胃カメラ検査を受ける際、「口からがいいのか、それとも鼻からが楽なのか…」と迷ったことはありませんか?
実際、どちらを選ぶかによって検査中の苦しさやストレスの感じ方、会話のしやすさ、使用できる鎮静剤の種類などが大きく変わります。精度そのものに大きな違いはありませんが、体験のしやすさには個人差があり、自分に合った方法を選ぶことが検査への抵抗感を減らすポイントです。
この記事では、経口内視鏡(口から)と経鼻内視鏡(鼻から)それぞれのメリット・デメリットを医療の現場視点で徹底比較。さらに、どんな人にどちらの方法が向いているのかも解説するのでぜひ参考にしてください。
目次
内視鏡検査は「口から」と「鼻から」でどう違う?
胃カメラには口から挿入する「経口内視鏡」と、鼻から挿入する「経鼻内視鏡」の2種類があり、それぞれに特徴があるのです。
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
経口内視鏡(口から入れる)の特徴
経口内視鏡は、口から内視鏡を挿入して食道、胃、十二指腸を観察する、最も一般的な方法です。内視鏡の直径は8~10mm程度と、経鼻内視鏡よりも太くなっています。
口から入れるため、どうしても咽頭(喉の奥)や舌の付け根といった部位に内視鏡が触れてしまいます。そのため、嘔吐反射、いわゆる「オエッ」となる感覚が出やすい傾向があります。この嘔吐反射は、異物が喉に触れることで生じる生理的な反応で、誰にでも起こりうるものです。
しかし、スコープが太い分、観察視野が広く、より鮮明な画像が得られます。これは、内視鏡の先端に付いたカメラのレンズが大きいため、より多くの光を取り込めるからです。
また、太いスコープは医師にとって操作しやすく、検査時間の短縮にもつながります。さらに、経口内視鏡には、拡大観察機能付きの機種や様々な処置具を使用できるタイプがあります。より詳細な情報を得たり、精密な検査を行うためには、経口内視鏡が適しているといえるでしょう。
経鼻内視鏡(鼻から入れる)の特徴
経鼻内視鏡は、鼻から内視鏡を挿入して食道、胃、十二指腸を観察する方法です。内視鏡の直径は5~6mm程度と、経口内視鏡の約半分ほどの細さです。
細いスコープを鼻から挿入するため、舌の付け根を刺激しにくく、嘔吐反射が起こりにくいという大きなメリットがあります。検査中は口で呼吸ができ、会話も可能なため、リラックスして検査を受けられる方も多いです。検査中に医師と会話ができることで、不安な気持ちを和らげ、検査への恐怖心を軽減できるという利点もあります。
ただし、鼻腔が狭い方や、鼻中隔彎曲症(鼻の骨が曲がっている状態)がある方、鼻の粘膜が弱い方の場合、挿入時に痛みや出血が起こる可能性があります。
また、鼻茸(鼻のポリープ)が大きい場合など、鼻からの挿入が物理的に難しい場合は、経口内視鏡に変更せざるを得ないこともあるでしょう。
実際に受けた人の声・体験談の傾向
実際に内視鏡検査を受けた方の感想も、経口内視鏡と経鼻内視鏡でそれぞれ傾向が異なります。
経口内視鏡を受けた方の感想としては、「鎮静剤を使ったので、ほとんど何も覚えていない」「検査中は少し苦しかったけれど、すぐに終わったので大丈夫だった」といった意見が多く見られます。検査に対する不安が強い方や、過去に内視鏡検査で辛い思いをした方は、鎮静剤の使用を検討してみるのも良いでしょう。
一方で経鼻内視鏡の場合は、「思っていたよりも楽だった」「想像していたほどの苦痛はなかった」という方が多くいらっしゃいます。特に、嘔吐反射に強い不安を抱いていた方からは、「経鼻内視鏡にして良かった」という声がよく聞かれます。
もちろん、どちらの方法を選んでも、個人差があるため、すべての方が同じように感じるわけではありません。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、ご自身の状態や希望に合った方法を選択することが重要です。最終的には、検査前に医師とよく相談し、最適な方法を決定することをおすすめします。
内視鏡検査の費用は口からと鼻からで違うのか?

胃カメラの費用について、「口からの検査と鼻からの検査で値段が違うのでは?」と気になる方もいるかもしれません。
しかし、実際にはどちらの方法を選んでも、保険診療であれば検査費用は基本的に同じです。胃カメラは医療保険の対象であり、自己負担3割の場合、初診料を含めて5,000円から8,000円程度が一般的な目安とされています。
一部の病院では、経鼻用のスコープの管理コストや、鼻の処置に使う薬剤などに応じて、わずかに追加費用がかかる場合もありますが、それはあくまで施設ごとの運用です。
検査方法によって大きく費用が変わることは基本的にありません。不安な場合は、事前に医療機関に問い合わせると安心でしょう。
内視鏡検査の精度は口からと鼻からで差がある?
ここでは、内視鏡検査の精度の点に注目して、口から行う場合と鼻から行う場合に分けて見ていきましょう。
医師側の操作性の違い
一般的に、経口内視鏡の方がスコープが太く硬いため、医師にとっては操作しやすい傾向があります。スコープを体内でスムーズに進めたり、方向転換させたりする際に、スコープの太さが安定性を提供するからです。
また、経口内視鏡は内部の構造が複雑化できるため、先端の動きを細かく制御するワイヤーの操作性も優れています。より精密な操作が可能となり、検査の効率を高めることに繋がります。
一方、経鼻内視鏡はスコープが細いため、医師にとってはより繊細な操作が求められます。特に、鼻腔や咽頭といった狭い部位を通過させる際には、高度な技術と経験が必要です。
そのため、医師の技術や経験がより重視される側面がありますが、専門的なトレーニングを受けた医師であれば、問題なく対応できます。近年では、経鼻内視鏡に対応した医療機関も増えており、多くの施設でスムーズな検査が行われています。
視野や画質の違いはある?
以前は、経鼻内視鏡は経口内視鏡に比べて画質が劣るといわれていました。しかし、近年では技術の進歩により、経鼻内視鏡にも高画質のCCDやCMOSセンサーが搭載された機種が登場し、以前と比べて画質の差は大幅に縮まっています。現在では、多くの医療機関で高画質の経鼻内視鏡が導入されており、詳細な観察が可能です。
視野に関しては、経口内視鏡の方がスコープが太いため、一般的に経鼻内視鏡よりも広くなります。広い視野は、病変の見落としリスクを低減する上で重要な要素です。特に、胃の壁全体を観察する際には、広い視野が確保されている方が効率的に検査を進めることができます。
しかし、経鼻内視鏡も近年の技術革新により、レンズの性能向上や、より広角に撮影できる技術が開発されています。そのため、視野の広さという点においても、経口内視鏡と経鼻内視鏡の差は小さくなってきています。
病変の見落としリスクは?
内視鏡検査における病変の見落としリスクは、医師の技術や経験、使用する機器の性能、そして患者の状態など、様々な要因によって影響を受けます。一概にどちらの検査方法が見落としリスクが高いかを断定することはできません。
しかし、微小な病変や、粘膜のわずかな変化を見つけるためには、高画質で広い視野が確保できる方が有利です。この点においては、現時点では経口内視鏡の方が優れているといえるでしょう。例えば、早期胃がんのように、粘膜のわずかな色の変化や凹凸で見つける必要がある病変の場合、経口内視鏡による検査が推奨されることがあります。
また、内視鏡検査では、病変部から組織を採取して病理検査を行う「生検」が重要な役割を果たします。生検鉗子と呼ばれる器具をスコープを通して挿入し、組織を採取しますが、この操作はスコープが太い経口内視鏡の方が容易に行えます。
経鼻内視鏡も技術の進歩により精度は向上していますが、早期がんの発見や、より精密な検査が必要な場合は、経口内視鏡が選択されるケースが多いです。
内視鏡検査で口からを選ぶべき人・鼻からがおすすめな人
「口から」と「鼻から」、どちらの方法にもメリット・デメリットがあり、患者さん一人ひとりの状況や希望によって最適な方法は異なります。口からと鼻から、それぞれどのような人におすすめなのかご紹介します。
【経口がおすすめな人】
- より詳細な検査が必要な方
- 過去に経鼻内視鏡検査で違和感や痛みを感じた方
- 鎮静剤を使用して、寝ている間に検査を終わらせたい方
【経鼻がおすすめな人】
- 嘔吐反射が強く、過去の検査で辛い経験がある方
- 初めての内視鏡検査で強い不安を感じている方
- 鎮静剤の使用を避けたい方(なお、経鼻でも鎮静剤の使用は可能)
- 検査中に医師と会話しながら安心して検査を受けたい方
鼻から希望してもできないケースがある?
経鼻内視鏡検査を希望する場合でも、以下の理由により、口からの内視鏡検査に変更となるケースがあります。
- 鼻腔が狭い: 鼻腔が狭いと、スコープを挿入することが困難になる場合があります。特に、生まれつき鼻腔が狭い方や、アレルギー性鼻炎などで鼻腔が炎症を起こしている方は、経鼻内視鏡検査が難しい場合があります。
- 鼻中隔湾曲症などの鼻の異常: 鼻中隔湾曲症(鼻の骨が曲がっている状態)など、鼻の構造に異常がある場合、スコープが挿入しづらくなります。
- 鼻血を起こしやすい: 鼻の粘膜が弱く、鼻血を起こしやすい方は、スコープの挿入によって出血するリスクが高まります。
- 過去の鼻の手術の影響: 過去の鼻の手術の影響で、鼻腔の構造が変わっている場合、経鼻内視鏡検査が難しい場合があります。
まとめ
口からと鼻から、どちらの内視鏡検査が良いか迷っている方のために、それぞれのメリット・デメリットを比較し、どんな人がどちらの検査に向いているのかをまとめました。
口からの内視鏡検査は、観察視野が広く、様々な処置が可能である点がメリットです。より精密な検査や治療が必要な方、鎮静剤を使って寝ている間に検査を終わらせたい方に向いています。
一方で鼻からの内視鏡検査は、嘔吐反射が少なく、検査中に医師と会話ができる点がメリットです。そのため、嘔吐反射が苦手な方、初めてで不安な方、鎮静剤を使いたくない方(経鼻でも鎮静剤の使用は可能)におすすめです。ただし、鼻からの内視鏡検査を希望しても、鼻腔が狭い、鼻に異常がある、鼻血を起こしやすいなどの理由で、口からの検査に変更になるケースもあります。
事前に医師に相談し、最適な方法を選びましょう。最終的には、ご自身の希望や状態に合わせて、医師と相談しながら決めることが大切です。