花粉症は春だけだと思っていませんか? 日本には花粉症の原因となる植物が約50種類も報告されており、夏や秋にも私たちの生活に影響を及ぼしています。(※1)
長引く風邪のような症状や原因不明のだるさの正体は、公園の芝生や道端の雑草が原因の花粉症かもしれません。九州では1月下旬から、東北では春の花粉シーズンが6月頃まで続くなど、地域によって対策が必要な期間は大きく異なります。
この記事では、お住まいの地域や季節ごとに注意すべき花粉の種類と飛散時期を解説します。ご自身の不調の原因を正しく知り、一年を通して対策を行うために、お役立てください。
地域別に見る花粉の飛散時期とカレンダー
花粉が飛び始める時期は地域ごとに大きく異なり、気候や植生の違いが症状の出るタイミングを左右します。住んでいる地域の飛散スケジュールを把握しておくと、症状が出る前から準備を始められ、シーズン中の負担を減らしやすくなります。
ここでは、各エリアの飛散傾向と注意すべき時期を解説します。
北海道・東北エリアの飛散傾向とピーク
北海道や東北エリアは、冬の気温が低く積雪も多いため、ほかの地域に比べて花粉の飛散開始が遅くなる傾向にあります。
北海道と東北エリアで飛散する花粉の種類と時期は以下のとおりです。
| 地域 | 花粉の種類と飛散時期 |
| 北海道エリア | ・シラカンバ:4月下旬から飛散が始まり、6月上旬にかけてピークを迎える ・ハンノキ:3月中旬〜5月中旬にかけて飛散するが、量は比較的少ない ・イネ科植物:6〜8月にかけて、夏の花粉症の原因となる |
| 東北エリア | ・スギ:早い場所では1月下旬から飛散が観測され、ピークは2月半ば~4月までの約2か月半続く ・ヒノキ:3月中旬から飛び始めて4月にピークとなり、5月中旬頃まで飛散が続く |
北海道エリアは本州とは異なり、スギやヒノキの花粉はあまり問題になりません。注意すべきは、主にシラカンバ(白樺)の花粉です。
東北エリアは、スギ花粉の飛散量が多く、飛散期間が長いのが大きな特徴です。
関東・東海・関西エリアの飛散傾向とピーク
関東・東海・関西エリアは都市部が多く、花粉症に悩む方が多い地域です。スギとヒノキの両方の花粉が、大量かつ長期間にわたり飛散します。
関東・東海・関西エリアの花粉の種類とピークの目安は、以下のとおりです。
| エリア | スギ花粉のピーク目安 | ヒノキ花粉のピーク目安 |
| 関東 | 2~4月 | 3~5月中旬 |
| 東海 | 2月半ば~4月頃 | 3月半ば~4月半ば |
| 関西 | 2~3月 | 4月 |
春先~初夏にかけて、長い対策期間が必要で、環境要因がアレルギーに影響を与えることも知られています。
九州・沖縄エリアの飛散傾向とピーク
九州は全国的に見ても、花粉シーズンが早く始まる地域ですが、沖縄ではスギ・ヒノキによる花粉症はほとんど見られません。
九州エリアでは、スギ・ヒノキともに飛散量は全国的に見てもやや多めです。(※2)温暖な気候のため、花粉の飛散開始が早いのが特徴です。ピークを過ぎたあとも、比較的長い期間、花粉が飛び続ける傾向があります。
九州エリアで飛散する花粉の種類と時期は以下のとおりです。
- スギ 1月下旬には飛散が始まり、2〜3月にかけてピークを迎える
- ヒノキ スギに続き、3〜4月半ばが飛散のピーク
沖縄エリアにはスギやヒノキがほとんど自生していないため、これらが原因の花粉症は起こりにくいです。沖縄には花粉がないわけではなく、イネ科の植物など、ほかの植物が原因でアレルギー症状が出る可能性はあります。
飛散量が「多い年」と「少ない年」の違い
花粉の飛散量は毎年大きく変動し、違いを生む主な要因は前年夏の気象条件です。スギの雄花(花粉を作る花)は夏に形成されるため、夏の環境が翌年の量を左右するのです。
日照時間が長く、気温が高い猛暑で降水量が少ない年は、雄花がよく育って翌春の飛散量が増えます。気温が低く日照が少ない冷夏では雄花の成長が抑えられ、翌年の飛散量は少なくなります。
シーズン中の飛散量は当日の天気にも影響されます。晴れて気温が高い日、空気が乾燥して風が強い日、雨の翌日に急に晴れた日は特に飛散が増えやすくなります。
【種類別】季節ごとの原因花粉と特徴
日本では約50種類の植物がアレルギーの原因として報告され、春・初夏・秋で飛散する花粉が変わります。(※1)
ここでは、季節ごとに飛散する花粉の特徴と、口腔アレルギー症候群との関連について解説します。
春の花粉(2〜5月):スギ・ヒノキ・ハンノキ
日本の春は、花粉症の方にとって厳しい季節となりますが、主な原因はスギとヒノキの花粉です。
春の花粉の種類と飛散時期、特徴は以下のとおりです。
| 種類 | 主な飛散時期 | 特徴 |
| スギ | 2~4月 | ・日本で多い花粉症の原因 ・飛散量が多く、数十km先まで飛ぶ |
| ヒノキ | 3~5月 | ・スギのあとにピークが来る ・スギ花粉症との合併が多く、症状が長引きやすい |
| ハンノキ | 1~3月 | ・飛散開始が早い ・北海道における春の花粉症の主な原因 |
花粉は単なる粉ではなく、子孫を残すための遺伝情報が詰まった精密な構造物です。表面には「花粉孔」という特殊な構造があり、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を放出する役割を担っています。(※3)
初夏の花粉(5〜8月):カモガヤ・オオアワガエリ(イネ科)
初夏の花粉は、スギやヒノキなどの樹木とは異なり、身近な草の花粉がアレルゲンとなります。イネ科の花粉は、主に公園の芝生、河川敷、空き地、道端などに生息しているカモガヤやオオアワガエリなどから飛散します。
樹木の花粉と違い、飛散する高さが低く、飛散距離も数十m程度と短いのが特徴です。そのため、植物が生えている場所に近づくと、症状が出やすくなります。
イネ科花粉症の症状は、屋外での活動と深く関係しています。公園での散歩やスポーツ、河川敷でのバーベキュー、自宅の庭の草むしり後などに症状が悪化することが多いです。飛散時期も5~8月頃と長いため、夏風邪がずっと続いているように感じる方もいます。
秋の花粉(8〜10月):ブタクサ・ヨモギ・カナムグラ(キク科他)
秋の花粉症は、風邪の症状と似ていて「季節の変わり目で風邪が長引いている」と勘違いされやすいのが特徴です。
秋の花粉症を引き起こす代表的な植物を以下の表にまとめています。
| 種類 | 特徴 |
| ブタクサ(キク科) | ・道端や河原など、いたる所に見られる繁殖力の強い植物 ・花粉は特に午前中によく飛散するといわれている |
| ヨモギ(キク科) | 秋の花粉症の主要な原因の一つ |
| カナムグラ(アサ科) | つる性の植物で、フェンスや電柱などに絡みついて繁殖する |
秋の花粉症に関連する植物は、春のスギなどと違い、花粉の飛散距離は比較的短い傾向にあります。鼻の症状や目のかゆみが長引く方は、アレルギー検査を検討しましょう。
冬の花粉(12〜1月):スギ・ハンノキ(カバノキ科)
冬にも花粉症は起こり、12〜1月はスギやハンノキ(カバノキ科)の花粉に注意が必要です。乾燥や寒暖差による鼻炎、風邪と区別しにくく、アレルギーと気づかれにくい点が特徴です。
スギは春がピークですが、敏感な方では1月頃の少量の飛散でも症状が出ることがあります。ハンノキは公園や湿地に多く、1月頃から飛散し、スギ花粉症と併発しやすい花粉です。
この時期に毎年鼻水や目のかゆみが続く場合は、冬の花粉症の可能性を考慮し、専門医への相談をおすすめします。
特定の果物で口がかゆくなる「口腔アレルギー症候群」との関連
花粉症の方が特定の果物や生野菜を食べたあとに、口の中や唇、のどにかゆみやピリピリとした刺激、腫れを感じることがあります。これは「口腔アレルギー症候群(OAS)」と呼ばれるアレルギー反応の一種です。(※4)
交差反応と呼ばれ、花粉に含まれるアレルゲンと、果物に含まれるアレルゲンの構造が似ているために起こります。
以下の表では、原因となる花粉と関連する主な食べ物をまとめています。
| 原因花粉の種類 | 関連が報告されている食べ物の例 |
| カバノキ科 (ハンノキ、シラカンバなど) | リンゴ、モモ、サクランボ、ナシ、キウイ、ニンジン、セロリ、ジャガイモ、大豆(豆乳)など |
| イネ科 (カモガヤなど) | メロン、スイカ、トマト、オレンジ、キウイフルーツ、ジャガイモなど |
| キク科 (ブタクサ、ヨモギなど) | メロン、スイカ、キュウリ、ズッキーニ、バナナ、セロリ、ニンジンなど |
| ヒノキ科 (スギ、ヒノキなど) | トマト |
まれに、じんましんや呼吸困難、血圧低下などの全身の重い症状(アナフィラキシー)に至る危険性があります。食べ物で口に違和感を覚えた経験がある方は、自己判断せず医療機関に相談してください。
花粉症の典型的な症状
花粉症が引き起こす不調は、くしゃみや鼻水、目のかゆみだけではありません。花粉症の典型的な症状を解説します。
三大症状(くしゃみ・鼻水・はなづまり)
花粉症の代表的な症状は、三大症状であるくしゃみ・鼻水・鼻詰まりなどの「鼻症状」と目のかゆみ・充血などの「目の症状」です。花粉が鼻や目の粘膜に付着し、アレルギー反応が引き起こされます。
新しい治療薬の効果を評価する臨床試験では、「総鼻症状スコア(TNSS)」などが用いられます。(※5)患者さん自身が感じる症状の強さを数値化するもので、治療の重要な目標となります。風邪は1週間程度で改善することが多いのに対し、花粉症はシーズン中、数週間〜数か月ほど症状が続きます。
倦怠感(だるさ)・集中力低下・眠気
倦怠感や眠気、集中力の低下は、花粉症で多くみられる全身症状です。鼻水や目のかゆみだけでなく、体全体が重く感じたり、頭がぼんやりしたりすることで、仕事や勉強に支障が出ることもあります。
朝から体がだるい、日中に強い眠気を感じる、集中が続かないなどの状態が続くと、生活の質は大きく低下します。これらの症状は、花粉症の時期にあわせて現れやすく、気分の落ち込みやミスの増加につながることもあります。
鼻や目の症状が軽くても、だるさや眠気が強く出る場合もあるため注意が必要です。こうした変化に早く気づき、花粉症の症状として正しく捉えることが、適切な対策や治療につながります。
頭痛・肌荒れ・熱っぽさ
花粉症では、鼻や目の症状だけでなく、以下のような不調も起こることがあります。
- 鼻づまりによる頭痛や顔の重だるさ
- 花粉の付着による肌荒れやかゆみ
- アレルギー反応による熱っぽさや微熱
頭痛は副鼻腔の炎症によって眉間や頬がズキズキと痛むことがあり、肌荒れは目や鼻の周り、首、あごなどで赤みや湿疹が出やすくなります。アレルギー反応が全身に及ぶと、体がほてるような微熱を感じることもありますが、高熱になることはまれです。
飛散シーズンを乗り切るための「予防」と「初期療法」
花粉症の対策は、花粉の飛散前から取り組むほうが、シーズン中のつらさを抑えられます。日常生活で行うセルフケアと、症状を軽く抑えやすくなる初期療法を解説します。
花粉の付着を防ぐ服装と帰宅時の除去手順
花粉症対策の基本は、アレルゲンである花粉を体に寄せ付けないことです。外出時の服装と、帰宅後の行動を見直すだけで大きく変わります。
外出時の服装の注意点は以下のとおりです。
| 項目 | 具体的な注意点 |
| アウターの素材を選ぶ | ・表面がツルツルしたポリエステルやナイロン製のアウターを選ぶ ・ウールやフリースは静電気が起きやすく、花粉が付着しやすい |
| 顔周りをガードする | ・顔にフィットするマスクは、鼻や口への花粉の侵入を防ぐ ・メガネやゴーグルを活用する |
| 髪の毛を守る | 髪の毛は静電気で花粉が付着しやすいため、帽子をかぶったり、髪をまとめたりする |
服装に気をつけたうえで、次の手順を実践すると室内に花粉を持ち込みにくくなります。
- 玄関前で衣服や髪の花粉を軽く払う
- 上着は玄関で脱ぎ、室内に入れない
- 帰宅後すぐに手洗い・うがい・洗顔をする
- シャワーで体や髪についた花粉を洗い流す
これらを習慣にすることで、花粉の侵入を抑えやすくなり、室内の空気を清潔に保ちやすくなります。結果として、花粉による不快な症状を和らげることにつながります。
侵入を抑える換気方法と空気清浄機の活用
花粉の侵入を減らすには、換気の仕方と家電の使い方の工夫が大切です。
外から入り込む花粉を少なくするために、窓を開ける際は10cmほどの隙間にとどめ、レースカーテンを閉じた状態で行いましょう。換気は花粉の飛散が落ち着く早朝や夜間がおすすめです。換気後は、床や家具に落ちた花粉を広げないよう、濡れた布やウェットモップで静かに拭き取ります。
空気清浄機はHEPAフィルターを搭載した機種を玄関やリビングに置き、常に稼働させるのが望ましいです。加湿器で湿度を50〜60%に保つと、花粉が空気中に漂いにくくなり、室内の環境を整えやすくなります。
症状を軽くするための初期療法
花粉が飛び始めてからではなく、飛散前から治療を始めることで症状を抑えやすくなります。
花粉の飛散開始前、または飛散開始後できるだけ早い段階から治療を始めることで、シーズン中の症状を軽く抑えられる場合があります。飲み薬のほか、根本的な改善を目指す方法として「舌下免疫療法」を行っている医療機関もあります。
この治療は、アレルゲンを少量ずつ体に取り入れて徐々に慣らし、アレルギー反応が起こりにくい状態を目指すものです。満足度は73〜96%と高く、長期の継続が必要ですが、根本的な改善を期待できる治療法とされています。(※6)
治療方法の選択は、症状の程度や生活スタイルによって異なります。市販薬を自己判断で使い続けず、医療機関で相談して自分に合った治療計画を立てることが大切です。
まとめ
花粉症は春だけでなく、夏や秋にも原因があり、一年を通して注意が必要です。くしゃみや鼻水はもちろん、原因不明のだるさや肌荒れも花粉が原因かもしれません。
対策の鍵は、花粉との接触を減らす日々の工夫と、症状が出る前から始める「初期療法」にあります。毎年つらい症状を繰り返している方は、医療機関へ相談してみましょう。体質改善を目指す治療法など、選択肢も増えています。
専門家と一緒に自分に合ったケアを見つけ、快適な毎日を過ごしましょう。
参考文献
- 厚生労働省:「はじめに ~花粉症の疫学と治療そしてセルフケア~」
- 環境省:「花粉症環境保健マニュアル 2022」
- Zhou Y, Dobritsa AA.Molecular mechanisms of pollen aperture formation in Arabidopsis and rice.Journal of Experimental Botany,2025,76,22,p.6674-6682.
- Zhang Y, Marzouk H.Otolaryngologists Practice Pattern on Oral Allergy Syndrome.Allergy Rhinol (Providence),2021,12,p.21526567211021305.
- Xue P, Yan J, Li J.Stapokibart (CM310): A review in seasonal allergic rhinitis.American Journal of Otolaryngology,2025,47,1,p.104765.
- Pfaar O, Janson C, Horn A, Knulst AC, Demoly P.Real-Life Clinical Experience With SQ Grass, Tree, Ragweed, and House Dust Mite Sublingual Immunotherapy Tablets: A Review of Evidence From Non-Interventional Studies.Allergy,2025,80,12,p.3290-3301.
この記事を監修した医師
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医療法人幸人会 田島クリニック 院長
谷川 祐二
徳洲会病院での勤務を経て総合診療、救急医療の面白さに目覚め、専門診療科を特定できない症例や、幅広く全身を横断的に診断する全人的医療を得意とする。
消化器分野では、苦痛の少ない胃カメラ検査・大腸カメラ検査にも対応しており、がんをはじめとする消化器疾患の早期発見・早期治療に努めている。
2026年1月よりクリニック院長に就任し、地域医療の中核として、患者さんが安心して通い続けられる「来てもらいやすいクリニック」づくりに取り組んでいる。