冬に肌がカサつき、かゆみが出た箇所を無意識に掻いていませんか。仕事への集中力を奪われたり、夜の安眠を妨げたりするなど、日常生活の質を下げるほどの症状は、病気のサインかもしれません。
肌が乾燥する主な原因は、肌のバリア機能の低下です。バリア機能が崩れると、外部からの刺激にも過敏に反応し、かゆみの悪循環に陥る可能性があります。
この記事では、乾燥肌によるかゆみのメカニズムを解き明かし、しつこいかゆみの症状を抑えるための対策を徹底解説します。乾燥肌によるかゆみに悩まされている方はぜひ最後まで参考にしてください。
乾燥肌とかゆみの関係
乾燥によって肌のバリア機能が弱まると、かゆみが出やすくなることがあります。
乾燥とかゆみに関する以下の内容を解説します。
- 乾燥肌とは?
- 乾燥肌によるかゆみの原因と仕組み
- なりやすい人の特徴
- かゆみが起こる乾燥肌の症状レベル
乾燥肌とは?
乾燥肌とは、皮膚の水分や皮脂が不足して潤いが失われた状態です。肌表面のカサつきや粉吹き、ツッパリ、ゴワつきなどを感じやすいのが特徴です。
肌の潤いは、皮脂と天然保湿因子(NMF:Natural Moisturizing Factor)、細胞間脂質が組み合わさることで保たれます。肌の表面で水分の蒸発を防ぐフタの役割を担っているのが皮脂です。肌の内側ではNMFが水分を保ち、細胞同士の隙間を埋める細胞間脂質が水分を逃さない構造を作っています。
室内の乾燥や加齢、間違ったスキンケアなどによって、皮脂やNMF、細胞間脂質が不足すると、肌のバリア機能が低下します。バリア機能が低下して皮膚表面の角質層に隙間が生じ、肌内部の水分が失われやすくなった状態が乾燥肌です。(※1)
乾燥肌によるかゆみの原因と仕組み
乾燥肌によるかゆみは、肌のバリア機能が低下し、刺激を感じやすくなることで起こります。健康な肌は外部刺激を防げますが、乾燥すると水分や油分が不足し、わずかな隙間からホコリや花粉、衣類の繊維などが入り込みやすくなります。
乾燥が続くと、かゆみを感じる知覚神経が表皮近くまで伸び、髪が触れたり服がこすれたりするだけでもかゆみを感じやすくなります。さらに、かいてしまうことでバリア機能が壊れ、かゆみが強まるという悪循環に陥ります。
なりやすい人の特徴
以下のような人が、乾燥肌になりやすいといわれています。
| 乾燥肌になりやすい人 | 特徴 |
|---|---|
| 乳幼児・子供 |
・皮膚の機能が未発達
・皮脂の分泌が少ない ・バリア機能が未熟なため、乾燥しやすい |
| 高齢者 |
・皮膚が薄くなる
・汗の分泌が減少する ・皮脂腺の働きが衰え、皮脂膜が作られにくくなる |
| アレルギー体質の方 |
・アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、花粉症などがある
・生まれつきバリア機能が弱い傾向がある |
| 遺伝的な要因がある方 |
・家族に乾燥肌の人がいる
・魚鱗癬などの遺伝性疾患がある(※1) |
| 特定の病気がある方 |
・糖尿病、慢性腎不全、肝硬変など
・内臓疾患の影響で皮膚の乾燥やかゆみが現れる |
特に更年期前後の女性は、ホルモンバランスの変化で皮脂の分泌が減少し、乾燥しやすくなります。(※2)
かゆみが起こる乾燥肌の症状レベル
乾燥肌によるかゆみは、症状の進行度によって現れ方が変わります。
初期段階では、皮膚がカサカサして手触りが悪くなり、表面に白い粉が吹いたように見えることがあります。すねや腕、背中などに出やすく、この時点では強い炎症は目立ちません。
乾燥が進むと、皮膚に細かいひび割れが生じ、亀の甲羅のように見えることもあります。衣類のこすれでかゆみが出やすくなり、掻くと赤みが目立つようになります。
さらに悪化すると、皮膚がガサガサして厚く硬くなり、湿疹や皮膚炎を伴うことがあります。かゆみが強く、仕事や睡眠など日常生活に影響が出ることも少なくありません。炎症が落ち着いたあとに、色素沈着が残る場合もあります。
乾燥肌のかゆみ対策
乾燥肌のかゆみを和らげるには、外側からの保湿ケアだけでなく、日々の生活環境を見直すことが大切です。乾燥によるかゆみを防ぐための対策として、以下の3つを紹介します。
- ①適度な湿度を保つ
- ②肌に触れる衣類は綿素材を選ぶ
- ③バランスの良い食事と睡眠を心がける
①適度な湿度を保つ
肌の潤いを守るために、部屋の湿度を40〜60%に維持することを心がけましょう。
空気が乾燥している場所では、肌の水分は外へ奪われがちです。バリア機能が弱まった乾燥肌は、健康な肌に比べて水分が逃げやすい状態になっています。部屋が乾燥していると、乾燥肌の人はより症状が進行しやすいでしょう。
冬は外気の乾燥に加え、暖房を使うことで部屋の湿度が下がります。
部屋の湿度を上げるには、加湿が大切です。加湿器がない場合でも観葉植物を置いたり、濡れタオルや洗濯物を室内に干したりすることでも湿度を高く保てます。入浴後に浴室のドアを開けておくのも良いでしょう。
②肌に触れる衣類は綿素材を選ぶ
乾燥によるかゆみを防ぐには、肌に触れる衣類の素材選びも大切です。乾燥肌は刺激に敏感なため、ウールやポリエステル、ナイロンなどの化学繊維は、摩擦や静電気によってかゆみを引き起こしやすくなります。
そのため、綿やシルクなど、肌あたりのやさしい素材を選ぶと安心です。特に下着やインナーは、直接肌に触れるため綿素材に替えるだけでも刺激を減らせます。ウールのニットを着る場合は、内側に綿のシャツを重ねるなど、肌に触れない工夫をしましょう。
また、体に密着する服やタグ、縫い目が当たる部分も刺激になりやすいため、ゆとりのあるデザインを選ぶことも有効です。
③バランスの良い食事と睡眠を心がける
健やかな肌を保つためには、栄養バランスの取れた食事と質の良い睡眠が欠かせません。
| 栄養素 | 主な食品 | 働き・肌への影響 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
・肌の細胞やコラーゲンの材料になる
・不足するとハリが低下して、ターンオーバーが滞る |
| ビタミンA | レバー、うなぎ、緑黄色野菜 |
・皮膚や粘膜を健やかに保つ
・肌の潤いをキープして、バリア機能を整える |
| ビタミンC | キウイ、いちご、ブロッコリー |
・コラーゲンの生成を助ける
・メラニンの生成を抑える ・透明感のある肌へ導く |
| ビタミンE | アーモンド、アボカド、かぼちゃ |
・血行を促進して、肌に潤いを与える
・酸化から肌を守る |
| 亜鉛 | 牡蠣、赤身肉、ナッツ類 |
・細胞分裂をサポートして、肌の修復を助ける
・健やかな肌を保つ |
| 必須脂肪酸 | 青魚、えごま油、くるみ |
・細胞膜の材料になり、内側から潤いを保つ
・不足すると肌がカサつきやすい |
乾燥によるかゆみを和らげるには、睡眠の質を高めることが大切です。就寝前のスマホやパソコンの使用は控えましょう。入眠前にぬるめのお湯に浸かると、体温が安定して眠りやすくなります。
好きな香りに癒されたり、寝具を整えたりしてリラックスできる環境をつくるのもおすすめです。
乾燥肌によるかゆみを悪化させない3つのボディケア
乾燥によるかゆみが気になるときに取り入れたい、以下の3つのボディケアを紹介します。
- ①刺激を抑えてやさしく洗う
- ②ぬるめのお風呂につかる
- ③肌の状態に合わせた保湿をする
①刺激を抑えてやさしく洗う
乾燥した体を洗うときには、たっぷりの泡を使い、やさしく洗うことが大切です。
乾燥肌に良い洗い方と避けるべき洗い方を、以下の表にまとめました。
| 良い洗い方 | 避けるべき洗い方 |
|---|---|
| やわらかい素材や手のひらで洗う | ナイロンタオルでゴシゴシこする |
| 洗浄料をよく泡立て、泡でなでるように洗う | 洗浄料を肌につけてこする |
| セラミド・アミノ酸配合などの弱酸性・低刺激性の洗浄料を選ぶ | アルカリ性やスクラブ入り、清涼感のある洗浄料を使う |
| ぬるま湯で丁寧にすすぐ | 熱いシャワーでさっと流すだけ |
洗い方に気をつけて肌への刺激を抑えることは、かゆみを防ぐための基本です。
②ぬるめのお風呂につかる
熱すぎるお湯や長湯は、乾燥肌を悪化させる原因です。
42℃以上の熱いお湯では、角質層の細胞の間を埋めているセラミドなどの脂質が溶けやすくなります。脂質が溶けると熱が知覚神経を刺激してかゆみを増幅させるため、38〜40℃の少しぬるいと感じる温度が、肌への負担を抑える適温です。
長湯をして肌がふやけると、角質層の隙間から保湿成分が流れ出やすくなります。体を芯から温める程度にとどめ、長時間の入浴は控えましょう。ぬるめのお湯でリラックスしながら、肌の潤いを守る入浴習慣を心がけてください。
③肌の状態に合わせた保湿をする
乾燥肌によるかゆみを抑えるためには、保湿ケアが欠かせません。
洗顔や入浴後に体を拭いたら、肌がまだ潤っているときに保湿剤を塗りましょう。水分が残っているうちに肌のケアをすることで、保湿成分が浸透しやすく、潤いを肌に閉じ込めることが期待できます。
ただし、保湿剤を肌にすり込むと、摩擦でかゆみを誘発します。保湿剤を手のひらで温めてから、シワに沿ってやさしく広げるのがコツです。広範囲には伸びの良いローション、カサつく目元や口元には油分の多いクリームなど、部位に応じた使い分けをしましょう。
皮膚科受診の目安と治療
セルフケアを続けてもかゆみが治まらない場合は、早めに皮膚科を受診して専門的な治療を受けることが大切です。ここでは、皮膚科での治療に関する内容を解説します。
病院へ行くべき乾燥肌のかゆみのサイン
乾燥やかゆみが悪化し、以下のような症状が見られた場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
- 保湿をしても乾燥・かゆみが改善しない
- かゆみで夜中に目が覚める、熟睡できない
- 仕事や勉強などに集中できない
- 掻き傷から血や汁がにじんでいる
- 湿疹が広がる
- 市販のかゆみ止めを使っても、効果を感じない
かゆみで睡眠や仕事に影響がある場合、生活の質(QOL)を下げる可能性があります。掻き壊した部位から細菌が入り込み、二次感染を起こすと治療が長引きかねません。
しつこいかゆみの裏には、糖尿病や肝臓・腎臓の病気などの内科的な疾患が稀ではありますが隠れているケースも考えられます。(※3)
皮膚科で処方される薬の種類
乾燥が原因のかゆみでは、医師が肌の状態を確認し、症状に合わせて以下の薬が処方される場合があります。
| 薬の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 保湿剤 |
・皮膚に潤いを与え、バリア機能を補う
・血行促進、軽い炎症の抑制などの作用もある |
| ステロイド外用薬 |
・赤みや湿疹などの炎症を抑える
・症状や部位に応じて強さを使い分ける ・適切な使用で高い効果が期待できる |
| 非ステロイド性抗炎症薬 | 軽い抗炎症作用がある |
| 抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬 |
・ヒスタミンの働きを抑え、体の内側からかゆみを軽減
・眠気の少ないタイプもある |
ステロイド外用薬は効き目の強さに応じて5段階に分類されます。効果が強いと副作用を招き、弱いと症状を抑えきれずに治療を長引かせます。医師と相談し、症状と部位に合った強さの薬を使用することが大事です。
市販の保湿剤とかゆみ止め成分配合の違い
市販薬を活用する際は、保湿剤とかゆみ止め成分配合の製品の違いを理解して使い分けましょう。カサつきや粉ふきが気になるものの、まだかゆみがない段階では市販の保湿剤が使いやすいときもあります。
すでにかゆみがあるときには、かゆみ止め成分が入った市販薬を試してみてください。保湿だけでなく、かゆみの元を抑える成分や神経を静める成分が配合されているため、不快なかゆみを和らげられる可能性があります。
ただし、市販薬はあくまで初期段階や一時的な緩和が目的です。皮膚科では、医師が皮膚の状態や症状を診察したうえで、有効成分や薬の強さを調整し、個々の症状に合わせた治療が行われます。
かゆみの症状が続く場合や、セルフケアや市販薬で改善がみられない場合は、皮膚科の受診を検討してください。
まとめ
つらい乾燥によるかゆみは、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激に敏感になっているサインです。
入浴では、ゴシゴシ洗いを控え、肌にやさしいケアを意識し、熱いお風呂は避けるようにしましょう。日常のボディケアを見直すことが、かゆみがある乾燥対策への近道です。室内の湿度管理や、肌に触れる衣類への配慮も大切です。
セルフケアを続けてもかゆみが改善しない、赤みや湿疹が広がる場合は、皮膚科の専門医に相談してください。
参考文献
- Dieter Metze, Heiko Traupe, Kira Süßmuth. Ichthyoses—A Clinical and Pathological Spectrum from Heterogeneous Cornification Disorders to Inflammation. Dermatopathology (Basel),2021,8,2,p.107–123.
- Viscomi B, Muniz M, Sattler S. Managing Menopausal Skin Changes: A Narrative Review of Skin Quality Changes, Their Aesthetic Impact, and the Actual Role of Hormone Replacement Therapy in Improvement. Journal of Cosmetic Dermatology,2025,24,Suppl 4,p.e70393.
- 日本皮膚科学会:「皮脂欠乏症診療の手引き2021」
