膝に水が溜まるという症状は関節を守るために作られる液体が、何らかの異常によって過剰に溢れ出している状態です。変形性膝関節症や関節リウマチが原因となることがあり、腫れや重だるい感じ、動かしづらさを感じることがあります。
症状を改善するためには、単なる加齢や疲れのせいと自己判断で放置せず、その背景にある本当の原因を知ることが重要です。この記事では、膝に水が溜まる仕組みと原因対処法、治療法を解説します。
膝に水が溜まる仕組みとは?
膝の関節は関節包(かんせつほう)という袋で包まれ、内側は滑膜(かつまく)という薄い膜で覆われています。滑膜は、関節の動きを滑らかにする潤滑油の役割を持つ関節液を作り出しています。
健康な膝では、関節液は作られる量と吸収される量のバランスが保たれ、通常は1~3ml程度しかありません。この関節液は、関節軟骨に栄養を届ける働きもしています。
しかし、関節の中で炎症が起こると、刺激された滑膜は、関節を守ろうとして、普段より過剰に関節液を分泌しバランスが崩れます。作られる関節液の量が吸収量をはるかに超えると、関節内に溜まり膝に水が溜まった状態になります。
関節液が悪さをしているのではなく、炎症が問題です。溜まった関節液が膝の裏側に押し出され、袋状に膨らむベーカー嚢胞(のうほう)を形成することもあります。
膝に水が溜まる主な原因
膝に水が溜まる主な原因は、①変形性膝関節症による関節へのストレス、②半月板損傷・靭帯損傷などの外傷、③関節リウマチ・痛風などの炎症性疾患があります。
①変形性膝関節症による関節へのストレス
変形膝関節症は加齢や長年の負担が積み重なることで、膝のクッションである関節軟骨がすり減ってしまう状態で、中高年の方に多くみられます。立ち上がりや歩き始めに膝が痛む、階段の上り下りが辛いといった症状があれば、変形性膝関節症が原因かもしれません。
変形性膝関節症により関節へストレスがかかり、軟骨のすり減って滑膜が刺激されます。これにより炎症が起き、関節液が過剰に分泌されます。
ある研究では、変形性膝関節症患者の約半数に、膝に水がたまる症状が認められたと報告されています。(※1)
②半月板損傷・靭帯損傷・関節内骨折などの外傷
年齢に関わらず、若い世代の方でも膝に水が溜まることは珍しくありません。その主な原因は、スポーツや転倒といった外傷による半月板損傷や靭帯損傷です。
スポーツ活動中には、サッカーやバスケットボールなどで急な方向転換やジャンプをした時に起こりやすく日常生活では、転倒して膝を強くひねった時や交通事故で強い衝撃を受けた時に起こりやすいです。
外傷では、関節の中で急激な炎症が起こるだけでなく、組織が傷つくことで出血を伴う場合があります。この急性炎症と関節内出血に反応して、滑膜は関節液を大量に作り出します。
そのため、ケガの直後から数時間で膝がパンパンに腫れ上がり、強い痛みと熱感を伴うことが多いのが特徴です。外傷を放置すると、また関節内骨折が隠れている可能性も存在していたり、将来的に変形性膝関節症へ移行するリスクを高めるため、早期の適切な診断と治療をおすすめします。
③関節リウマチ・痛風などの炎症性疾患
膝の使いすぎやケガといった物理的な原因だけでなく、全身性の病気が膝の炎症を引き起こし、水が溜まることもあります。これらは膝だけの問題ではなく、体全体の病気の一症状として現れるため、注意が必要です。代表的なものは、関節リウマチや痛風などの炎症性疾患があります。
関節リウマチは、免疫システムの異常により、自分自身の滑膜をはじめとした関節周囲の組織を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患です。関節を包む滑膜そのものが慢性的な炎症の場となるため、関節液が常に過剰に作られ、膝が腫れて水が溜まります。特徴的なサインは、朝起きた時の手足のこわばり、膝だけでなく手首や指などの複数の関節が左右対称に腫れることが挙げられます。
痛風・偽痛風(結晶誘発性関節炎)は、体内で作られた物質が結晶化し、関節内に析出することで炎症を引き起こす病気です。痛風は尿酸、偽痛風はピロリン酸カルシウムの結晶が原因となります。
特徴的なサインとして、突然膝に激痛や腫れ、熱感が生じる、足の親指の付け根など他の関節にも同様の発作が起こることがあるなどがあります。
これらの病気は、整形外科だけでなく、リウマチ科など内科的な専門治療が必須となります。疑わしい症状があれば、自己判断せずに必ず医療機関を受診しましょう。
膝に水が溜まったときの症状と応急処置
膝に水が溜まったときの症状は、痛みや腫れ、熱感があり歩くのが困難になります。ここでは、ご自宅でもできる応急処置について解説します。
しかし一時的に症状を和らげるための対応であり、症状を繰り返さないためには、原因を特定し、治療を受けることが重要です。
痛み・腫れ・熱感があり歩行が困難になる
膝に関節液が過剰に溜まると、関節を包む袋の内側の圧力が高まり、様々な症状が現れます。炎症が起きているため、痛みもあります。初めは動かしたときだけ痛むことが多いですが、炎症が強くなると、じっとしていても脈打つように痛むようになります。
さらに、溜まった関節液が障害となり、膝の曲げ伸ばしが制限されます。膝を触ってみて、もう片方の膝より熱を持っている場合は、炎症が強いサインです。その他、以下のような症状が現れます。
- 膝が腫れて、ズボンの膝回りがきつく感じる
- 膝を触ると、もう片方の膝より熱っぽく感じる
- 膝が重く、特に朝起きたときや動き始めが辛い
- 膝が最後まで曲がらない、または伸びない
- 階段の上り下りや坂道で強い痛みを感じる
- 何もしていなくても膝がズキズキと痛むことがある
これらの症状が一つでも当てはまる場合は、無理をせず、早めに医療機関に相談しましょう。
急性期は冷やして安静、慢性期は温めて動かす
膝に水が溜まったときの対処法は、症状の時期によって異なります。
痛み、腫れや熱感が強いときなどの急性期には関節内の炎症を鎮めることが最優先です。基本となるのはRICE処置と呼ばれる応急処置です。
- Rest:安静
- Icing:冷却(冷やす)
- Compression:圧迫
- Elevation:挙上
強い痛みが落ち着き、動かしにくさが残るときなどの慢性期には、温めて血行を良くすることが大切になります。入浴やホットパックなどで膝を温めると、筋肉の緊張がほぐれ、関節の動きがスムーズになります。
温めて血行を促進することは、硬くなった組織の回復を助けることにもつながります。ご自宅では、温めながら無理のない範囲でゆっくりと膝の曲げ伸ばしを行い、関節が固まってしまうのを防ぎましょう。
上記の方法は、あくまで痛みを緩和するための工夫です。根本的な解決には、整形外科での診断と原因に対する治療が不可欠ですので、できるだけ早く専門医に相談しましょう。
膝に水が溜まったときに病院で行う検査と治療方法
膝に水が溜まったときに整形外科では関節液検査・MRI検査を行い原因を確認します。治療には、ヒアルロン酸注射、薬物療法、手術の方法があり、以下で解説します。
整形外科で関節液検査・MRI検査を行う
整形外科を受診すると、問診、膝を見たり触ったりする診察(視診・触診)から始まります。その後、水が溜まる原因を突き止めるため、以下のような検査を段階的に進めていきます。
- レントゲン(X線)検査:骨の変形や骨折の有無を調べる
- 超音波(エコー)検査:関節に溜まっている水の量や滑膜の炎症状態を確認する
- 関節液検査:関節液を抜き取り成分を調べる
- MRI検査:レントゲンには映らない半月板や靭帯、軟骨などの組織の状態を見る
これらの検査結果を総合的に判断し、水が溜まっている原因を特定していきます。
関節穿刺で水を抜き炎症を抑える
膝が張って痛みが強く、曲げ伸ばしがつらい場合には、注射器を使って膝に溜まった関節液を直接抜き取る関節穿刺(かんせつせんし)という処置を行います。
関節穿刺の目的は、主に以下の3つです。
- 症状の緩和:対症療法
- 検査:抜き取った関節液を調べる
- 薬の注入:炎症を抑えるステロイド薬など
採取した関節液を培養検査や細胞数測定などを行い、起因菌や炎症の重症度を評価したうえで治療方針を決定します。薬の注入は、炎症が強い場合に限り、ステロイド薬などを注入して症状を鎮めます(頻回な使用は控える必要があります)。
ヒアルロン酸注射・薬物療法・手術で治療する
治療の基本は、手術をしない保存療法です。
飲み薬、貼り薬は、炎症を抑えるために非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方されます。また、保険診療ではヒアルロン酸注射が一般的ですが、近年では組織の修復を促すPRP療法(多血小板血漿)などの再生医療(自由診療)を選択できる医療機関も増えています。
これらに合わせて、リハビリテーションや物理療法を行います。膝周りの筋肉(大腿四頭筋)を鍛える運動により、関節を安定させ、負担を軽減させ、電気治療や温熱療法で血行を促進し、痛みを和らげます。
数ヶ月にわたる保存療法を行っても改善が見られない場合や、半月板・靭帯の損傷が大きく生活に支障が出ている場合には手術が検討されます。変形が進行した場合には人工膝関節置換術など、原因や重症度に応じた手術が行われます。
まとめ
膝に水が溜まる背景には、変形性膝関節症や外傷、感染症、関節リウマチなど、関節内に炎症を引き起こすさまざまな疾患が隠れている可能性があります。
炎症が起こっていると、体は膝関節を保護しようとして関節液を過剰に分泌するため、水が繰り返し溜まってしまいます。
自己判断で放置せず、まずは整形外科を受診し、専門家と一緒に原因を探ることから始めましょう。
参考文献
Sarmanova A, Hall M, Moses J, Doherty M, Zhang W.Synovial changes detected by ultrasound in people with knee osteoarthritis – a meta-analysis of observational studies.Osteoarthritis Cartilage,2016,24(8),1376-83.
