歯茎にできものができ、食事や歯磨きのたびに痛みを感じると、「歯茎にも口内炎ができるのか」と疑問に思うのではないでしょうか。唇や頬の内側にできる口内炎はよく知られていますが、歯茎に現れる炎症は判断に迷いやすいです。
歯茎にできる炎症のなかには、口内炎もあれば、歯周病や歯の根の感染など、別の病気が原因となっているケースもあります。一般的な口内炎は1〜2週間ほどで改善しますが、症状が長引いたり強い痛みが続いたりする場合は注意が必要です。
この記事では、歯茎にできる口内炎の種類と原因、間違えやすい病気との違い、症状を早く改善するための治療方法を解説します。症状を正しく理解し、不安を減らしながら適切な対処ができるようにしましょう。
歯茎にできる口内炎の種類と原因
歯茎にできる口内炎は、原因によっていくつかの種類に分けられます。種類が違えば、見た目の特徴や適切な対処法も異なります。
ここでは、歯茎にできる代表的な口内炎の種類と原因として、以下の5つを解説します。
- ①アフタ性口内炎
- ②カンジダ性口内炎
- ③ヘルペス性口内炎
- ④カタル性口内炎
- ⑤その他口内炎
①アフタ性口内炎
アフタ性口内炎は、歯茎にできる口内炎のなかで多く見られるタイプです。
アフタ性口内炎の見た目は、中央が白っぽく少しくぼんだ円形や楕円形の潰瘍が特徴として挙げられます。周囲は赤く縁取られており、大きさは直径2〜10mm程度で歯茎だけでなく、頬の内側や舌など、口腔内のさまざまな部位に発生します。
強い痛みを伴う点も、アフタ性口内炎の特徴の一つです。食べ物や飲み物に触れるだけで痛みを感じることがあり、塩味や酸味の強い食品、香辛料、熱い飲食物がしみやすくなります。
ストレスや睡眠不足、疲労、風邪のあとなどで体の抵抗力が落ちた状態では起こりやすくなります。ビタミンB群や鉄分、葉酸などの栄養不足、歯磨きや食事中に生じた口腔内の小さな傷も発症のきっかけになるでしょう。
多くのアフタ性口内炎は、1〜2週間ほどで自然に治ります。ただし、痛みが強く日常生活に支障が出たり、2週間以上経っても改善しなかったりする場合は、歯科医院へ相談しましょう。
②カンジダ性口内炎
カンジダ性口内炎は、口の中に常在しているカンジダ菌(真菌)が増殖することで起こる口内炎です。カンジダ菌は誰の口腔内にも存在していますが、免疫力が低下すると炎症を起こしやすくなります。
カンジダ性の口内炎は、偽膜性カンジダ症と紅斑性カンジダ症の2つに分けられます。
偽膜性カンジダ症は、頬の内側や舌、歯茎などに、白い苔のような膜が付着します。膜は拭うと剥がれ、下の粘膜が赤くただれている点が特徴です。痛みが軽い場合もありますが、ヒリヒリとした違和感を覚えることもあります。
紅斑性カンジダ症は、粘膜が赤くなり、ヒリヒリとした痛みや食べ物がしみる症状が現れます。入れ歯が直接触れる歯茎や上あごの粘膜に生じやすい傾向があります。
口腔内環境の変化が発症の引き金になるため、以下の条件に当てはまる方は注意しましょう。
- 高齢者や乳幼児
- 病気や過労などで免疫力が低下している方
- 抗生物質やステロイド薬を長期間使用している方
- 糖尿病などの持病がある方
- 唾液の分泌量が少ない方(ドライマウス)
カンジダ性口内炎は、アフタ性口内炎とは治療方針が異なります。市販の口内炎薬を自己判断で使用すると、症状が悪化する場合もあります。白い膜が広がる、痛みや違和感が続くなどの症状がある場合は、歯科医院を受診し適切な治療を受けることが大切です。
③ヘルペス性口内炎
ヘルペス性口内炎は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)への感染によって起こる口内炎です。一度感染するとウイルスは体内に潜伏し、風邪や疲労などで免疫力が低下したタイミングで再発を繰り返すことがあります。
初期には歯茎や唇、舌、頬の粘膜に小さな水ぶくれが多数現れます。水ぶくれは次第に破れてただれや潰瘍となり、強い痛みがあるため、飲食が困難になる場合もあるでしょう。初感染時は、乳幼児を中心に高熱や全身のだるさ、首のリンパ節の腫れを伴うことがあります。
ヘルペス性口内炎は感染力がある点に注意が必要です。水ぶくれや潰瘍に触れた手を介して感染が広がる可能性があるため、症状がある間はタオルや食器の共用を避け、手洗いを徹底しましょう。
疑わしい症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、抗ウイルス薬による治療を受けることが大切です。
④カタル性口内炎
カタル性口内炎は、ウイルスや細菌ではなく、物理的な刺激が繰り返し加わることで起こる口内炎です。主な原因として、以下の要因が挙げられます。
- 合わない入れ歯や矯正装置が歯茎に擦れる
- 欠けた歯や尖った歯が粘膜に当たる
- 詰め物や被せ物の縁が歯茎を刺激する
- 熱い飲食物によるやけど
- 頬や歯茎を繰り返し噛んでしまう癖
カタル性口内炎は、アフタ性口内炎のような潰瘍が形成されにくく、歯茎が赤く腫れたり、ただれたり、白っぽく変化したりすることが特徴です。境界がはっきりしない炎症が広がり、ヒリヒリとした痛みや食べ物がしみる症状が現れます。
カタル性口内炎は、原因となる刺激を取り除かない限り改善しにくい病気です。同じ場所に繰り返し症状が出る場合は歯科医院で原因を特定し、適切な処置を受けることが重要です。
⑤その他口内炎
上記以外にも、さまざまな原因で歯茎に口内炎ができることがあります。代表的なものは以下のとおりです。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 薬剤性口内炎 | 抗がん剤、抗リウマチ薬などの副作用 |
| アレルギー性口内炎 | 歯科治療で使われる金属や特定の食べ物、歯磨き粉の成分などに対するアレルギー反応 |
| 全身疾患に伴う口内炎 | ベーチェット病、クローン病、潰瘍性大腸炎などの全身の病気の症状 |
| ニコチン性口内炎 | 長期間の喫煙習慣により、口の中の天井(口蓋)などが白く厚くなり、がん化するリスクもある |
これらの口内炎は原因の特定が難しく、専門的な診断が必要です。以下のような症状がある場合は、単なる口内炎ではない可能性も考えられます。
- 口内炎が2週間以上経っても治らない
- 頻繁に再発を繰り返す
- 口の中の広範囲に広がっている
- 出血を伴う、しこりのように硬い
- 発熱や皮膚の発疹など、口以外の症状もある
自己判断で様子を見続けず、歯科医院や口腔外科、内科など、適切な医療機関を受診するようにしてください。
歯茎の口内炎と間違えやすい病気
歯茎のできものには、口内炎と似た症状を示す別の病気が隠れていることがあります。歯茎の口内炎と間違えやすい、以下の代表的な4つの病気を解説します。
- ①お口の中を清潔に保つ
- ②栄養バランスの良い食事(特にビタミンB群)
- ③十分な睡眠と休息
- ④ストレスを溜めない
①歯肉炎・歯周病
歯茎が赤く腫れたり、ぶよぶよしたりしている場合、口内炎ではなく歯肉炎や歯周病が原因の可能性があります。歯周病は、歯と歯茎のすき間にたまった歯垢(プラーク)内の細菌によって起こる、慢性的な炎症性疾患です。
歯周病菌が侵入すると、免疫細胞であるマクロファージが反応し、炎症を起こして細菌を排除しようとします。炎症が長く続くと、歯茎の腫れや出血だけでなく、歯を支える骨まで徐々に破壊されていきます。(※1)
口内炎が一時的な粘膜トラブルであるのに対し、歯周病は自覚症状が少ないまま進行する点が大きな違いです。次のような症状がある場合は、歯周病を疑う必要があります。
- 歯磨きの際に出血しやすい
- 歯茎が赤く腫れている、または色が悪い
- 口臭が気になる
- 歯茎にむずがゆさや違和感がある
気になる変化がある場合は、痛みの有無にかかわらず歯科医院を受診してください。
②サイナストラクト
歯茎にニキビのような白いできものが現れ、口内炎と間違えられることがあります。この場合に考えられるのがサイナストラクト(瘻孔:ろうこう)です。サイナストラクトは、歯の根の先で起きた細菌感染でたまった膿を外へ排出するための出口に当たります。
口内炎が粘膜表面の炎症であるのに対し、サイナストラクトは歯の内部に原因があります。塗り薬などの表面的なケアでは根本的な改善は期待できません。
サイナストラクトには、次のような特徴があります。
- 白色または赤みを帯びた、ニキビのような膨らみが歯茎にできる
- 押すと出口から白い膿が出ることがある
- 膿が排出されるため、痛みをほとんど感じない、または軽いことが多い
- できものが現れては自然に潰れる状態を繰り返す
痛みが少ないため放置されがちですが、感染は歯の根の周囲で進行し、骨が溶けてしまうこともあります。重症化すると、歯を残せなくなるでしょう。
サイナストラクトは自然に治ることはなく、原因となる歯の根の治療が必要です。歯茎にニキビのようなできものを見つけた場合は、早めに歯科医院を受診してください。
③口腔がん
頻度は高くありませんが、歯茎の異変で注意が必要なのが口腔がん、歯肉がんです。初期の口腔がんは口内炎とよく似た見た目を示すことがあり、気づかれにくい点が問題になります。
口内炎との違いを判断する目安として、以下の点が挙げられます。
| 目安 | 内容 |
|---|---|
| 治るまでの期間 | 一般的な口内炎は2週間ほどで改善するが、口腔がんでは長期間治らない状態が続く |
| 形や境界 | 口内炎は比較的円形で境界がはっきりしているが、口腔がんでは形が不規則で周囲との境目が分かりにくいことがある |
| 硬さ | 表面はただれて見えても、触れると硬いしこりを感じる場合がある |
| 出血のしやすさ | 歯磨きなどのわずかな刺激で出血しやすくなる |
自己判断で様子を見続けず、早めに歯科医院や口腔外科の受診が、早期発見と治療につながります。
④子どもや高齢者に多い歯茎のできもの
歯茎のできものには、口内炎以外にも年齢によって起こりやすいものがあります。子どもや高齢者では、本人が違和感をうまく伝えられないこともあるため、周囲が変化に気づくことが重要です。
子どもの場合、歯が生えてくるときに歯茎が青紫色に膨らむ萌出性嚢胞(ほうしゅつせいのうほう)がみられることがあります。しかし、多くは歯が生えるとともに自然に消失します。
歯茎に赤く盛り上がる良性の腫瘤(エプーリス)が生じることもあり、経過によっては治療が必要になる場合があるでしょう。
高齢者には、合わない入れ歯による慢性的な刺激が原因で、歯茎の粘膜が盛り上がる義歯性線維腫がみられることがあります。加齢に伴って歯周病が進行しやすくなり、歯茎の腫れや歯周膿瘍が突然現れかねません。
骨粗鬆症などの全身状態が影響し、歯周病が悪化しやすくなることもあります。(※2)
年齢によって考えられる原因は異なります。歯茎のできものに普段と違う変化を感じた場合は、早めに歯科医院へ相談することが大切です。
歯茎の口内炎を早く治す方法
歯茎の口内炎は、ご自身でできるケアで症状を軽くしたり、治りを早めたりもできます。ここでは、つらい口内炎を早く治すための具体的な方法として以下の内容を解説します。
- 市販薬(塗り薬・貼り薬)の使用
- 食生活の改善と口腔内のケア
- 歯科医院での薬の処方やレーザー治療
市販薬(塗り薬・貼り薬)の使用
歯茎の口内炎の痛みを和らげたいときは、市販の口内炎薬を使う方法があります。
塗り薬は患部に直接作用し、歯茎や頬の内側など広い範囲や複数ある場合に向いています貼り薬は患部を覆って刺激を防ぐため、食事中のしみる痛みを抑えやすいのが特徴です。スプレータイプは奥歯の歯茎など、手で触れにくい場所にも使いやすくなっています。
使用前はうがいで口の中を清潔にし、就寝前に使うと薬が流れにくく効果的です。数日使っても改善しない場合は歯科受診を検討しましょう。
食生活の改善と口腔内のケア
市販薬による外側からのケアに加え、体の内側から治癒力を高めることも、歯茎の口内炎の治療には重要です。口腔粘膜の回復を促すためには、適切な栄養摂取と清潔な口内環境の維持が欠かせません。
食生活では、粘膜の健康を保つビタミンB2(納豆、卵、乳製品など)・B6(鶏ささみ、バナナ、玄米など)や鉄分(レバー、ほうれん草など)を意識して摂取しましょう。一方、香辛料や酸味の強い食品、熱すぎる・硬い食べ物は患部を刺激するため、症状が落ち着くまでは控えることが大切です。
口腔内ケアでは、細菌の増殖を防ぐため、食後にやさしく歯磨きを行い、口の中を清潔に保ちましょう。唾液には粘膜を守る働きがあるため、口の乾燥を防ぐ目的でこまめな水分補給も心がけてください。
歯科医院での薬の処方やレーザー治療
セルフケアを続けても改善しない場合や、痛みが強く食事に支障が出る場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。歯科医院では、症状や原因に応じた専門的な治療を受けられます。
市販薬で改善が見られない場合でも、医師の診断により、個々の症状に合わせた処方薬(ステロイド軟膏等)を選択できるメリットがあります。ウイルスやカビが原因の場合には、診断結果にもとづいて抗ウイルス薬や抗真菌薬が用いられます。原因に合った薬の適切な使用で、症状の早期改善が期待できます。
歯科医院によっては、口内炎にレーザー治療を行う場合もあります。レーザーを照射すると患部表面に保護膜が形成され、外部刺激が遮断されるため、痛みが和らぎやすくなります。短時間の治療で血行が促進され、痛みが少なく、粘膜の回復を助ける効果も期待されます。照射時に軽微な痛みや再発する可能性があるので、その際は施術した歯科医院に相談しましょう。
費用は保険適応の場合は1,000〜3,000円程度、自由診療の場合は3,000〜10,000円程度です。
まとめ
歯茎の口内炎は、原因によって対処法が大きく異なります。セルフケアで改善する場合もありますが、ウイルス感染や歯周病、サイナストラクト、口腔がんなど、別の病気が隠れていることもあります。
2週間以上治らない、痛みが強くなる、触ると硬いしこりを感じるなどの症状は注意が必要です。少しでも不安を感じたときに歯科医院へ相談することが、重症化を防ぎ、早く安心につながります。歯茎の違和感を軽く考えず、早めに専門家に相談しましょう。
参考文献
- Yamaguchi T.Functions of Macrophages in Periodontal Disease Progression and Gingival Tissue Homeostasis.Advances in Experimental Medicine and Biology,2026,1492,p.669-685.
- Contaldo M.Periodontal Disease and Osteoporosis: A Bidirectional Relationship.Advances in Experimental Medicine and Biology,2026,1492,p.163-178.
