「最近、どうも疲れやすい」「やる気が出ない」「イライラする」…もしかしたら、それは男性更年期障害のサインかもしれません。 男性ホルモンの減少によって引き起こされるこの症状、実は近年増加傾向にあるにもかかわらず、見過ごされがちです。放置すると仕事や家庭生活に深刻な影響を及ぼすことも。
近年、男性更年期障害の認知度は上がってきていますが、具体的な症状や受診科についてはまだ曖昧な方も多いのではないでしょうか? 身体の不調だけでなく、精神的な変化も引き起こすこの疾患。どの科を受診すべきか、迷ってしまうのも当然です。
この記事では、男性更年期障害の多様な症状を具体的に挙げながら、それぞれに対応する最適な診療科を詳しく解説していきます。ご自身の健康状態を把握し、より良い生活を送るためのヒントを得るためにも、ぜひ最後までご覧ください。
目次
男性更年期障害の主な症状
男性更年期障害は、男性ホルモンの一種であるテストステロンの分泌量が低下することで、身体的・精神的な様々な症状が現れる状態です。 これらの症状は、更年期障害以外の病気でも起こりうるため、症状だけで自己判断することは難しく、医療機関の受診が重要です。
男性更年期障害の症状は大きく分けて身体的な症状と精神的な症状の2つに分類されます。
身体的な症状としては、下記のようなものがあります。
- 疲労感・倦怠感:朝から疲れが抜けず、日中もだるさが続く状態。エネルギー代謝の低下が関与します。
- 性欲の減退・ED:性欲が落ちる、勃起しにくい・持続しにくいなどの変化。テストステロンの低下が影響します。
- 筋力の低下・体脂肪の増加:筋肉が減りやすく、脂肪がつきやすくなる傾向。基礎代謝の低下が原因です。
- ほてり・のぼせ・発汗:突然の顔の火照りや多量の発汗。自律神経の乱れが関係しています。
- めまい:ふらつきや立ちくらみ。自律神経の乱れや血流不足が要因とされます。
精神的な症状としては、下記のようなものがあります。
- イライラ・感情の起伏:些細なことで怒りやすくなる、感情のコントロールが難しくなる傾向があります。
- 集中力・記憶力の低下:集中が続かない、物忘れが増えるといった変化が見られます。
- 気分の落ち込み・不安感:気持ちが沈み、やる気が出にくくなることがあります。重症化すると抑うつ状態に陥る可能性もあります。
- 不眠:寝つきの悪さや夜間覚醒、早朝覚醒など、睡眠の質が低下する傾向があります。
これらの症状は単独で現れることもあれば、複数同時に現れることもあります。また、症状の程度や現れ方は個人差が大きく、他の病気とよく似た症状を示す場合もあるため、正確な診断を受けることが重要です。
「なんとなく体調が悪い」「最近疲れやすい」「やる気が出ない」といった漠然とした不調を感じた場合でも、更年期障害の可能性を考慮し、医療機関に相談してみることをおすすめします。 早期に適切な治療を開始することで、症状の改善や生活の質の向上につながるでしょうす。
男性更年期障害は何科を受診すればよい?
男性更年期障害の症状は多岐にわたり、しかも他の病気と似た症状が現れることも多いため、ご自身で判断するのが難しい場合も少なくありません。どの診療科を受診すれば良いのか迷ってしまう方もいらっしゃるでしょう。
まずはご自身の症状をよく把握してみるところから始めてみてください。
もしどの科を受診すべきか迷った場合は、かかりつけの内科医に相談してみるのも良いでしょう。かかりつけ医であれば、これまでの健康状態や持病、服用中のお薬などを把握しているので、男性更年期障害かどうかを他の病気の可能性と比較検討し、適切な診療科へ紹介状を書いてもらうことも可能です。
ここでは、内科、心療内科・精神科、泌尿器科に行くべき場合の3つに分けて解説します。
内科に行くべき場合
原因がはっきりしないけれど、「疲労感」「体のだるさ」「動悸」「発汗」「ほてり」など、身体的な不調が強い場合は、内科を受診するのが基本です。
特に、すでに高血圧や糖尿病、脂質異常症などの病気で治療を受けている場合や、複数の症状がある場合は、内科で全体的な健康状態をチェックしてもらいましょう。
かかりつけ医がいる場合は、まず相談してみてください。過去の病歴や服用中の薬なども把握しているため、男性更年期障害の可能性を考えながら、他の病気の可能性も考慮し、適切なアドバイスや検査、そして必要であれば専門の医療機関への紹介を受けることができます。内科は総合的な診療科なので、最初の窓口として最適といえるでしょう。
心療内科・精神科に行くべき場合
「気分が落ち込む」「眠れない」「不安感が強い」「集中力が落ちた」「イライラしやすくなった」など、精神面の不調が中心の場合は、心療内科または精神科の受診を検討しましょう。男性更年期障害の精神的な症状は、うつ病などの精神疾患と似ている部分があるため、自己判断は難しく、専門医による診断が必要不可欠です。
心療内科・精神科では、問診や心理検査などを通して、症状の原因を探り、男性更年期障害の症状なのか、あるいは他の精神疾患の症状なのかを鑑別し、適切な治療法を提案してくれます。薬物療法だけでなく、カウンセリングなどの精神療法も組み合わせることで、症状の改善を目指します。
泌尿器科に行くべき場合
男性更年期障害は、男性ホルモンであるテストステロンの減少が原因となるため、「性欲の減退」や「勃起障害(ED)」といった性機能に関する症状が現れることがあります。これらの症状が気になる場合は、泌尿器科を受診するのが適切です。
泌尿器科は、男性生殖器系の疾患を専門的に扱う診療科であり、男性更年期障害の診断や治療にも精通しています。血液検査でテストステロンの値を測定し、必要に応じてホルモン補充療法などの治療を行います。男性更年期障害の治療に積極的な医療機関は泌尿器科であることが多いので、専門的な知識と経験に基づいた適切な診療を受けることができます。
近年では、更年期障害に悩む男性が増加しており、医療機関でも男性更年期外来を設けているところも増えてきています。泌尿器科の中でも、男性更年期外来を標榜している医療機関であれば、より専門性の高い診療を受けることができるでしょう。
受診時に伝えるポイント
男性更年期障害は、その症状が多岐にわたり、他の病気と似ている場合が多いため、医療機関を受診する際には、医師に自分の状態を正しく伝えることが何よりも重要です。
まず、症状が現れ始めた時期、どのような症状が出ているか、どの程度の期間続いているかを具体的に伝えましょう。「最近疲れやすい」ではなく、「3ヶ月ほど前から、朝起きた時から疲れがとれておらず、日中も常に倦怠感があります。以前は趣味のテニスを週2回楽しんでいましたが、最近は全く行く気力も体力もなくなり、2週間前に1回行ったきりです」のように、具体的な時期や症状の変化、日常生活への影響を伝えられると、医師の理解につながります。
精神的な症状についても、包み隠さず伝えることが大切です。「気分が落ち込む」「イライラしやすくなった」「不安感が強い」など、ささいに感じる症状でも、男性更年期障害の診断において重要な情報となる可能性があります。
性機能に関わる変化も重要な情報です。「性欲が減退した」「勃起しにくくなった」など、話しづらいと感じるかもしれませんが、医師は専門家として客観的に対応するので、率直に伝えるようにしましょう。
早期受診のメリット
男性更年期障害は、放置すると症状が悪化し、仕事や家庭生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。早期に発見し、適切な治療を開始することで、こうした悪影響を最小限に抑え、より早く回復へと向かうことができるのです。
早期受診には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。大きく分けて以下の3つのメリットが挙げられます。
- 症状の悪化を予防できる
- 早期の受診で正確な診断と適切な治療につながる
- QOL(生活の質)の低下を防ぐ
症状の悪化を予防できる
男性更年期障害の症状は、最初は軽微でも徐々に悪化していく可能性があります。
例えば、倦怠感が強まり、日常生活に支障が出たり、性機能の低下が進行したりするケースも少なくありません。
早期に治療を開始することで、こうした症状の進行を抑制し、より深刻な状態になることを防ぐことができるのです。
早期の受診で正確な診断と適切な治療につながる
男性更年期障害の症状は、うつ病や甲状腺機能低下症、糖尿病などの他の疾患の症状と似ている場合があり、自己判断で放置すると適切な治療の開始が遅れる可能性があります。
例えば、倦怠感や意欲の低下は、うつ病の初期症状にも重なります。また、発汗や動悸は、甲状腺機能亢進症や心臓病の症状である可能性も考えられます。早期に医療機関を受診することで、血液検査や問診を通して専門医による的確な診断を受け、他の疾患との鑑別がスムーズになり、正しい治療法を選択することにつながります。
QOL(生活の質)の低下を防ぐ
男性更年期障害は、身体症状だけでなく、精神症状も引き起こします。気分の落ち込みやイライラ、集中力の低下などは、仕事や家庭生活、人間関係に悪影響を及ぼす可能性があります。
早期に診断と治療を受けることで、これらの症状をコントロールし、社会生活への影響を最小限に抑えることが期待できます。その結果、これまで通りの生活を維持し、生活の質(QOL)を保つことにつながります。
まとめ
男性更年期障害は、テストステロンの低下により、身体的・精神的な様々な症状が現れます。疲労感や性欲減退、イライラ、気分の落ち込みなど、症状は多岐にわたる症状が出るため、どの科を受診すべきか迷う場合は、まずはかかりつけの内科に相談してみましょう。身体症状が強い場合は内科、精神的な不調が中心の場合は心療内科・精神科、性機能の低下が気になる場合は泌尿器科の受診がおすすめです。
受診時は、症状が現れ始めた時期や具体的な症状の内容、日常生活への影響など、医師に詳しく伝えましょう。
男性更年期障害は早期に発見し、適切な治療を開始することで症状の悪化を防ぎ、生活の質(QOL)の低下を最小限に抑えることが期待できます。少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診し、専門医に相談しましょう。