鏡で見たときに、歯茎がぶよぶよしていると感じていませんか。歯茎の違和感は、歯を支える骨が溶けているサインかもしれません。
歯周病は、歯を失うだけでなく、心筋梗塞や糖尿病のリスクを高める可能性があります。口だけの問題と軽視すると、将来の健康を損ないかねません。
この記事では、歯茎がぶよぶよする原因や歯科医院での治療法、注意点、正しいセルフケアまで詳しく解説します。
「歯茎がぶよぶよ」とはどんな状態?
歯茎がぶよぶよしている状態は、歯茎が炎症を起こして腫れているサインです。歯茎が腫れる原因は口の中だけとは限らず、全身の健康状態が影響している可能性もあります。
ここでは、健康な歯茎とぶよぶよした歯茎の違いや放置するリスクについて詳しく見ていきましょう。
健康な歯茎とぶよぶよした歯茎の違い
健康な歯茎と炎症を起こした歯茎では、以下のように見た目や感触に違いが見られます。
| 項目 | 健康な歯茎の状態 | ぶよぶよな歯茎の状態 |
|---|---|---|
| 色 | きれいな薄いピンク色 | 赤黒い、または紫色っぽい |
| 形 | 引き締まり、歯と歯の間にきれいな三角形がある | 腫れぼったく、歯に覆いかぶさっている |
| 硬さ・弾力 | 指で押すと適度な弾力があり、引き締まっている | 指で押すと柔らかく、弾力がない |
| 出血 | 歯磨きやフロスを使っても、簡単には出血しない | 歯磨きなどのわずかな刺激で出血しやすい |
| 表面の状態 | みかんの皮のような細かい凹凸が見られることがある | 表面がツルツルとして光沢があり、腫れている |
歯茎に気になる症状があれば、早めに歯科医院を受診してください。
痛みや出血などの初期症状
歯茎がぶよぶよしている状態は、歯周病の初期症状の一つとして考えられています。初期段階では、あまり痛みを感じないため見過ごされがちですが、炎症によって歯茎は脆くなっています。
歯茎がぶよぶよになると、以下のような症状が出ることがあります。
- 歯磨きをすると血が出る
- 歯茎が赤く腫れている
- 朝起きたとき、口の中がネバネバする
- 口臭が気になる・指摘された
- 歯茎が下がった
- 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなった
- 冷たい物がしみる(知覚過敏)
- 硬い食べ物が噛みにくい
歯茎からの信号に気づいたら、すでに炎症が始まっていると考え、早めにケアを始めることが大切です。
歯茎のぶよぶよが招く将来のリスク
歯茎のぶよぶよを放置するのは、歯周病の悪化や膿・強い口臭の発生、歯のぐらつき・抜け落ちにつながりかねません。歯を失うだけでなく、全身の健康を脅かすリスクもあります。
歯周病菌や細菌からの毒性物質が血流を介して体全体に運ばれると、糖尿病の悪化や心疾患、脳梗塞、誤嚥性肺炎などを発症する可能性があります。(※1)
体の健康を守るためにも「歯茎がぶよぶよになっているかな」と感じたら早めに歯科医院で治療を始めることが必要です。
歯茎がぶよぶよする主な原因
歯茎がぶよぶよする主な原因は、以下のようにいくつか考えられます。
- 歯周病・歯肉炎
- 虫歯・腫瘍・歯根の破折
- 生活習慣の乱れ
それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
①歯周病・歯肉炎
歯茎がぶよぶよする主な原因は、歯肉炎や歯周炎などの歯周病です。(※2)歯周病は、歯と歯茎の境目に溜まったプラークや細菌が毒素を出し、歯茎に炎症が起きることで発生します。
歯肉炎とは、発赤や腫脹、出血を伴う歯茎の状態のことです。歯肉炎の段階であれば、適切なケアで健康な状態を目指せますが、骨が溶け始めると元に戻すのは困難です。歯肉炎を放置して、歯茎の組織や歯を支える骨まで破壊された状態が歯周病です。
歯周病になると、「歯茎が下がる」「歯周ポケットが深くなる」「歯が浮くような感覚が出る」などの変化が現れます。歯茎を押すと膿が出たり、冷たい物がしみたりするケースも珍しくありません。
歯周病が進行することで、歯がグラついたり、歯並びが変わったりすることがあります。歯茎がぶよぶよと腫れ、口臭も強くなるでしょう。硬い物を噛むと痛みが走り、最終的には歯が抜け落ちることもあります。
②虫歯・腫瘍・歯根の破折
歯茎のぶよぶよは、歯周病だけでなく、歯のトラブルや腫瘍が原因で起こることもあります。歯茎が腫れる原因疾患を、以下の表にまとめました。
| 原因 | 説明 | 特徴的な症状 |
|---|---|---|
| 根尖性歯周炎 | 虫歯が進行して神経の働きが失われ、歯の根先に膿が溜まる状態 | ・歯茎の腫れ、痛み ・膿が出ることもある |
| エプーリス | 歯茎にできる良性腫瘍 | ・やわらかいしこり ・出血する傾向 |
| 口腔がん | 歯茎にできる悪性腫瘍 | ・硬いしこり、出血 ・治らない潰瘍など |
| 歯根破折 | 歯の根が割れて細菌が侵入し、炎症を起こす | ・局所的な腫れ ・噛むと痛い、違和感 |
| 歯根嚢胞 | 虫歯菌が神経に達し、歯根に袋状の膿ができる状態 | ・歯茎の腫れ ・慢性的な違和感 |
これらは外見だけでは判断が難しく、医師・歯科医師の診断が必要です。痛みがほとんどないにもかかわらず、数週間腫れが治らなかったり、徐々に広がったりする場合は、深刻な病気が隠れているかもしれません。症状が見られたときは、すみやかに歯科医院の受診をしてください。
③生活習慣の乱れ
生活習慣や体調の変化によって、歯茎の状態が変化することがあります。体の防御機能がうまく働かなくなると、炎症を抑える力も弱まり、症状の悪化を招きかねません。
歯茎の健康のために気をつけたい生活習慣を、以下の表にまとめました。
| 原因 | 歯茎への影響 |
|---|---|
| 喫煙 | ・血管が収縮して血行が悪くなり、酸素や栄養が届きにくくなる ・初期症状が出にくく発見が遅れやすい ・免疫力が下がる |
| ストレス | ・唾液が減って自浄作用が低下する ・歯ぎしりや食いしばりが起こり、歯や歯茎に負担がかかる |
| 全身疾患(糖尿病など) | ・免疫力が低下し歯周病が進行しやすい ・糖尿病と歯周病が互いに悪影響を与える |
| 妊娠 | ・ホルモン変化で歯周病菌が増えやすくなる ・歯茎が腫れたり出血しやすくなる(妊娠性歯肉炎) |
歯科治療と並行して、禁煙やストレスへの対処などの生活習慣を見直すことも大事です。
歯茎がぶよぶよする際の歯科医院での治療法
歯茎がぶよぶよしている状態は、歯周病が進行しているサインです。歯科医院では、歯や歯茎の清掃やメンテナンスにより症状の改善を図ります。
歯科医院で行われる治療法として、以下の3つを解説します。
- ①歯石除去・外科処置
- ②入れ歯の調整
- ③定期的なメンテナンスに通う
①歯石除去・外科処置
歯茎のぶよぶよに対する治療は、原因となる歯垢や歯石を除去することが基本です。歯茎が腫れる主な原因は歯周病菌による炎症であり、菌の温床となる歯石は歯ブラシでは取り除けません。
歯茎の炎症を抑えるためには、以下のような治療を行います。
| 処置名 | 内容 |
|---|---|
| スケーリング | 歯の表面や歯茎の溝の歯垢・歯石を除去する |
| ルートプレーニング(SRP) | ・歯根の歯石や汚染物質を除去し、歯肉の治癒を促す ・歯の表面を硬く滑らかに整え、細菌が再付着しにくい環境を作る |
| 歯肉外科処置(フラップ手術) | ・歯肉を切開し、歯の深部の歯石や感染組織を除去する ・SRPでは届かない深い歯周ポケットの治療法であり、重度の歯周病に対応できる |
歯周病の感染源を除去することが、ぶよぶよと柔らかくなった歯茎を治療するうえで大事です。
②入れ歯の調整
入れ歯を使用している方で歯茎がぶよぶよする場合は、入れ歯の調整や作り直しによる治療が必要です。加齢による衰えや歯の喪失に伴う噛む刺激の減少で、顎の骨が痩せていき、時間とともに入れ歯がズレていきます。
合わない入れ歯を使い続けると、特定の場所に圧力がかかったり、擦れたりするでしょう。結果として慢性的な炎症が起き、ぶよぶよした増殖組織(義歯性線維腫)ができることがあります。
歯科医院では、入れ歯が歯茎に当たる部分を削ったり、入れ歯と歯茎の隙間を新しい材料で補ったりできます。入れ歯の変形や摩耗が進んでいる場合には、新しい入れ歯を作り直してもらえるでしょう。
入れ歯の適切な調整を行って歯茎への刺激をなくすことが、炎症の再発を防ぐうえで重要です。
③定期的なメンテナンスに通う
治療によって歯茎の状態が改善したあとも、定期的な通院が大切です。歯周病や歯茎のトラブルは再発しやすく、油断すると汚れが溜まり、すぐにぶよぶよした状態に戻るリスクがあります。
それを防ぐために、歯科医院で以下のようなメンテナンスを定期的に受けましょう。
加えて、普段の歯磨きは正しくできているかの専門的なアドバイスを受け、それを生活に取り入れるのも効果的です。
歯茎のぶよぶよを改善するセルフケアと注意点
歯科医院での治療と並行して、自宅での適切なセルフケアを行うことが、歯茎の状態を早期に改善する鍵です。
ここでは、以下の自宅で実践すべき具体的なケア方法や、やってはいけない注意点を解説します。
| 処置名 | 内容 |
|---|---|
| PMTC(専門的機械的歯面清掃) | ・歯石を除去する ・プラーク、バイオフィルムを除去する ・歯の表面を磨き上げる |
| 歯周組織検査 | ・歯周ポケットの深さや出血の有無を測定する ・歯茎の状態を評価し、再発の兆候を見つける |
- 歯茎がぶよぶよするときの注意点
- 柔らかめの歯ブラシを使った丁寧なブラッシング
- 痛みがある場合の応急処置
- 生活習慣の見直し
歯茎がぶよぶよするときの注意点
歯茎がぶよぶよするときは、患部を指で触ったり、膿を出そうとしたりしてはいけません。
炎症を起こしている歯茎はデリケートな状態です。不潔な手で触れることで細菌感染が悪化し、組織を傷つけて治りが遅くなる危険性があります。気になって舌先で触れるのも、刺激になるため避けましょう。
市販薬は、一時的な症状の緩和には役立ちます。しかし、痛みが引いたからといって受診を先延ばしにすると、内部で病状が進行してしまう恐れがあります。歯科医師の指示に従って、安全な治療を行いましょう。
柔らかめの歯ブラシを使った丁寧なブラッシング
歯茎が腫れているときは、やわらかめの歯ブラシを選び、やさしく丁寧にブラッシングを行なってください。歯磨きの際は、以下のポイントを意識することが大切です。
- 毛先はやわらかめの歯ブラシを選ぶ
- ヘッドが小さいものを選ぶと、奥歯や狭い場所にも届きやすい
- 歯と歯茎の境目に毛先を45度で当てる
- 鉛筆を持つくらいの軽い力で磨く
- 小刻みに振動させる
- 歯間ブラシやフロスを併用する
歯ブラシだけで落とせる汚れは約6割といわれています。一方、歯間ブラシやフロスを併用することで、除去率を9割近くまで高められます。(※2)
歯茎がぶよぶよしている部分は、炎症が進んでいる可能性があるため、より丁寧なケアが大切です。自宅では、適切な道具と力加減で歯の汚れを取ることを心がけてください。
痛みがある場合の応急処置
歯茎がぶよぶよして痛みを伴う場合は、必要に応じて応急処置を行いましょう。
自宅で痛みを和らげるための応急処置は、以下のとおりです。
| 応急処置 | 方法・注意点 |
|---|---|
| 患部を冷やす | ・濡れタオルや保冷剤を頬の外側から当てる ・刺激が強いため、氷を直接口に含まない |
| 鎮痛剤を服用する | ・用法と用量を守る ・薬剤師に相談する |
| 安静に過ごす | 運動や飲酒、長風呂は避ける |
| 口内を清潔に保つ | ・ぬるま湯でやさしくうがいする ・刺激の強い洗口液は避ける |
応急処置は、あくまで症状を一時的に抑えるための方法です。痛みが和らいでも治ったわけではないので、早めに歯科医院を受診してください。
生活習慣の見直し
日々のセルフケアと並行して生活習慣全体を見直すことが、歯茎の改善と再発予防につながります。体の免疫力が低下すると、少しの汚れでも炎症が起きやすく、腫れが引かない状態が続くためです。
歯の健康を守るために、以下の生活習慣を見直すことが大切です。
| 確認ポイント | 歯茎への影響 |
|---|---|
| 栄養バランスは偏っていないか | ・ビタミンC不足でコラーゲンが作られにくくなる ・ビタミンDやカルシウム不足で骨が弱くなる ・糖分の多い食品は歯周病菌の栄養源になる |
| 十分な睡眠時間を確保できているか | 免疫力が低下し、歯茎の炎症が悪化しやすくなる |
| タバコを吸う習慣があるか | 血管が収縮すると、酸素や栄養が届きにくくなり、免疫も低下する |
| ストレスをうまく発散できているか | ・免疫力と唾液の分泌が低下する ・歯ぎしり・食いしばりで歯茎に負担がかかる |
体のコンディションを整えることで、抵抗力を高め、歯茎の状態の回復を内側からサポートができます。
まとめ
歯茎がぶよぶよとやわらかくなるのは、歯周病や歯肉炎などのトラブルが進行しているサインです。
健康な歯茎はピンク色で引き締まっていますが、炎症が進むと腫れが生じます。放置すると、やがて歯を失う原因になることもあります。歯科で適切な処置を受け、正しいブラッシングや生活習慣を見直すことで、健康な状態に近づけるでしょう。
大切な歯を守るには、まず歯科医師への相談が大切です。早めの対処が、口の中だけでなく全身の健康を支える第一歩となります。
参考文献
- 厚生労働省:「健康日本21アクション支援システム 歯・口腔の健康」.
日本歯科医師会:「歯の学校2022 vol.74 Q1」.
