健康診断でよく目にする内視鏡検査(※)とバリウム検査。どちらを選ぶべきか、迷った経験のある方も多いのではないでしょうか。検査方法や精度、身体への負担、費用など、それぞれにメリット・デメリットがあり、自分に合った方法を選ぶには正しい情報が欠かせません。
本記事では、両検査の特徴をさまざまな観点からわかりやすく比較します。検査内容や精度の違い、苦痛の感じ方、検査後の過ごし方などを具体的に紹介するので、ぜひ最後まで参考にしてください。
目次
内視鏡検査とバリウム検査の基本的な違い
内視鏡検査とバリウム検査の違いを、以下の項目に絞って見ていきましょう。
- 検査方法と使う機器の違い
- 胃の中をどうやって観察するか
- それぞれの検査にかかる時間
検査方法と使う機器の違い
内視鏡検査とバリウム検査では、検査方法と使用する機器が根本的に異なります。
内視鏡検査は、先端に小さなカメラが付いた細い管(スコープ)を体内に挿入して、食道、胃、十二指腸の内部を直接観察する検査です。
口から挿入する経口内視鏡と、鼻から挿入する経鼻内視鏡の2種類があり、患者さんの状態や希望、そして医師の判断によって選択されます。近年では、スコープの直径も非常に細くなっており、以前より体への負担が軽減されています。
一方、バリウム検査は、バリウムという造影剤と、胃を膨らませるための発泡剤を飲み、X線を照射することで、食道、胃、十二指腸の形や状態を画像で確認する検査です。バリウムを飲むと胃が白く映し出され、もし病変があれば、その部分が影として現れます。
つまり、バリウム検査では、胃の中を直接見るのではなく、影絵のように映し出された画像から、間接的に異常を発見するのです。
胃の中をどうやって観察するのか
内視鏡検査では、スコープの先端に付いた高性能カメラによって、胃の内部を鮮明に、そしてリアルタイムで観察できます。粘膜の色や表面の微細な変化まで詳細に捉えることができるため、ごく初期のがんや小さなポリープの発見にも非常に有効です。
また、必要に応じて、組織の一部を採取(生検)し、病理検査を行うことで、がんかどうかを確定診断することも可能です。これは、内視鏡検査ならではの大きなメリットといえるでしょう。
対して、バリウム検査は、バリウムを飲んで胃の形をX線で撮影し、その画像から病変の有無を判断します。言ってみれば、レントゲン写真のように、白黒の濃淡で胃の状態を推測する検査です。
胃の粘膜を直接観察するわけではないため、詳細な情報を得ることは難しく、病変の大きさや深さなどを正確に把握することは困難です。そのため、バリウム検査で異常が疑われた場合は、確定診断のために内視鏡検査を追加で行うケースも少なくありません。
それぞれの検査にかかる時間
内視鏡検査にかかる時間は、検査内容や患者さんの状態によって異なりますが、通常は5分から15分程度です。ただし、検査前の説明や準備、検査後の休憩時間などを含めると、全体で30分から1時間程度かかると考えておくと良いでしょう。
一方、バリウム検査は、バリウムを飲んで撮影する時間は5分~10分程度と比較的短時間です。しかし、バリウムを飲んでから胃全体に行き渡るまでの待ち時間や、様々な体位での撮影時間、検査後の休憩時間などを含めると、全体で20分から30分程度かかります。
さらに、バリウム検査後は、バリウムを体外に排出するために下剤を服用する必要があり、その時間も考慮に入れる必要があります。場合によっては、バリウムが排出されるまで数日かかることもあり、その間、便が白っぽくなるなど、生活に多少の影響が出る可能性もあるでしょう。
検査中の苦しさ・嘔吐反射など
内視鏡検査では、口や鼻から細いスコープを挿入するため、特に口からの場合は「オエッ」となる嘔吐反射が起こることがあります。これは誰にでも起こりうる自然な反応で、人によっては強い不快感を伴うこともあります。
近年では、鼻から挿入する経鼻内視鏡や、鎮静剤を用いた方法が選べるようになり、以前より楽に受けられるようになっています。
一方、バリウム検査はバリウム液を飲んでX線撮影を行うため、ゲップを我慢したり体勢を変える必要があります。苦しさを感じる方もいますが、内視鏡のような嘔吐反射はありません。
内視鏡検査とバリウム検査の費用を比較

内視鏡検査とバリウム検査では、費用にも違いがあります。検査を選ぶ際、内容や精度だけでなく、金額面も気になるポイントの一つです。
この章では、保険診療と自由診療・人間ドックそれぞれの場合に分けて、両検査の費用を比較します。また、単に安い・高いだけでなく、費用に見合う効果が得られるかという視点からも解説していきます。
保険適用時の費用相場
健康保険が適用される場合、内視鏡検査とバリウム検査の費用相場は、検査内容や医療機関によって異なりますが、以下が一般的な目安です。
- 内視鏡検査:5,000円~8,000円程度(3割負担の場合)
- バリウム検査
- 2,000円~4,000円程度(健康診断の場合)
- 1,000円~2,000円程度(医療機関での検査の場合)
内視鏡検査で検査中に組織を採取する生検を行った場合は、追加費用が発生します。
自由診療・人間ドックの場合の料金差
健康保険が適用されない自由診療や人間ドックの場合、費用は医療機関によって大きく変動します。
- 内視鏡検査:10,000円~30,000円程度
- バリウム検査:5,000円~15,000円程度
自由診療や人間ドックでは、検査項目や医療機関の設備、サービス内容によって費用設定が異なるため、事前に確認することが重要です。人間ドックの場合は、基本的な検査項目にバリウム検査が含まれている場合もありますが、内視鏡検査はオプションとして追加料金が必要となるケースが多いです。
また、鎮静剤の使用などによっても費用が加算される場合があります。
コストパフォーマンスで見ると?
一見すると、バリウム検査のほうが内視鏡検査より費用が抑えられるように見えます。ただし、バリウム検査で異常が見つかった場合、追加で内視鏡検査が必要になることもあり、その場合は費用も時間も余計にかかってしまいます。
内視鏡検査は早期の胃がん発見に有効とされ、検査中にそのまま診断がつくケースもあります。一方、バリウム検査は画像を後日確認するため、結果が出るまで時間がかかることもあります。
費用だけでなく、再検査のリスクや診断までのスピードを含めて考えると、内視鏡検査のほうが結果的に効率的と感じる方もいるでしょう。自身の体調や不安、希望をふまえ、医師と相談しながら検査方法を選ぶことが大切です。
内視鏡検査とバリウム検査はどちらを受けるべきか?

内視鏡検査とバリウム検査。どちらも胃の検査として広く知られていますが、一体どちらを受けたら良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
「内視鏡は苦しそう…」「バリウムは検査後が大変そう…」。色々な話を聞くと、ますます不安になりますよね。
実は、それぞれの検査にはメリットとデメリットがあり、あなたの年齢や症状、そして検査の目的によって、最適な検査方法は変わってきます。
この章では、それぞれの検査の特徴を踏まえ、あなたに合った検査選びのポイントをわかりやすく解説します。
目的別の使い分け方(精密検査 vs 健診)
まず、内視鏡検査とバリウム検査の大きな違いは、その「目的」にあります。
バリウム検査は、胃の全体像を捉える検査です。健康診断のように、胃に異常がないかを広く浅くチェックしたい場合に適しています。費用も比較的安く、検査時間も短くて済みます。
一方、内視鏡検査は、胃の粘膜を詳細に観察する検査です。「胃の調子がおかしい」「健康診断で要精密検査と言われた」など、胃に不調を感じていたり、特定の場所を詳しく調べたい場合に有効です。病変の早期発見・早期治療に繋がるため、胃がんのリスクが高い方にも推奨されます。
年齢・リスク・家族歴で選ぶ基準
年齢とともに胃がんのリスクは高まります。特に40〜50歳以上の方は、一度は内視鏡検査を受けてみることをおすすめします。
また、家族に胃がんを患った方がいる場合も、重要なリスク因子です。たとえ今は自覚症状がなくても、将来のリスクを考慮して、定期的に検査を受けることを検討しましょう。
さらに、ピロリ菌感染も胃がんのリスクを高める要因の一つです。ピロリ菌は、胃の粘膜に棲みつく細菌で、感染すると慢性胃炎を引き起こし、将来的に胃がんへと進行する可能性があります。
検診などのピロリ菌の検査で陽性だった方は、除菌治療を行う前に、内視鏡検査を受けることを強くおすすめします。
医師に相談する際のポイント
内視鏡検査とバリウム検査、どちらの検査を受けるべきか、最終的には医師と相談して決めることが重要です。「どの検査が自分に合っているのかわからない…」と悩んでいる方も、ご安心ください。
医師は、あなたの状況に合わせて、最適な検査方法を提案してくれます。相談する際には、以下の点を伝えるようにしましょう。
- 胃の症状(具体的な痛み、吐き気、胸やけなど)
- 過去の検査歴(いつ、どんな検査を受けたか)
- 検査に対する不安や希望(「嘔吐反射が心配」「鎮静剤を使いたい」など)
- 家族歴(胃がん、大腸がんの有無など)
- 服用中の薬
まとめ
内視鏡検査とバリウム検査、どちらを選ぶべきか悩ましいですよね。検査の目的、年齢やリスク、費用などを比較検討し、ご自身に合った検査方法を選びましょう。
精密検査が必要な場合や、胃がんリスクが高い方は、精度の高い内視鏡検査がおすすめです。一方で元来健康で、スクリーニングのために健診を受けたい方は、バリウム検査を選択肢に入れても良いでしょう。
ただし、バリウム検査で異常が疑われた場合は、確定診断のために内視鏡検査が必要になるケースもあります。再検査ではより詳細に調べることで、癌の早期発見や治療につなげられるので、異常を指摘されたら必ず内視鏡検査を受けるようにしましょう。