「前歯の隙間が気になって、人前で思いきり笑えない…」すきっ歯を治すためには、どんな治療法があるのか気になる人もいるでしょう。すきっ歯は見た目だけでなく、虫歯や歯周病、噛み合わせなど口腔内にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、代表的な6つの治療法について費用や期間、メリット・デメリットを徹底比較します。ご自身の状況にあった最適な選択肢を見つけ、自信あふれる笑顔を取り戻しましょう。
前歯がすきっ歯になる原因と放置するリスク
すきっ歯は専門的には、空隙歯列(くうげきしれつ)と呼ばれます。上の前歯の真ん中に隙間がある状態は、正中離開(せいちゅうりかい)と言います。
すきっ歯は、見た目のコンプレックスにつながりやすいだけでなく、発音や食事など、機能面にも影響を及ぼすことがあります。ここでは、すきっ歯に関する次の3つを詳しく解説します。
- ① 原因
- ② すきっ歯を放置するリスク
- ③ 子どものすきっ歯
①原因
すきっ歯になる原因は生まれつきの要因と、生活習慣など後から加わる要因があります。
| 先天的な原因 | 後天的な原因 |
|---|---|
|
・顎と歯の大きさのバランスが悪い ・歯の本数が足りない、または多い ・上唇小帯(じょうしんしょうたい)の異常 |
・指しゃぶりや舌で前歯を無意識に押す癖(舌突出癖)、唇を噛む癖がある ・歯周病の進行 ・奥歯の喪失 |
上唇小帯は上唇の裏側にある筋で、通常よりも太かったり前歯の根元近くまで長く伸びていたりすると、すきっ歯の原因になります。
歯周病が進行すると、歯を支えている顎の骨が溶けて歯並びが乱れて隙間ができる場合もあります。
②すきっ歯を放置するリスク
すきっ歯をそのままにしておくと見た目の問題だけでなく、口や全身の健康にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
すきっ歯を放置することで引き起こされるリスクは、以下の5つです。
- 見た目へのコンプレックス
- 虫歯や歯周病になりやすい
- 発音しにくくなる
- 噛み合わせが悪化する
- 消化器官への負担
歯の間に隙間があると食べ物が挟まりやすく、歯ブラシも届きにくいため汚れが残りやすくなり、虫歯や歯周病になる可能性があります。
歯の根元に隙間がある場合は、歯周病の進行に注意が必要です。すきっ歯があると、隣の歯が傾いてきたり、噛み合う歯が隙間に向かって伸びたりすることもあります。
③子どものすきっ歯
子どものすきっ歯は、必ずしもすぐに治療が必要なわけではありません。乳歯の時期に見られるすきっ歯は「発育空隙(はついくくうげき)」と呼ばれます。後から生えてくる乳歯よりも大きな永久歯がきちんと並ぶためのスペースのため、多くは心配のいらない正常な状態です。(※1)
子どものすきっ歯でも、永久歯が生えそろっても隙間が閉じない場合や、 指しゃぶりや舌の癖が続いている場合は注意が必要です。
お子さんの歯や骨はまだ成長途中にあるため、大人に比べて歯を動かしやすいという利点があります。上の前歯が永久歯に生え変わる、7歳頃を目安に一度歯科検診を受けましょう。
すきっ歯の6つの治療法
すきっ歯の治療には、さまざまな選択肢があります。隙間の大きさや原因、患者さんご自身の希望によって最適な方法は異なりますが、主に以下の6つの治療法があります。
| 治療法 | 治療内容の概要 | 費用の目安 | 治療期間の目安 |
|---|---|---|---|
| ダイレクトボンディング | 樹脂を歯に直接盛り付け、隙間を埋める | 1歯6万円〜(税込) | 1日 |
| ラミネートベニア | 歯の表面を薄く削り、セラミックを貼り付ける | 1歯6万円〜(税込) | 約2〜3週間 |
| セラミッククラウン | 歯を削り、セラミックの被せ物をする | 1歯8万円〜(税込) | 約1〜2週間 |
| マウスピース矯正 | 透明なマウスピースで歯を動かし、隙間を閉じる | 20万円〜(税込) | 約3か月〜2年 |
| ワイヤー矯正 | ブラケットとワイヤーで歯を動かす | 20万円〜(税込) | 約6か月〜3年 |
| 口腔筋機能療法 | 舌や口周りの筋肉の癖をトレーニングで改善する | 医院による | 数か月〜 |
ここでは、表の項目にあるすきっ歯の治療法について一つひとつ詳しく解説していきます。
- ① ダイレクトボンディング
- ② ラミネートベニア
- ③ セラミッククラウン
- ④ マウスピース矯正
- ⑤ ワイヤー矯正
- ⑥ 口腔筋機能療法
①ダイレクトボンディング
ダイレクトボンディングは、歯科用の白いプラスチック素材(コンポジットレジン)を使います。コンポジットレジンを歯に直接盛り付けて形を整え、特殊な光を当てて固め、歯の隙間を埋める治療法です。
ダイレクトボンディングのメリットは、健康な歯をほとんど削らずに治療できる点です。歯への負担が少なく、ほとんどの場合1回の通院(30分~1時間程度)で完了します。セラミック治療に比べて費用を抑えられることも利点です。
一方で、コンポジットレジンは構造上、水分を吸収しやすい性質があります。(※2)コーヒーやカレーなど色の濃い飲食物によって、経年的に変色することがあるため注意が必要です。
セラミックほどの強度はないため、強い力がかかると欠ける可能性もあります。歯の美しさを維持するために、歯科医院で研磨などのメンテナンスを定期的に受けましょう。
治療費用の目安は、1歯あたり6万円(税別)です。基本的には自費診療であり、公的保険が適用されません。
②ラミネートベニア
ラミネートベニアは、歯の唇側のエナメル質をわずかに削り、薄いセラミック製のシェル(チップ)を接着剤で貼り付ける治療法です。
歯の隙間を埋めると同時に、歯の色や形も理想的な状態に整えることができます。セラミックは変色に強く、天然の歯のような透明感と白さを長く保つことが可能です。もともとの歯の色が濃い場合でも、希望の白さに仕上げることができます。
ラミネートベニアは、わずかとはいえ健康な歯を削る必要があるため、慎重に検討する必要があります。硬いものを噛むなど、過度な力がかかると割れたり剥がれたりする可能性があることも頭に入れておいてください。
すきっ歯を改善できるものの、歯並びを根本的に治療しているわけではない点もラミネートベニアのデメリットです。
ラミネートベニアの治療費用の目安は、1歯あたり6万円(税別)です。保険適用されず、全額自己負担となるため注意してください。多くの歯に適用しようとすると、治療費が高額となります。
③セラミッククラウン
セラミッククラウンは、歯を全体的に削り、その上からセラミック製の冠(クラウン)を被せます。歯を大きく削るため、健康な歯に行うことは少ない治療法ですが、以下のようなケースでは有効な選択肢となります。
- 歯と歯の隙間が非常に大きい場合
- 神経を失い、歯が黒ずんでしまっている場合
- すでに大きな詰め物があり、そのやり替えが必要な場合
- 歯の傾きやねじれなど、形を大幅に修正したい場合
メリットは、大きな隙間でも確実に閉じられ、歯並び全体を美しく見せられる点です。強度と審美性を両立できるため、重度の症例にも対応できます。
ただし、歯を大きく削るため、歯の寿命を縮める可能性があり、歯科医師が慎重に判断し治療を行います。強い衝撃に弱く、硬いものを食べたり激しい歯ぎしりをしたりすると、割れることもあるでしょう。
治療費用の目安は1歯あたり8万円(税別)前後で、他の治療法よりも高額になる場合があります。自費診療であるため、自己負担額が高い点に注意が必要です。
④マウスピース矯正
マウスピース矯正は、ご自身の歯型から作製した透明なマウスピース型の装置を使います。この装置を一定期間ごとに新しいものに交換しながら、少しずつ歯を動かして隙間を閉じます。
装置が透明なため、マウスピースを装着していても周囲の人に気づかれにくいのが大きな特徴です。食事や歯磨きの際には自分で取り外せるため、お口の中を清潔に保ちやすい利点もあります。ワイヤー矯正に比べて、矯正開始直後の数日間においては歯が動く際の痛みが少ない傾向にあるのもポイントです。(※3)
マウスピース矯正は、1日20時間以上装着することが重要です。装着時間が短いと歯が動かず、治療期間が延びてしまう原因になります。一方、マウスピース装着中は唾液が循環せず、菌が繁殖しやすい環境のため虫歯になりやすいリスクがあります。
また歯の移動量が大きい場合や骨格に原因があるすきっ歯には対応できないことがあるため、事前に確認しましょう。
治療費用の目安は20万円(税別)前後ですが、前歯だけなど部分的な矯正か、全体の矯正かで費用は大きく異なります。前歯だけ・全体の矯正ともに公的保険は適用されず、自費診療です。
⑤ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、軽度のすきっ歯から骨格的な問題が関与する複雑な症例まで、幅広く対応できる矯正方法です。歯に装着したブラケットとワイヤーを用いて、持続的に力を加えることで歯並びを整えていきます。
一方で、金属製の装置は見た目が気になる場合がありますが、現在は白色のブラケットや歯の裏側に装着する舌側矯正など、目立ちにくい選択肢もあります。
また、装置が付くことで歯磨きに少し工夫が必要になりますが、正しいケア方法を身につければ大きな問題になることは多くありません。
治療費用の目安は20万円(税別)前後で、マウスピース矯正と同様、部分矯正か全体矯正かによって費用は大きく変わります。厚生労働省が定めた一部の特定疾患を除き、原則自費診療です。保険適用されず、自己負担額が大きい点に注意しましょう。
⑥口腔筋機能療法
口腔筋機能療法(MFT)は、口の周りの筋肉を正しく使えるようにするトレーニングです。基本的に乳歯の残っている小児に行います。
舌先を上顎に軽く触れさせ、正しい安静位置を固定したり、唇を閉じて空気を口内移動させ筋力強化したりします。毎日5〜10分程度のトレーニングに合わせて、1〜2か月に1回程度通院が必要です。効果が出るまで時間がかかる点に注意してください。
舌で前歯を押す癖(舌突出癖)や口呼吸など、すきっ歯の原因となる悪い癖を改善します。MFTは、矯正治療後でも舌の癖が残っていると後戻りの原因となるため、主に矯正治療と並行して実施されます。
MFTは、1回あたりの費用の目安が3,000〜1万円程度です。自費診療であり、保険適用はされません。
まとめ
すきっ歯の治療には、歯を削らずに1日で完了する方法から、歯並び全体を根本的に改善する矯正治療まで、さまざまな選択肢があります。どの治療法が最適かは、歯の隙間や原因、ご自身が何を優先したいかによって異なります。
見た目のコンプレックスはもちろん、虫歯や発音など機能面への影響も考え、放置せずに専門家に相談することが大切です。まずは信頼できる歯科医師に相談し、ご自身にぴったりの治療法を一緒に見つけていきましょう。
参考文献
- 公益社団法人日本小児歯科学会:「こどもたちの口と歯の質問箱」
- Cinelli F., Scaminaci Russo D., Nieri M., Giachetti L. Stain Susceptibility of Composite Resins: Pigment Penetration Analysis. Materials,2022,15,14,4874.
Qiuying Li, Yugui Du, Kai Yang.Comparison of pain intensity and impacts on oral health-related quality of life between orthodontic patients treated with clear aligners and fixed appliances: a systematic review and meta-analysis.BMC Oral Health,2023,23,1,p.920.