「なんだか気分が晴れない」「以前は楽しかったはずの趣味にも興味が湧かない」という不調に悩んでいませんか。原因不調の気分の不調は、うつ病のサインかもしれません。
厚生労働省によると、精神疾患を有する患者さんは年々増加傾向にあり、2023年で約603万人です。なかでも、うつ病を含む気分障害の患者さんは156.6万人で、最も多い原因疾患であると報告されています。(※1)
この記事では、うつ病に関するセルフチェックリストと受診の目安、相談先、医療機関での治療法を解説します。一人で抱え込まず、まずはご自身の状態を知ることから始めてみましょう。
うつ病セルフチェックリスト(QIDS−J)
うつ病のセルフチェックツールの一つが、「QIDS−J(クイッズ-ジェイ:簡易抑うつ症状尺度)」です。
QIDS−Jは、うつ病の診断基準(DSM−IV)にもとづいてつくられた評価尺度です。(※2)世界10か国以上で利用されており、ご自身の状態を客観的な指標で把握するのに役立ちます。
QIDS−Jでチェックされる項目は、以下の表のとおりです。
| 番号 | 質問項目 |
|---|---|
| 1 | 夜間、寝つくのにかかる時間や頻度がどれくらいか |
| 2 | 毎晩、どれくらいの頻度で目が覚めるか |
| 3 | 起きなくてはならない時間よりどれだけ早く目が覚めるか |
| 4 | 睡眠時間が多すぎないか |
| 5 | どれくらいの時間、悲しい気持ちになるか |
| 6 | 普段からの食欲の低下があるか |
| 7 | 普段からの食欲の増進があるか |
| 8 | 最近2週間で体重が減少したか |
| 9 | 最近2週間で体重が増加したか |
| 10 | 集中力や決断力が普段と変わらないか |
| 11 | 自分を責めがちか |
| 12 | 死や自殺を考えることがあるか |
| 13 | 何かに興味を持つことが少なくなっていないか |
| 14 | 日常生活をするのにエネルギーを使っているか |
| 15 | 普段よりも動きが遅くなっていないか |
| 16 | 落ち着かない気持ちになることがあるか |
各質問項目に対し、0〜3点で点数をつけます。詳細な質問内容は、厚生労働省の資料をご確認ください。
ただし、これはあくまでご自身の状態を把握するための指標です。自己判断で病名を決めつけず、専門医の診断を受けることが大切です。
採点方法
QIDS−Jは、セルフチェックリストをもとに0〜27点満点で採点し、心のエネルギー状態を評価する方法です。
各質問項目から、自身に当てはまる状態を一つ選びます。
リストの1〜4(睡眠)・6〜9(食欲と体重)・15〜16(精神運動状態)は、それぞれのグループ内で最も高い点数を書き出してください。ほかの6つの項目は、そのまま点数化し、9つの点数の合計を算出します。
合計点とうつ病の重症度の関係は、以下の表のとおりです。(※2)
| 合計点 | 重症度の目安 |
|---|---|
| 0~5点 | 正常範囲 |
| 6~10点 | 軽度の抑うつ状態 |
| 11~15点 | 中等度の抑うつ状態 |
| 16~20点 | 重度の抑うつ状態 |
| 21~27点 | きわめて重度の抑うつ状態 |
ただし、この点数はあくまで目安です。点数が低くても、あなた自身がつらいと感じていたら、医療機関を受診するか、メンタルヘルス(心の健康)の専門機関に相談してみましょう。
受診の目安
セルフチェックの合計点が6点以上だった場合、うつ病が疑われるので専門医に相談しましょう。合計点が5点以下であっても、次のようなサインがみられるなら、医療機関の受診を検討してください。
- 気分が沈む、何にも興味がもてないなどの状態が2週間以上続いている
- 仕事や学校、家事などが手につかず、普段の生活に影響が出ている
- 自分を責める気持ちが強く、つらさから抜け出せない
特に、「消えてしまいたい」「死にたい」という気持ちが少しでも頭をよぎる場合は、一人で抱え込まないでください。
専門家のサポートを得ることで、回復へ近づける可能性があります。
うつ病が疑われるときの相談先と診断の流れ
ここでは、セルフチェックなどでうつ病が疑われるときの「受診すべき相談先」と「医療機関での診断方法」を解説します。
受診すべき相談先
うつ病の疑いがある方は、心の不調を専門に扱う精神科や心療内科が相談先の選択肢です。
気分の落ち込みや意欲の低下、不安感などが症状の中心であれば、精神科が推奨される受診です。
頭痛や腹痛、めまいなどの体に症状が現れている場合は、心療内科で対応が可能です。どちらを受診すべきか迷うときは、予約の際に症状を伝えて相談してください。
精神科や心療内科のような専門医への受診に抵抗がある場合は、かかりつけ医に相談すると良いでしょう。日頃からの健康に関しての相談ができるかかりつけ医に症状を聞いてもらい、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらうことも選択肢の一つです。
医療機関での診断方法
医療機関でのうつ病の診断は、医師が患者さんの話を丁寧に聞く「問診」が中心です。
問診では、医師が患者さんの症状を理解するために、発症時期や症状の内容、身体症状の有無、日常生活への影響などを質問します。身近な人との死別や職場環境の変化など、大きなストレスが引き金になることもあります。
「消えてしまいたい」「自分を傷つけたい」という気持ちが少しでも頭をよぎる方は、勇気を出してかかりつけ医をはじめとした医師に伝えてください。つらい気持ちを正直に話すことは、あなたの安全を守るうえで重要です。
症状によっては、甲状腺の疾患(甲状腺機能低下症など)などほかの身体の病気が背景にないかを確認するために、血液検査などを行うこともあります。
ただし、うつ病の診断は、一度で確定するとは限りません。何度か通院しながら症状の変化を丁寧に見守り、慎重に判断されます。
うつ病の治療方法

うつ病の治療は、一つの決まった方法があるわけではありません。患者さん一人ひとりの状態に合わせて、いくつかの治療法を組み合わせて進めていくのが一般的です。
主なうつ病の治療方法は以下の3つです。
①休養
②薬物療法
③精神療法
①休養
うつ病の治療で重要なのが休養です。
うつ病は、心身のエネルギーが完全に枯渇してしまった状態です。まずはエネルギーをしっかり再充電することで、回復へ近づける可能性があります。
大きなストレスは、知らず知らずのうちに心と体を限界まで消耗させるため、以下のような方法で休養しましょう。
- 仕事のペースを落とす、残業を控える
- 思い切って休職し、治療に専念する
- 家事や育児の負担を減らす(家族や公的サービスの助けを借りる)
休むことに罪悪感を覚える必要はありません。意識的に心と体を休ませることは、回復へとアプローチできる治療です。
②薬物療法
十分な休養を取っても症状の改善が難しかったり、症状が重く日常生活に深刻な支障が出ていたりする場合は薬物療法が検討されます。
うつ病は、脳内の神経と神経の間で情報を伝える物質(セロトニンなど)のバランスが乱れることで起こる不調と考えられています。薬物療法は、主に抗うつ薬を用いて、セロトニンなどのバランスを整え、脳が本来の働きを取り戻す手助けをする方法です。
ただし、薬物療法を行なった場合でも、効果が現れるまでに時間がかかることがあります。抗うつ薬は、効果が現れるまでに通常2〜4週間程度の時間がかかります。また、飲み始めに吐き気や眠気などの副作用を感じることもありますが、自己判断で中断せず、まずは主治医に相談することが重要です。薬の量を調整する場合も、事前に医師に相談してください。
また、うつ病は、ほかの体の病気が引き金になることも少なくありません。甲状腺機能低下症など、ほかの身体疾患が引き金となって、うつ病を引き起こすこともあります。
③精神療法
薬物療法で心と体のエネルギーを回復させつつ、専門医が精神療法(カウンセリング)を行います。支持的精神療法は、精神科医(精神科専門医、精神保健指定医)が日常の診療で行うものです。
精神療法は、うつ病になりにくい心をつくるための再発予防を目的とした治療です。ストレスを溜め込みやすい考え方の癖や物事の受け止め方、人との関わり方などを、専門家との対話を通じて見つめ直していきます。
代表的な精神療法に「認知行動療法」があります。認知行動療法は、つらい気分につながりやすい、ご自身の無意識の思考パターン(認知)を自覚する方法です。思考パターンを自覚したうえで、より現実的でバランスの取れた考え方ができるように練習していきます。
専門家との対話を通して自分自身を深く理解し、ストレスへの対処法を身につけることは、回復への大きな力となるでしょう。実際、さまざまな研究で心理的な介入がうつ病の症状を和らげるのに役立つ可能性が示されています。(※35)
④物理療法
薬物療法や精神療法を試しても十分な効果がみられなかったり、症状が重く緊急の対応が必要であったりする場合は物理療法が選択肢です。
物理療法は、電気や磁気などの物理的な刺激によって直接的に脳の機能を回復させる治療法です。少し怖いイメージがあるかもしれませんが、いずれも医療機関で医師の慎重な判断のもとで行われます。
物理療法としては、修正型電気けいれん療法(m-ECT)と反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)などが挙げられます。それぞれの特徴を以下の表にまとめました。
| 名称 | 特徴 |
|---|---|
| 修正型電気けいれん療法(m-ECT) |
|
| 反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS) |
|
これらの治療は誰もが行うものではなく、あくまで治療の選択肢の一つです。物理療法を受けるかどうかは主治医とよく相談し、納得したうえで方針を決めていきましょう。
まとめ
「うつ病ではないか」と疑いを持っている方は、この記事で紹介したセルフチェックシートを試してみてください。あくまで目安ではあるものの、うつ病の症状があるかを調べられる可能性があります。ただし、セルフチェックの結果が悪くても、自分一人でうつ病だと判断することは避けてください。
うつ病は、特別な病気ではなく、十分な休養と適切な治療によって回復できる可能性のある病気です。セルフチェックでうつ病の疑いがみられた場合は、一人で抱え込まず、精神科や心療内科、かかりつけ医に相談しましょう。専門医へ相談することで、回復へ向けた一歩を踏み出せる可能性があります。
参考文献
- 厚生労働省:「精神保健医療福祉の現状等について」
- 厚生労働省:「うつ病チェック」
- Kimberley A Jones, Isabella Freijah, Sue E Brennan, Joanne E McKenzie, Tess M Bright, Renee Fiolet, Ilias Kamitsis, Carol Reid, Elise Davis, Shawana Andrews, Maria Muzik, Leonie Segal, Helen Herrman, Catherine Chamberlain.Interventions from pregnancy to two years after birth for parents experiencing complex post-traumatic stress disorder and/or with childhood experience of maltreatment.Cochrane Database of Systematic Reviews,2023,5,5,p.CD014874.
