抜け毛が増え、鏡を見るたびに不安になる…。特に40〜50代の男性にとっては、「もしかして、男性更年期障害のせいなのでは?」と感じることもあるかもしれません。
ただし、実際のところ抜け毛の多くは、男性更年期障害というよりも「AGA(男性型脱毛症)」に起因するケースがほとんどです。AGAは加齢や遺伝的要因により進行するもので、ちょうど更年期と重なる時期に始まることも多く、それが原因との誤解を生むことがあります。
とはいえ、男性ホルモン(テストステロン)の減少が体に与える影響は無視できません。テストステロンは、筋肉や性機能だけでなく、毛髪の成長にも関わっています。更年期に差し掛かるとテストステロンが急激に減少することもあり、毛髪の成長サイクルが乱れて、髪が成長する前に抜けやすくなることも考えられます。
この記事では、男性更年期障害と抜け毛の関係性、そして具体的な対策方法までを網羅的に解説します。記事後半では、更年期の抜け毛対策も解説するので、ぜひ最後まで参考にしてください。
目次
男性更年期障害と抜け毛の関係性
抜け毛が増えてくると、不安を感じる方は多いものです。特に更年期世代の男性は、「これって年齢のせい?それとも男性更年期障害が関係しているのかも」と気になることもあるかもしれません。
実際には、抜け毛の原因にはいくつかの要素が絡んでおり、男性更年期との関わりが指摘されるケースもあります。ここでは、その関係性をホルモンの変化とストレスの2つの側面から、簡単に整理してみましょう。
1.抜け毛と男性ホルモン:更年期との関係はある?
男性ホルモンの代表格であるテストステロン。筋肉量や性欲の維持といった「男性らしさ」を支えるだけでなく、実は毛髪の健康にも関わっているとされています。
加齢に伴い、テストステロンの分泌量は少しずつ減少していきます。特に40代以降は、その変化が体調や気分に影響を及ぼすこともあり、これがいわゆる「男性更年期障害」と呼ばれる状態です。
ただし、抜け毛に関しては、男性更年期障害が直接的な原因とは言い切れません。多くの場合は、「AGA(男性型脱毛症)」という、別のホルモンの働きによる脱毛が関係しています。
AGAでは、テストステロンが体内でDHT(ジヒドロテストステロン)という物質に変換され、このDHTが毛根の周囲にある毛包に悪影響を与えることで、毛髪の成長が妨げられます。その結果、髪が十分に成長する前に抜け落ちやすくなるのです。
毛包の中には毛母細胞(毛髪を作り出す細胞)があり、この細胞の働きが鈍ると、健康な毛髪は育ちません。ホルモンバランスの乱れやDHTの増加は、この毛母細胞の働きを弱める可能性があると考えられています。
つまり、抜け毛が目立ってきたときは、男性更年期障害ではなくAGAの進行が原因であることが多く、早めに専門的な診断を受けることが大切です。
2. ストレス・自律神経の乱れなど、間接的な要因による抜け毛(円形脱毛症なども含む)
更年期になると、ホルモンバランスの変動は身体だけでなく、心にも影響を及ぼします。自律神経のバランスが乱れやすくなり、イライラしやすくなったり、気分が落ち込んだりするなど、精神的に不安定になる方も少なくありません。
こうしたストレスや自律神経の乱れも、抜け毛を促進する要因となります。ストレスを感じると血管が収縮し、頭皮の血行が悪くなります。頭皮への血流が悪くなると、毛根に十分な栄養が行き渡らなくなり、毛母細胞の働きが低下し、抜け毛につながるのです。
また、更年期に円形脱毛症を発症するケースも少なくありません。円形脱毛症は、自己免疫疾患の一種と考えられており、免疫細胞が誤って自分の毛包を攻撃してしまうことで抜け毛が起こります。ストレスや自律神経の乱れは、免疫機能にも影響を与えるため、円形脱毛症の引き金となる可能性も指摘されています。
更年期による抜け毛はいつまで続くものか?
更年期に差し掛かると、抜け毛が増えて鏡を見るのが憂鬱になる、という方も少なくありません。更年期特有のホルモンバランスの乱れや、それに伴う様々な身体の変化が影響していることは事実です。
では、更年期による抜け毛は、一体いつまで続くものなのでしょうか?結論から言うと、更年期における抜け毛の継続期間は、個人差が大きく、明確に「いつまで」と断言することはできません。
数ヶ月で落ち着く方もいれば、数年続く方もいます。更年期が過ぎても、そのままAGA(男性型脱毛症:Androgenetic Alopecia)に移行してしまうケースも少なくありません。毎日の生活習慣を見直し、髪にやさしいケアを意識することが大切です。
更年期に抜け毛になりやすい人の特徴は?
更年期に抜け毛が起きやすい人の特徴を5つご紹介します。
- ご家族に若はげの方がいる
- ストレスを感じやすい
- 食生活の乱れ
- 睡眠不足
- 過去の皮膚トラブル
1. ご家族に若はげの方がいる
遺伝的な要因は抜け毛に大きく影響します。父親や祖父、母方の祖父などに若はげの方がいる場合、あなたも抜け毛のリスクが高まる可能性があります。
これは、遺伝的に毛包が男性ホルモンの影響を受けやすくなっていることが原因の一つと考えられています。
2. ストレスを感じやすい
現代社会はストレスが多く、仕事や人間関係で常に緊張状態にあると、自律神経のバランスが乱れやすくなります。自律神経は、呼吸や消化、血液循環など、体のさまざまな機能を調整・コントロールしている神経です。
自律神経のバランスが乱れると、頭皮の血行不良やホルモンバランスの崩れを引き起こし、抜け毛が促進されます。
3. 食生活の乱れ
インスタント食品やファストフードばかり食べていると、髪の毛に必要な栄養素が不足し、健康な髪を維持することが難しくなります。髪の毛の主成分はケラチンというタンパク質です。
そのため、タンパク質をはじめ、亜鉛やビタミン、ミネラルなど、様々な栄養素をバランス良く摂取することが重要です。朝食を抜いていたり、野菜や果物をあまり食べない食生活を送ってたりしている人は、抜け毛のリスクが高まっているといえるでしょう。
4. 睡眠不足
睡眠中は、成長ホルモンが分泌されており、髪の毛の成長を促がされる重要な時間帯です。成長ホルモンは、細胞の成長や修復を促すホルモンで、髪の毛の成長にも深く関わっています。
毎日十分な睡眠がとれない状態が続くと、髪の毛の成長サイクルが乱れ、抜け毛が増える可能性があります。特に夜更かしが多く、睡眠時間が6時間未満の人は、睡眠の質と量を見直すことが大切です。
5. 過去の皮膚トラブル
過去に円形脱毛症やアトピー性皮膚炎などの皮膚トラブルを経験した人も、更年期に抜け毛が起きやすい傾向があります。これらの皮膚トラブルは、頭皮環境を悪化させ、健康な髪の毛が生えにくくする可能性があります。このような人は、頭皮を清潔に保ち、刺激の少ないシャンプーを使用するなど、頭皮ケアを丁寧に行うことが大切です。
これらの特徴に当てはまる方は、特に抜け毛に注意が必要です。生活習慣の改善や適切なケアを行うことで、抜け毛の予防や改善につなげていきましょう。。
更年期の抜け毛・AGA対策
ここでは、更年期の抜け毛・AGAに対して、日常の中でできる対策とクリニック・医療機関での治療をご紹介します。
日常の中でできる対策
抜け毛対策は、毎日の生活習慣の見直しから始まります。すぐに始められる対策を具体的に見ていきましょう。
1. 正しい洗髪方法
頭皮環境を整えることは抜け毛予防の基本です。
まず、シャンプー前にブラッシングで髪のもつれを優しくほぐすことで、頭皮への負担を軽減し、髪の毛同士の摩擦によるダメージを減らすことができます。その後、38度程度のぬるま湯で丁寧に予洗いすることで、頭皮の汚れを落としやすくし、過度な皮脂の分泌を抑える効果も期待できます。
シャンプーは、爪を立てずに指の腹を使って頭皮をマッサージするように優しく洗います。ゴシゴシと強くこすってしまうと、頭皮に刺激を与えて炎症を起こしたり、必要な皮脂まで洗い流して乾燥を招いたりする可能性があるので注意が必要です。
すすぎ残しがないよう、しっかりと洗い流すことも大切です。すすぎ残しは頭皮のかゆみや炎症の原因となることがあります。
2. バランスの良い食生活
髪の毛の成長には、たんぱく質、亜鉛、ビタミン、ミネラルなど様々な栄養素が必要です。髪の毛の主成分であるケラチンはタンパク質から作られるため、肉、魚、卵、大豆製品など良質なたんぱく質を積極的に摂ることが重要です。
また、亜鉛は細胞の分裂や成長に関わるミネラルであり、髪の毛の成長サイクルを正常に保つために欠かせません。牡蠣、牛肉、ナッツ類などに多く含まれています。ビタミン類も、頭皮の健康維持や血行促進に重要な役割を果たしています。緑黄色野菜、果物などをバランス良く摂取するように心がけましょう。
例えば、朝食にパンとコーヒーだけで済ませている方は、ヨーグルトや果物を追加する、コンビニ弁当ばかり食べている方は、サラダを追加するなど、少しずつでも食生活の改善を意識してみましょう。
3. ストレスマネジメント
ストレスは自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させて頭皮の血行不良を引き起こすため、抜け毛を悪化させる要因の一つです。ストレスを軽減し、心身のリラックスを図るために、以下の方法を実践してみましょう。
- 質の高い睡眠: 睡眠中は成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生が行われます。髪の毛の成長にも深く関わっているため、毎日7時間程度の睡眠時間を確保することが理想です。
- 適度な運動: 軽い運動は、血行促進やストレス発散に効果的です。ウォーキングやストレッチなど、無理なく続けられる運動を見つけましょう。
- リラックスできる時間を作る: ぬるめのお湯にゆっくりと浸かる入浴や、好きな音楽を聴く、読書をするなど、リラックスできる時間を作ることも大切です。
4. その他の対策
頭皮マッサージは、頭皮の血行を促進し、毛根に栄養を届けやすくするため、抜け毛予防に効果的です。シャンプー時やお風呂上がりなど、1日数分行うだけでも効果が期待できます。
また、喫煙は血管を収縮させ、血行不良を引き起こすため、抜け毛を悪化させる可能性があります。禁煙することで、頭皮環境の改善が期待できます。過度な飲酒も、栄養の吸収を阻害したり、睡眠の質を低下させたりするため、抜け毛の原因となることがあります。節酒を心がけましょう。
クリニックでの治療
抜け毛が気になり始めたら、自己判断せずに、まずは医師に相談することが重要です。更年期障害による抜け毛なのか、AGA(男性型脱毛症)なのか、あるいはその他の原因によるものなのかを正確に診断してもらう必要があります。
クリニックでは、以下のような治療法が検討されます。
- テストステロン補充療法: テストステロンの著しい低下に対して有効。
- ミノキシジル外用・フィナステリド内服: AGAによる抜け毛に効果がある治療薬。
- 漢方薬の活用: 加味逍遙散などが更年期由来の抜け毛に効果を示すことがある。
どの治療法が適切かは、個々の症状や原因によって異なります。自己判断せずに、まずは医師に相談して、最適な治療法を見つけましょう。
まとめ
抜け毛の主な原因は、加齢や遺伝に伴うAGA(男性型脱毛症)であることが多いですが、ホルモンバランスの変化やストレス、自律神経の乱れ、血行不良といった要素が影響を及ぼすこともあります。こうした要因の中には、男性更年期障害と重なる部分もあるため、自分の体調や症状を正しく把握することが大切です。
ご家族に若はげの方がいる、ストレスを感じやすい、食生活の乱れ、睡眠不足、過去の皮膚トラブルといった方は特に注意が必要です。日頃から正しい洗髪方法を心がけ、バランスの良い食生活、ストレスマネジメントを意識しましょう。十分な睡眠、適度な運動も効果的です。
それでも抜け毛が気になる場合は、自己判断せずに医師に相談することが大切です。ホルモン補充療法やAGA治療薬、漢方薬など、様々な治療法があります。ご自身の状況に合った適切な治療を受けることで、抜け毛の悩みを解消し、健やかな毎日を取り戻しましょう。