内視鏡検査、控えている方もいるのではないでしょうか? 実は、検査前日の食事が、検査の成功を大きく左右する重要なカギを握っています。
想像してみてください。散らかった部屋で何かを探そうとしても、なかなか見つからないですよね? これと同じで、胃や腸の中に食べ物が残っていると、内視鏡の視野が遮られ、小さな病変も見逃してしまう可能性があるのです。
早期発見が大切な大腸がんの小さなポリープ、あるいは胃炎や胃潰瘍。 これらの診断を正確に行うためには、検査前日の食事内容が非常に重要になります。
この記事では、内視鏡検査前日の食事のポイントと注意点について、詳しく解説します。検査をスムーズに進め、正確な診断結果を得るための具体的な方法を知り、安心して検査に臨みましょう。
※内視鏡検査について詳しくはこちら【医療ガイドブック「内視鏡検査とは?」】
目次
内視鏡検査前日の食事が大切な理由
内視鏡検査は、消化管の中を直接観察し、小さな病変まで見つけられる重要な検査です。ですが、前日の食事内容によっては、胃や腸に食べ物が残ってしまい、視野が遮られることで診断の精度が下がってしまうことがあります。
消化の悪い食材や量の多い食事は、消化管内に残りやすく、小さなポリープや炎症が隠れて見えなくなる可能性も。たとえば、早期の大腸がんを見つけるための小さな病変が、便や未消化物に覆われてしまうと、見逃してしまうこともあり得ます。
また、胃に内容物が残っていると、吐き気や検査中断のリスクもあるため、安全面からも問題です。特に食物繊維の多い野菜やキノコ類、脂肪分の多い肉類などは避けるべきとされています。
内視鏡検査前日の食事のポイント
ここでは、以下の4つの内視鏡検査前日の食事ポイントを解説します。
- 消化に優しい食材を選ぶ
- 繊維質や多根が多い食べ物は避ける
- 脂っこい食事は控える
- 食べ過ぎない
消化に優しい食材を選ぶ
内視鏡検査の前日は、胃腸に負担がかかりにくい、消化しやすい食材を選びましょう。具体的には、おかゆ、うどん、白身魚、豆腐、よく煮込んだ野菜などがおすすめです。これらの食材は消化が早く、胃腸に優しく、検査時の負担を軽減します。
調理方法も重要です。煮る、蒸すといった調理法は、油の使用量を減らし、消化を促進するため、前日の食事の準備に適しています。例えば、鶏のささ身と柔らかく煮た野菜を少量加えた薄味のおかゆや、柔らかく茹でたうどんは、消化が良く、検査前日の食事として理想的です。白身魚は、蒸したり、茹でたり、煮付けにすることで、消化しやすい状態になります。
消化の良い食材と適切な調理法を選択することで、胃腸への負担を最小限に抑え、検査をスムーズに進めることができます。
繊維質や種が多い食べ物は避ける
食物繊維や種が多い食べ物は、消化に時間がかかり、腸内に残りやすい傾向があります。内視鏡検査の前日にこれらの食品を摂取すると、腸内にとどまり、内視鏡の視野を妨げ、検査の精度を低下させる可能性があります。
ゴマ、海藻、キノコ、こんにゃく、豆類、野菜の皮などは食物繊維が豊富であるため、検査前日は避けるべき食材です。これらの食品は消化に時間がかかるだけでなく、腸内に残留することで、検査中に不快感を与える可能性もあります。果物に含まれる種も消化されにくいため、注意が必要です。例えば、キウイフルーツやぶどうなどは、種を取り除いてから摂取するようにしましょう。
特に大腸カメラを受ける場合は、食物繊維や種が多い食べ物を避けることが重要です。検査前には腸内をきれいにする必要があり、これらの食品が腸内に残っていると、腸管洗浄が不十分になる可能性があります。
脂っこい食事は控える
脂っこい食事は胃の中に長くとどまりやすく、検査時に消化しきれていない場合があります。これは胃カメラだけでなく、大腸カメラの場合も同様です。脂肪分の多い食べ物は消化に時間がかかり、検査の妨げになる可能性があります。
揚げ物や脂身の多い肉は、胃腸に負担をかけ、消化不良を引き起こす原因となることがあります。また、クリームやバターを多く使用した料理や、ファストフードなども脂肪分が多いため、検査前日は控えましょう。
内視鏡検査では、消化管の粘膜の状態を詳細に観察する必要があります。脂っこい食べ物が残っていると、粘膜の状態を正確に把握することが難しくなり、小さな病変を見逃す可能性も高まります。正確な診断のためには、検査前日に脂っこい食事を控えることが重要です。
食べ過ぎない
適切な食材を選んでいても、食べ過ぎてしまうと消化しきれずに胃や腸の中に残ってしまいます。消化の良いものであっても、過剰に摂取すると胃腸に負担がかかり、検査に悪影響を及ぼします。
検査前日の夕食は、腹八分目を目安に、軽めの食事を心がけてください。満腹になるまで食べると、消化に時間がかかり、胃腸に負担がかかります。また、夜遅くに食事をするのも避けましょう。
検査前日は、消化の良いものを適量摂取し、胃腸を休ませるようにしてください。消化時間を考慮し、医師の指示に従って食事を済ませることで、スムーズな内視鏡検査の実現につながります。
内視鏡検査前日に食べる食事
内視鏡検査において、「何を食べるか」「何を食べないか」は、検査の成否に直結する重要なポイントです。具体的にどのような食品を摂取すべきか、あるいは避けるべきか、以下で詳しく解説します。
前日に食べてもよい食事
内視鏡検査前日は、消化の良い食品を選び、胃腸への負担を最小限に抑えることが重要です。消化の良い食品は、胃腸内での滞留時間が短く、検査の際に内視鏡の視野を妨げることがありません。
また、消化不良による不快感や吐き気を軽減するのにも役立ちます。具体的には、以下のような食品がおすすめです。
- 主食:おかゆ、白米、うどん、そうめん、白パンなど。これらは炭水化物の中でも消化が早く、胃腸に負担をかけにくい食品です。
- たんぱく質:白身魚、鶏ささみ、豆腐、卵など。脂肪分の少ない良質なたんぱく質源を選びましょう。調理法は、蒸す、茹でる、煮るといった方法がおすすめです。
- 野菜:じゃがいも、にんじん、かぼちゃなど。柔らかく煮たり、すりおろしたりすることで消化しやすくなります。
- その他:ゼリー、ヨーグルト(無脂肪)、プリンなど。果肉や種が入っていないものを選びましょう。
これらの食品をバランス良く組み合わせ、腹八分目を目安に軽めの食事を心がけてください。過剰に摂取すると、たとえ消化の良い食品でも胃腸に負担がかかるため注意が必要です。
前日に避けた方がよい食事
内視鏡検査前日は、消化に悪い食品や腸内に残留しやすい食品を避けることが大切です。これらの食品は、内視鏡の視野を妨げ、病変の発見を困難にする可能性があります。また、消化不良による腹痛や吐き気などの不快な症状を引き起こす可能性も懸念されます。
検査をスムーズに進め、正確な診断結果を得るためには、以下の食品を避けるようにしましょう。
- 食物繊維の多い食品(ごぼう、きのこ、こんにゃく、海藻、豆類、玄米など):腸内に残りやすく、内視鏡の視野を遮るおそれがあります。
- 脂肪分の多い食品(揚げ物、脂の多い肉、バター、生クリームなど):消化に時間がかかり、胃や腸に残ることで観察を妨げる可能性があります。
- 刺激物(カレー、唐辛子、香辛料など):胃腸を刺激し、炎症を悪化させるリスクがあります。
- 種や皮のある食品(トマト、ぶどう、キウイ、ゴマなど):消化されにくく、腸内に残って病変の発見を妨げることがあります。
- 刺激性のある飲料(炭酸、アルコール、カフェインを含む飲み物など):胃腸を刺激し、検査や体調に悪影響を与える可能性があります。
食事のタイミングと注意点
内視鏡検査を受けるにあたっては、前日の食事内容だけでなく、食べる時間帯も重要です。消化時間を考慮し、医師の指示に従って食事を済ませるようにしましょう。適切な食事管理を行うことで、より正確な診断と安全な検査につながります。
食事のタイミング
内視鏡検査の種類によって食事のタイミングの指示が異なる場合があります。
検査を受ける部位や方法によって、消化に必要な時間が異なるためです。胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)と大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)それぞれの場合について、具体的な食事のタイミングを説明します。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)の場合
内視鏡検査の前日は、食事をとる時間に注意が必要です。夕食は遅くとも午後9時頃までに済ませるようにしましょう。食事の時間が遅くなると、検査当日の朝になっても胃や腸に内容物が残る可能性があり、検査の妨げになることがあります。夜食は控え、胃腸をしっかりと休ませることが大切です。
また、検査当日の朝食は、基本的に摂らないよう指示されることが多いため、指定された絶食時間を厳守してください。水分の摂取についても、検査の種類によって制限される場合がありますので、医療機関の案内に従ってください。適切なタイミングでの食事管理は、検査の安全性と精度を高めるうえで欠かせません。
大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)の場合
大腸カメラでは、検査前日から食事の内容に注意が必要です。特に、食物繊維の多い食品や消化の悪いものは避け、消化の良いものを少量ずつ摂ることが大切です。これらの食品は腸内に残りやすく、視野を妨げる原因になります。
前日の夕食は、午後9時頃までに済ませるようにし、うどんやおかゆなど、胃腸に優しい食事を選びましょう。
当日の食事は控えるのが原則です。
また、大腸カメラでは検査前日に下剤を服用します。脱水を防ぐために、水や経口補水液などでこまめに水分を摂ることが重要です。
水分補給の注意点
内視鏡検査前後の水分摂取で注意すべき点は、「何をどのくらい飲むか」です。適切な水分を選択し、適切な量を摂取することで、検査の精度を高く保ち、安全に検査を受けることができます。
飲んでも良い水分
検査の前日や当日に飲んでも良い水分は、基本的に透明で、糖分やカフェインを含まないものが推奨されます。具体的には、以下のような水分が挙げられます。
- 水
- 白湯
- 麦茶
- カフェインレスのお茶
- 経口補水液
- 透明なスポーツドリンク
特に大腸内視鏡検査では、検査前に下剤を服用します。下剤によって体内の水分が排出されるため、脱水症状を防ぐためにも、こまめな水分補給が非常に重要です。
避けるべき水分
検査の前日や当日は、以下の水分は避けるようにしましょう。これらの水分は、検査結果に影響を与えたり、検査中の不快感につながる可能性があります。
- コーヒー:胃酸を増やし胃を刺激します。利尿作用により脱水のリスクもあります。
- 牛乳:消化に時間がかかり、視野を妨げることがあります。
- 色の濃いジュース(例:オレンジジュース):糖分が多く、消化管の色を変えてしまう可能性があります。
- 炭酸飲料:胃を膨らませて不快感を引き起こすことがあり、糖分も多いため注意が必要です。
- アルコール:胃腸を刺激し、脱水を招くおそれがあります。検査数日前からの禁酒が求められることもあります。
検査当日の水分摂取については、医療機関の指示に従ってください。水分制限がある場合は、指示された時間以降は水やお茶なども控える必要があります。検査後の水分補給も大切です。検査後は、医師の指示に従って、徐々に水分や食事を再開してください。
まとめ
内視鏡検査をスムーズに受けるためには、前日からの食事管理が重要です。検査前日は、おかゆ、うどん、白身魚、豆腐など消化の良いものを選び、腹八分目を目安にしましょう。食物繊維の多い野菜やきのこ類、脂肪分の多い肉類、種のある果物などは避け、刺激物やアルコールも控えましょう。水分は水やお茶など透明なものがおすすめです。
検査当日の食事は原則中止し、疑問があれば相談しましょう。適切な食事管理で、検査の精度を高め、安心して検査を受けられます。