「冬は脱水症状にならない」と思っている方は多いのではないでしょうか。冬の脱水は、自覚がないまま進行しやすいです。
喉の渇きを感じにくい環境が重なるため、水分不足が深刻化しても気づけないことがあります。倦怠感や肌の乾燥、夜間のこむら返りなどは、体が発する初期のSOSとして現れるサインです。
この記事では、冬に脱水が進む理由や見逃しやすい症状、今日から取り入れられる対策や受診のサインを解説します。冬の不調を予防し、毎日を快適に過ごしたい方にお役立てください。
冬に脱水症状が起こりやすい原因
冬の脱水症状が厄介なのは、夏のように汗をかいたり、喉が乾いたりなどの自覚症状に乏しい点です。冬の脱水症状の主な原因は以下の3つです。
冬の脱水(隠れ脱水)の主な原因
- 空気の乾燥による不感蒸泄(皮膚や呼気からの水分蒸発)の増加
- 寒さで「喉の渇き」を感じるセンサーが鈍くなる
- 厚着や暖房・マスク着用による自覚しにくい発汗
①空気の乾燥による不感蒸泄の増加
冬の脱水症状を引き起こす原因の一つは、空気の乾燥による不感蒸泄(ふかんじょうせつ)の増加です。
不感蒸泄とは、目に見えない形で皮膚や呼吸を通じて常に体から蒸発している水分のことです。私たちは運動などをしていなくても、成人の場合、通常1日に約900mlの水分を失っています。(※1)
冬は外気が乾燥し、室内も暖房によって湿度が下がるため、この不感蒸泄がさらに増加します。湿度が低下すると皮膚からの水分蒸発量が増えることがわかっており、汗をかいている実感がなくても体の水分は奪われ続けます。(※2)
こうした理由から、冬は脱水に気づきにくく、こまめな水分補給がより重要になります。
②寒さで「喉の渇き」を感じるセンサーが鈍くなる
冬は寒さの影響で、体が喉の渇きを感じる感度が低下します。この反応は、人間が寒冷環境に適応する仕組みの一つと考えられています。
冬眠する動物は、限られたエネルギーと水分で冬を越すために、喉の渇きの感覚を抑える仕組みを備えています。寒冷環境下では血管収縮により末梢の血流が低下し、喉の渇きを感じる受容体の感度が低下します。人間の体でも、寒さによって同じように喉の渇きを感じにくくなる変化が起こる可能性があります。(※3)
結果、体が水分を必要としていても、脳は「水分を補給しなさい」という指令を送りにくくなります。寒さによって、尿量が増える寒冷利尿も脱水につながる要因です。体から水分が失われているにもかかわらず、喉の渇きを感じにくいため、補給が追いつかず脱水に陥りやすくなります。
③厚着や暖房・マスク着用による発汗
冬でも体は多くの汗をかいており、その量に気づきにくい点が脱水の原因になります。冬は夏のように汗をかかなくても、以下のような水分を失う条件がそろっています。
| 条件 | 具体的な内容 |
| 厚着や重ね着 | 寒さに備えた厚着により、暖房の効いた場所に入ると熱がこもり、知らないうちに汗がにじむ |
| 暖房の効いた室内 | ・屋外との温度差が大きい場面では、体温調節のために発汗が起こりやすくなる ・電気毛布や保温性の高い寝具を使うと、睡眠中にコップ1杯以上の汗をかくケースもある |
| マスクの着用 | ・呼気で湿度と温度が高くなるため、顔に汗をかきやすくなる ・マスク内の湿り気によって喉がうるおっていると錯覚し、水分不足のサインを見逃しやすくなる |
暖房環境での活動や睡眠時を含め、冬こそ意識的な水分補給が欠かせません。
冬の脱水症状の特徴
冬の脱水症状は自覚しにくく、日常の小さな不調として現れやすいのが特徴です。代表的な3つのサインを解説します。
①口の中がネバつく・皮膚がかさつく
脱水症状の比較的早い段階で現れるサインの一つが、口の中や皮膚の乾燥です。以下のような口や皮膚でわかる脱水のサインがないか確認してみましょう。
- 口の中がネバつく
- 唇がカサカサして、ひび割れている
- 肌が乾燥して、粉を吹いている
- 目が乾きやすい(ドライアイ)
注意したいのが、口や鼻の粘膜の乾燥です。粘膜を覆う粘液には、ウイルスや細菌の侵入を防ぐ機能があります。脱水で粘膜が乾くと防御機能が低下し、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなるため、注意が必要です。
②こむら返り(足がつる)や指先の冷え
冬に起こるこむら返りや指先の冷えは、寒さだけでなく脱水が関わっている場合があります。水分が不足すると、筋肉や血流がうまく働かなくなり、こうした不調が起こりやすくなります。
筋肉の動きには水分と電解質(ナトリウム・カリウム)が必要ですが、冬は睡眠中の汗や呼吸で失われやすく、電解質不足になりやすい状態です。ナトリウムが足りないと神経から筋肉への信号が乱れ、けいれんが起こり、こむら返りにつながります。
脱水で血液量が減ると血の巡りが悪くなり、温かい血液が末端まで届きにくくなるため、指先の冷えとして現れることもあります。
③立ちくらみ・倦怠感・集中力の低下
立ちくらみや倦怠感、集中力の低下は、脱水によって起こりやすい代表的な症状です。水分が不足すると、血液中の水分量が減り、血液が濃くなることで全身に血液を送る負担が増えて、だるさや疲労感として現れます。
脱水は脳への血流も低下させ、立ち上がった瞬間に一時的な酸欠状態となり、立ちくらみが生じます。脳が十分に働けなくなると、思考力や集中力に影響が出ることがあります。
脱水による脳の機能低下のサインは以下のとおりです。
- 立ちくらみ、めまい
- 締め付けられるような頭痛やズキズキする痛み
- 仕事や勉強に集中できない、思考力の低下
- 普段よりイライラしやすくなる
- 寝つきの悪さや途中で何度も目覚める
こうした症状は日常生活のパフォーマンスを下げるだけでなく、自律神経の乱れにつながることもあります。原因がわからない不調が続くときは、水分不足が隠れている可能性を意識し、こまめな水分補給を心がけることが大切です。
今すぐできる脱水症状セルフチェック
脱水の有無は、身近な体の変化から確認できます。ここでは、自宅ですぐに試せる代表的なセルフチェック方法を4つ紹介します。
手の甲の皮膚をつまんで戻り具合を確認する
体の水分が足りているかどうかは、皮膚のハリ(弾力性)で簡単にチェックできます。「ツルゴール反応」と呼ばれる方法で、医療現場でも脱水の程度を判断する目安の一つとして用いられています。
確認方法は以下のとおりです。
| 項目 | 具体的な内容 |
| チェック方法 | 1. 親指と人差し指で、手の甲の皮膚を優しくつまみ上げる2. そのまま3秒ほどつまんだあと、パッと指を離す3. つまんだ皮膚が、元の状態に完全に戻るまでの時間を確認する |
| 判断の目安 | ・すぐに戻る場合、体の水分は足りていると考えられる・戻るのに2秒以上かかる場合は、皮膚のハリが失われ、脱水状態の可能性がある |
ご高齢の方は加齢によって皮膚の弾力が低下しているため、脱水状態ではなくても戻りが遅くなることがあります。皮膚のチェックだけで判断せず、ほかの方法とあわせて総合的に見ることが大切です。
爪を押して赤みが戻るまでの秒数を数える
爪の色を見て、血液がしっかりと巡っているかを確認する方法です。「毛細血管再充満時間(CRT:Capillary Refill Time)」という指標を見るもので、体の末端の血流状態を確認します。
確認ポイントは以下の表にまとめています。
| 項目 | 具体的な内容 |
| チェック方法 | 1. 親指の爪を、もう片方の手の指で白くなるまで5秒ほど圧迫する2. パッと指を離し、爪の色が元のピンク色に戻るまでの時間を数える |
| 判断の目安 | ・2秒以内に戻る場合は、血の巡りは良好と考えられる・2秒以上かかる場合は、脱水によって血液が濃縮され、血流が悪くなっている可能性がある |
マニキュアを塗っている場合や、冷え性で指先が冷たい場合は正確に判断できないこともあるため、目安として活用してください。
尿の「色」と「回数」の変化を見る
私たちの体は水分が不足すると腎臓が水分を再吸収し、できるだけ体外に排出しないように働きます。その結果、尿の色に変化が生じます。
以下のように尿の色で脱水サインを確認できます。
- 透明〜薄い黄色:水分は足りている(健康な状態)
- 濃い黄色:水分が不足し始めているサイン
- オレンジ色・茶褐色:脱水状態の可能性がある
色だけでなくトイレの回数も重要な指標です。普段より明らかに回数が減ったり、半日以上尿意がなかったりする場合は、水分不足の可能性があります。
特に注意が必要なのはご高齢の方です。加齢に伴い、腎臓の尿を濃縮する機能が低下するため、脱水状態でも尿の色が濃くなりにくいことがあります。
【高齢者・子ども】脇の下の乾燥と話し方の変化を確認する
高齢者や子どもは脱水に気づきにくいため、周囲が早めに変化を察知することが重要です。特に子どもは、体内の水分量が多く代謝も活発で、脱水の影響を受けやすいという特徴があります。(※4)
次の表では、周りの人が確認すべき脱水のサインをまとめています。
| 項目 | 具体的な内容 |
| 皮膚や口の状態 | ・脇の下が通常より乾いている ・口の中がネバつく・舌が白っぽく乾いている ・泣いているのに涙の量が少ない、または出ていない(乳幼児の場合) ・目が落ちくぼんでいるように見える(乳幼児の場合) |
| 全体的な様子 | ・いつもより元気がない ・ぐったりしている ・おむつが3〜4時間以上濡れていない(乳幼児の場合) |
| 高齢の方特有のサイン | ・ろれつが回らず、話しにくそうにしている ・話のつじつまが合わない ・ぼんやりしている |
特に脇の下は汗が出やすい部位のため、乾燥している場合は脱水の可能性があります。いつもと違う様子が見られたら、まずは水分補給を促し、注意深く様子を見守りましょう。
冬の脱水症状への対策
冬の脱水を防ぐためには、症状が出てから対応するのではなく、普段から水分と湿度を意識した生活を整えることが大切です。医療現場で行う水分管理の考え方を日常に応用すると、脱水を予防しやすくなります。
毎日の生活で無理なく取り入れられる具体的な対策を解説します。
「コップ1杯の水を8回」喉が渇く前に飲む
「喉が渇いた」と感じた時点で、脱水状態に陥っています。健康な体を維持するためには、計画的な水分補給が大切です。
体は、食事から約1Lの水分を摂っています。残りの約1.5Lを、飲み水で意識的に補う必要があります。(※1)一度に大量に飲んでも、体はうまく吸収できません。
コップ1杯(約150〜200ml)の量を1日8回程度、以下のタイミングを参考にしてこまめに飲みましょう。
- 起床後
- 朝・昼・夕の食事中
- 午前と午後の休憩中
- 入浴の前後
- 就寝前
生活のなかに水分補給のタイミングを組み込むことで、無理なく習慣化できます。
日常は常温の水・麦茶、運動後はスポーツドリンク
水分補給で、何を飲むかは体の状態や場面によって使い分けることが重要です。場面別の飲み物の選び方は以下のとおりです。
| 場面 | おすすめの飲み物 | ポイント |
| 日常的な水分補給 | ・常温の水 ・カフェインを含まないお茶(麦茶、ルイボスティーなど) | ・体への負担が少なく、水分を吸収できる ・コーヒーや緑茶に含まれるカフェインや、アルコールには利尿作用があるため、水分補給には適さない |
| 運動や入浴などで汗をかいたあと | ・スポーツドリンク ・経口補水液 | ・汗で失われた水分と塩分(電解質)をバランス良く補給できる ・水だけを大量に飲むと、体内の電解質バランスが崩れることがあるため注意が必要 |
| 食事が摂れない、体調が悪いとき | 経口補水液 | ・水分と電解質が体に吸収されやすい濃度に調整されている ・下痢や嘔吐があるときにも推奨される |
アルコールやカフェイン飲料は利尿作用が強く、飲んだ以上の水分が排出されてしまうため、水分補給には適しませんは経口補水液は塩分濃度が高いため、脱水がない状態で日常的に飲むと塩分過多になる可能性があります。高血圧、心疾患、腎臓病の方は特に注意が必要です。特に高血圧・腎臓病・糖尿病などの持病がある方は、医師に相談してから使用してください。
加湿器と換気で「湿度50〜60%」を保つ
健康で快適に過ごせる室内の湿度の目安は50〜60%です。肌や喉の乾燥を防ぐだけでなく、インフルエンザウイルスの活動を抑制する効果も期待できます。(※5)湿度計を目に見える場所に置き、こまめにチェックする習慣をつけましょう。
今日からできる湿度管理の具体的な内容は以下のとおりです。
| 項目 | 具体的な内容 |
| 加湿器を適切に使う | ・部屋の中央やエアコンの風が当たる場所に置き、部屋全体を加湿する ・タンクの水は毎日交換し、清潔に保つ |
| 加湿器がない場合の工夫 | ・洗濯物や濡らしたタオルを室内に干す ・観葉植物を置く ・お湯を沸かす |
| 定期的な換気を忘れずに | ・加湿器の使用は窓の結露やカビの原因になることがあるため、1〜2時間に1回は窓を開ける ・数分間空気を入れ替え、よどんだ空気を排出しながら湿度を調整する |
生活環境も大切にして、冬の隠れ脱水を予防しましょう。
病院を受診すべき危険なサイン
冬の脱水には、家庭で対応しきれない危険なケースもあります。水分をとっても改善しない場合や、意識の変化が見られる場合は緊急性が高いです。
ここでは、病院を受診すべきサインを具体的に解説します。
経口補水液を飲んでも症状(嘔吐・めまい)が改善しない
経口補水液を飲んでも症状が改善しない場合は、家庭での対応が難しい脱水が進んでいる可能性があります。嘔吐や下痢を伴うと体内の水分だけでなく、電解質が乱れやすく、口からの補給では追いつかなくなることがあります。
こうした状態を放置すると危険が高まるため、早めの受診が重要です。以下のような症状が見られたら、速やかに医療機関を受診してください。
- 12時間以上尿が出ていない
- 立ち上がれないほどのめまい
- 皮膚をつまんで3秒以上戻らない
- 脈拍が1分間に100回以上(頻脈)
医療機関では、点滴によって水分と電解質を直接補うことができ、乱れた体内バランスを速やかに整えることが可能です。心配な症状が続く場合は、内科やかかりつけ医へ相談し、お子さんの場合は小児科を受診してください。
意識が朦朧としている・呼びかけに応じない場合
意識の状態がおかしいと感じる場合は、脱水症状が進行しており、命に関わる危険なサインです。脳への血流低下や低血糖の可能性があり、一刻も早い対応が求められます。
脱水が進むと血液が濃くなり流れが悪くなり、脳の働きが低下して意識障害を引き起こすことがあります。場合によっては、脳梗塞や心筋梗塞につながる恐れもあります。
話のつじつまが合わない、けいれんしている、呼吸の仕方がおかしいなどの症状が見られる場合も、すぐに救急車(119番)を呼んでください。救急車が到着するまでは、体を締め付けている衣服を緩め、楽な姿勢で寝かせてあげてください。
まとめ
汗をかく実感や喉の渇きを感じにくい冬は、気づかないうちに体から水分が失われています。口の乾き、こむら返り、集中力の低下などは、冬の隠れ脱水が背景にあることも少なくありません。
予防には、喉が渇く前のこまめな水分補給と、室内の湿度を50〜60%に保つことが重要です。まずは1杯の水を意識して飲む習慣から始め、乾燥の季節を健やかに過ごしましょう。
参考文献
- 厚生労働省:「健康のため水を飲もう講座 ~からだと水の関係~」
- Hashiguchi N, Tochihara Y, Takeda A, Yasuyama Y.Effects of indoor summer dehumidification and winter humidification on the physiological and subjective responses of the elderly.J Therm Biol,2023,111,p.103390.
- Johnson RJ, Painer-Gigler J, Kalgeropoulu S, Giroud S, Shiels PG, Kanbay M, Andres-Hernando A, Rodriguez-Iturbe B, Lanaspa MA, Stenvinkel P, Sánchez-Lozada LG.Water scarcity and conservation and their role in obesity in nature and in humans.Journal of Internal Medicine,2025,298,6,p.562-577.
- Daley SF, Avva U.Pediatric Dehydration.In: StatPearls [Internet]. StatPearls Publishing,2025.
- Aganovic A, Bi Y, Cao G, Kurnitski J, Wargocki P.Modeling the impact of indoor relative humidity on the infection risk of five respiratory airborne viruses.Sci Rep,2022,12,1,p.11481.
