体質改善が期待できる舌下免疫療法に対して、副作用の不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
舌下免疫療法による副作用は、口のかゆみなど軽度なものが中心です。体がアレルギー物質に慣れようとする過程で生じる反応であり、治療を続けるなかで徐々に治まっていきます。重篤な症状はまれで、多くは自宅で対処可能です。
この記事では、副作用が起こる理由や発生しやすい時期、具体的な対処法までを解説します。仕組みを正しく理解することで不安を和らげ、根本治療に向けた一歩を踏み出しましょう。
目次
舌下免疫療法の副作用とは?
舌下免疫療法の主な副作用は、薬が直接触れる口の中や喉などに現れる局所的な症状です。治療を開始した直後や、薬の量を増やしたタイミングで見られます。多くの場合、治療を継続していくうちに体が慣れ、症状は落ち着いていきます。
従来の飲み薬で懸念される眠気やだるさなどの全身症状とは異なり、口腔内や喉の局所的な反応が主となる点も特徴です。
ここでは、副作用が起こる発生のメカニズムと、一般的なアレルギー薬との副作用の違いを解説します。
舌下免疫療法の副作用が起こる理由
舌下免疫療法の副作用が起こる理由は、体が治療薬に含まれるアレルゲンを排除すべき異物と認識して防御反応を起こすためです。
舌の下の敏感な粘膜にアレルゲンを直接保持するため、接触部分で拒絶反応が生じます。これが口の中の腫れやかゆみなどの症状として現れます。副作用は、体が異物に正しく反応して、免疫が徐々に慣れようとしている過程で生じる一時的な通過点です。
アレルギー薬との副作用の違い
一般的なアレルギー薬と舌下免疫療法では、治療のアプローチが異なるため、副作用の現れ方や性質にも大きな違いがあります。
アレルギー薬の多くは対症療法で、眠気や口の渇きなどの全身症状が出やすくなります。免疫療法は、原因物質を直接粘膜から吸収させて体を慣れさせる治療法のため、薬が触れた場所に反応が集中します。
従来の治療と舌下免疫療法の違いを、以下の表にまとめました。
| 項目 | アレルギー薬(抗ヒスタミン薬など) | 舌下免疫療法 |
|---|---|---|
| 項目治療の目的 | アレルギー薬現在の症状を一時的に抑える対症療法 | 舌下免疫療法根治も期待できる治療法 |
| 項目作用の仕組み | アレルギー薬原因物質の働きをブロックする | 舌下免疫療法アレルゲンを少量ずつ投与し体を慣れさせる |
| 項目主な副作用 |
アレルギー薬
|
舌下免疫療法
|
| 項目副作用の性質 | アレルギー薬全身性のもの | 舌下免疫療法アレルゲンが触れた口や喉に集中する |
飲み薬では全身性の副作用が懸念されますが、免疫療法は投与した部位に現れる局所的な反応が主という点に違いがあります。
舌下免疫療法の起こりやすい副作用
舌下免疫療法の副作用は、主に薬が直接触れる口の中や喉などに現れる局所的なアレルギー反応です。その多くは軽度かつ一時的で、治療を継続して免疫がつくにつれて現れなくなっていきます。(※1)
舌下免疫療法で見られやすい、主な症状は以下のとおりです。
- 口のかゆみ
- 喉の違和感
- くしゃみ・鼻水・軽い咳
- 重度な副作用(アナフィラキシーなど)はまれ
口のかゆみ
舌下免疫療法でよくある副作用が、口の中の不快感です。薬を舌の下に含んだ直後から、粘膜が直接アレルゲンに触れることで、以下の感覚を生じる可能性があります。
- 舌や唇、口内全体のピリピリとした刺激感
- 口の中や唇が腫れぼったい感覚
- 我慢できる程度の軽いかゆみ
治療を始めて間もない時期に症状が出るのは、正常な経過です。治療を継続し、体がアレルゲンを敵ではないと認識し始めると症状は軽くなります。
喉の違和感
口の中の症状と同時に、喉の違和感もよくある副作用です。舌の下で溶かした薬を飲み込む際、アレルゲンが喉の粘膜を通過するために起こります。
具体的には、以下の症状が現れることがあります。
- 喉の奥がイガイガする、かゆい
- 喉が少し腫れている感覚
- 何かが詰まっているような不快感
- 耳の奥のかゆみ
薬を飲み込む際には一気に飲み込まず、唾液とゆっくり混ぜ合わせるようにすると刺激が少なくなります。喉の腫れが強くなる、息苦しさを感じるなど、いつもと違う症状が出た場合は速やかに医師へご相談ください。
くしゃみ・鼻水・軽い咳
舌下免疫療法の副作用では、鼻や気管支に症状が現れることもあります。元々の花粉症やアレルギー性鼻炎で見られる症状と似ています。
症状は、くしゃみ・サラサラした透明な鼻水・鼻づまり・軽い咳などです。気管支喘息の方は、気道が過敏に反応しやすいため、咳が長引くなどの変化に注意が必要です。
副作用は一時的なものがほとんどですが、喘息の悪化リスクもあるため、持病がある方は治療開始前に医師と相談し、安全に進めましょう。
重度な副作用(アナフィラキシーなど)はまれ
舌下免疫療法で注意すべき副作用はアナフィラキシーですが、発生頻度はまれです。(※2)
アナフィラキシーは、アレルゲンが体内に入ると短時間で起こる激しい全身のアレルギー反応です。命に関わることもあるため、以下の症状を知っておくことが大切です。
| 分類 | 症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 分類皮膚 | 症状全身に広がるじんましん・皮膚の赤み・強いかゆみ | 対応病院受診 |
| 分類呼吸器 |
症状
|
対応救急搬送 |
| 分類消化器 |
症状
|
|
| 分類全身 |
症状
|
症状が複数重なったり、急速に進んだりした場合は、救急車の要請が必要なときもあります。
舌下免疫療法の副作用が出やすいタイミング
舌下免疫療法の副作用は、治療を始めて間もない時期や、薬の量を増やしたタイミングで現れやすくなります。
体がまだアレルゲンを異物として認識しており、過剰に防御しようとするためです。毎日継続して薬を体に入れることで、免疫システムは徐々に安全なものだと学習していきます。
時期ごとの副作用と体の変化は以下のとおりです。
| 時期 | 副作用の特徴と体の変化 |
|---|---|
| 時期治療開始〜1か月 | 特徴副作用が出やすい時期、口のかゆみや喉の違和感が起こりやすい |
| 時期1〜3か月 |
特徴
|
| 時期3か月以降 |
特徴
|
治療開始直後が反応が出やすい時期ですが、多くの場合は時間の経過とともに体が慣れていきます。初期の反応だけで判断せず、長期にかけての治療の継続が大切です。
副作用が出たときの具体的な対処法
多くの副作用は軽度で適切に対処が可能です。大切なのは、対応すべき症状と行動を、あらかじめ知っておくことです。
症状の重さに応じた対処法は以下のとおりです。
- 軽度な副作用が出たら水でうがいして様子を見る
- 強い腫れや息苦しさが出たら病院を受診する
- 服薬を中断する場合は医師に相談する
軽度な副作用が出たら水でうがいして様子を見る
口の中の腫れやかゆみなどの軽度な副作用が現れた場合は、患部を冷やしながら原因物質を洗い流す対応が基本となります。
水でうがいを行い、口の中を洗い流してください。氷を口に含んでなめたり、冷たい飲み物を摂取したりして患部を直接冷やすのも一つの方法です。
冷却には血管を収縮させて炎症を抑える働きがあり、うがいは口内に残った薬の成分を除去します。アレルゲンによる刺激を減らし、過敏になっている反応を鎮める効果が期待できます。
症状が改善しない場合や不安を感じるときは、医師へ相談しましょう。
強い腫れや息苦しさが出たら病院を受診する
薬を服用した後に、強い腫れや息苦しさなどの激しい症状が現れた場合は、医療機関の受診をしてください。一般的な副作用の範囲を超え、アナフィラキシーと呼ばれる重篤なアレルギー反応を起こしている可能性があるためです。
以下のような症状がある場合は、速やかに病院を受診しましょう。
- 息苦しさや呼吸をするときのゼーゼー音
- 全身に広がるじんましん
- 激しい腹痛・嘔吐
- 血圧低下によるめまい・ふらつき
喉の奥が強く腫れて声が出しにくい、飲み込みにくいなどの症状は気道が狭くなっているサインです。症状が1つでも見られた場合は、速やかに救急車の要請や救急外来への受診をしてください。
服薬を中断する場合は医師に相談する
体調不良や旅行などで薬を飲むのが難しい場合でも、自己判断で中断せず、医師へ相談してください。急に薬を止めたり再開したりすることは、それまでの治療の積み重ねを無駄にするだけでなく、思わぬリスクを招きます。
治療効果がなくなってしまうことや、再開した際に薬が効きすぎて強い反応が出るなど、医師が正しい診断をできなくなる可能性があります。数日の飲み忘れであれば影響が少ない場合もありますが、中断や再開の際は医師の指示に従い、安全に治療を続けましょう。
舌下免疫療法を安全に受けるための注意点
舌下免疫療法を安全に進めるためには、医師との連携が欠かせません。医師に自身の健康状態や変化を正しく共有することが、思わぬトラブルの回避につながります。
治療をスムーズに継続するために意識したいポイントを解説します。
持病がある場合は事前申告する
治療を検討する段階で、現在治療中の病気や薬に関する情報は、医師へ詳しく伝えてください。持病の種類によっては、副作用のリスクが高まったり、治療の進め方を慎重に検討したりする必要があるためです。
以下の病気や状態に当てはまる方は、医師にお伝えください。
- 気管支喘息
- 重い心臓の病気
- コントロール不良の高血圧
- 自己免疫疾患
- 悪性腫瘍(がん)の治療中の方
- 他のアレルギー疾患
- 服用中の薬
上記に該当しても治療ができる場合はありますが、医師による判断が必要です。正確な情報を共有し、リスクを検討したうえでの治療開始が、自身の安全を守ることにつながります。
定期通院を続けて副作用の変化を報告する
治療開始後は、定期的な通院を継続し、副作用の有無や体調の変化を医師へ伝えてください。
舌下免疫療法は長期間にわたる治療のため、体のアレルギー反応は徐々に変化します。口内や粘膜の微妙な状態は自己判断が難しいため、専門家による客観的なチェックを受けることが、安全に治療を続けるうえで重要です。
定期的な診察では、副作用の状況や治療の進み具合を確認し、体調に合わせて治療計画を調整することもあります。小さな違和感でも、早めに共有すれば適切な対処が可能です。
医師とともに経過を見守ることが、無理なく治療を続けるポイントです。
まとめ
舌下免疫療法の副作用は、多くの場合、口のかゆみや喉の違和感などの軽い症状にとどまります。副作用の症状は、体がアレルゲンに慣れていく過程で起こる正常な反応であり、治療を続けるうちに落ち着きます。
重篤な症状はまれですが、万が一の対処法を知っておくことで、より安心して治療に取り組めます。自己判断で中断せず、気になることがあれば些細なことでも医師に相談してください。
正しい知識を持って治療を進め、つらいアレルギー症状の根本的な改善を目指しましょう。
参考文献
- Tyler A Janz, Raliat O Jimoh, Shaun A Nguyen, Kareem B Haroun, Brian McKinnon, Farrah N Siddiqui. Exploring Side Effects of Sublingual Immunotherapy: A Systemic Review and Meta-Analysis. Ear Nose Throat J,2024.
- Hendrik Nolte, Moisés A Calderon, David I Bernstein, Graham Roberts, Ryuji Azuma, Ruta Gronskyte Juhl, Veronica Hulstrøm. Anaphylaxis in Clinical Trials of Sublingual Immunotherapy Tablets. J Allergy Clin Immunol Pract,2024,12,1,p.85-95.e4.
