あなたが、もし仕事への情熱が消えて、憂鬱と感じていたら、心のエネルギー切れであるかもしれません。燃え尽き症候群(バーンアウト)とも呼ばれます。
燃え尽き症候群は、怠けや気の緩みではなく、WHOが「適切に管理されなかった慢性的な職場ストレス」に起因する状態と定義しています。(※1)この状態を放置すると、バーンアウトにともなううつ状態からうつ病などに移行する可能性もあります。
この記事では、燃え尽き症候群の対処法を10選、無理なく始められる実践的アプローチを交えて解説します。自分の状態と向き合い、心の疲れを回復させるためのヒントを見つけましょう。
燃え尽き症候群とは?見分けるための4つのポイント
燃え尽き症候群とは、以前まで意欲的に取り組んでいた物事に対し、心身のエネルギーを多大に消耗し、突然やる気を失う状態のことです。自身の状態が、燃え尽き症候群かそうでないかを見分けるための4つのポイントをこれから解説していきます。
- ①心と身体に現れる症状(頭痛、不眠、無気力感など)
- ②燃え尽き症候群のセルフチェックリスト
- ③疲労やうつ病との決定的な違い
- ④何かを受診すべきか判断する基準
①心身(心と身体)体に現れる症状(頭痛、不眠、無気力感など)
燃え尽き症候群のサインは、心と体、日々の行動に現れます。自分では気づかないうちに、症状がでている場合もあります。以下の表に示す症状に心当たりがないか、自身の状態を振り返ってみましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 心の症状 |
|
| 身体の症状 |
|
| 行動の変化 |
|
※上記はあくまで一般的な目安です。症状が続く場合や日常生活に支障がある場合は、無理をせず専門の医療機関へご相談ください。
②燃え尽き症候群のセルフチェックリスト
自分が燃え尽き症候群かもしれないと感じたら、以下のチェックリストで自分の状態を確認してみましょう。(※2)
【燃え尽き症候群セルフチェックリスト】
最近のあなたの状態について、当てはまるものがあるか確認してみましょう。
- こんな仕事、もうやめたいと思うことがある。
- われを忘れるほど仕事に熱中することがある。
- こまごまと気くばりすることが面倒に感じることがある。
- この仕事は私の性分に合っていると思うことがある。
- 同僚や患者の顔を見るのも嫌になることがある。
- 自分の仕事がつまらなく思えてしかたのないことがある。
- 1日の仕事が終わると「やっと終わった」と感じることがある。
- 出勤前、職場に出るのが嫌になって、家にいたいと思うことがある。
- 仕事を終えて、今日は気持ちのよい日だったと思うことがある。
- 同僚や患者と、何も話したくなくなることがある。
- 仕事の結果はどうでもよいと思うことがある。
- 仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある。
- 今の仕事に、心から喜びを感じることがある。
- 今の仕事は、私にとってあまり意味がないと思うことがある。
- 仕事が楽しくて、知らないうちに時間がすぎることがある。
- 体も気持ちも疲れ果てたと思うことがある。
- われながら、仕事をうまくやり終えたと思うことがある。
このリストは、ご自身の状態を客観的に振り返るための目安です。診断を行うものではありません。強い疲労感や意欲の低下が続いている場合は、無理をせず専門の医療機関(心療内科・精神科など)にご相談ください。
あてはまる項目が多いほど、燃え尽き症候群の可能性があります。
あくまで簡易的な目安であり、医学的な診断ではありませんが、自身の状態を見つめ直すきっかけになりますのでご活用ください。
③疲労やうつ病との医学的な違い
燃え尽き症候群の症状は、ただの疲れやうつ病と似ているため、混同されがちです。しかし、それぞれには回復の仕方や症状の範囲に明確な違いがあります。
一般的な疲労は、十分な睡眠や休息、趣味を楽しむことで回復します。一方、燃え尽き症候群による疲労は、休んだだけでは回復しにくく、なかでも仕事への意欲が低下したままなのが特徴です。
うつ病も、意欲低下や気分の落ち込みが見られますが、この症状が及ぶ範囲が違います。燃え尽き症候群、またはそれにともなううつ状態は主に仕事や特定の活動に関連したストレスが原因で、その対象から離れると、比較的元気に過ごせる場合があります。
一方、うつ病は仕事だけでなく趣味や好きだったことなど、生活全体を通して喜びや興味を感じられなくなる、また朝から晩まで一日中、うつ病の症状が続く、などが特徴です。。ただし、燃え尽き症候群、またはそれにともなううつ状態を放置すると、うつ病に移行することもあるため注意が必要です。
④受診すべきか判断する基準
燃え尽き症候群が疑われる場合は、精神科や心療内科への受診、または普段からの「かかりつけ医」への相談をおすすめします。受診を考える目安は以下を参考にしてください。
- 無気力感やひどい疲労感が2週間以上続いている
- 仕事に行けない、家事が手につかないなど生活に明らかな影響が出ている
- 不眠や食欲不振、頭痛などの身体症状が改善しない
- セルフチェックで多くの項目が当てはまり強い不安を感じる
- 家族や同僚から「最近様子がおかしい」と心配された
つらい症状を一人で抱え込まず、まずは気軽に相談できるクリニックを探してみましょう。放置すると、うつ病などに移行する可能性もあるため、早めの行動が大切です。
燃え尽き症候群の対処法10選
ここでは、燃え尽き症候群の対処法として、無理なく始められる実践的なアプローチを10個ご紹介します。自分のペースで、できることから始めてみましょう。
- ①ストレスの原因を見つける
- ②生活習慣を整える
- ③「〜すべき」という考えを改める
- ④好きなことや趣味の時間を大切にする
- ⑤新しいことに挑戦して刺激を取り入れる
- ⑥小さな成功体験を積み重ねる
- ⑦周囲と相談しやすい環境を築く
- ⑧会社の産業医や、産業保健職を活用する
- ⑨とにかく休息する
- ⑩ストレスの原因(仕事)から物理的に離れる
①ストレス要素の原因を見つける
燃え尽き症候群に対処するためには、自身のストレスの原因を正しく把握することが大切です。原因が把握できていない場合だと、対策が取りづらくなってしまいます。
静かな環境で、メモ帳などにストレスの原因と考えられる、心に浮かぶことを自由に書き出してみましょう。漠然とした不安や不満を「見える化」し、客観的に把握するための大切な作業です。
例として、仕事の長時間労働や過度な責任、職場での人間関係、自身の考え方の癖、組織や社会に対しての不満などがあげられます。
何が自分のエネルギーを奪っているのかを突き止めることが、解決への糸口となります。
②生活習慣を整える
不規則な生活は自律神経のバランスを乱し、ストレスへの抵抗力を低下させてしまいます。そのため、日々の生活を見直すことも回復につながります。最初から完璧を目指さず、できることから取り組みましょう。
見直したい生活習慣は、睡眠・食事・運動です。
寝る前はスマートフォンの光を避け、穏やかな音楽を聴くなどリラックスできる時間を作りましょう。毎日決まった時間に起きることも大切です。体内時計が整い睡眠の質が上がると考えられています。
食事においては、幸せホルモンであるセロトニンの材料となる、トリプトファン(肉、魚、大豆製品など)やビタミンB6(バナナ、鶏肉など)を意識的に摂るのがおすすめです。
運動面では、ウォーキングや水泳などの運動が、セロトニンの分泌を促し、気分を前向きにする可能性があります。(※3)エレベーターを階段にする、一駅手前で降りて歩くなど、日常の中で体を動かす機会を増やしましょう。
③「〜すべき」という考えを改める
燃え尽き症候群になりやすい方は、真面目で責任感が強く、完璧にこなすべき、などの思考の癖を持つ方が多いと考えられています。
「べき思考」は、無意識に自身を追い詰めてしまいます。この思考は、認知行動療法でも注目されている観点です。
もし自身に当てはまると感じたら、少しだけ考え方を変える練習をしてみましょう。思考を柔軟にするためのポイントをこれから説明します。
「〜しなければならない」を「出来る範囲で〜してみよう」などのように少し余裕のある言葉に変えて口に出してみると良いでしょう。
優先順位を決めることも大切です。全部の物事に全力で取り組むのは非現実的です。やろうと考えていることが、「今やるべきことか」を判断し、力の配分を意識してみてください。また、他者の評価と距離を置き、自分のペースで良いと、自分を認めることが大切です。
④好きなことや趣味の時間を大切にする
仕事のことばかり考えていると、脳は常に緊張状態が続いています。意識的に仕事から離れて、楽しいと感じる時間を作ることが回復のために大切です。
まずは1日15分でも良いので、通勤中に好きな音楽を聴く、お昼休憩に公園で過ごすなど、隙間時間を活用しましょう。
週末にカフェで1時間読書するなど、趣味や休息の時間を手帳やカレンダーに書き込んでみることもおすすめです。趣味がないという方は、好きな香りのアロマを楽しむ、肌触りの良いブランケットにくるまるなど、過敏になってしまった自分の感覚を緩めるようなことを試してみてください。
⑤新しいことに挑戦して刺激を取り入れる
毎日同じことを繰り返していると、仕事への情熱などが薄れていく場合があるでしょう。そんな時は、日常に新しい刺激を取り入れることがおすすめです。
新しい体験は、前向きな気持ちへのスイッチになります。少しだけ、いつもと違うことを試せれば十分です。
小さな変化で、失いかけていた好奇心や楽しむ気持ちを取り戻しましょう。小さな挑戦の具体例を以下に示しました。
- いつもと違う道で通勤してみる
- 行ったことのないお店でランチをしてみる
- 普段は見ないジャンルの本や雑誌を読んでみる
- 簡単な料理の新しいレシピに挑戦してみる
- 興味のある分野のオンライン講座を少しだけ覗いてみる
⑥小さな成功体験を積み重ねる
燃え尽き症候群の特徴に「個人的達成感の低下」があります。どんなに頑張っても達成感が得られず、無力感に襲われている状態です。
この感覚は、意図的に成功経験を積み重ね、低下した自己肯定感を回復させることが大切です。目標を可能な限り小さく設定することがポイントとなります。次に示すとおり小さな成功体験で構いません。
- 朝起きたらカーテンを開けて朝日を浴びる
- 机の不要な書類を少しだけ捨てる
- メールを1件だけ返信する
- 5分間だけ部屋の片づけをする
- 寝る前にコップ一杯の水を飲む
上記のようなタスクをリスト化して、完了したらチェックマークを付けてみましょう。達成感が視覚的にわかり、自己肯定感を取り戻しやすくなります。小さな自信の積み重ねが、心の回復につながります。
⑦周囲と相談しやすい環境を築く
悩みを抱え込むと、燃え尽き症候群が悪化する要因になり得ます。自分の気持ちや状況を誰かに話すだけで、心が軽くなったり、問題が整理されたりすることがあります。
信頼できる人に聞いてもらうことは、心の負担と孤立感を軽減するために大切です。
家族やパートナーであれば、身近な存在として親身に相談にのってくれる場合が多いでしょう。親しい友人なら、客観的な視点で話を聞いてくれる可能性が高いです。信頼できる同僚や上司であれば、同じ職場だからこそ、詳細な状況を理解してもらいやすいと考えられます。
⑧会社の産業医や心療内科、産業保健職を活用する
セルフケアを試しても改善がしない場合や、どうして良いかわからないときは、専門家の力を借りてください。自身の状況に応じて、相談先を選んでみましょう。
会社の産業医や産業保健職(保健師、看護師、カウンセラーなど)は、職場環境の調整(業務量の軽減など)に向けて、会社側に働きかけてくれる可能性があります。「長時間労働がつらい」といった具体的な相談が可能です。
不眠や食欲不振、気分の落ち込みのような症状が2週間以上続く場合は、心療内科や精神科を受診して、診断や治療(薬物療法など)を受けることもできます。
普段から受診している「かかりつけ医」を活用する方法もあります。ゆっくり話を聞いてもらいながら、自身の考え方の癖に気づいたり、ストレスへの具体的な対処法を一緒に考えたりすることができます。
自身の状況に応じて、相談先を選んでみましょう。
⑨とにかく休息する
燃え尽き症候群は、心と身体のエネルギーが枯渇している状態なので、休むことが優先されます。周囲に対して罪悪感や焦りを感じるかもしれませんが、休息期間が回復のための時間だと考えましょう。
症状が強いときは、何もしないことが大切です。ぼーっとしたり、窓の外を眺めたりするだけでも、脳を休めることにつながります。好きな音楽を聴く、アロマを焚く、お風呂にゆっくり浸かるなど、自分が心地よいと感じることを試しても良いでしょう。
少し元気が出てきたら、公園を散歩したり、日向ぼっこをしたりする時間もおすすめです。自然とのふれあいは気持ちが穏やかになる場合が多いです。
⑩ストレスの原因(仕事など)から物理的に離れる
さまざまな対処法を試しても、ストレスの原因となる環境から離れないと、回復が難しい場合があります。その際は、意識的に仕事と物理的な距離をとることが大切です。
一時的にでも仕事から離れることで、心身をしっかりと休ませ、自身の働き方などを客観的に見つめ直す機会にもなります。
物理的に離れるための行動例は以下のとおりです。
- デジタルデトックス:勤務時間外や休日は仕事用のメールやチャットの通知をオフにする
- 休暇を計画的に取得する:有給休暇を利用して数日間仕事から完全に離れてみる
- 環境調整を相談する:上司に相談して業務内容の変更や部署の異動をお願いする
- 休職制度を活用する:症状が重い場合は医師の診断書をもとに休職することも考える
まとめ
燃え尽き症候群は、誰にでも起こりうる心のエネルギー切れの状態です。回復のためには、まずしっかり休んで、一人で抱え込まずに信頼できる人へ相談することも大切です。
今回の記事で紹介した対処法を参考に、できそうなことから試してみましょう。つらい症状が続く場合は、積極的に医師や専門職に相談してください。
参考文献
- 長崎県医師会:「燃え尽き症候群(バーンアウト)とは」
- 久保真人(2007)「バーンアウト(燃え尽き症候群)―ヒューマンサービス職のストレス」 (閲覧日:2026年1月16日)
- Alizadeh Pahlavani H.Possible role of exercise therapy on depression: Effector neurotransmitters as key players.Behav Brain Res,2024,459,114791.
