お風呂上がりや運動後など、体が温まったときに、かゆみを伴う赤いブツブツが現れることがあります。温熱刺激で起こる蕁麻疹には「コリン性蕁麻疹」と「温熱蕁麻疹」という、よく似ている2つの病気があります。
この記事では、コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹の違いや共通点、治療法について詳しく解説します。
コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹の違い
温熱刺激によって誘発される蕁麻疹には、コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹という、よく似た2つの病気が存在します。どちらも体が温まることがきっかけで起こりますが、原因や症状の現れ方が異なります。
コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹の具体的な違いを、以下の表にまとめました。
| 項目 | コリン性蕁麻疹 | 温熱蕁麻疹 |
|---|---|---|
| 原因 | アセチルコリンの刺激 | 皮膚への直接的な熱刺激 |
| きっかけ | 運動、入浴、ストレス、辛い食事など | 熱湯、カイロ、温風など |
| 膨疹の特徴 | 1〜3mm程度の小さな点状の膨疹が多数出る | 比較的大きめの膨疹が出る |
| 症状 | かゆみ、ピリピリ・チクチクした痛み | 強いかゆみ、ヒリヒリ感 |
| 部位 | 胸・背中を中心に全身へ広がる | 熱が当たった部分のみ |
| 持続時間 | 15〜60分程度 | 1〜3時間 |
| 診断方法 | 運動負荷試験、温浴負荷試験、自己汗皮内テスト | 温度誘発試験 |
以下では、それぞれの原因や症状、出現部位やタイミングの違いを詳しく解説します。
コリン性蕁麻疹についての詳しい記事はこちら⇒コリン性蕁麻疹の原因と症状は?発症したときの対処法も解説
原因の違い
コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹は、同じ「体が温まること」がきっかけでも、発症の仕組みが異なります。
- コリン性蕁麻疹
運動や入浴、緊張などで体温が上がり汗をかくときに、アセチルコリンという神経伝達物質が働くことで起こります。(※1)この刺激によって肥満細胞が活性化し、かゆみの原因となるヒスタミンが放出されて発疹が出ます。つまり、体の内側の反応が関係しています。
- 温熱蕁麻疹
カイロや熱いお湯など、皮膚に直接熱が加わることが原因です。(※2)体温調節の仕組みとは関係なく、外からの熱刺激によって皮膚が反応して蕁麻疹が出ます。
症状の違い
コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹は、現れる膨疹(皮膚の盛り上がり)の見た目やかゆみの感じ方にも、はっきりとした違いが見られます。
- コリン性蕁麻疹の症状
ピリピリ、チクチクした痛みと小さな点状の膨疹が特徴です。膨疹は1〜3mm程度で、あせものようにたくさん現れます。症状は発汗し始めてから数分で現れ、通常は15〜60分以内に消失します。(※3)
- 温熱蕁麻疹の症状
温かいものに触れた部分の皮膚が、蚊に刺されたように赤く盛り上がります。膨疹の大きさはさまざまで、境界がはっきりしていることが多く、強いかゆみを伴うのが一般的です。原因となる刺激から離れると、1〜3時間程度で消えることがほとんどです。(※2)
コリン性蕁麻疹も温熱蕁麻疹も、症状が6週間以上続いたり、繰り返し起こったりする場合は「慢性蕁麻疹」と呼ばれます。(※4)
出現部位やタイミングの違い
コリン性蕁麻疹は体温上昇をきっかけに広範囲へ現れ、温熱蕁麻疹は熱が触れた部分に限って出るのが特徴です。
コリン性蕁麻疹は、運動や入浴、緊張などで体の内側から体温が上がったあとに発症し、胸や背中を中心に小さな発疹が広がります。汗をかく場面と関連しやすい点がポイントです。
温熱蕁麻疹は外からの熱刺激が原因で、刺激を受けた皮膚に局所的に症状が出ます。それぞれの違いを整理すると次のとおりです。
| 種類 | 特徴的な出方 | 主なきっかけ |
|---|---|---|
| コリン性蕁麻疹 | 体幹中心に広がりやすい | 運動や入浴、緊張、発汗など |
| 温熱蕁麻疹 | 熱が触れた部位に限定 | カイロやシャワー、暖房など |
発症前の状況と発疹の広がり方を照らし合わせると、見分けやすくなります。
診断と検査のポイント
コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹は、症状が似ていることもあるため、正確な診断には専門的な知識が必要です。ここでは、2つの蕁麻疹を見分ける検査や受診の目安を解説します。
自己判断が難しい理由
自己判断が難しい理由は、見た目の症状だけでは原因を区別できないからです。コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹は、どちらも体が温まったときに起こるため、赤い発疹やかゆみなどの症状がよく似ています。
熱いお風呂のあとに蕁麻疹が出ても、汗が原因の場合と、皮膚に当たった熱が原因の場合があります。原因が違えば予防法や治療法も変わるため、正しく見分けるには皮膚科で診てもらうことが大切です。
医療機関での検査内容
蕁麻疹の診断は、問診と視診でおおよその診断がつくことが多いですが、正確な原因を特定するために検査を行うことがあります。コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹の検査方法は、以下のとおりです。
| 診断 | 検査 | 検査内容 |
|---|---|---|
| コリン性蕁麻疹 | 運動負荷試験、温浴負荷試験 | 軽い運動や足湯を行い、意図的に体温を上昇させて症状が再現されるかを確認する |
| コリン性蕁麻疹 | 自己汗皮内テスト | ご自身の汗を少量だけ採取し、精製した成分を皮膚に注射し、アレルギー反応が起きるかを確認する |
| 温熱蕁麻疹 | 温度誘発試験 | 温度をコントロールできる器具を皮膚に当て、蕁麻疹が発現するか確認する |
検査によって原因がはっきりすれば、一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立てることができます。
診療科の選び方と受診の目安
蕁麻疹が出た場合は、まず皮膚科を受診するのが基本です。専門医が症状や経過を確認し、原因の見極めと適切な治療を行います。特に呼吸症状を伴う場合は緊急対応が必要です。
受診の目安は次のとおりです。
- 息苦しさや呼吸のしづらさ
- 喉の腫れや締め付け感
- めまい、失神感
- 強い腹痛や繰り返す嘔吐
- 頻繁に繰り返す
- 全身に広がる
- かゆみが強く生活に支障がある
- 市販薬で改善しない
- 原因がわからず不安が続く
原因となる刺激を特定し避けることが再発予防につながります。気になる症状があれば早めに専門医へ相談しましょう。
2つの蕁麻疹の治療法の違いと共通点
ここでは、コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹の治療法について、2つの蕁麻疹の共通点や、それぞれの原因に合わせた対策を解説します。
共通の基本治療:抗ヒスタミン薬の使用
コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹、どちらの治療においても中心となるのが「抗ヒスタミン薬」の内服治療です。蕁麻疹のかゆみや赤みは、ヒスタミンの働きによって引き起こされるため、ヒスタミンを抑える抗ヒスタミン薬が使用されます。
慢性蕁麻疹の場合などでは、症状が出ていないときでも医師の指示通りに毎日薬を飲み続けることが重要となることがあります。毎日服用することで、ヒスタミンが放出されても症状が出にくい状態を維持し、発作そのものを予防することが大切です。(※4)
共通の生活改善:発症要因の回避
服薬治療に合わせて、症状を改善するためにも、日常生活の見直しをしましょう。コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹に共通する注意点は、以下のとおりです。
- 急激な温度変化を避ける
- 熱すぎるお風呂やシャワーは控える
- 睡眠時間を確保し、体調管理を徹底する
- アルコールや辛い食べ物など、刺激の強い食事を控える
日常生活のなかで、どのような時に症状が出やすいかを把握し、発症するきっかけ(誘発因子)をできるだけ避けることも重要です。
コリン性蕁麻疹:発汗コントロールとストレスケア
コリン性蕁麻疹は、発汗の指令を出すアセチルコリンが、汗腺だけでなく肥満細胞も刺激してしまうことで起こります。コリン性蕁麻疹の治療は、急激な発汗と精神的な緊張を上手にコントロールすることがポイントとなります。
急に激しい運動を始めると、体温が急に上がって汗がたくさん出るため、軽いストレッチなどをして徐々に体を慣らしましょう。
精神的な緊張や興奮は、交感神経を優位にし、アセチルコリンの分泌を促します。(※3)意識的に深呼吸をする時間や、リラックスできる時間を作りましょう。
発汗のコントロールやストレスのケアは、すぐに成果が出るものではありませんが、長期的目線で日々の生活に取り入れましょう。
温熱蕁麻疹:冷却対策
温熱蕁麻疹は、皮膚に温かいものが直接触れ、その部分の温度が局所的に上昇することが引き金です。発症を抑えるポイントは、症状が出たときの速やかな冷却と皮膚を温めすぎない工夫です。
蕁麻疹が出たら、冷水で濡らした清潔なタオルや保冷剤で、患部を冷やしましょう。かゆい部分を掻きむしると、刺激で症状が悪化し、蕁麻疹の範囲が広がってしまう可能性があるため、注意してください。
日常生活で行う予防法には、以下が挙げられます。
- カイロや湯たんぽは、肌に直接触れないようにする
- ストーブやファンヒーターの温風が、体の同じ場所に当たり続けないようにする
- ノートパソコンを長時間、膝の上で使わない
- 調理中は、鍋や炊飯器から出る蒸気を直接浴びないように気をつける
- 体を締め付ける衣類や硬い素材の服は避ける
- 体温を上げる化学繊維性のインナーを避ける
- 外出時は日傘や帽子、UVカット機能のある衣類を活用する
小さな工夫を積み重ねることが、つらい症状の発生を防ぎ、快適な生活を送ることにつながります。
日常生活で気をつけたいポイント
コリン性蕁麻疹や温熱蕁麻疹の症状は、日常生活のささいなきっかけで現れます。ここでは、蕁麻疹と上手に付き合っていくためのポイントをご紹介します。
入浴・運動・発汗のコントロール
蕁麻疹を防ぐには、体温を急に上げすぎないことが大切です。入浴や運動は健康に良い習慣ですが、体が急に温まったり汗をかきすぎたりすると、症状のきっかけになることがあります。
コリン性蕁麻疹の場合は、汗が刺激になります。運動前に軽く体を慣らし、急に激しく動かないようにしましょう。汗をかいたらそのままにせず、シャワーや濡れタオルで早めに拭き取ります。入浴は38〜40℃ほどのぬるめのお湯で短時間にすると症状が出にくくなります。
温熱蕁麻疹の場合は、皮膚に直接熱を当てないことがポイントです。シャワーや暖房は熱くしすぎず、カイロや電気毛布は肌に直接触れないようにします。日常の小さな工夫が、発症の予防につながります。
発症時の応急処置
蕁麻疹が出たときは、原因から離れて体を冷やすことが基本です。
慌てずに対応することで、症状の悪化を防ぎ、かゆみを和らげることができます。あらかじめ以下のような応急処置を知っておくと安心です。
| 応急処置 | 対応策 |
|---|---|
| 原因から離れる |
|
| 掻かずに冷やす |
|
| 皮膚を清潔に保つ | コリン性蕁麻疹の場合、汗をかいたらすぐに洗い流すか、拭きとる |
蕁麻疹とともに息苦しさやめまい、強い腹痛などの全身症状が現れた場合は、アナフィラキシーという重いアレルギー反応の可能性があります。ためらわずに救急外来を受診するか、救急車を要請してください。
再発予防のための生活習慣
蕁麻疹の症状を繰り返さないためには、薬による治療とあわせて、日々の生活習慣を見直すことも大切です。体調を整え、刺激をできるだけ避ける生活を心がけましょう。
日常生活では、次のような点に注意してみてください。
| 生活習慣の改善 | 対応策 |
|---|---|
| ストレスを溜めない |
|
| 食生活を見直す |
|
| 日常生活の工夫 |
|
生活習慣を整えることは、症状の再発を防ぎ、薬の使用を減らすことにもつながります。
まとめ
コリン性蕁麻疹と温熱蕁麻疹は、似た状況で起こるため混同しがちです。
蕁麻疹の出現が、汗をかくことが引き金になるのか、皮膚への直接的な熱が原因なのかが見分けるポイントとなります。自己判断で対策を誤ると、症状を悪化させてしまう可能性もあるため、皮膚科を受診してご自身のタイプを正確に知ることが大切です。
つらいかゆみや痛みも、原因に合わせた抗ヒスタミン薬の服用と、誘発する刺激を避ける生活習慣の見直しで、上手にコントロールできます。蕁麻疹で気になることがあれば一人で悩まず、専門医へ相談してみてください。
参考文献
- Tokura Y. Direct and indirect action modes of acetylcholine in cholinergic urticaria. Allergology International,2021,70,1,p.39-44.
- Diehl KL, Erickson C, Calame A, Cohen PR. A Woman With Solar Urticaria and Heat Urticaria: A Unique Presentation of an Individual With Multiple Physical Urticarias. Cureus,2021,13,8.
- Fukunaga A, Oda Y, Imamura S, Mizuno M, Fukumoto T, Washio K. Cholinergic Urticaria: Subtype Classification and Clinical Approach. Am J Clin Dermatol,2022,24,1,41-54.
日本皮膚科学会:「蕁麻疹診療ガイドライン2018」p.3, 8
