活習慣の改善」と「薬物療法」の2つを柱として進めます。医師は患者さん一人ひとりの血圧の値や年齢、他の病気の有無などを総合的に判断し、最適な治療方針を決定します。
高血圧の治療法を以下の表にまとめました。
| 治療法 | 内容 |
| 生活習慣の改善 | ・食事療法(減塩とカリウム摂取のバランス) ・運動療法(軽めの有酸素運動) ・その他(節酒、禁煙、十分な睡眠とストレス管理など) |
| 薬物療法 | ・血管を広げる薬 ・体内の水分量を調節する薬 |
生活習慣の改善が治療の基本であり、最も重要な部分です。たとえ薬を飲み始めても、自己判断で薬の量を調整したり中断したりせず、必ず医師の指示通りに服用を続けることが大切です。
カリウムが高血圧に効果的な理由
カリウムには血圧を安定させる働きがあります。ここではカリウムの働きやナトリウムとの関係について解説します。
カリウムの働き
カリウムが血圧を下げる効果は、以下の3つのメカニズムによってもたらされます。
- ● 体内の余分な塩分(ナトリウム)を排出する
- ● 血管を広げて血液の流れをスムーズにする
- ● 血管のしなやかさを保ち、高血圧による動脈硬化のリスクを低減する
塩分摂取量の多い人や高血圧の人ほど、カリウムの血圧低下の効果が大きくなります。カリウムは減塩と合わせて摂取することで、より効果的に血圧管理ができます。
ナトリウムとの関係
カリウムとナトリウム(塩分)は体内で互いのバランスを取り合う関係にあり、どちらか一方を過剰摂取すると体や血圧に、以下のような影響が出ます。
| ナトリウム(塩分)を多く摂った場合 | カリウムを多く摂った場合 | |
| 体への影響 | 血液中の水分量が増加し、全体の血液量が増える | 余分なナトリウムと水分を尿として排出する |
| 血圧への影響 | 血圧を上げる方向に働く | 血圧を下げる方向に働く |
日本高血圧学会によると、ナトリウムとカリウムの摂取比率(ナトカリ比)が血圧と強く関連することが明らかになっており、ナトカリ比を低くすることが高血圧・循環器病予防に有効と指摘されています。(※3)
学会では、健康な人におけるナトカリ比が2未満を最適な目標値、4未満を達成可能な目標値として推奨しています。(※4)
高血圧を防ぐために食事から摂る塩分を減らす努力と、野菜や果物からカリウムをしっかり摂る、両方の対策が大切です。
摂りすぎに注意すべき人
カリウムの過剰摂取は、体の状態によって「高カリウム血症」を招く可能性があるため、注意が必要です。
腎臓機能が低下している人や、特定の薬を服用している人はカリウムの摂取に注意が必要です。
高血圧の治療薬の一部(血圧を下げる薬であるACE阻害薬、ARBなど)高血圧の治療薬の一部(ACE阻害薬、ARBなど)や、一部の利尿薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる痛み止めなどには、副作用として体内のカリウム濃度を上げる作用を持つものがあります。
高カリウム血症は、初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると手足のしびれ、脱力感、吐き気などの症状が現れます。重篤な場合には、命に関わる危険な不整脈を引き起こすこともあります。
カリウムを多く含む食品と上手な取り入れ方
ここでは、カリウムを上手に食事へ取り入れるための具体的な方法をご紹介します。
一日の基準摂取量
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、1日あたりのカリウム摂取の目標量を、「成人男性は2,500mg以上、成人女性は2,000mg以上」以上に設定しています。(※5)
世界保健機関(WHO)は、高血圧予防のため、さらに多い1日あたり3,510mg以上のカリウム摂取を推奨しています。(※6)
カリウムが多く含まれる食品
カリウムは、野菜や果物といった植物性の食品に豊富です。
分類ごとにカリウムが豊富な食べ物を表にまとめました。
| 分類 | 食べ物 |
| 野菜類 | ほうれん草、小松菜、かぼちゃ、アボカド、枝豆、たけのこ |
| 果物類 | バナナ、キウイフルーツ、メロン、アボカド、干し柿 |
| いも類 | さつまいも、じゃがいも、里芋、長いも |
| 豆類 | 納豆、大豆、あずき |
| 海藻類 | ひじき、わかめ、昆布、あおのり |
| きのこ類 | しめじ、えのき、しいたけ |
コンビニや外食が中心の方は、お弁当にサラダや和え物、果物を一品追加してみましょう。お味噌汁の具に乾燥わかめを追加するだけでも、手軽にカリウム摂取量を増やすことができます。
調理するときの注意点
カリウムには「水に溶けやすい」という特徴があり、野菜などを茹でたり、長時間水にさらしたりすると、カリウムが水に流れ出てしまうことがあります。
カリウムを多くとるための調理ポイントは、以下の5つです。
- ● 生で食べる
- ● 水を使わない、少ない加熱方法を選ぶ
- ● 煮汁ごと食べる
- ● 水にさらす時間は短くする
- ● 皮ごと調理する
「蒸す」「電子レンジで加熱する」「焼く」「炒める」といった調理法は、茹でるのに比べてカリウムの損失を大幅に減らすことができます。
食べやすいメニュー
毎日無理なくカリウムを食事に取り入れるための、簡単でおいしいメニューをご紹介します。
カリウムが豊富な食材をたくさん入れた具沢山の豚汁や味噌汁、ポトフなど、スープも飲める料理にすると、溶け出したカリウムも摂れるためおすすめです。塩分を控えるために出汁や香辛料を上手に使うように工夫しましょう。
高血圧にならないための予防法
高血圧は、日々の少しの心がけで十分に予防が期待できる病気です。毎日の食事や運動など、生活習慣を一つずつ見直すことが、10年後、20年後のあなたの健康を守るためにも大切です。
ここでは、今日からすぐに始められる高血圧の予防法を4つのポイントに分けて、具体的にご紹介します。
- ① 食生活に気を付ける
- ② 適度な運動をする
- ③ お酒を飲む量を控える
- ④ 禁煙する
①食生活に気を付ける
高血圧にならないために最も重要なのが食生活の見直しです。
食生活で意識するポイントは、以下の6つです。
- ● 麺類の汁は半分以上残すようにする
- ● 醤油やソースは小皿に入れてつける
- ● お酢やレモン汁、香辛料、香味野菜を使い、風味豊かに減塩する
- ● 加工食品や、インスタント食品の頻度を減らす
- ● 食事に野菜や果物、海藻類を必ず一品加える
- ● 煮汁ごと食べられるスープや味噌汁を食べる
塩分の摂取量を減らすこと、カリウムが豊富な食品を摂ることを、同時に行うことが大切です。カリウムを効率よく摂るには、野菜や果物を中心とした食生活を意識しましょう。
②適度な運動をする
運動習慣は、血圧をコントロールするための強力な味方です。高血圧予防には、息が少し弾むくらいの有酸素運動が特に推奨されます。「会話はできるけれど、歌うのは少し難しい」と感じるくらいの強さが目安です。
おすすめの運動と目安は、以下のとおりです。
| 運動の種類 | ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水中運動、ラジオ体操など |
| 運動の目安 | 1回30分以上の運動を週に3〜5日 |
体調が優れない日は、無理せずに休むようにしてください。すでに健康診断などで血圧が高いと指摘されている方は、運動を始める前に必ず主治医に相談し、適切な運動の種類や強度について指導を受けましょう。
③お酒を飲む量を控える
適度な飲酒は血行を良くすることもありますが、過度な飲酒は高血圧の大きな危険因子です。アルコールを飲み続けると、心拍数を増やしたり血管を収縮させるホルモンの分泌を促したりして、慢性的な血圧上昇につながります。
節度ある適度な飲酒量の目安(1日あたり)は、以下のとおりです。
| ビール | 中瓶1本(500ml) |
| 日本酒 | 1合(180ml) |
| ワイン | グラス2杯弱(200ml) |
| ウイスキー | ダブル1杯(60ml) |
週に2日以上はお酒を飲まない「休肝日」を設けることも、肝臓を休ませ、アルコールへの依存を防ぎましょう。
④禁煙する
喫煙は血管と血圧へのダメージが深刻です。タバコに含まれるニコチンは、交感神経を強く刺激し、血管を急激に収縮させます。タバコを1本吸うだけで、血圧が上昇した状態が15分以上も続いてしまうのです。1日に20本吸う方なら、1日のうち5時間以上も、自ら血圧を上げ続けていることになります。
喫煙は血管の内側の壁を傷つけ、血液を固まりやすくして動脈硬化を強力に推し進めます。動脈硬化で血管が硬く狭くなると、心臓はより強い力で血液を送り出さなければならなくなり、高血圧が定着します。
禁煙は、いつから始めても遅すぎることはありません。禁煙を始めると、数時間後には血圧が正常値に近づき始め、長期的には心臓病や脳卒中のリスクが大幅に下がることがわかっています。(※7)
まとめ
カリウムは、体内の余分な塩分(ナトリウム)を体の外へ排出するため、高血圧対策に重要な栄養素です。大切なのは、塩分を控えカリウムを積極的に摂ることです。まずはいつもの食事に、バナナやほうれん草など、カリウムが豊富な野菜や果物を一品プラスすることから始めましょう。
参考文献
- 国立循環器病研究センター 病院 高血圧
- 厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 重症高血圧
- 日本高血圧学会 ナトリウムとカリウムを測って健康に ナトカリ手帳
- 日本高血圧学会 カリウム比(尿ナトカリ比)ワーキンググループコンセンサス
- 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2025年版)ミネラル(多量ミネラル)
- 厚生労働省 生活習慣病秒などの情報 カリウム
一般社団法人 日本循環器学会 禁煙推進部 喫煙の健康影響・禁煙の効果
この記事を監修した医師
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高座渋谷つばさクリニック 院長
武井 智昭
2002年慶応義塾大学医学部卒業。同年より慶応義塾大学医学部病院研修医。2004年から関東の病院・クリニックで、小児科・内科を中心に在宅医療を含めて0歳から100歳まで1世紀を診療するトレーニングを経て、プライマリケア医(家庭医)となる。2020年より現職。