2026年6月より、子どもの近視進行を抑制するリジュセアミニ点眼(低濃度アトロピン0.025%)の処方に伴う診察費・検査費が、公的医療保険の対象となる予定です(※選定療養制度の枠組み)。
薬剤費(点眼薬そのもの)は引き続き自費となりますが、診察と検査が保険適用になることで、多くの自治体の子ども医療費助成制度が利用できる可能性があります。
この記事では、「リジュセアミニ点眼の保険適用で何が変わるのか」「費用はどうなるのか」「なぜ今このタイミングなのか」をわかりやすく解説します。
この記事の要点(30秒でわかるまとめ)
- ・2026年6月から、診察費・検査費が保険適用(選定療養)に。点眼薬は引き続き全額自費
- ・保険適用により、子ども医療費助成制度が使える可能性が高まる
- ・対象は主に5〜15歳。近視進行が続く時期の早めの対応が重要
目次
リジュセアミニ点眼とは?効果・対象・安全性

低濃度アトロピン0.025%の近視抑制メカニズム
もともと高濃度のアトロピン(1%など)には近視進行を抑える効果があることが知られていましたが、瞳孔が大きく開いてまぶしさが強くなるなどの副作用があり、長期使用には適していませんでした。
その後、シンガポール国立眼科センターによる大規模臨床研究により、低濃度でも近視進行を抑制する効果が認められることが示されました。
一方で、副作用が軽減されていますが、点眼後に一時的なまぶしさ(羞明)やかすみ目(霧視)、アレルギー性結膜炎(かゆみや充血)が現れる場合があります。異常を感じた場合は直ちに眼科医にご相談ください。
参天製薬はこれらのエビデンスをもとに、日本国内での臨床試験を経て、使い切り型で防腐剤を含まない製剤設計を採用した「リジュセアミニ0.025%」を開発し、承認を取得しています。
国内治験での有効性データ
国内治験では、5歳から15歳の小児を対象に、平均約38%の近視進行抑制効果が報告されています(参天製薬の国内第3相試験データより)
近視の進行は眼軸(目の前後の長さ)が伸びることで生じますが、リジュセアミニ点眼はこの眼軸の伸びを抑えることが確認されています。
参考記事はこちら⇒参天製薬株式会社「日本初となる近視の進行抑制を目的とする点眼剤リジュセア®ミニ点眼液 0.025%(アトロピン硫酸塩点眼液)の国内における製造販売承認を取得)
対象年齢と使用方法
- 対象:
- 5歳〜15歳の小児(眼軸が成長している時期)
※15歳以降について: 国内治験の対象が15歳までであったため目安としてこの年齢が設定されていますが、近視の進行が続いている場合など医師の判断により継続・開始できるケースがあります。ただし、保険適用(子ども医療費助成を含む)の対象年齢については自治体や医療機関によって運用が異なるため、事前に受診先の眼科へご確認ください。
- 用法:
- 就寝前に1滴点眼(1日1回)
- 治療期間の目安:
- 眼軸が成長する小児期(数年間)にわたり、長期間の継続と定期的な通院(数ヶ月ごと)が必要となります。
- 剤型:
- 使い切りタイプ・防腐剤不使用
ポイント:治療のタイミングについて 近視の進行抑制効果が期待できるのは、主に眼軸が成長している時期に限られます。高血圧や糖尿病と異なり、治療に「時間的制約」がある点が特徴ですが、眼の成長のピークには個人差があります。「15歳を過ぎたから手遅れ」と自己判断せず、気になったタイミングでまずは眼科医に相談することが推奨されます。
※関連メディアのリジュセアミニ点眼薬についての記事はこちら:近視の進行にブレーキをかける目薬が国内で承認!
リジュセアミニ点眼の保険適用
保険適用になるのは「診察費・検査費」のみ
厚生労働省は2026年6月から、リジュセアミニ点眼を処方する際の診察費と検査費を、公的医療保険の対象とする予定です。
具体的には、以下の費用が保険適用(※選定療養)となります。
- 診察費
- 視力検査費
- 屈折検査費
これらは通常の眼科診療と共通する検査であり、リジュセアミニ点眼の処方に伴う診療部分として保険で扱われることになります。
※選定療養(せんていりょうよう)とは:保険診療と自由診療を併用できる制度
薬剤費(点眼薬そのもの)は引き続き自費
誤解を避けるため、費用の内訳を整理します。
- 診察費・検査費 → 保険適用(選定療養の枠組み)
- リジュセアミニ点眼薬 → 引き続き全額自費
「リジュセアミニ点眼が保険適用になった=薬も無料になる」というわけではありません。あくまで診療部分が保険の対象となります。
費用の目安(保険適用前後の比較)
| 項目 | 保険適用前(全額自費) | 保険適用後(2026年6月〜) |
| 診察費 | 全額自費 | 3割負担 |
| 視力・屈折検査費 | 全額自費 | 3割負担 |
| リジュセアミニ点眼薬 | 全額自費 | 引き続き全額自費 |
※医療機関によって異なりますが、リジュセアミニ点眼薬の費用は1ヶ月分で約3,000円〜4,000円程度が標準的な目安となります。
保険適用になったことで、各自治体の子ども医療費助成制度の対象となる可能性が高まります。その場合、多くの自治体では診察費・検査費の自己負担は実質的に生じないと考えられます。ただし、自治体ごとに運用が異なるため、事前の確認が必要です。
なぜリジュセアミニ点眼が保険適用になったのか
日本の医療保険制度と予防医療の壁
日本の公的医療保険制度は、これまで主に「すでに発症した病気への治療」を中心に設計されてきました。
たとえば高血圧や糖尿病は、「血圧が高い」「血糖値が高い」という異常な状態を是正する治療として、保険の枠組みに収まりやすい性格を持っています。
一方、近視進行抑制治療は「現在の異常を正常化する」のではなく、「将来の悪化を抑える」医療です。そのため、従来は保険適用になりにくい領域とされてきました。
近視が「眼疾患のリスク因子」として再定義された
以前は「視力が悪くなればメガネで矯正すればよい」という考え方が一般的でしたが、近年の疫学研究により、近視が強くなるほど以下のリスクが高まることが明らかになっています。
- 網膜剥離
- 緑内障
- 近視性黄斑症
近視は単なる屈折異常ではなく、目の構造を変化させる進行性の病的過程として認識されるようになってきました。この認識の転換が、制度的な見直しの背景にあります。
「選定療養」という制度的な解決策
眼科は、保険と自費を組み合わせる診療の先例を多く持つ分野です。たとえば白内障手術で使用する多焦点眼内レンズでは、「手術自体は保険適用・多焦点レンズの高機能部分は自費」という選定療養の枠組みがすでに活用されています。
今回のリジュセアミニ点眼の保険適用も、この選定療養制度を活用する形が採られました。診察や検査は保険診療としつつ、薬剤そのものは保険給付の対象外とする設計です。
これは、予防的性格を持つ医療を現行の医療保険制度の中に位置づけるための、現実的な制度的調整といえます。
世界的な近視パンデミックと日本の対応
世界的に子どもの近視は急増しており、2050年には世界人口の約半数が近視になるとも予測されています。シンガポール・台湾・中国・欧州などでは国家レベルでの近視対策が進められており、その潮流がいま日本にも及びつつあります。
強度近視は、緑内障や近視性黄斑症など視機能を大きく損なう可能性のある慢性疾患のリスクを高めます。これらは長期にわたる治療が必要となる場合もあり、患者本人の負担だけでなく医療費という観点でも社会的コストが高い領域です。
子どもの段階で近視の進行を抑えることが、個人にとっても社会全体にとっても合理的であるという考え方が広まり、今回の制度変更につながりました。
※関連メディアの近視に関する記事はこちら↓
リジュセアミニ点眼だけで近視は止まる?他の治療との組み合わせ
リジュセアミニ点眼は、近視進行抑制の有効な手段の一つですが、点眼薬だけで近視の進行が完全に止まるわけではありません。
他の近視進行抑制治療との併用で効果が高まることがわかっています。
- オルソケラトロジー(就寝中に特殊なコンタクトレンズを装用する治療法)
- 近視進行抑制コンタクトレンズ「マイサイト」(承認済み)
- 近視抑制設計の眼鏡(審査中)
また、子どもの生活習慣も近視進行に大きく影響します。
- 日中の屋外活動時間の確保(1日2時間以上が推奨される)
- 適切な読書距離・画面との距離の習慣づけ
近視進行抑制治療は、生活環境の改善と組み合わせて初めて最大限の効果を発揮する医療です。
担当の眼科医と相談しながら、お子さんに合った治療プランを検討してください。
よくある質問(FAQ)
Q:リジュセアミニ点眼は何歳から使えますか?
A.国内治験の対象は5歳〜15歳の小児です。近視の進行抑制効果が期待できるのは眼軸が成長している時期に限られるため、早期からの対応が重要です。
Q:リジュセアミニ点眼の保険適用はいつから始まりますか?
A.2026年6月から、診察費・検査費が選定療養制度の枠組みで保険適用となる予定です。
Q:薬剤費(点眼薬)も保険になりますか?
A.いいえ。リジュセアミニ点眼薬そのものは引き続き全額自費となります。保険適用の対象は診察費・検査費のみです。
Q:子ども医療費助成は使えますか?
A.保険適用になったことで、各自治体の子ども医療費助成制度の対象となる可能性が高まります。ただし、自治体ごとに運用が異なるため、お住まいの自治体または受診予定の眼科にご確認ください。
Q:リジュセアミニ点眼はどこで処方してもらえますか?
A.処方は眼科での診察が必要です。かかりつけの眼科にご相談ください。すべての眼科で処方を行っているわけではないため、事前に確認することをお勧めします。
Q:オルソケラトロジーと組み合わせることはできますか?
A.はい。リジュセアミニ点眼とオルソケラトロジーの併用は、それぞれ単独で行うより高い近視進行抑制効果が期待できる場合があります。担当の眼科医にご相談ください。
まとめ|リジュセアミニ点眼の保険適用で変わること
2026年6月から始まるリジュセアミニ点眼の保険適用は、「薬が無料になる」わけではありません。
しかし、診察費・検査費が保険適用になることで、子ども医療費助成制度の利用が可能になるという点で、経済的なアクセスのハードルが下がる重要な変化です。
近視は「見えにくい」だけの問題ではなく、将来の眼疾患リスクに直結する可能性があります。
お子さんの近視が気になる方は、早めに眼科を受診し、近視進行抑制治療について相談することをお勧めします。
※本記事は2026年2月時点の情報をもとに執筆しており、2026年6月の制度施行前の内容を含みます。制度の詳細については、厚生労働省の公式発表および担当の眼科医にご確認ください。
