胃カメラ、大腸カメラなどの内視鏡検査、あなたは適切な間隔で受診していますか?
実は、日本では男性の約4人に1人、女性の約6人に1人ががんで亡くなっており、その中でも胃がん、大腸がんは上位を占めています。(※1)早期発見できれば生存率は飛躍的に向上するにも関わらず、検査間隔の認識が曖昧な方も多いのではないでしょうか。
この記事では、胃カメラ・大腸カメラそれぞれの適切な検査間隔を、健康な方からリスクの高い方まで、具体的なケース別に詳しく解説します。年齢、過去の検査結果、ポリープ切除の有無、そしてご家族の病歴…あなたに最適な検査間隔を見つけるための重要なポイントも見ていきましょう。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)の適切な検査間隔
胃カメラは、口や鼻から細い管を挿入し、食道、胃、十二指腸を観察する検査です。これにより、早期の胃がんや食道がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、炎症などを発見することができます。
検査を受ける頻度は、健康状態や過去の検査結果、年齢などによって異なってきます。
ここでは、以下の3パターンに分けて見ていきましょう。
- 健康な人の場合(異常なし)
- ピロリ菌に罹患したことがある人の場合
- 胃炎・潰瘍・がんリスクがある人の場合
健康な人の場合(異常なし)
自覚症状がなく、ピロリ菌にも感染していない健康な方の場合、胃カメラは2年に1回程度のペースで受けるのが一般的な目安とされています。
ただし、この「2年に1回」というのはあくまで平均的な指標です。胃がんの家族歴がある方や、以前に胃に異常を指摘されたことがある方など、個人のリスクに応じて検査間隔を調整することが大切です。不安な点がある場合は、かかりつけ医と相談して、自分に合った検査のタイミングを決めましょう。
また、健康診断や人間ドックの機会をうまく活用し、継続的にチェックする習慣を持つことも重要です。定期的な検査によって、病気の“早期発見・早期治療”につながる可能性が高まります。
ピロリ菌に罹患したことがある人の場合
ピロリ菌は、胃がんの発生リスクを約5倍高めることが報告されています。(※2)ピロリ菌に感染している場合は、除菌治療を受けた後でも、胃がんのリスクが完全に消えるわけではありません。
ピロリ菌に感染している、もしくは感染したことがある方は、少なくとも1年に1回は胃カメラ検査を受けることが推奨されています。ピロリ菌が陰性の方と比べて、検査間隔を短くすることで、早期発見・早期治療につながる可能性が高まります。
ピロリ菌が陰性の場合でも、胃がんのリスクがゼロになるわけではありません。そのため、ピロリ菌陰性の方でも、定期的な検査を受けることが重要です。
胃炎・潰瘍・がんリスクがある人の場合

慢性胃炎や胃潰瘍、あるいは胃がんの家族歴があるなど、胃がんのリスクが高い方は、定期的に胃カメラ検査を受ける必要があります。
リスクが高い方の場合、1年に1回の頻度で検査を受けるのがいいでしょう。ご自身の状態に合わせて、適切な検査間隔を医師と相談することが重要です。
胃がんの家族歴がある方は、特に注意が必要です。家族歴がある方は、そうでない方に比べて胃がんのリスクが1.36倍ほど高いとされています。(※3)
※3 出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト.「胃がん家族歴と胃がんとの関連」(閲覧日 2025-07-13).
大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)の適切な検査間隔
大腸カメラは、肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内部を観察する検査です。大腸がんやポリープ、炎症性腸疾患などを早期に発見することができます。
検査を受ける頻度は、過去の検査結果、年齢、大腸がんの家族歴など、様々な要因によって異なってきます。
異常なしだった場合
前回の大腸カメラ検査で異常がなかった方の検査間隔は、3〜5年に一度が目安となります。
ただし3〜5年というのはあくまでも目安であり、絶対的な基準ではありません。
実際には、医師が患者さんの年齢や生活習慣、大腸の状態などを総合的に判断し、適切な検査間隔を決定します。検査を受けた医療機関で、次回の検査時期を確認することをお勧めします。
また、便潜血検査を受けることも有効です。便潜血検査は、便に含まれる血液を検出する検査で、大腸がんの早期発見に役立ちます。便潜血検査は自宅で手軽に実施できますし、費用も比較的安価です。1年に1回受けることを推奨します。
ポリープ切除後の再検査タイミング
大腸ポリープを切除した後の再検査時期は、ポリープの種類や数、大きさなどによって異なります。
一般的には、1〜3年後に再検査を受けることが推奨されています。これは、ポリープが再発するリスクがあるためです。特に、腺腫という種類のポリープは、がん化する可能性があるため、注意が必要です。
小さなポリープ(低異型度腺腫)を1〜2個切除しただけなら、2-3年後でも良い場合もあります。逆に、大腸腫瘍を分割して切除した場合や、大腸内視鏡前の下剤の効果が不十分だった場合は、もっと短い間隔での検査が勧められることがあります。
ポリープ切除後は、担当医から具体的な再検査時期の指示があるはずです。指示に従って、適切な間隔で検査を受けましょう。
大腸がんの家族歴がある人はどれくらいの頻度?
ご家族に大腸がんを患った方がいる場合、ご自身も大腸がんのリスクが高いと言われています。遺伝的な要因が関係していると考えられています。
特に、父母や兄弟姉妹など、血縁関係の近い方に大腸がんの方がいる場合は、注意が必要です。このような方は、40歳前後から定期的に検査を受けることが推奨されています。一般的には3〜5年に一度の検査が目安となりますが、ご家族の大腸がんの病状やご自身の健康状態などを考慮して、医師と相談の上で適切な検査間隔を決めることが重要です。
大腸がんの家族歴がある方は、そうでない方に比べて、大腸がんを発症するリスクが1.14倍高くなるというデータもあります。そのため、定期的な検査が非常に重要です。(※4)
※4 出典:国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト.「胃がん家族歴と胃がんとの関連」 (閲覧日 2025-07-13)
症状がある場合の検査間隔の考え方
血便や下痢、腹痛、便秘、残便感など、大腸に関連する症状がある場合は、定期検査を待たずに、すぐに医療機関を受診してください。
これらの症状は、大腸がん以外にも、様々な病気が原因で起こることがあります。例えば、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、感染性腸炎などが考えられます。
自己判断せずに、まずは医師に相談し、適切な検査や治療を受けるようにしましょう。迅速な対応が、早期発見・早期治療につながります。
検査の間隔を空けすぎるリスクとは?
内視鏡検査で病変部位を早期発見できれば、負担の少ない治療で完治できる可能性が高まります。しかし、検査の間隔が空いてしまうと、その間に病気が進行してしまうリスクがあることを忘れてはいけません。
検査で「異常なし」と診断された後も、油断せずに定期的な検査を受けることが、健康を守る上で重要です。ここでは、検査の間隔を空けすぎるリスクについてご紹介します。
見逃されやすい早期がん・ポリープの進展
内視鏡検査の間隔が空いてしまうと、初期のがんや小さなポリープを見逃してしまうリスクが高まります。
初期の胃がんや大腸がん、そしてポリープは、ほとんど自覚症状がないまま進行することが多く、検査を受けない限り気づかないケースも少なくありません。
特に大腸ポリープの中には「腺腫」と呼ばれるがん化リスクの高いタイプもあり、早期のうちに発見・切除することが大切です。大腸ポリープは、大きさが1cm未満のものはがん化するリスクは低いと考えられていますが、1cmを超えるとがん化するリスクが上昇します。また、腺腫という種類のポリープは、他のポリープと比べてがん化しやすい性質も持っています。
胃がんも同様に、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。そのため、定期的な検査を受けずに放置してしまうと、がんが進行し、内視鏡治療では対応できず、開腹手術が必要な状態になってしまう可能性も出てきます。
早期がんやポリープは、早期に発見し治療することで、完治できる可能性が高まります。検査を適切な間隔で受けることで、病気を早期に見つける機会を増やし、健康な状態を維持することにつながります。
異常なし=安心ではない理由
一度内視鏡検査を受けて「異常なし」と診断されたとしても、それはあくまでも、その時点での状態を示しているに過ぎません。「異常なし」だからといって、将来もずっと健康であるとは限りません。以前は異常がなかった場所に、新たに病気が発生する可能性もあるのです。
例えば、以前の検査で異常がなかったとしても、生活習慣の変化や加齢によって、胃や大腸の粘膜に炎症が生じ、それがもとでポリープやがんが発生する可能性は否定できません。
また、内視鏡検査にも限界はあります。非常に小さな病変や、検査時の腸の動きなどによって隠れてしまった病変を見逃してしまう可能性もゼロではありません。
内視鏡検査は、あくまで検査を受けた時点での体の状態を記録したものと捉えるべきです。写真撮影のように、その瞬間の状態を写し取ったとしても、その後、景色が刻一刻と変わっていくように、私たちの体の中でも変化は常に起こっています。
そのため、一度「異常なし」と診断された後も、油断せず、定期的に検査を受けることが大切です。定期的な検査は、私たちの体の変化を捉え、病気を早期に発見する機会を増やし、より良い治療成績と健康な生活につながるのです。
医師に相談すべきケースと目安

内視鏡検査後、特に異常がなかった場合でも、次回の検査まで「本当に大丈夫かな?」と不安になることは珍しくありません。
検査結果の数値は正常範囲内でも、漠然とした不安を抱えている方は、ぜひ医師に相談してみてください。ここでは、医師に相談すべきケースと目安をご紹介します。
「前回異常なしだけど不安」な人へ
前回の内視鏡検査で異常なしと診断されていても、以下の項目に当てはまる場合は、再検査を受けた方が良いかどうか、医師に相談することをおすすめします。
- 前回の検査から数年以上経過している
- 体調の変化を感じている
- がんの家族歴がある
- 生活習慣に大きな変化があった
症状がなくても再検査すべきサイン
自覚症状がはっきりしなくても、以下のサインがある場合は、一度医師に相談し、内視鏡検査が必要かどうか検討してみましょう。
- 健康診断や人間ドックで要精密検査や要経過観察と言われた
- 貧血
- 便潜血検査で陽性反応
- 体重減少
- 原因不明の腹部の不快感
- 便通異常
これらのサインは、必ずしも重大な病気を示すものではありませんが、放置することで病気が進行するリスクもあります。少しでも気になることがあれば、早めに医師に相談し、適切な検査と対応を受けることが、健康を守る上で大切です。
まとめ
内視鏡検査の間隔については、ご自身の健康状態、年齢、過去の検査結果、家族歴などを総合的に考慮する必要があります。
健康な方でも、胃カメラは2年に1回、大腸カメラは3~5年に1回を目安に受けるようにしましょう。ポリープ切除後や大腸がんの家族歴がある方は、より短い間隔での検査が必要となることもあります。
また、少しでも気になる症状がある場合は、定期検査を待たずに、すぐに医療機関を受診しましょう。