胸や背中にズキッとした痛みを感じ、肋間神経痛ではないかと考えていませんか。その痛みの原因は、心臓や肺の病気、帯状疱疹であるケースも少なくありません。自己判断せず、症状に応じて正しい診療科を選ぶことが、早期回復への第一歩です。
この記事では、肋間神経痛とほかの病気を見分けるためのチェックリストや、受診すべき診療科の目安を解説します。適切な医療機関を選び、不安を解消するためのヒントにしてください。
症状別|肋間神経痛で受診すべき診療科
肋間神経痛の症状は多岐にわたり、痛みの出方や合併する症状によって、受診すべき診療科が異なります。症状別の肋間神経痛で受診すべき診療科は、以下のとおりです。
- 受診の基本:整形外科かペインクリニック
- 発疹がある:皮膚科
- 息苦しさや動悸がある:内科か循環器内科
- 迷ったとき:かかりつけ医や地域の相談窓口
受診の基本|整形外科かペインクリニック
肋間神経痛での受診は、まず整形外科かペインクリニックが選択肢となります。
整形外科は、骨や筋肉、神経の構造的異常を専門とする診療科です。レントゲンやMRIで画像検査を行い、胸・背中の骨や神経の状態を確認することで肋間神経痛の原因を探ります。ケガや姿勢の悪さで痛みが出ているのであれば、整形外科での検査が原因の特定につながります。
ペインクリニックは、痛みの治療そのものを専門とします。痛みの原因が不明であったり、強かったりする場合は、神経ブロック注射などを処方する可能性があります。
胸や背中付近に痛みがある人は、自宅近くの整形外科かペインクリニックを受診しましょう。
発疹がある|皮膚科
肋間神経痛に加え、発疹や水ぶくれがみられる場合は、帯状疱疹が疑われます。帯状疱疹の診察・治療の際は、皮膚科を受診しましょう。
帯状疱疹は、過去に感染した水ぼうそうウイルスが、疲労などの免疫力低下をきっかけに再び活性化して起こります。放置すると神経の炎症が悪化するので、発症したら、できる限り早く抗ウイルス薬を服用することが重要です。2025年度から、65歳になる方など(※年齢による経過措置あり)を対象に、帯状疱疹ワクチンが定期接種化されました。重症化を予防するためにも、お住まいの自治体の案内を確認し、接種を検討することが大切です。(※1)
治療の開始が遅れると、発疹が治っても痛みが長く続く「帯状疱疹後神経痛」へと移行するリスクが高まります。移行すると、数か月〜数年という長期間にわたり、痛みが継続することもあります
息苦しさや動悸がある|内科か循環器内科
胸の痛みは肋間神経痛だけが原因とは限らず、心臓や肺などの病気が隠れている可能性があります。以下のような症状がある場合は、内科か循環器内科を受診しましょう。
- 息苦しさや呼吸困難
- 動悸
- 冷や汗をかく
- 胸部の圧迫感や締め付けられるような強い痛み
- 痛みが肩や腕、顎などに広がる(放散痛)
- 運動時や労作時に症状が悪化する
心筋梗塞や狭心症などの心臓の病気がある場合、左胸周辺に強い痛みを感じることが多いです。心臓の病気では、痛みが腕や肩、顎にも広がる特徴があります。また、息切れを伴ったり、安静時でも突然痛みが出たりする場合もあります。
肺の病気だと、呼吸に伴い痛みが増し、急な息苦しさ・しつこい咳・血痰などがみられる傾向です。これらの症状は、肋間神経痛とは異なり、早期の診断と治療が必須のサインです。
内科や循環器内科であれば、心臓や肺に異常がないかを検査できます。いずれかの症状に当てはまる場合は、内科や循環器内科を受診してください。
迷ったとき|かかりつけ医や地域の相談窓口
受診すべきか迷ったときは、まず身近な相談先に連絡するのが良いでしょう。かかりつけ医や地域の医療相談窓口が相談先として挙げられます。
かかりつけ医は、皆さんの病歴や体質、日頃の生活習慣を理解しています。胸の痛みが肋間神経痛によるものなのか、ほかの病気の可能性があるのかを判断してくれるでしょう。症状に応じて、適切な専門医を紹介してもらえる場合もあります。
夜間や休日など、すぐに医療機関を受診できない状況では、地域の医療相談窓口を利用するのがおすすめです。例えば「救急安心センター事業(#7119)」では、急な病気やけがで救急車を呼ぶべきか、受診すべき診療科などをアドバイスしてくれます。
肋間神経痛とほかの病気の違い
ここでは、以下のような肋間神経痛と代表的な病気との違いを解説します。
- 心臓の病気との違い
- 肺の病気との違い
- 帯状疱疹後神経痛との関連
心臓の病気との違い
肋間神経痛と間違われやすい病気として、心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患があります。肋間神経痛と心臓疾患の主な違いは、以下の表のとおりです。
| 比較項目 | 肋間神経痛 | 心臓疾患(心筋梗塞・狭心症) |
|---|---|---|
| 痛みの性質 | チクチク、ピリピリなどの電気が走るような一時的な痛み | 締め付けられる、押しつぶされるような圧迫感 |
| 痛む範囲 | ・片側の肋骨沿いなど ・指でさせるほどピンポイント |
・胸の広範囲やみぞおち周辺 ・左肩、腕、顎などに広がる場合あり |
| 痛む場面 | 体をひねる、深呼吸、咳など | ・階段の昇り降り、重いものを持つなどの動き ・強い精神的なストレス ・寒さ |
| 安静時の経過 | 安静にしていると軽減しやすい | ・狭心症は安静にすると改善する場合が多い ・心筋梗塞は安静にしても痛みが続く |
心臓疾患が疑われる場合は緊急性が高いため、自己判断せずにすみやかに医療機関を受診してください。
肺の病気との違い
肺の病気が原因で、胸や背中に痛みが出ることがあります。肋間神経痛と区別するためのそれぞれの症状の特徴を、以下の表にまとめました。
| 比較項目 | 肋間神経痛 | 肺疾患(気胸・胸膜炎・肺がんなど) |
|---|---|---|
| 呼吸・息苦しさ | 深呼吸で痛むこともあるが、息苦しさは基本的に伴わない | ・深呼吸、咳、くしゃみで悪化 ・気胸では突然の激痛と息苦しさを伴う |
| 痛みの変化や持続性 | ・比較的短時間で治まる ・姿勢や動作で変化しやすい |
・持続的で次第に強くなることが多い ・姿勢や動作で変化しない |
| 全身症状の有無 | 発熱や倦怠感、咳などはない | ・激しい咳、痰、食欲不振、体重減少などの発現がありえる ・感染症なら発熱を伴う |
肺に関連する症状は見た目では判断がつきにくいので、少しでも疑わしいときは医療機関を受診してください。
帯状疱疹後神経痛との関連
肋間神経痛の原因の一つに、帯状疱疹があります。帯状疱疹を放置すると、帯状疱疹後神経痛につながりかねません。帯状疱疹後神経痛は、肋間神経痛よりも痛みが強く、「焼ける」「電気が走る」ような痛みを感じます。
帯状疱疹後神経痛は、服に触れる、風が当たるなどのわずかな刺激でも激しく痛む「アロディニア」と呼ばれる症状を伴うことがあります。痛む部分の感覚が鈍くなったり、しびれを感じたりする場合もあるでしょう。
帯状疱疹後神経痛にならないよう、帯状疱疹が疑われるときは早めに医療機関を受診しましょう。症状が現れてすぐに治療すれば、帯状疱疹後神経痛への移行リスクを減らせるかもしれません。
肋間神経痛の検査・治療法と再発予防策
ここでは、以下のような肋間神経痛の診断から治療、再発予防までを解説します。
- 診察前に整理しておくこと
- 肋間神経痛の主な検査法
- 主な治療
- 再発予防のポイント
診察前に整理しておくこと
痛みの原因を正確に診断し、最適な治療につなげるには、医師に症状を具体的に伝えることが重要です。
診察時間を有効に活用できるよう、事前に以下の表にある情報を整理し、メモを持参しましょう。
| 項目 | 伝えるべきポイント |
|---|---|
| 痛みの場所 | ・胸のどのあたりの痛みなのか ・背中が痛むのか ・指でさせるほどピンポイントなのか ・広い範囲が痛むのか |
| 痛みの性質 | ・ズキズキ、ピリピリ、チクチク、締め付けられるなどの痛みか ・痛みは鋭いのか鈍いのか |
| 痛みの強さ | ・10段階で例えると、どの程度の痛みなのか ・日常生活に支障が出るほどの痛みなのか |
| いつから始まったか | ・症状が始まった具体的な日付や時期 ・痛みの進行は急激なのか徐々になのか ・ストレス、ケガ、咳などの心当たりがあるのか |
| 悪化するとき | ・深呼吸、咳、特定の動作や姿勢などで悪化するのか ・患部に触れると痛む(圧痛)のか |
| 和らぐとき | 安静、温める、冷やす、特定の姿勢で痛みが和らぐのか |
| ほかの症状の有無 | ・発疹や水ぶくれ、しびれ、息苦しさや動悸、発熱などがあるか ・上記の症状が痛みに先行して現れたか |
| 既往歴 | 過去の病気や乳がん手術などの手術経験 |
肋間神経痛の主な検査法
肋間神経痛の診断で使われる主な検査法は、以下のとおりです。
- 問診・触診
- 問診では、医師は痛みの特徴や経過を確認し、考えられる原因を絞り込みます。症状を把握したあと、触診で筋肉の緊張具合や骨の異常、圧痛がないかを調べます。体の左右差や、痛みの広がり方も重要な判断材料です。
- レントゲン検査
- 骨折や背骨の変形、骨粗しょう症の有無などは、レントゲン検査でわかるでしょう。
- CT検査・MRI検査
- 細かい病変や内臓との位置関係などは、CT検査で確認されます。神経の炎症や損傷の程度を評価する際に行われるのは、MRI検査です。
- 血液検査
- 感染症やリウマチなどの全身性疾患の確認には、血液検査が行われます。
- 神経伝導検査
- 神経障害の場所や程度は、神経伝導検査で評価可能です。
肋間神経痛の検査では、さまざまな方法を用いることで原因を特定し、適切な治療へとつなげていきます。
主な治療
肋間神経痛の治療は、痛みの原因や程度、体質に応じて、薬物療法や神経ブロック注射、理学療法、外科的介入が行われます。
薬物療法は、痛みの種類に合わせて薬を選択します。各薬の特徴は以下の表のとおりです。
| 種類 | 役割や特徴 |
|---|---|
| 鎮痛薬(NSAIDs:エヌセイズ) | ・炎症を抑えて一般的な痛みを和らげる ・飲み薬だけでなく湿布や塗り薬も併用される |
| 神経障害性疼痛治療薬(プレガバリンなど) | ・脳や脊髄の痛みの伝達経路に作用し神経の過敏さを抑える ・通常の鎮痛薬が効きにくい場合に選択肢となる |
| 筋弛緩薬 | ・筋肉の過剰な収縮を抑える ・硬くなった筋肉を柔らかくし、神経への圧迫を軽減する |
神経ブロック注射は、痛みを感じる神経の周囲に局所麻酔薬などの薬を注入し、痛みの信号を一時的に遮断する治療法です。痛みの緩和に加え、血流改善や筋肉の緊張緩和も期待できます。
理学療法では、温熱療法や電気療法、マッサージ、運動療法など、理学療法士が患者さんの状態に合わせたメニューを組み立てます。外科的介入(手術)は、ほかの治療で改善せず、神経の圧迫が強い場合に検討される治療です。
再発予防のポイント
肋間神経痛は、生活習慣やストレスにより再発しやすいため、日頃の予防が大切です。
猫背や前かがみの姿勢は、背骨や肋骨に負担をかけ、肋間神経を刺激します。パソコンやスマートフォンの操作中は背筋を伸ばし、椅子の背もたれや台を置いて足の位置を高くするなど環境を整えましょう。
また、ストレッチで筋肉を柔軟に保ち、軽い運動で体幹を鍛えることは、姿勢の安定と神経への負担軽減につながります。過度なストレスは自律神経を乱し、痛みを強く感じさせます。睡眠時間の確保や、趣味などで心身をリラックスさせてください。
冷えは筋肉を収縮させ、神経への刺激となるため、季節や空調に合わせた保温の意識が大切です。
これらの対策を継続し、神経過敏を防ぐことが肋間神経痛の再発予防につながります。
まとめ
胸や背中などの痛みの原因を自己判断してしまうと、重い疾患を見逃すリスクがあり危険です。肋間神経痛の疑いがある方は、まず整形外科かペインクリニックを受診しましょう。
ただし、息苦しさや動悸などの症状がある場合は、心臓や肺の病気が疑われるため、すみやかに内科や循環器内科を受診してください。
発疹や水ぶくれは帯状疱疹の可能性があるので、すぐに皮膚科を受診することが大切です。受診先を迷ったら、かかりつけ医や、地域の医療相談窓口(#7119)を活用しましょう。
適切な医療機関を早期に受診することが、症状改善への第一歩となります。無理せず、専門家の診断を受けて安心につなげてください。
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・【【医師監修】肋間神経痛で痛む場所は?部位ごとの症状の特徴と放置のリスク
参考文献
厚生労働省.「帯状疱疹ワクチン」
