虫歯治療で費用を抑えられる銀歯と、見た目が自然なセラミックのどちらを選ぶべきか悩んだ経験はありませんか?
この記事では、銀歯とセラミックの違いを歯科医が徹底的に解説します。銀歯とセラミックの違いについて知っておくべき点を比較できるようになりましょう。
銀歯とセラミックの6つの違い
銀歯とセラミックにはそれぞれに異なる特徴があり、単純にどちらが良いとは言い切れません。どちらを選ぶべきかを決めるためには、それぞれの違いを把握することが大事です。
銀歯とセラミックには、以下の表のような違いがあります。
| 銀歯 | セラミック | |
| 見た目 | 銀色で天然の歯とは違う色のため目立つ | 天然の歯に近い白さのため周りの歯となじむ |
| 耐久性と寿命 | ・5~7年程度 ・金属製のため素材の強度は高め | ・10年以上 ・まれに割れたり欠けたりする |
| 虫歯の再発リスク | 銀歯と歯の隙間にできる可能性あり | 虫歯の再発(二次虫歯)リスクを低く抑えられる |
| 費用 | ・詰め物で3,000円前後 ・被せ物で5,000円前後 | ・詰め物で約40,000~80,000円 ・被せ物で約60,000~200,000円 |
| 金属アレルギーのリスク | アレルギーを引き起こす可能性あり | なし |
| 適合精度と外れにくさ | ・技工士が手作業で作成 ・経年劣化や形状変化により外れる可能性あり | ・コンピューターで作成するため高精度 ・歯と化学結合するため外れにくい |
ここでは、表の項目にある銀歯とセラミックの主に6つの違いについて一つひとつ詳しく解説していきます。
①見た目
②耐久性と寿命
③虫歯の再発(二次虫歯)リスク
④費用
⑤金属アレルギーのリスク
⑥適合精度と外れにくさ
①見た目
詰め物や被せ物の見た目は、口全体の印象を大きく左右する重要なポイントです。人から見えやすい前歯や、笑った時にのぞく歯の場合、その違いはより一層際立ちます。
銀歯とセラミックの見た目を比較しました。
| 比較項目 | 銀歯 | セラミック |
| 色 | 銀色で目立つ | 周囲の歯に合わせた自然な白色 |
| 透明感 | なし | 天然歯に近い透明感がある |
| 審美性 | 低い | 高い |
セラミックは周囲の歯の色調に合わせて細かく調整できるため、どこを治療したのか分からなくなるほど自然な仕上がりを目指せます。表面が滑らかで汚れがつきにくく、色素が沈着しにくい点も見た目における大きな特徴です。
②耐久性と寿命
治療した歯の詰め物や被せ物の素材によって、強度や長持ちのしやすさに違いがあります。
銀歯は金属製のため強度は高く、強い力がかかっても割れにくいという利点があります。しかし、長期間使用するうちに金属が少しずつ劣化したり、歯と銀歯を接着しているセメントが溶け出したりします。
劣化が進むと歯と銀歯の間に隙間ができて外れやすくなることがあるため、注意が必要です。一般的な寿命の目安は、口内環境にもよりますが5〜7年程度とされています。
セラミックは陶器でできているため、極端に強い衝撃が一点に集中すると、まれに欠けたり割れたりする可能性はあります。しかし、近年のセラミックは素材開発が進み、非常に強度が高くなっています。ジルコニアセラミックは、奥歯の強い力にも耐えられるので、日常的な食事で問題になることはほとんどありません。
セラミックは精密に作製され、歯と化学的に強固に接着するため、長持ちしやすいのが特徴です。適切なセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスを続けることで、10年以上の長期にわたって使用できます。
③虫歯の再発(二次虫歯)リスク
詰め物や被せ物の素材は、一度治療した歯が再び虫歯になるリスクに大きく関わっています。
銀歯は時間が経つと金属が変形したり、接着剤が唾液で溶け出して歯と銀歯の間に隙間が生まれやすくなります。隙間から唾液や細菌が侵入すると、詰め物の内部で虫歯が進行する恐れがあるため、注意が必要です。痛みが出る頃には神経まで進行していることがあり、菌が根元まで到達するとご自身の歯に大きな影響が出る場合もあります。
セラミックは、専用の接着剤で歯と化学的に接着しているため、隙間がほとんどありません。素材の表面が滑らかで、陶器のお皿のように汚れが付着しにくいという利点もあります。虫歯の再発リスクの観点で言うと、セラミックの方が歯の健康を長く維持するためにも優れているでしょう。
④費用
銀歯は保険診療、セラミックは自費診療のため、治療にかかる費用は大きな差があります。
銀歯は健康保険が適用されるため、自己負担額を比較的安く抑えることができます。費用は治療する歯の部位や大きさによりますが、3割負担の場合、詰め物で3,000円前後、被せ物で5,000円前後が一般的な目安です。
セラミック治療は、より高い審美性や機能性、長期的な安定性を追求するため保険適用の銀歯に比べて費用は高くなります。費用はセラミックの種類や歯科医院によって異なりますが、一般的な相場は1本あたり、詰め物で約40,000~80,000円、被せ物で約60,000~200,000円です。
費用だけを見るとセラミックは高価に感じられますが、二次虫歯になりにくく長持ちしやすいという特徴があります。銀歯の再治療を繰り返すと、治療費や通院時間のコストがかかるだけではありません。治療のたびに歯を削るため、歯そのものの寿命を縮めてしまうことにもつながります。
どちらかを選ぶ際は、将来にわたっての治療費や歯の寿命について考えておくことも大事です。
⑤金属アレルギーのリスク
口の中の詰め物や被せ物により、金属アレルギーを引き起こす可能性があります。
銀歯は、主に「金銀パラジウム合金」という複数の金属を混ぜ合わせた合金で、金属アレルギーを引き起こす可能性があります。この中に含まれるパラジウムやニッケルなどの金属は、アレルギー反応を引き起こしやすい物質です。
金属が唾液によってイオン化して溶け出し、体内のタンパク質と結合することで、アレルギーの原因となることがあります。(※1)症状は口の中の粘膜のただれや口内炎だけでなく、手足のかゆみや湿疹、肌荒れなどの症状もあるため注意しましょう。
上記のような症状が気になる方は「チタン冠」という金属をおすすめします。チタンは生体に対する安全性がとても高く、金属アレルギーの心配がほとんどありません。条件付きで2020年より大臼歯部、2022年からは前歯に保険診療でチタン製の被せ物が可能となりました。(※2)
一方で、セラミックは陶器の一種であり、金属を一切使用していないため、金属アレルギーになることはありません(メタルボンドセラミックを除く)。セラミックは体にとって安全な「生体親和性」の高い素材を使用しているため、金属アレルギーが心配な方におすすめです。(※3)
⑥適合精度と外れにくさ
歯の詰め物や被せ物の適合精度や外れにくさは、二次虫歯のリスクや歯の寿命を左右する、重要な要素です。
銀歯はセメントを使い、歯と接着させますが、長期間使用していると外れる可能性があります。銀歯は粘土のような材料で歯の型取りを行い、型に石膏を流して作った模型上で、技工士が手作業で製作します。
材料の変形や人的な作業で行うため、どうしてもミクロン単位の誤差が生じることがあります。銀歯は経年劣化によって金属がわずかに変形し、歯との間に隙間ができやすくなることも外れやすくなる原因です。
セラミックは歯と化学結合するため、接着が強くなり外れることがありません。口の中を3D光学スキャナーで撮影し、コンピューターが詰め物や被せ物を設計・作製する方法が主流です。歯と寸分の狂いなくぴったりと適合するため、外れたり隙間ができたりするリスクを減らすことができます。
セラミックのメリットとデメリット
セラミック治療には多くの優れた点がある一方で、注意すべき点も存在します。治療後に後悔しないためには、両方の側面を正しく理解することが大切です。
| メリット | デメリット |
| ・天然歯と見分けがつかないほど美しい ・虫歯の再発リスクを大幅に抑えられる ・金属アレルギーの心配がなく体に優しい | ・保険が適用されず費用が高額になる ・強い衝撃でまれに割れることがある ・歯を削る量が少し多くなる場合がある |
セラミックは強い衝撃があると割れることもあり、無意識の歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、歯科医師への相談が必要です。セラミックは被せ物として十分な強度を確保するために、銀歯よりも歯を削る量がわずかに多くなることがあります。
銀歯のメリットとデメリット
虫歯治療で長く使われてきた銀歯について、メリットとデメリットを正しく理解しましょう。
| メリット | デメリット |
| ・保険が適用され費用を抑えられる ・金属ならではの強度があり割れにくい | ・見た目が目立ってしまう ・虫歯の再発リスクが高い ・金属アレルギーの原因になる可能性 ・歯や歯ぐきが黒ずむことがある |
銀歯で使用される金属は熱を伝えやすいため、治療した歯で冷たいものや熱いものを飲食した際に、歯がしみやすく感じる場合があります。
銀歯とセラミックでよくある質問
ここでは、患者さんからよくいただくご質問に、歯科医師の立場から一つひとつ丁寧にお答えします。
前歯と奥歯でおすすめの素材は違う?
口の中の場所によって、適した素材は変わってきます。前歯と奥歯では、担っている役割が異なり、それぞれ最適な素材を使用することが重要です。
前歯は高い審美性や発音、食べ物を噛み切る機能が求められることからセラミックが適しています。
奥歯は外からは見えにくいですが、食事において強い力に耐える強度や、噛み合わせの安定性が求められます。丈夫な銀歯も選択肢の一つですが、人工ダイアモンドといわれるほど強度が高いジルコニアセラミックがおすすめです。
それぞれの歯の役割を考慮し、ご自身の希望(見た目、耐久性、費用など)に合わせて最適な素材を選ぶことで、満足度の高い治療が受けられます。
セラミックは欠けたり割れたりしない?
セラミックが欠けたり割れたりする可能性はゼロではありませんが、丈夫な素材です。日常的なお食事で問題になることはほとんどありません。
ただし、以下のような状況では、破損のリスクが高まる可能性があります。
- 歯ぎしりや食いしばりの癖がある
- 極端に硬いものを噛む習慣
- 転倒や事故による強い衝撃
セラミックを長く安心して使い続けるためには、破損のリスクを減らす工夫が大切です。歯科医院では、患者さんの口の状態に合わせて、マウスピースの装着や定期的なメンテナンスなどの対策を提案することがあります。
万が一、セラミックが小さく欠けてしまった場合は、修理できることもあります。破損に気づいた場合は、ご自身で判断せず早めに歯科医師へご相談ください。
古い銀歯をセラミックに交換できる?
口の中にある銀歯を、新しくセラミックの詰め物や被せ物に交換することは基本的には問題ありません。見た目や金属アレルギー、虫歯の再発を防ぐために銀歯からセラミックへの交換を希望される方が増えています。
銀歯をセラミックに交換する際の治療は、一般的に以下の流れで進みます。
- 診査・診断とカウンセリング
- 古い銀歯の除去
- 歯の状態の確認と虫歯治療
- 歯の形の形成と型取り
- セラミックの装着
銀歯をセラミックに変えたい方は、一度歯科医師に相談してみましょう。
まとめ
費用を抑えたい場合は銀歯、見た目の美しさや虫歯の再発防止など長期的な歯の健康を考えるならセラミックがおすすめです。どちらの素材にも良い点と注意点があり、単純にどちらが優れているとは言えません。
大切なのは、ご自身が治療において何を一番優先したいかを考え、納得して選択することです。
気になる方はかかりつけの歯科医師とよく相談し、ご自身のライフプランに合った最適な治療法を見つけてください。
参考文献
- 日本皮膚科学会. 接触皮膚炎診療ガイドライン2020. 東京:日本皮膚科学会;2020.524-527
- 公益社団法人 日本補綴歯科学会.「保険診療におけるチタン冠の診療指針 2023 」
Aldhuwayhi S. Zirconia in dental implantology: a review of the literature with recent updates. Bioengineering. 2025;12:543.
この記事を監修した医師
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谷川歯科医院 歯科医師
谷川 淳一
歯科医師。日本口腔インプラント学会専修医。小児歯科治療や小児矯正、インプラント治療を得意とし、他の歯科医師への指導も行う。
患者様一人ひとりと真摯に向き合って治療方針を決めていくことを信条としている。