ICL手術でクリアな視界を得たあと、カラコンを使って印象を変えたいと考える人は少なくありません。ただし、目の中にレンズを入れた状態で、さらにカラコンを装用しても問題がないのか、不安に感じる人も多くいます。
この記事では、ICL手術後にカラコンが使える時期、安全なレンズの選び方、装用時の注意点を解説します。
正しい知識を身につければ、目の健康を守りながら安全におしゃれを楽しめ、自己判断による失明リスクも回避できるでしょう。
ICLとは
ICL(眼内コンタクトレンズ)は、水晶体を残したまま、目の中に特殊なレンズを挿入して視力を矯正する手術です。角膜を削らないため、元の状態に戻せる「可逆性」がある点が特徴です。
ICLは特に、以下のような方に適した手術です。
- 近視や乱視が強い方
- 角膜が薄く、レーシックが適応外の方
- 術後のドライアイが心配な方
ICLは強度近視の矯正法として安全性や有効性が評価されており、確立されてきている治療法の一つです。
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手術の仕組み
手術は点眼麻酔後、角膜端を約3mm切開してレンズを挿入します。レンズは虹彩と水晶体の間に固定されます。
術前検査では「AS-OCT(前眼部光干渉断層計)」でレンズ挿入スペースをミクロン単位で測定します。眼の中のスペースに合ったレンズを選ぶことで、見え方が安定し、トラブルのリスクを減らすことができます。
角膜や目の構造への影響
ICL手術は角膜の形状をほとんど変えずに視力矯正ができます。角膜を削らないため、角膜強度を保て、夜間の光のにじみ(ハロー・グレア)が少ない傾向にあります。
角膜表面の知覚神経への影響が少なく、術後のドライアイのリスクが他の屈折矯正手術に比べて低いのがメリットです。複数の研究報告によると、ICL手術後の白内障の発生率や、角膜の透明性を保つ角膜内皮細胞の減少率は低いとされています。(※1)
ICL手術後にカラコンは使える?
ICL手術を受けたあとでも、カラコンを使うことはできます。ただし、装用を始めるタイミングや目の状態については、必ず医師の確認が必要です。
ここでは、使用再開の目安時期や医師の許可が必要な理由について詳しく見ていきましょう。
使用再開の目安時期
カラコンの再開は手術後の定期検診で、目の状態が安定していると医師が判断してからです。回復の個人差および医師の判断により2週間~3か月以上かかる場合もあります。
医師は定期検診で以下を評価します。
- 角膜にできた傷口が塞がっているか
- 炎症反応の有無
- ICLレンズの位置
- ドライアイの程度
これらの項目をすべてクリアし、医師が「安全に使用できる」と判断した場合にのみ、カラコンの装用許可が出ます。焦らず、ご自身の目の回復を最優先に考えてください。
医師の許可が必要な理由
ICL手術後にカラコンをする場合に医師の許可が必要な理由は、以下の3つです。
- 感染症のリスク
- 角膜への負担とドライアイの悪化
- 手術後の安定と合併症の予防
角膜の傷が完全に治る前にカラコンをつけると、傷口から細菌が入ってしまうおそれがあります。感染が進むと、目の中で炎症が起きる「眼内炎」を引き起こし、視力に影響することもあるので注意しましょう。
術後の目はドライアイになりやすい状態です。カラコンは角膜への酸素供給を妨げ、角膜内皮細胞にダメージを与える可能性があります。稀に白内障やレンズの位置ずれといった合併症も報告されています。(※2)
カラコンのつけ外しは目に刺激を与えるため、手術後しばらくは控えることが大切です。
ICL手術後、カラコンを使用する前に知ってほしいこと
ICL手術後にカラコンを選ぶ際に必ず知っておいてほしい3つのポイントを解説します。
- 目に優しいカラコンを選ぶ
- サイズや着色の大きさ、ベースカーブに注意する
- 度ありカラコンは医師に確認を
目に優しいカラコンを選ぶ
目に優しいレンズを選ぶための基準は、以下の3つです。
- 酸素をどれだけ通すか(酸素透過率)
- レンズの水分量(含水率)
- レンズの種類(ワンデータイプが基本)
目の表面にある角膜には血管がなく、涙に溶け込んだ空気中の酸素を取り込むことで呼吸しています。そのため、カラコンをつけると角膜にフタをするような形になり、酸素が届きにくくなることがあります。
レンズがどのくらいの酸素を通すのかは、「Dk/L値」をチェックしましょう。この数値が高いほど角膜に酸素が届きやすくなります。中でも、シリコーンハイドロゲル素材のレンズは酸素透過率が高く、術後の目にも適しています。
また、含水率が高いレンズは一見うるおいがありそうに見えますが、乾燥すると涙を吸収してしまう性質があります。術後にドライアイの傾向がある場合は、かえって乾きを強めてしまうこともあるため注意が必要です。
衛生面を重視するなら、使い捨てのワンデータイプがおすすめです。毎回新品を使えるため、感染症のリスクを最小限に抑えることができます。
サイズや着色の大きさ、ベースカーブに注意する
カラコンを選ぶ際は、レンズの直径(DIA)と涙の流れにも注意が必要です。DIAが大きすぎると涙の循環が悪くなり、角膜に酸素や栄養が届きにくくなります。
またカラコンの着色部分は酸素が通りにくくなっています。着色直径が大きいデザインほど、角膜が呼吸できる面積が狭くなります。
さらに、レンズのカーブ(ベースカーブ:BC)も重要なポイントです。目の形に合っていないと、レンズがずれたり違和感を感じたりすることがあります。眼科でフィッティング検査を受け、自分の目に合ったBCとサイズのレンズを処方してもらいましょう。
度ありカラコンは医師に確認を
ICL手術後は基本的に「度なし(0.00)」のカラコンを使用します。
自己判断で「度あり」のカラコンを装用すると過矯正という危険な状態を引き起こします。
過矯正になると以下の症状が現れる可能性があります。
- しつこい頭痛や肩こり
- 原因不明の吐き気やめまい
- 激しい眼精疲労
もし手術後に「少し見えにくい」「度数が必要かもしれない」と感じた場合は、必ず手術を受けたクリニックに相談してください。見えにくさの原因を正確に診断し、適切に対処することが重要です。
ICL術後にカラコンを楽しむためのポイント
ICL手術の効果を最大限に、そして長く維持するためには、術後の丁寧なセルフケアが不可欠です。これからお伝えするポイントを必ず守り、安全にカラコンを楽しみましょう。
清潔な状態で装着する
カラコンを清潔に保つためのポイントは以下の通りです。
- レンズに触れる前の手洗い
- 爪を短く切る
- レンズケースの管理(1~3か月ごとに交換)
- 保存液の適切な使用(毎日新しいものに交換)
これらのポイントを守ることが、ICL手術後も目の健康を保つうえで大切です。
長時間の装用を避ける
カラコンの装用時間は1日6〜8時間以内を目安にしましょう。角膜内皮細胞は一度減ると再生されません。(※3)意識的に目を休ませる日を作ることが、長期的にクリアな視界を保つ秘訣です。
目の乾燥を防ぐケアを行う
ICL手術のあとしばらくは、涙の量が変化して目が乾きやすくなることがあります。この状態でカラコンをつけると、涙が蒸発しやすくなり、乾燥の症状がさらに強まることがあります。
ドライアイ対策としては、以下の3つが有効です。
- 意識的にまばたきをする
- 部屋の湿度を管理する
- 防腐剤フリーの目薬を使う
これらを日常的に意識することで、目の乾燥を予防できます。
定期的に受診して目の状態を確認する
ICL手術後の視力を長く安定させるためには、術後の定期検診が欠かせません。カラコンを使用する場合も、定期的に眼科を受診し、角膜やレンズの状態を確認することが重要です。
検診では、合併症を防ぐために以下の点を確認します。
- 眼内のICLレンズの位置
- 白内障の発生
- 角膜内皮細胞の数
カラコンの使用を始めた後に、以下のような症状が出た場合は、すぐに装用を中止し、速やかに手術を受けたクリニックまたはお近くの眼科を受診してください。
- 目の痛み、かゆみ、強い充血
- 普段より目やにが多い
- 視界がかすむ、見え方がおかしい
気になる症状があっても自己判断で放置せず、早めに医師へ相談することが大切です。
まとめ
ICL手術後も、医師の許可があればカラコンの使用は可能です。術後の検診で問題がなければ許可が出ることがありますが、回復には個人差があるため、必ず医師の診断に従いましょう。
使用開始後も、目に優しいレンズを選び、清潔な手で短時間だけ装用するなど、ルールを守ることが重要です。不安な点があれば、かかりつけの眼科や手術を受けた医療機関に相談し、目の状態を確認してもらいましょう。
参考文献
- Fernández-Vigo JI, Burgos-Blasco B, De-Pablo-Gómez-de-Liaño L, Almorín-Fernández-Vigo I, Arriola-Villalobos P, Ruiz-Casas D, Macarro-Merino A, Fernández-Vigo JÁ. Clinical Applications of Anterior Segment Optical Coherence Tomography in Managing Phakic and Secondary Intraocular Lens Implants: A Comprehensive Review. Diagnostics, 2025, 15, 18.
- Van Hoe W, Termote K, Saelens I, Delbeke H. Implantable phakic contact lens: systematic review. Journal of Cataract and Refractive Surgery, 2025, 51, 10, 922-932.
- Zhao H, Zhu S. Visual related quality of life after ICL V4c implantation in high myopia patients: a mini review. Frontiers in Medicine, 2025, 12, 1630025.

