「心因性発熱ってうつるのか?」と不安になる方も多いでしょう。主にストレスによって発熱するものですが、細菌やウイルスが原因ではないため、うつることはありません。
この記事では、心因性発熱と普通の発熱との違い、うつらない理由を詳しく解説します。あわせて心因性発熱の治療や予防法についてもご紹介するので、ぜひ最後まで参考にしてください。
心因性発熱とは
心因性発熱とは、ウイルスや細菌などの感染が原因ではない発熱です。ストレスや緊張をきっかけに自律神経のバランスが乱れ、体温が上がる状態を指します。「機能性高体温症」と呼ばれることもあります。
ストレスが関係していることが多く、働き盛りの世代や学生、特に若い女性で多いとされていますが、性別・年齢問わず誰にでも起こる可能性があります。(※1)
症状の出方は大きく2つに分かれます。試験や発表など強い緊張がかかった場面で急に高熱が出るタイプと、職場や家庭でのストレスが続く中で微熱が長引くタイプです。どちらも、体の異常が見つからないのに熱が続くことが特徴です。
「うつる発熱」と「心因性発熱」は何が違う?
熱が出ると、「周りの人にうつしてしまうのでは」と心配になりますよね。 特に、風邪のような症状がないのに熱だけが出ると、どう対処すべきか分からず不安になる方も少なくありません。
発熱には、ウイルスや細菌が原因の「感染症による発熱」もあります。 心因性発熱と感染症による発熱は、熱が出る原因と体の中で起きている反応が異なります。
心因性発熱は「感染」ではないのでうつらない
結論からお伝えすると、心因性発熱が他の人にうつることはありません。
風邪やインフルエンザのように、ウイルスや細菌といった病原体が原因で起こる発熱ではないためです。
心因性発熱は、ストレスや緊張をきっかけに自律神経のバランスが乱れ、体温が上がってしまう状態と考えられています。つまり、体の中で起きている反応であり、感染源となるものが存在しません。
そのため、家族や周囲の人にうつす心配は基本的にないと考えて大丈夫です。
うつる発熱の代表例(風邪・インフル・コロナなど)
感染によるうつる発熱には、風邪やインフルエンザ、コロナウイルス感染症などがあります。心因性発熱とうつる発熱(感染症)には以下のような違いがあります。
| 項目 | 心因性発熱 | うつる発熱(感染症) |
|---|---|---|
| 原因 | ストレス、自律神経の乱れ | ウイルス、細菌などの病原体 |
| うつるか | うつらない | うつる |
| 解熱剤の効果 | 効きにくいことが多い | 効果が期待できることが多い |
| 主な症状 | ・37℃台の微熱がだらだら続く ・ストレスがかかると急に高熱が出る ・倦怠感、頭痛、のぼせ ・気分の落ち込みや不安感を伴う |
・喉の痛み、咳、鼻水 ・急な高熱 ・関節痛、筋肉痛 ・全身の強いだるさ |
もし熱以外に、喉の痛みや咳、関節痛といった症状がある場合は、感染症の可能性が高いと考えられます。 まずは内科などの医療機関を受診し、適切な診断を受けるようにしましょう。
なぜストレスで熱が出るのか?そのメカニズムと診断
ここでは、心因性発熱によって熱が出る仕組みと、病院でどのように診断されるのかを詳しく解説します。
自律神経の乱れが体温調節機能を狂わせる仕組み
私たちの体は、自律神経によって体温や血圧などが一定に保たれています。自律神経には、体を活動的にする交感神経と、リラックスさせる副交感神経があり、この2つのバランスが重要です。
しかし強いストレスが続くと交感神経が優位になり、体が緊張した状態になりやすくなります。その結果、体温調節がうまく働かず、熱が出てしまうことがあります。これが心因性発熱の仕組みと考えられています。
感染症の発熱とは違うため、咳や鼻水などの症状を伴いにくく、ストレスを感じる場面で体温が上がりやすいのも特徴です。
市販の解熱剤を飲んでも熱が下がらない本当の理由
「熱が出たら、とりあえず市販の解熱剤を飲む」という方は多いと思います。
ただ、心因性発熱の場合は、解熱剤を飲んでも熱が下がりにくいことがあります。
これは、風邪などの感染症による発熱と、心因性発熱とでは、熱が上がる仕組みがそもそも違うためです。
風邪やインフルエンザの発熱では、体内で「プロスタグランジンE2」という物質が増え、脳の体温調節中枢に作用して体温を上げます。市販の解熱剤は、このプロスタグランジンE2が作られるのを抑えることで、熱を下げる働きがあります。
一方で心因性発熱は、ストレスなどによって交感神経が過剰に働き、体が熱を作り出してしまうタイプの発熱です。この仕組みにはプロスタグランジンE2があまり関わらないため、解熱剤を飲んでも効きにくいことがあるのです。
一方で、原因となるストレスを遠ざけることで熱が引くことがあります。
病院で行われる検査と診断までの流れ
心因性発熱は、最初からすぐに確定できる病気ではありません。まずは感染症や自己免疫疾患、腫瘍など、発熱の原因になりうる病気が隠れていないかを順番に確認していきます。こうした進め方を「除外診断」と呼びます。
一般的には内科を受診し、問診で発熱の続き方や生活状況、ストレスの有無を確認したうえで、必要に応じて血液検査・尿検査・レントゲンやCTなどの検査を行います。これらで大きな異常が見つからず、発熱とストレスの関連が考えられる場合に、心因性発熱が疑われます。
心因性発熱の治療
原因のわからない熱が続くと、「何か悪い病気では?」と不安になりますよね。 心因性発熱の治療は、風邪のように熱を下げる薬を飲むだけでは終わりません。 熱の根本原因である「ストレス」に目を向け、心と体の両面から治療します。
治療の柱は、以下の3つです。
- ストレスへの対処(根本原因の解決)
- 十分な休息(心身のエネルギー回復)
- 薬物療法(つらい症状の緩和)
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
ストレスに対処する
心因性発熱の治療では、きっかけになっているストレスへの対処が中心になります。まずは問診を通して、仕事・学校・家庭・環境の変化など、負担になっている要因を整理していきます。
原因が見えてきた場合は、業務量の調整や休養など、環境を整えるだけでも症状が軽くなることがあります。また、考え方のクセや緊張の強さが影響しているケースでは、カウンセリングなどでストレスへの向き合い方を身につけることが再発予防にもつながります。
十分な休息を取る
心因性発熱は、ストレスによって交感神経が優位な状態が続き、体が緊張しっぱなしになっていることが関係すると考えられています。治療の基本は、意識的に休息を取り、心身をリラックスさせる時間を増やすことです。
休むことに罪悪感を持つ方もいますが、休息は回復のために必要なプロセスです。無理を続けるよりも、まずは体調を立て直すことを優先しましょう。
特に睡眠の質を整えることは重要です。毎日なるべく同じ時間に寝起きする、寝る前はスマホやPCを控える、入浴や音楽などでリラックスする、といった工夫が役立ちます。日中も疲れを感じたら短時間休むなど、こまめに負担を減らしていきましょう。
漢方薬や抗不安薬を内服する
ストレスへの対処や休息を意識しても、症状がつらくて改善しにくい場合があります。そのようなときは、心身の緊張を和らげるために薬を使うこともあります。
薬は発熱の原因そのものを消すというより、症状を和らげて休息を取りやすくするための補助として使われます。具体的には、不安や緊張が強い場合は抗不安薬、体調全体を整える目的で漢方薬、抑うつや不眠などを伴う場合は抗うつ薬などが検討されます。
どの薬が合うかは状態によって異なるため、医師の指示に従って服用し、気になる点があれば自己判断で中断せず相談しましょう。
心因性発熱を予防するためにできること
心因性発熱は、一度症状が落ち着いても、原因になっているストレス環境が続くと再発しやすいのが特徴です。改善したあとも「終わり」ではなく、再発を防ぐための生活づくりが大切になります。ストレスをゼロにするのは難しいため、溜め込みすぎない工夫を持つことがポイントです。
軽い運動や入浴、好きなことに集中する時間などを取り入れ、こまめに気持ちを切り替えましょう。あわせて、睡眠・食事・生活リズムを整え、予定を詰め込みすぎないことも重要です。寝つきの悪さや疲労感、気分の不安定さが続くときは早めに相談すると安心です。
まとめ
まず大切なのは、心因性発熱は感染症ではないため、周りの人にうつる心配はないということです。原因不明の熱が続くのは不安なことですが、それは決して気のせいではなく、頑張りすぎたあなたの心と体が発している大切なSOSサインです。
「休むわけにはいかない」と無理をせず、まずは内科を受診して、体の病気が隠れていないかを確認しましょう。その上で原因がストレスと考えられる場合は、一人で抱え込まずに心療内科などの専門家へ相談してください。
参考文献
- Oka T.Psychogenic fever: how psychological stress affects body temperature in the clinical population.Temperature (Austin),2015,2(3),368-378.
