20代をピークに徐々に減少し、心身の健康に様々な影響を及ぼす男性ホルモン、テストステロン。実は、加齢とともにこのテストステロンが不足することで、慢性的な疲労感やイライラ、性欲の減退、さらにはメンタルヘルスにも悪影響を及ぼす可能性があることをご存知でしょうか?
近年注目されている「男性ホルモン注射」は、不足したテストステロンを補充する治療法。 この記事では、男性ホルモン注射の効果や副作用、費用、保険適用の条件などを詳しく解説します。活力ある毎日を取り戻すための第一歩として、ぜひご一読ください。
目次
男性ホルモン(テストステロン)注射とは
男性ホルモンと聞いて、筋肉隆々とした体格や力強い声を思い浮かべる方も多いでしょう。確かに、男性ホルモンであるテストステロンは、男性らしい身体の特徴を作り出すのに重要な役割を果たしています。
しかし、テストステロンの役割はそれだけではありません。実は、性欲や精子の生成、骨や筋肉の健康、そして心の健康にも深く関わっているのです。
テストステロン注射とは、ホルモン補充療法(HRT)の一種で、加齢や病気などによって体内で作られるテストステロンの量が少なくなった場合に、不足しているテストステロンを外から補充する治療法です。
これは医師の管理下で行われる医療行為であり、ドラッグストアなどで手軽に購入できるサプリメントとは全く異なります。自己判断で服用するのではなく、必ず医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。
どんな人が対象?
テストステロンの減少によって引き起こされる様々な不調を感じている方は、テストステロン補充療法の対象となる可能性があります。
例えば、以下の症状を感じている方は、一度検査を受けてみることをおすすめします。
- 常に疲れている
- 朝起きても疲れが取れない
- 強い疲労感がある
- 性的な関心が薄れてパートナーとの性生活が減る
- 気分が落ち込んで何事にもやる気が出ない
- 以前より力が出ない
- 筋力の低下、
- ひげや体毛が薄くなる、伸びるのが遅くなるといった体毛の減少
これらの症状は、加齢性性腺機能低下症候群(LOH症候群)の代表的な症状です。LOH症候群とは、加齢とともにテストステロンの分泌量が低下することで起こる様々な症状を指します。
テストステロン補充療法を受けるには、まず血液検査でテストステロン値を測定します。一般的には、遊離テストステロン値が7.5pg/mL未満で、かつ総テストステロン値の低下が確認された場合に、補充療法の対象となります。ただし、数値が基準を満たしていなくても、症状が明らかであれば治療が検討されることもあります。
ご自身の症状や健康状態について不安な場合は、医療機関を受診し、専門医に相談するようにしましょう。
男性ホルモン(テストステロン)注射の流れと注意点
男性更年期障害の症状でお悩みの方にとって、男性ホルモン(テストステロン)注射は一つの選択肢となります。しかし、治療の内容や流れについて、具体的なイメージが湧かない方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、ここでは注射治療を受ける際の流れと注意点を、より詳しくご説明します。
治療の流れ
まず、治療は医療機関を受診することから始まります。ご自身の症状や生活習慣、既往歴などについて詳しくお話いただく問診から始まり、視診、触診、そして血液検査を行います。
血液検査では、テストステロンの値はもちろんのこと、赤血球数や肝機能なども調べます。これらの検査結果を総合的に判断し、テストステロン補充療法が必要かどうか、そして注射による治療が最適かどうかを医師が決定します。テストステロンは前立腺の成長や働きにも関わるホルモンのため、補充療法を行う前には前立腺の状態を確認することが大切です。
治療が開始されると、2~4週間に一度のペースで筋肉注射を行います。使用する薬剤や投与量は、患者さんの状態に合わせて決定するのが一般的です。例えば、テストステロンエナント酸エステル製剤を用いる場合、1回あたり125mgもしくは250mgを投与します。
期待できる効果
男性ホルモン注射によって期待できる効果は多岐に渡ります。例えば、朝目覚めた時の疲労感が軽減し、日中の活動性が向上する、性欲が改善する、意欲的に物事に取り組めるようになる、などです。
また、筋力が増加することで、身体が動かしやすくなったり、骨密度が維持・向上したりすることも期待できます。精神的な面では、気分が安定し、感情の起伏が少なくなる人もいます。
治療の注意点
どのような治療にもメリットとデメリットがあるように、男性ホルモン補充療法にも副作用のリスクが存在します。注射による治療で起こりうる副作用としては、注射部位の痛みや腫れ、発赤、かゆみなどです。
また、体全体の副作用としては、ニキビ、多血症(赤血球が増えすぎる)、前立腺肥大、肝機能への影響、むくみ、男性型脱毛症の悪化などが知られています。これらの副作用は、必ずしも全ての方に現れるわけではありません。また、現れる副作用の種類や程度には個人差があります。
副作用の発現を抑えるためには、適切な投与量を守ることが重要です。投与量が多いと、血中濃度が上がりすぎて副作用が生じる可能性が高まります。また、長期的に注射を続けると、精子を作る機能が抑制され、男性不妊につながるケースも報告されています。治療を受ける場合は、これらのリスクについても担当医から説明を受け、納得した上で治療を開始することが大切です。
治療を受けるにあたって重要なこと
治療のリスクを適切に管理するために、治療中は定期的な血液検査が欠かせません。
血液検査によって、テストステロン値や赤血球数、肝機能などをモニタリングすることで、副作用の早期発見・早期対応が可能になります。また、前立腺の健康状態を確認する方法としては、PSA(前立腺特異抗原)検査に加え、直腸診(触診)や超音波検査などもあります。
男性ホルモン注射は、更年期障害の症状改善に効果的な治療法となり得ますが、副作用のリスクも理解した上で、医師と相談しながら治療を進めていくことが大切です。
男性ホルモン(テストステロン)注射の保険適用の条件と費用目安
男性更年期障害の治療としてテストステロン補充療法を検討する際、保険適用となる条件と費用について理解しておくことは大切です。
保険適用の条件
まず、保険適用されるには、大きく分けて2つの条件を満たす必要があります。
1つ目は、テストステロンの低下に伴う様々な症状が現れていることです。具体的には、性欲の低下、勃起機能の低下、疲労感、抑うつ気分、筋肉量の減少、体毛の減少などが挙げられます。
2つ目は、血液検査でテストステロンの値が基準値を下回っていることです。LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引では、血清(総)テストステロン値が 250ng/dL 以下または血清フリーテストステロン値が 7.5pg/mL が基準です。しかし基準を満たさなくても、テストステロンを補充することが効果的だと判断される場合は、補充療法が適用となることがあります。
この条件を満たし、さらにホルモン補充が禁忌となる疾患や症状がないことを確認した上で、治療の選択肢としてテストステロン補充が検討されます。
治療にかかる必要
保険診療でテストステロン注射を受ける場合、薬剤費・処置料・再診料を含めて、3割負担で1回あたりおよそ750円〜1,950円程度です。一方、自費診療では1回あたり1〜2万円が相場となっており、定期的に治療を続ける場合、月数万円の費用がかかることもあります。
保険適用となるケースでは、経済的な負担が大きく軽減され、継続的な治療が受けやすくなります。費用面が気になる方は、事前に医療機関に確認するのがおすすめです。
まとめ
「最近調子が悪い」「活力がなくなった」と感じたら、男性更年期障害の可能性があります。血液検査でテストステロンの値を測定し、基準値を下回り症状があれば治療を開始しましょう。
治療方法はいくつかありますが、注射によるテストステロン補充療法が有効です。条件を満たせば保険適用となり、1回あたりおよそ750円〜1,950円程度です。
適切な検査と治療を受けることで、生活の質を大きく改善できる可能性があります。気になる症状が続くようであれば、無理をせず、早めに専門の医師に相談してみてください。