新型コロナウイルス感染症の流行を機に、サイトカインという言葉を耳にしたことはありませんか? サイトカインは体内に侵入したウイルスなどに抵抗するために必要な、情報伝達物質です。現在、数百種類以上確認されています。
しかし、サイトカインのバランスが崩れると、関節リウマチなどの自己免疫疾患やアレルギーなどの病気の引き金になることがあります。この記事では、サイトカインの主な種類や機能、関連する疾患などを解説していきます。
サイトカインに関する知識をつけて、自分や周囲の健康に対して理解を深めていきましょう。
サイトカインとは?体内での役割と種類
サイトカインは、体をウイルスなどから守るために、細胞同士のコミュニケーションに使われる情報伝達物質です。
免疫細胞や神経細胞が情報をやり取りする際の「合図」のような役割を担い、炎症を起こしたり抑えたりすることで、体を外敵から守っています。
サイトカインの働く仕組み
サイトカインは、細胞から分泌されるタンパク質で、細胞同士のコミュニケーションを担う情報伝達物質です。人間の体には、免疫という仕組みがありますが、サイトカインは免疫システムが機能するために重要です。
例えば、肺に細菌が侵入したときは、肺胞にいる免疫細胞(肺胞マクロファージ)が細菌を発見します。肺胞マクロファージは、細菌に抵抗するための応援要請を、ほかの免疫細胞に送るためにサイトカインを放出します。
応援要請を受け取ったほかの免疫細胞たちは、炎症が起きている肺へと集まり、細菌に抵抗し排除します。例のように、サイトカインは特定の細胞に働き、さまざまな指示を出して免疫反応を調整しています。
サイトカインと炎症・痛みとの関係性
この仕組みが必要以上に働いてしまうと、問題が生じることがあります。
本来、炎症や痛みは体を守るための重要な反応ですが、補体やサイトカインが過剰に活性化した状態が続くと、神経が常に刺激に敏感な状態となり、原因がはっきりしない慢性疼痛へと移行してしまいます。
脳や脊髄、末梢神経に存在する免疫細胞がこの過程に関与し、免疫と神経が相互に影響し合うことで痛みが増幅されるとの報告もあります。(※1)
サイトカインストームとは?過剰反応によるリスク
ときに、サイトカインの働きが制御不能となり、暴走するケースがあります。この状態をサイトカインストームと呼びます。
サイトカインストームは、重い感染症などが引き金となります。炎症性サイトカインが次々に放出され、免疫システムが過剰に反応します。この状態になると、病原体だけでなく、自身の正常な細胞や組織まで傷つけてしまうのです。
例えば、肺や腎臓、肝臓などの臓器がサイトカインストームにより傷つくと、多臓器不全という重篤な状態に陥ることがあります。新型コロナウイルス感染症で重症化する原因としても、サイトカインストームが注目されました。
サイトカインの種類とそれぞれの働きを解説
ここでは、その中でも代表的なサイトカインの種類と働きについて、一つずつ詳しく見ていきましょう。
インターロイキン(IL)
インターロイキンは、主に免疫細胞である白血球の間で情報をやり取りする重要な役割を担っています。「インター(Inter:間)」と「ロイキン(Leukin:白血球)」という言葉が名前の由来です。現在までに40種類以上が見つかっており、IL-1やIL-2のように番号で呼ばれています。
インターロイキンの特徴は、種類によって働きが大きく異なる点です。あるものは炎症を促進する「アクセル役」となり、またあるものは炎症を抑える「ブレーキ役」として機能します。
| 種類 | 主な働き | 関連する状態や疾患 |
|---|---|---|
| IL-1β, IL-6 | 炎症を引き起こす中心的な役割(炎症性サイトカイン) | 関節リウマチ、急性肺損傷、発熱 |
| IL-4 | アレルギー反応を促進する | 気管支喘息、アトピー性皮膚炎 |
| IL-10 | 炎症や免疫反応を抑制する(抗炎症性サイトカイン) | 過剰な免疫反応の制御 |
| IL-17 | 炎症反応を誘導する | 乾癬、強直性脊椎炎 |
このように、インターロイキンは免疫システムのバランス維持に不可欠です。しかし、このバランスが崩れると、関節リウマチのような自己免疫疾患やアレルギー疾患の原因となります。
インターフェロン(IFN)
インターフェロンは、ウイルスなどの病原体が体内に侵入した際に、細胞が作り出すサイトカインです。「インターフェア(Interfere:妨害する)」が名前の由来です。
インターフェロンは、ウイルス感染に対する自然免疫応答において、中心的な役割を担います。主に I 型とⅡ型の2種類に分けられます。
| タイプ | 働き |
|---|---|
| I型インターフェロン(IFN-α、IFN-βなど) | ・ウイルスの増殖を抑える ・免疫細胞の一種であるNK(ナチュラルキラー細胞)を活性化させる |
| II型インターフェロン(IFN-γ) | ・T細胞やNK細胞といった免疫細胞が作る ・マクロファージなどの免疫細胞を強力に活性化させ、感染した細胞やがん細胞を攻撃する力を高める |
この体を守る仕組みを利用して、インターフェロンはC型肝炎や一部のがんの治療薬としても応用されています。
腫瘍壊死因子(TNF)
腫瘍壊死因子(TNF)は、がん細胞(腫瘍)を見つけて破壊(壊死)させる働きを持つサイトカインとして発見されました。
特にTNF-αは、IL-1やIL-6と並ぶ代表的な「炎症性サイト カイン」です。他の炎症性サイトカインやケモカインの産生を促進する作用があります。発熱や倦怠感などを引き起こす原因物質の一つです。
TNF-αは細菌やウイルスから体を守るために不可欠ですが、過剰に作られ続けると、自分自身の体を攻撃してしまいます。関節リウマチやクローン病といった自己免疫疾患では、このTNF-αの過剰な働きが主な原因です。そのため、TNF-αの働きを抑える「抗TNF-α抗体製剤」という薬が、これらの病気の治療に欠かせません。
ケモカイン
ケモカインは、白血球などの免疫細胞を特定の場所に呼び寄せる「誘引物質」として働くサイトカインの総称です。化学物質(Chemo:ケモ)の力で細胞の動き(Kine:カイン)をコントロールすることから、この名前が付けられました。
ケモカインには「CCL」や「CXCL」といった記号で分類されるものが50種類近くあり、呼び寄せる細胞の種類が異なります。このシステムは体を守るために不可欠ですが、アレルギー疾患やがんの転移などにも関わることが知られています。
増殖因子
増殖因子は、その名の通り、特定の細胞の成長や分裂(増殖)を促すサイトカインの一群です。私たちがケガをしたときに皮膚や血管が新しく作られ、傷がふさがるのは、この増殖因子のおかげです。体の様々な場所で、細胞の修復や再生を促す物質として機能しています。
| 増殖因子の種類 | 働き |
|---|---|
| EGF(上皮増殖因子) | 皮膚や粘膜の細胞の増殖を促し、傷の治りを早める |
| FGF(線維芽細胞増殖因子) | 組織の修復や血管の新生を助ける |
| VEGF(血管内皮増殖因子) | 新しい血管を作る働き(血管新生)を促す |
| PDGF(血小板由来増殖因子) | 傷口に集まる血小板から放出され、組織の修復を促す |
これらの増殖因子は体の修復に欠かせませんが、バランスが崩れると問題を引き起こすこともあります。例えば、がん細胞が自身で増殖因子を作り出し、無限に増え続けることがあります。
コロニー刺激因子(CSF)
コロニー刺激因子(CSF)は、血液細胞が作られる「骨髄」に働きかけ、その生産をコントロールするサイトカインです。血液の元になる「造血幹細胞」に指令を出し、特定の血液細胞への成長を促します。
白血球の一種である「好中球」の生産を促すG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)や、免疫細胞である「マクロファージ」や「単球」の生産を促すM-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)などがあります。
TGF-βファミリー
TGF-β(トランスフォーミング増殖因子-β)ファミリーは、多彩な機能を持つサイトカインです。細胞の増殖を促すこともあれば、逆に抑制することもあります。
TGF-βの最も重要な役割の一つは、免疫反応を適切に終わらせる「ブレーキ役」としての機能です。炎症を引き起こすサイトカインの働きを抑え、過剰な免疫反応が自分自身の体を傷つけないようにコントロールします。このため、IL-10と並ぶ代表的な「抗炎症性サイトカイン」に分類されます。
その他
その他、以下のようなサイトカインがあります。
| 種類 | 主な働き |
|---|---|
| レプチン | 脳に働きかけ、食欲を抑える |
| アディポネクチン | インスリンの働きを助け、動脈硬化を防ぐ |
| イリシン | エネルギーを貯蔵する白色脂肪細胞を、熱を産生してエネルギーを消費する褐色脂肪細胞のように変化させる |
| BDNF(脳由来神経栄養因子) | 脳に直接作用し、記憶などをつかさどる神経細胞の働きを助ける |
まとめ
サイトカインは、異物から体を守るために炎症を促すアクセル役と、過剰な反応を抑えるブレーキ役のバランスを保つことで私たちの健康を支えています。
このバランスが崩れると、関節リウマチやアレルギーなどの、さまざまな不調につながる場合が出てきます。あなたが、もしサイトカインが関わる病気の説明を受けたり、自分の症状に不安を感じたりしたときに、今回の記事を役立てていただけたら幸いです。
参考文献
- Vygonskaya M, Wu Y, Price TJ, Chen Z, Smith MT, Klyne DM, Han FY. The role and treatment potential of the complement pathway in chronic pain.J Pain,2025,27,104689.
