もっと頑張りたい、期待に応えたいといった意欲が、もしかしたら燃え尽き症候群の始まりかもしれません。燃え尽き症候群は自分でも気づかないうちに全部で12個の段階を経て、徐々に進行する点が特徴です。
なかでも、真面目で責任感の強い人ほどSOSサインを見過ごし、気づいたときには手遅れ寸前であることが多いです。
この記事では、燃え尽き症候群の全12段階の特徴を解説します。心と体のエネルギーが尽きてしまう前に、自身の状態を客観的に把握し、今日からできる対処法を見つけてください。
燃え尽き症候群の12段階を解説
燃え尽き症候群は、突然発症する症状ではありません。最初は仕事への高い意欲から始まり、自分でも気づかないうちに心と体のエネルギーを消耗し、段階的に進行するのが特徴です。
この過程は、心理学者であるハーバート・フロイデンバーガーらによって12の段階に分けられています。自分がどの段階なのかを客観的に把握することは、早期の対策や回復につながるでしょう。
これから、燃え尽き症候群の全12段階を、3つに分けて解説します。
第1〜4段階(初期):意欲的だが無理が蓄積し始める時期
燃え尽き症候群は、もっと頑張りたい、期待に応えたいといった意欲から始まります。しかし、強い思いが責任感や完璧主義と結びつきすぎると、徐々に無理が積み重なっていきます。
初期は、本人も周囲も熱心な人と捉えて、問題として認識されにくいのが特徴です。第1〜4段階の特徴を以下の表にまとめています。
| 段階 | 特徴 |
| 第1段階 自分を証明しようとする強迫的努力 Compulsion to Prove Oneself | ・自分の価値を成果で示さないといけないと思い込み過剰に働いてしまう・「もっと成果を出さなければ」という強迫観念 ・新しい環境や役職に就いた際に陥りやすい |
| 第2段階 より一層の努力 Working Harder | ・仕事量を自ら増やす・仕事に没頭しすぎてほかのことが考えられなくなる ・休日でも常に仕事のことを考えてしまう |
| 第3段階 自分の欲求の無視 Neglecting Needs | ・休憩や睡眠、食事などの基本的な生活習慣を後回しにしがちになる ・趣味や友人との時間など自分をケアする時間を犠牲にしてしまう |
| 第4段階 問題の否認 Displacement of Conflicts | ・身体症状(不眠、頭痛、胃腸不調)を無視する・疲労感や頭痛など心身の不調や周囲からの心配の声を否定してしまう |
第5〜8段階(中期):情緒の不安定化と孤立の兆候が現れる
初期に自分の限界を超えて頑張り続けると、心と体のバランスが崩れ始めます。中期は、感情のコントロールが難しくなり、人間関係にも悪い変化が現れます。
本人はまだ無理を続けてしまう段階のため、周囲と溝が深まり、孤立感が強まっていきます。第5〜8段階の特徴を以下の表にまとめました。
| 段階 | 特徴 |
| 第5段階 価値観の変化 Revision of Values | 仕事が人生のすべてになり家族や趣味などの優先順位がとても下がってしまう |
| 第6段階 問題の否定と攻撃性 Denial of Emerging Problems | ・自分の不調を指摘されると批判と捉えてしまい攻撃的な態度を取りやすい ・他人の小さなミスが許せず寛容さが低下する |
| 第7段階 引きこもり Withdrawal | ・コミュニケーション自体を負担に感じるようになる ・職場の飲み会や同僚との雑談を避けるようになる ・アルコールなど依存性のあるものに安らぎを求めてしまうケースがある |
| 第8段階 行動の明らかな変化 Obvious Behavioral Changes | ・遅刻やミスが増えたり身だしなみに気をつけなくなったりする ・周囲から見て人が変わったと思われるほど言動に変化が現れる |
第9〜12段階(末期):心身が限界を迎える段階
中期を経た時点で、心身のエネルギーは枯渇寸前です。末期では、日常生活を送ること自体が困難になり、重い心身の不調が現れます。
末期になると、自分の力だけで回復するのは難しく、専門的なサポートが必要となります。第9〜12段階の特徴は以下の表のとおりです。
| 段階 | 特徴 |
| 第9段階 離人症 Depersonalisation | ・自分が自分ではないような感覚におちいる ・感情が麻痺して現実感が失われる |
| 第10段階 内面の空虚感 Inner Emptiness | ・何をしても喜びを感じられず心が空っぽになった感覚に襲われる ・生きるエネルギー自体が失われた状態 |
| 第11 抑うつ状態 Depression | ・絶望感や無力感に襲われ将来に希望が持てなくなる ・涙が止まらない、食欲がわかない、眠れないなどのうつ病様症状が現れる |
| 第12段階 燃え尽き症候群 Burnout Syndrome | ・心身ともに消耗しきって朝起き上がれない、仕事に行けないなど動けなくなってしまう ・早急に休養と治療が必要な状態 |
今の自分を把握するための12段階セルフチェックリスト
自分の状態を客観的に把握するために、以下のチェックリストで当てはまる項目を数えてみましょう。医学的な診断ではありませんが、目安になるので参考にしてください。
燃え尽き症候群セルフチェック
現在の自分に当てはまる項目を選択してください。
段階別に見る燃え尽き症候群の対処法と受診の目安
今の自分の心と体の状態を把握したら、段階に合ったセルフケアを試したり、専門家の助けを求めたりすると良いでしょう。自分の状態に合わせて、これからご紹介する方法を試してみてください。
初期段階の対処法
ストレス要因の整理と
休息の確保
中期段階の対処法
人間関係と
価値観の見直し
末期段階の対処法
専門医への相談
※状態に応じた適切な対応をご検討ください
初期段階の対処法:ストレス要因の整理と休息の確保
初期段階は、まだ頑張れると感じつつも、なんだか疲れがとれないといった心身のサインが出始めている時期です。この段階での対処が、症状の悪化を防ぐポイントになります。まずは、自分のストレスの原因を見える化し、意識的に休むことから始めましょう。
何がストレスになっているのかを具体的に把握するために、紙やスマートフォンに、心の負担になっていることを可能な限り書き出してみましょう。仕事の責任の重さ、長時間労働、職場の人間関係、家族などプライベートの問題などが例としてあげられます。
意識的に休息を取ることも大切です。休むことも仕事と考え、スケジュールに休息を組み込みましょう。睡眠時間の確保は基本として、仕事の合間に短い休憩をとったり、休日に趣味や好きなことに没頭する時間を作ることもおすすめです。
中期段階の対処法:人間関係と価値観の見直し
中期段階に入ると、感情のコントロールが難しくなり、周囲から孤立しがちになります。早めに信頼できる人に相談することが大切です。これまでの仕事への向き合い方や価値観を見直す良い機会でもあります。
心の内を話すだけでも気持ちが楽になることがあります。信頼できる上司や同僚、家族、友人に現状を打ち明けてみましょう。産業医や社内の相談窓口を利用することもできます。第三者に話すことで、自分では気づけなかった解決策が見つかるかもしれません。
完璧主義や自己犠牲の考え方は、心身をすり減らす原因になります。完璧を目指していても、力の抜きどころを見つける練習をしましょう。できることと、できないことを明確にし、無理な依頼は断る勇気を持つことも大切です。
個人の努力だけでは状況が改善しない場合は、職場環境の調整を上司に相談することを考えましょう。持続可能な働き方を考えることは、組織全体の課題でもあります。
末期段階の対処法:専門医への相談
末期段階では、心身ともにエネルギーが枯渇し、日常生活に支障が出始めます。この段階では、セルフケアだけでの回復は難しく、専門家である医師のサポートが必要です。できるだけ早く専門医に相談してください。
以下のような症状が2週間以上続く場合は、心療内科や精神科を受診しましょう。
このような症状はありませんか?
- 朝、体が重く布団から出られない日が続く
- 食欲が全くない、または食べ過ぎてしまう日が続いている
- 夜中に何度も目が覚める、または寝ても全く疲れがとれない
- 理由もなく涙が出る、または感情がなくなったように感じる
- 仕事のミスが増え、集中力や記憶力が著しく低下した
- 頭痛、腹痛、めまい、動悸などの身体的な不調が続いている
専門医への相談に、ハードルを感じる方もいるでしょう。しかし、体の不調で病院にかかるのと同様に、心の不調を感じたら心療内科や精神科にに頼ることが大切です。
この段階では、うつ病などを合併している可能性も考えられ、放置すれば健康や社会生活にさまざまな影響がでる可能性があります。
回復と再発防止のために知っておくべきこと
燃え尽き症候群から回復するためには、十分な休息をとり、枯渇したエネルギーを充電することが大切です。さらに、再度同じ状況にならないように、働き方やストレスとの向き合い方を見直す必要があります。
ここでは、回復と再発防止のために必要な内容を4つ解説します。
- 休職という選択肢をとる 診断書の受け取り方と会社への伝え方
- 休職中に利用できる支援制度 (傷病手当金など)
-
再発を防ぐ働き方と
ストレスマネジメント - 周囲の支援が鍵 家族や上司の適切な接し方
休職という選択肢をとる|診断書の受け取り方と会社への伝え方
休職は回復に向けた大切な選択肢です。仕事を休むことに罪悪感を覚えるかもしれませんが、逃げではありません。壊れてしまう前に、自分を守るための行動だと考えましょう。
診断書は、医師が「治療のために休養が必要である」と判断した場合に発行されます。
診断書を受け取ったら、会社のルールに従い、上司や人事部などに提出して休職の意向を伝えます。休職の意向を伝えるのは負担があると思いますが、冷静に伝えることを心がけましょう。療養に専念したい意思をはっきりと示すことが大切です。
休職中に利用できる支援制度(傷病手当金など)
経済面でも安心して療養するために、利用できる公的な支援制度を知りましょう。代表的なものに傷病手当金があります。
傷病手当金とは、会社の健康保険に加入している方が、病気やけがで仕事を休み、給与が支払われない場合に、生活を支えるために支給される公的な制度です。以下の表に傷病手当金についてまとめています。(※1)
| 項目 | 内容 |
| 対象者 | 会社の健康保険に加入しているご本人 |
| 主な支給条件 | ・連続して3日間休んだ後、4日目以降も休んでいること ・休んでいる期間に会社から給与が支払われないこと |
| 支給額の目安 | 給与の約2/3 |
| 支給される期間 | 最長で1年6か月 |
傷病手当金を受け取るにあたっては、会社の人事部や総務部、自分が加入している健康保険組合のWebウェブサイトなどから申請書を入手します。
申請書には、自分で記入する部分と、医師に症状などを記入してもらう部分があります。 必要な項目が記入できたら、会社を通じて健康保険組合へ提出する方法が一般的です。
傷病手当金の利用で、経済的な不安が少しでも軽くなると、心と体の回復に集中しやすくなります。不明点は、会社の担当部署や健康保険組合に問い合わせてみましょう。
再発を防ぐ働き方とストレスマネジメント
復職する際は、以前と同じ働き方に戻らないことが再発防止の鍵となります。自分の心と体を守るための働き方と、日々のストレス管理術を身につけましょう。
働き方を見直すうえで大切なことは、完璧を目指さないことです。その時々でベストを尽くせれば良いと考え、完璧主義を手放す練習をしましょう。仕事に優先順位をつけて力の配分を考えたり、許容量を超える仕事は断ったりする勇気を持つことも大事です。
ストレスマネジメントの方法として大切なのは、意識的に休息をとることです。短くても良いので、仕事の合間にも休憩をとりましょう。マインドフルネスやアロマセラピーなどのリラクゼーションが、燃え尽き症候群の軽減に役立つこともわかっています。(※2)
周囲の支援が鍵|家族や上司の適切な接し方
燃え尽き症候群からの回復には、ご本人の努力だけでなく、家族や職場など周囲の人の理解とサポートが欠かせません。ご本人を支えるために、表にある接し方を心がけてみてください。NG例も説明しています。
| 接し方のいい例 | NGな接し方 |
| 静かに見守る:安心して休める環境を作る | 無理に励ます:「頑張れ」などの言葉は大きなプレッシャーになる |
| 話に耳を傾ける:本人の気持ちを否定せずただ聴く姿勢が大切 | 原因を追求する:なぜ現状に至ったのかなど原因を問い詰めることは避ける |
| 本人のペースを尊重する:何かを強制せず本人がやりたいことを尊重する | 安易なアドバイス:良かれと思ったアドバイスが本人を追い詰めることもある |
| 専門家への相談を勧める:受診を優しく促す | 過度に特別扱いしない:過剰な心配は本人の罪悪感を強めることがある |
職場の上司や同僚は、まず本人のプライバシーを尊重し、休職の理由などを許可なく周囲に広めないよう配慮しましょう。復職時は温かく迎え入れて孤立を防ぐ雰囲気づくりに努め、本人の体調に合わせて短時間勤務や負担の少ない業務から段階的に任せることが大切です。
また、一人で悩みを抱え込ませないよう、定期的な面談を通じて状況を確認するなどの継続的なサポートを心がけてください。
まとめ
燃え尽き症候群は、真面目で責任感が強い人ほど、自分の限界を超えて頑張り続けてしまうので、陥りやすいです。
もしセルフチェックで当てはまる項目があったら、意識的に休んだり、一人で抱え込まずに誰かに話したりしてみましょう。本当につらいときは専門家の力を借りることも必要です。今回の記事を、あなた自身を守ることに役立ててください。
参考文献
- 全国健康保険協会:「傷病手当金」
- Qi Wang, Fang Wang, Shurong Zhang, Chaofan Liu, Yue Feng, Junzhu Chen. Effects of a mindfulness-based interventions on stress, burnout in nurses: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in Psychiatry,2023,14,p.1218340.
