厚生労働省が2023年に発表した「令和4年 歯科疾患実態調査」によれば、歯周病は日本人の2人に1人がかかっている病気です。
歯周病は初期段階では自覚症状がほとんどないまま進行する病気であり、「気づいたときには歯を失う寸前」というケースも少なくありません。
そこで近年注目されているのが、厚生労働省に認可を受けた歯周病治療器であり、重度の歯周病でも歯茎を切らずに治すことを可能とする「Blue Radical P-01」、通称「ブルーラジカル」です。
しかし、ブルーラジカルは新しい治療法であるため、治療費や保険適用の有無、結局総額でいくらかかるのかなど、費用面を気にされる患者さんも多いことでしょう。
本記事ではブルーラジカルの治療費の目安から、保険適用の詳細、そして従来の治療法との費用対効果の比較までを、歯科医療の専門的な視点を交えて解説します。
大切な歯を守るための投資として、ブルーラジカルがご自身に合っているかどうかを判断するための材料になれば幸いです。
目次
ブルーラジカルによる治療は保険適用?
結論から申し上げますと、2025年12月現時点では、ブルーラジカルによる治療は保険適用外の自由診療(自費診療)です。
ブルーラジカル治療に用いられる「Blue Radical P-01」は、2023年7月に厚生労働省から正式に製造販売承認(薬事承認)を取得した、安全性と効果が認められた信頼性の高い医療機器です。
しかし、「製造販売承認」と、税金が投入される保険治療として認められ全国の歯科医院で一律の価格で提供される「保険収載(ほけんしゅうさい)」は異なる手続きであり、保険適用となるには別途国が設ける審査基準を満たさなければなりません。
ブルーラジカルのような新しい技術や高度な医療機器が保険収載されるまでには、多くの臨床実績、費用対効果の検証が求められます。
歯科治療の臨床現場でブルーラジカル治療はスタートしたばかりなので、今後データが蓄積されていった結果、将来的に保険適用となる可能性は大いにあります。
保険適用外であることのメリット
自由診療(自費診療)は保険診療よりも治療費がかさみがちですが、一方で、保険制度における厳しい制約(使用できる薬剤の種類や量、1回あたりの処置時間の制限など)を受けません。
つまり、「保険診療よりも時間をかけた丁寧で質の高い治療」や「通院回数短縮のために1回あたりの治療時間を長くして集中的に治療」といった、患者さんの希望やライフスタイルに合わせた治療計画を立てられるメリットがあります。
ブルーラジカルの治療費の目安

自由診療であるため、ブルーラジカルの治療費は導入している歯科医院が独自に料金を設定しています。
また、患者さんの歯やお口の状態によっても必要な治療は変わってくるので、ブルーラジカルを用いた歯周病の治療費にはばらつきがあります。
ここでは、治療を検討している患者さんに向けて、実際のクリニック選びの参考になるよう、一般的な治療費の相場・目安としての費用を掲載します。
治療費の目安①1歯あたりの単価設定
治療費の相場:1万円~3万円/1歯
特定の歯周ポケットだけが深く、局所的に重度の歯周病が進行している場合に適しています。
「前歯や奥歯の1本だけが気になる」といったケースでは、この設定の方が総額を抑えられる可能性があります。
治療費の目安②ブロック単位の単価設定
治療費の相場:5万円 〜 10万円/1ブロック
口腔内を「右上」「左上」「右下」「左下」の4分割、あるいは前歯を含めた6分割にし、そのエリア内の歯をまとめて治療する設定です。
数本まとめて治療が必要な場合、1本単位で計算するよりも割安になるように設定されている医院が多いです。
治療費の目安③全顎(お口全体)のパッケージ設定
治療費の相場:30万円 〜 50万円以上/全顎
中度〜重度の歯周病は、自覚症状が出ている場所以外にも、口全体に菌が広がっていることがほとんどです。
そのため、部分的な治療ではなく、お口全体の環境を一気に改善するこのプランが推奨されるケースが多いです。
医院によっては、この価格に術後のメンテナンス費用が含まれている場合もあります。
ブルーラジカルを用いた治療費以外にかかる費用は?料金の総額で考えるシミュレーション
歯周病治療では、ブルーラジカルを用いた「照射代」以外にも、各種費用がかかります。
そこで、保険診療を行っている歯科医院で「保険診療(3割負担)で検査等を行った後に自費のブルーラジカルの治療に移行した場合」と、自由診療専門の歯科医院で「完全自費で治療をスタートした場合」の費用をシミュレーションしました。
| 項目 | 保険+自費 | 完全自費 |
| ① 初診料 | 約800円 | 3,000円 〜 3万円(※) |
| ② 検査料 | 3,000円 〜 4,000円 | 1万円 〜 3万円 |
| ③ 術前クリーニング | 1,000円 〜 4,000円 | 5,000円 〜 1万5,000円 |
| A:施術前の初期費用(①+②+③) | 約 5,000円 〜 9,000円 | 約 2万円 〜 7万5,000円 |
| B:ブルーラジカル施術代(全額自費) | 1万円~50万円 | 1万円~50万円 |
| 治療費の総額(A + B) | 2万円~52万円 | 9万円~58万円 |
| 術後のメインテナンス(1回あたり) | 5,000円 〜 1万5,000円 | 5,000円 〜 1万5,000円 |
※クリニックによっては初診料に各種検査料が含まれている場合もあります。
それでは、ブルーラジカルの治療費だけでなく、歯周病治療という大きな枠組みで見たときの費用の目安を項目ごとに見ていきましょう。
治療費以外の費用①初診料
歯周病治療においては、まず初回受診時(1回目の通院時)には、「本当に歯周病なのか?」「どの程度進行しているのか?」といった診断や検査から始まることが一般的です。
そのため、保険診療を行っている歯科医院であれば、ブルーラジカルを初回から用いることはなく、初回受診時にかかる初診料は保険適用となることがほとんどです。
費用の目安は、3割負担で800円程度です。
しかし、自由診療専門の歯科医院の場合、医院ごとに初診料を設定しています。
費用の目安は、数千円(3,000円~5,000円)程度や、1万円~3万円と幅広く、クリニックによって「初診料に検査費を含む」としているところもあります。
歯科医院のHPに掲載されている料金表を必ず確認しましょう。
治療費以外の費用②検査料
ブルーラジカルによる治療が適応となるような中等度~重度の歯周病の場合、正確な処置を行うためにも、事前の検査は欠かせません。
具体的には、レントゲン撮影(パノラマ・CT)、歯周ポケット検査、口腔内写真撮影などを実施します。
保険適用で検査を行う場合は3,000円〜4,000円程度、自費専門の医院で精密検査を行う場合は1万円〜3万円程度(※)かかることがあります。
※クリニックによっては初診料に検査料が含まれている場合もあります。
なお、CT撮影は、骨の吸収度合いを立体的に把握するために非常に重要です。
治療費以外の費用③術前のクリーニング(スケーリング)
ブルーラジカルによる超音波とレーザー照射の効果を最大化するため、治療の前にはクリーニング(スケーリング)が行われます。
歯や歯茎に見えている汚れがあるままだと、せっかくの治療の効果が半減してしまうので、まずは表面についている歯垢(プラーク)や歯石の除去を行います。
これも医院の方針により、保険診療の範囲で行うか、自費のクリーニングコース(PMTCなど)として行うかが異なります。
保険適用の場合は、1回あたり1,000円~4,000円程度ですが、自費の場合は5,000円〜1万5,000円程度を見ておくと良いでしょう。
治療費以外の費用④定期検診の再診料・メインテナンス費用
ここが最も重要なポイントですが、歯周病は「治ったら終わり」の病気ではありません。 糖尿病や高血圧と同じ生活習慣病の一種であるため、油断してケアを怠ると、細菌が再び増殖し、再発するリスクが常にあります。
口腔内の清潔な状態を維持するためのメインテナンスの頻度は、治療直後は経過観察のため1ヶ月に1回、状態が安定してくれば3ヶ月に1回程度の間隔が一般的です。
自由診療のメインテナンス(SPT)の場合、1回あたり5,000円〜1万5,000円程度が相場です。
保険適用のメインテナンスを行っている医院もありますが、その場合は検査や処置の内容に制限がかかります。
「高い治療費を払ったから一生大丈夫」と考えるのではなく、「良い状態を維持するためのスタートラインに立った」と捉え、年間数万円程度のランニングコストも考慮に入れておくことが、長期的に歯を守る秘訣です。
治療費の負担を抑えるための制度と方法

ブルーラジカルは高額な治療ですが、国の制度や民間の金融サービスを賢く利用することで、実質的な経済負担を軽減することができます。ここでは2つの代表的な方法をご紹介します。
医療費控除の活用で税金が還付される
ブルーラジカル治療は、美容整形や審美目的(見た目を良くするためだけ)の治療とは異なり、「歯周病という病気の機能を回復させるための治療」であるため、医療費控除の対象となります。
医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間に、自分や生計を共にする家族のために支払った医療費の合計が10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%)を超えた場合、確定申告を行うことで所得税の一部が還付され、翌年の住民税が安くなる制度です。
デンタルローンの利用という選択肢
「治療は受けたいけれど、一度に数十万円を支払うのは家計的に厳しい」という方のために、多くの歯科医院では「デンタルローン」を取り扱っています。
デンタルローンは、歯科治療費に特化した立替払いサービスです。
一般的なクレジットカードの分割払いやリボ払いに比べて、実質年率(金利)が低く設定されていることが多く(年利3〜5%程度)、支払い回数も24回〜60回、最大で84回など長期で組むことが可能です。
例えば、50万円の治療費を60回払い(5年)にした場合、金利を含めても月々の支払いは1万円以下に抑えられることもあります。
「月々1万円なら、習い事や外食を少し我慢すれば払える」という方も多いのではないでしょうか。
多くの医院で、スマートフォンから簡単に審査の申し込みが可能です。一括払いが難しいからといって治療を諦める前に、デンタルローンの利用が可能かどうか相談してみることを強くお勧めします。
ブルーラジカルによる歯周病治療のデメリットや注意事項(主なリスクと副作用)
ブルーラジカルによる歯周病治療を受けるにあたって、知っておくべきデメリットや注意事項をご覧ください。
【身体的な副作用・リスク】
①知覚過敏(しみる症状)
歯茎の炎症が治まり、腫れが引くことで、歯の根元(象牙質)が露出するため、一時的に水や冷たいものがしみやすくなる場合があります。
②歯肉退縮・ブラックトライアングル
治療によって歯茎の腫れが治まると、歯茎が引き締まって下がったように見えたり、歯と歯の間に隙間(ブラックトライアングル)ができたりすることがあります。
これは歯周病が治癒していく過程の正常な反応ですが、見た目の変化や食べ物が詰まりやすくなる等のデメリットを感じることがあります。
③治療中・治療後の痛み
低侵襲(体に優しい)治療ではありますが、炎症が強い部位への処置では痛みを感じることがあります。
その際は局所麻酔を使用します。また、治療後数日間は、痛みや違和感が残る場合があります。
④一時的な出血や腫れ
処置直後は、一時的に歯茎からの出血や腫れが見られることがあります。
【治療効果に関する注意事項】
①完治を保証するものではない
患者さんの免疫状態や生活習慣、歯周病の重症度によっては、期待した効果が得られない場合があります。
②保存不可能な歯もある
すでに骨が大きく溶けてグラグラしている歯(重度歯周病)の場合、ブルーラジカルを行っても残すことができず、抜歯が必要になるケースがあります。
③再発のリスクはゼロではない
歯周病は生活習慣病であるため、治療後も毎日の適切なセルフケア(歯磨き)や定期的なメンテナンスを怠ると、細菌が再び増殖し、再発するリスクがあります。
【費用と診療内容に関する注意事項】
①全額自己負担(自費の自由診療)である
公的医療保険が適用されないため、治療費が高額になります。
②混合診療の禁止
ブルーラジカル治療期間中に、同一の歯に対して保険適用の処置(被せ物の修理など)を行うことが原則できません。一連の治療がすべて自由診療扱いとなる可能性があります。
ブルーラジカル治療に関するよくある質問(Q&A)
最後に、治療費に関して患者様からよく寄せられる質問にお答えします。
通常の歯周病治療から切り替える場合に、混合診療にはならないのですか?
原則として、日本の医療制度では保険診療と自由診療を同時に行う「混合診療」は禁止されています。
そのため、一連の治療の流れにおいて、メインの処置であるブルーラジカル(自由診療)を選択した場合、それに関連する検査や処置もすべて自由診療扱いとなるのが基本ルールです。
ただし、初診時の基礎的な検査や、ブルーラジカル治療が完全に終了した後の経過観察・メンテナンスについては、保険診療として扱えるケースもあります。
この「一連の治療」の線引きは非常に複雑であり、医療機関ごとの解釈や運用ルールによります。
トラブルを防ぐためにも、必ず治療契約を結ぶ前に「どこからどこまでが自費で、どこから保険が使えるのか」を確認してください。
治療しても治らなかった場合の返金保証はありますか?
医療において「絶対」はありません。人体の反応には個人差があるため、残念ながら期待した効果が得られない可能性もゼロではありません。
また、一般的に、医療行為に対する返金保証(治らなかったら全額返金など)を行っている医院は少数です。
しかし、インプラントやセラミック治療のように、一部の医院では独自の「保証制度」を設けている場合があります。
例えば、「治療後5年以内に再発した場合は、再治療費を半額にする」「再照射を無料で行う」といった内容です。契約書や同意書にサインする前に、こうした保証内容の有無についてもよく目を通しておくことが重要です。
まとめ|費用対効果を見極めて、自分に合った治療選択を
ブルーラジカル治療は、決して安い金額ではありません。しかし、以下の3つの価値を考慮すれば、その価格には十分な理由があると言えます。
- 厚生労働省承認の確かな技術: 科学的根拠に基づいた、世界初の殺菌システムであるという信頼性。
- 非外科的アプローチ: 痛い手術やダウンタイムを回避し、心身の負担を劇的に減らせること。
- 時間の節約: 長期間の通院から解放され、短期間で集中的に治療を完了できること。
大切なのは、「高いか安いか」という目先の金額の多寡だけで判断するのではなく、「自分の歯を長く残すことの価値」や「痛みや不安のない快適な生活を取り戻すことの価値」と照らし合わせて考えることです。歯を失ってからインプラントにする費用(1本30〜50万円)を考えれば、今ある歯を守るための投資は決して高くはないはずです。
まずは、ブルーラジカルを導入している信頼できる歯科医院でカウンセリングを受け、あなたの口内状況に合わせた正確な見積もりを出してもらうことから始めてみてはいかがでしょうか。専門医との対話の中で、納得のいく治療法が見つかることを願っています。