最近、理由もなくやる気が出ない、しっかり寝ても疲れがとれないと感じていませんか。それは単なる疲れではなく、心が発するSOSかもしれません。
目標に向かって真面目に努力する人ほど、心のエネルギーを消耗していることがあります。不調の正体は燃え尽き症候群かもしれません。
これは精神的な弱さや怠けではなく、過度なストレスによって心身のエネルギーが枯渇してしまった状態です。放置すれば、日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性もあります。
この記事では、ご自身の状態を客観的に知るためのセルフチェック方法と、結果との正しい向き合い方を解説します。
燃え尽き症候群とは心身のエネルギーが枯渇した状態
燃え尽き症候群とは、仕事や介護などに熱心に取り組んできた結果、心身のエネルギーが枯渇してしまった状態を指します。
特に、対人コミュニケーションを主とする仕事や、感情的なやり取りが多い仕事をしている方に多く、ある時急にモチベーションが低下し、休職や離職に繋がることがあります。
主な症状は疲労感・無気力・冷めた態度
燃え尽き症候群は、精神的な消耗と身体の不調という二つの側面で進行します。
まず精神面では、情熱が尽きて感情が枯渇する情緒的消耗感、周囲に対して事務的で冷淡な態度をとるようになる脱人格化、そして仕事の達成感や自信を失う個人的達成感の低下という三つの症状が現れます。これらは仕事への意欲を奪うだけでなく、自己評価を著しく低下させて能率を下げる悪循環を招きます。
こうした心の変化と並行して、体にも様々な異変が生じます。慢性的な疲労感や重い倦怠感が続くほか、頭痛や肩こり、眠れなくなる不眠、食欲不振や胃腸のトラブルなど、具体的な体調不良として現れるのが特徴です。
心身ともにエネルギーが空っぽになり、以前のように活動できなくなるのが燃え尽き症候群の特徴です。
原因は過度な努力と報われない感覚の蓄積
燃え尽き症候群は、一つの出来事がきっかけで突然発症するわけではありません。個人の特性と環境的な要因が絡み合い、長期間にわたって心身の負担が蓄積することで引き起こされます。
主な原因としては、以下のようなものがあげられます。
- 過剰な業務量と長時間
- 仕事のコントロール感の欠如
- 努力に見合わない報酬
- 努力が報われない環境
- 人間関係のストレス
組織として従業員のメンタルヘルスを支える体制が不十分な環境も、燃え尽き症候群のリスク要因です。
なりやすい人の特徴
燃え尽き症候群は、誰にでも起こりえますが、以下のように特定の思考や行動の傾向を持つ人が陥りやすいことも知られています。
- 真面目で責任感が強い
- 完璧主義
- 他者に尽くすことを優先する
- 断るのが苦手
個人の性格もそうですが、厳しい労働環境が大きく影響している面もあります。
燃え尽き症候群の5つのセルフチェック
燃え尽き症候群の5つのセルフチェック項目は以下のとおりです。
- 仕事への意欲や達成感が感じられない
- 慢性的な疲労感が取れない
- 人や仕事に対して冷めた態度をとるようになった
- 些細なことでイライラする
- 集中力や判断力が低下している
こちらのセルフチェックは簡易的なもので、これだけで診断できるわけではありません。しかし、当てはまる項目が多い場合や、数週間〜数か月続く場合は医療機関への受診を検討しましょう。
①仕事への意欲や達成感が感じられない
燃え尽き症候群の主な症状の一つである個人的達成感の低下の状態では、やりがいを感じていた仕事に対し、作業のように感じます。心のエネルギーが枯渇すると、物事を前向きに捉える力が弱まり、以下のように意欲や達成感が低下します。
- かつて情熱を注いでいた仕事や趣味が今はひどく面倒に感じられる
- 目標を達成したり、プロジェクトが成功したりしても以前のような喜びや充実感が湧いてこない
- 上司や同僚から高く評価されても言葉が心に響かず、素直に受け止められない
- 新しい仕事や役割への挑戦を無意識に避けるようになっている
このような状態が続くと、これまで積み上げてきた実績やスキルにも自信が持てなくなり、自分は何のために頑張っているのだろうという虚しさにさいなまれやすくなります。
以前の自分との意欲の変化に気づくことが、早期対処のためには大事です。
②慢性的な疲労感が取れない
精神的な疲れは、そのまま体の疲れにもつながってしまいます。精神的な緊張状態が長く続くことで自律神経のバランスが乱れ、体が常に興奮状態となり、十分に休息できなくなってしまいます。
休んでも回復しない疲労感は、燃え尽き症候群の情緒的消耗感が体に現れたサインです。身体のエネルギーが底をついてしまう前に、心と体の両方を意識的に休ませる必要があります。
③人や仕事に対して冷めた態度をとるようになった
脱人格化と呼ばれる、燃え尽き症候群の症状では、親身になって対応していた同僚や顧客に対して、距離を置いたり、突き放すような事務的な態度を示します。心のエネルギーを消耗しないよう、無意識に感情のスイッチを切り、他者との関わりを最小限にしようとする心の防衛反応と考えられています。
その結果、チーム内で孤立感を深め、さらに燃え尽き症候群を悪化させるという悪循環に陥る危険性があるため、注意が必要です。
④些細なことでイライラする
心のエネルギーが枯渇してくると、普段なら気にも留めないような些細なことに対して、感情が大きく揺さぶられるようになります。
これは、ストレスに対する心の許容量が極端に小さくなっているサインです。自分でも感情をコントロールできず、カッとなったあとでどうしてあんなことを言ってしまったのだろうと自己嫌悪に陥ることも少なくありません。
以下のサインが特徴です。
- コピー機の紙詰まりや、パソコンの動作の遅れに耐え難いほどの怒りを感じる
- 同僚の話し声やキーボードを打つ音が、耳障りに聞こえ集中できない
- 家族からの何気ない一言に、過剰に反応して、つい強い口調で返してしまう
- 電車の遅延やレジの行列など、日常の小さな出来事に強い焦りや怒りがこみ上げる
これらは、心に余裕がなくなっている証拠です。常に心が張り詰めているため、ほんの少しの刺激にも過敏に反応してしまいます。この状態は、人間関係に亀裂を生じさせるだけでなく、ご自身の心をさらに疲弊させてしまうことになります。
⑤集中力や判断力が低下している
燃え尽き症候群は、意欲や感情だけでなく、思考力といった認知機能にも影響を及ぼします。脳のエネルギーが不足することで、当たり前にできていたはずの知的作業が難しくなります。
以下のサインが特徴です。
- 会議の内容がなかなか頭に入ってこず話の要点を掴むことができない
- メールの返信など、簡単な文章を作成するのに以前より時間がかかるようになった
- 複数の選択肢の中から、何が最善かを決められず、判断を先延ばしにしてしまう
- 数字の入力ミスや、約束を忘れるなどのケアレスミスが目立つようになった
これらの症状は、自分は仕事ができない人間だという自己否定感につながり、個人的達成感の低下が進み、症状を悪化させる可能性があります。
セルフチェックで「燃え尽き症候群かな」と思ったら
燃え尽き症候群のセルフチェックで多くが当てはまったら、不安になるでしょう。
しかし、燃え尽き症候群は決して珍しい状態ではありません。とある調査では、世界の労働者の約48%、日本の労働者の約37%が燃え尽き症候群に悩んでいることが示唆されています。(※1)
決して少なくない人が悩んでいるからこそ、まずはお近くの心療内科や精神科のクリニックで相談してみることが大事です。
燃え尽き症候群の治療法
ここでは、燃え尽き症候群の治療法について詳しく見ていきましょう。
休養と環境調整が基本
燃え尽き症候群の治療において、優先されるのが休養です。睡眠を優先し、栄養バランスの取れた食事と適度な運動を取り入れてみましょう。
ただ休むだけでは、ストレスの原因がなくならないため、回復が思うように進まないことがあります。そこで重要になるのが、ストレスの原因となっている環境の調整です。
| 環境の種類 | 調整の具体例 |
|---|---|
| 職場環境 |
|
| 人間関係 |
|
| 生活環境 |
|
認知行動療法などの心理療法
十分な休養と環境調整で心身のエネルギーがある程度回復してきたら、再発を防ぐために心理療法に取り組むことが有効です。心理療法では、ご自身がストレスを感じやすい考え方の癖や、物事のとらえ方、行動のパターンを見直していきます。
代表的な心理療法に「認知行動療法(CBT)」があります。自分を追い詰めてしまう考え方のパターンに気づき、柔軟でバランスの取れたものに変えていくことを目指します。
認知行動療法は以下のように進められます。
- 問題の把握
- 考え方の癖に気づく
- 考え方を広げる
- 行動を変えてみる
プロセスを専門家とともに繰り返すことで、ストレスへの対処スキルを身につけ、燃え尽きにくい心の状態を目指します。
必要に応じて薬物療法を併用
燃え尽き症候群によって不眠、強い不安感、気分の落ち込みといった症状が現れ、日常生活に支障が出ている場合には、薬物療法を検討することがあります。
燃え尽き症候群そのものを治す薬はありませんが、不眠や強い気分の落ち込み(うつ状態)を伴う場合は、医師の判断で症状を和らげる薬が処方されることがあります。
副作用が心配なときは、自己判断で薬を減らしたり中断せず、医師に相談してください。症状が悪化することがあるため、指示どおりに続けることが大切です。薬は回復をサポートする道具ととらえ、適切に活用しましょう。
まとめ
真面目で責任感が強い人ほど、自分の限界を超えて頑張り続けてしまいます。燃え尽き症候群は、怠けや弱さではなく、心と体のエネルギーが枯渇してしまったというサインです。
早く元の自分に戻らなければと焦る必要はありません。まずはしっかり休み、自分を労わることが何よりの治療になります。一人で抱え込まず、心療内科や精神科などの専門家や、信頼できる周囲の人に相談しましょう。
