「歯並びをきれいにしたいけれど、矯正装置が目立つのは不安」そんな理由で治療をためらっていませんか?
近年は、透明で目立ちにくいマウスピース矯正「インビザライン」を選ぶ方が増えています。(※1)インビザラインは、ワイヤーを使わず取り外しができるため、普段の生活を変えずに治療を続けられることが大きな特徴です。
この記事では、インビザラインの仕組みやワイヤー矯正との違い、治療の流れ、費用、注意点までをわかりやすく解説します。あなたに合った矯正方法を見つけるための参考にしてください。
インビザラインとは?
インビザラインは、透明なマウスピース型矯正装置(アライナー)で、見た目に配慮しながら歯並びを整える治療法です。装置が目立ちにくく、取り外しも可能なため、見た目や日常生活への影響を抑えられます。
ここでは、インビザラインの仕組みや特徴、ワイヤー矯正との違いについて解説します。
インビザラインの仕組みと特徴
インビザライン治療は、オーダーメイドのアライナーで、歯の根のまわり(歯根膜)に弱い力を加えて歯を動かしていく仕組みです。
1枚のアライナーで歯が動く距離は、約0.25mmです。7〜14日ごとに新しいアライナーへ交換しながら少しずつ歯並びを整えていきます。
インビザラインの主な特徴は、以下のとおりです。
- 3Dスキャナーで治療前に仕上がりの歯並びを確認できる
- 軽度〜中等度まで、さまざまな歯並びの乱れに対応できる
- 必要な場合はアタッチメントを付け、歯の動きをより正確にコントロールできる
特に、歯が重なって生えている叢生(そうせい)や、噛み合わせのずれが小さいクラスI不正咬合では多くの治療実績が報告されています。(※2)歯を動かすスペースが足りない場合でも、歯列を広げたり奥歯を後ろに動かしたりして調整を行い、抜歯をせずに治療できるケースもあります。
ワイヤー矯正との違い
歯の矯正治療には、インビザラインの他に、伝統的なワイヤー矯正があります。それぞれの違いは以下のとおりです。
| 項目 | インビザライン | ワイヤー矯正 |
| 見た目 | 透明なマウスピースで目立ちにくい | 金属やセラミックの装置が目立つことがある |
| 痛み | 段階的に動かすため痛みが少ない | 調整後に痛みを感じやすいことがある |
| 取り外し | 可能 | 歯科医師でなければできない |
| 食事 | 装置を外して普段通り楽しめる | ・食べ物が挟まりやすい ・粘着性の高いものは避ける必要がある |
| 歯磨き | 装置を外して隅々まで磨ける | 装置の周囲に汚れが残りやすく、磨きにくい |
| 通院頻度 | 1〜3か月に1回程度 | 1か月に1回程度 |
インビザラインの平均的な治療期間は、約18〜23か月とする報告が多く、ワイヤー矯正と違いはありません。(※3)軽度〜中程度の方では6〜12か月以内で終わることもあります。装置置が目立たず、食事や歯磨きも普段通りに行えるため、治療中の心理的な負担は少ないといえます。
ご自身のライフスタイルや希望に合わせて、適した治療法を選びましょう。
インビザラインの5つのメリット
インビザラインが多くの方に選ばれる主なメリットは、次の5つです。
①透明で目立たない
②取り外しできて衛生的である
③痛みがワイヤー矯正より少ない
④精密な3Dシミュレーションで予測しやすい
⑤通院回数が少なくスケジュールを立てやすい
①透明で目立たない
インビザラインの最大の特徴は、装置が透明で周囲に気づかれにくいことです。
マウスピースは、厚さ約0.5mmの医療用プラスチック製でぴったりとフィットします。装着していてもほとんど目立たず、自然に会話を楽しめます。ワイヤー矯正のように装置が目立つストレスが少なく、治療を前向きに続けやすいでしょう。
②取り外しできて清潔さを保ちやすい
インビザラインは、食事や歯磨きの際に取り外せるため、清潔な口内環境を保ちやすい治療法です。
矯正治療は年単位で続くため、毎日のケアのしやすさは大切なポイントです。インビザラインなら、歯並びの改善と合わせて口腔内全体の健康も守りながら、無理なく治療を続けられます。
③痛みがワイヤー矯正より少ない
インビザラインは、弱い力を持続的に加えて動かすため、歯根膜への負担が少なく、従来のワイヤー矯正に比べて痛みが少ない点が特徴です。
金属の装置やワイヤーを使わないため、頬の内側や唇に当たって口内炎ができる心配もほとんどありません。新しいアライナーを装着した直後に軽い締め付け感はありますが、数日で慣れ、日常生活に支障を感じにくいことが一般的です。
④精密な3Dシミュレーションで予測しやすい
インビザラインでは、3Dシミュレーションにより治療前から歯の動きや仕上がりを確認できます。歯科医師と患者さんが完成イメージを共有できるため、安心して治療を進められます。
3Dシミュレーションの主なメリットは次のとおりです。
- 治療のゴールを共有しやすい
- 経過が見えることでモチベーションを保ちやすい
- 治療期間や抜歯の有無など複数のプランを比較できる
このシステムは、世界数千万例規模のデータをもとに最適化されており、高い精度で結果を予測できます。(※4)
⑤通院回数が少なくスケジュールを立てやすい
インビザラインの通院回数は、治療の進行状況にもよりますが、通常1〜3か月に1回程度です。通院時に数枚分のマウスピースを受け取り、スケジュールに沿ってご自身で交換しながら治療を進めます。
通院回数が少ないため、今の生活スタイルをほとんど変えずに治療を続けられます。ただし、装着時間や交換時期を守らなければ、治療効果が十分に得られない点には注意が必要です。
インビザライン治療の流れ
インビザライン治療は、精密な計画のもと、4つのステップで段階的に進められます。
- 初診相談・精密検査・3Dシミュレーション
- マウスピースの作製と装着
- 1〜2週間ごとの交換・通院
- 保定装置(リテーナー)の使用
初診相談・精密検査・3Dシミュレーション
初回のカウンセリングでは、歯並びのお悩みや理想の口元を伺い、治療の方向性を共有します。その後、口腔内や顔写真、レントゲン(パノラマ・セファロ)撮影、口腔内スキャンを行い、歯や骨格の状態を詳しく確認します。
得られたデータをもとに、専用ソフト(クリンチェック)で歯の動きを3Dシミュレーションし、治療後の歯並びやおおよその治療期間を事前に把握できる仕組みです。シミュレーションは高精度な予測であり、実際の動きには個人差があります。(※5)
マウスピースの作製と装着
治療計画に同意後、いよいよマウスピースの作製と装着に進みます。この工程では、オーダーメイドの装置を精密に作り、正確に装着することが重要です。作製から装着までの主な流れは次のとおりです。
- 治療データをアライン・テクノロジー社(米国)へ送付
- 専用の3Dシステムで患者ごとのマウスピースを作製
- 約2〜4週間で医院に届き、治療がスタート
初回装着時には、着脱方法や装着時間のルールを丁寧に確認します。歯を正確に動かすため、歯の表面に小さな突起「アタッチメント」を付ける場合があります。歯の側面をわずかに削る「IPR(アイピーアール)」と呼ばれる処置を行うこともありますが、痛みはほとんど感じません。
マウスピースの装着を正しく行うことで、治療効果を発揮できるようになります。
1〜2週間ごとの交換・通院
インビザラインでは、1枚のマウスピースで歯を約0.25mmずつ動かすように設計されています。7〜14日ごとに新しいマウスピースへ交換しながら、少しずつ理想の歯並びへと近づけていきます。
通院は1〜3か月に1回程度が目安です。診察では、歯の動きが計画どおりか、マウスピースのフィット感や破損・汚れの有無を確認します。歯の動きにずれが見られる場合は、再スキャンを行い、リファインメント(再調整)によって治療計画を見直します。
保定装置(リテーナー)の使用
すべてのマウスピースの装着が終わって歯並びが整っても、治療は完了ではありません。歯は元の位置へ戻ろうとする性質(後戻り)があるため、一定期間は保定装置(リテーナー)で固定が必要です。
リテーナーには、マウスピース型や歯の裏側に固定するタイプなどがあります。矯正が終わったあとは、食事や歯磨きのとき以外は常に装着し、慣れてきたら夜だけの使用に移っていきます。保定期間は矯正にかかった期間と同じくらいが目安です。
この期間を丁寧に過ごすことで、整えた歯並びをしっかりキープできます。
治療中インビザラインの注意点とリスク
インビザラインの治療を成功に導くために、知っておきたい注意点とリスクを4つご紹介します。
①1日20〜22時間は装着する
②すべての方に適用できるわけではない
③適切に保管する
④アフターケアを怠らない
①1日20〜22時間は装着する
マウスピース矯正は、毎日20〜22時間の装着を継続することが前提です。装着時間が短いと歯が計画通りに動かず、以下のような問題につながる可能性があります。
- 治療が予定より長引く
- 次のマウスピースが合わなくなる(マウスピースの再作成で別費用がかかる)
- 痛みを伴う後戻り
装着時間を守らない日が続くと、歯の動きが遅くなり、治療の完了が予定より遅れてしまうことがあります。スムーズな治療のためにも、装着時間は必ず守りましょう。
②すべての方に適用できるわけではない
インビザラインは多くの症例に対応できますが、口腔内の状態によっては適用が難しいケースもあります。
以下のような場合には、適用を慎重に検討する必要があります。
- 歯が大きく重なり合って生えている(重度の叢生)
- 歯を支える骨が弱い重度の歯周病がある
- 顎の骨の中に埋まっている歯(埋伏歯)を大きく動かす必要がある
- 骨格のずれが大きい(出っ歯・受け口など)
最適な治療法を選ぶためには、レントゲンや口腔内スキャンなどを用いた精密検査と診断が不可欠です。まずは歯科医師とよく相談し、ご自身に合った方法を確認しましょう。
③適切に保管する
インビザラインは取り外しができるため、紛失や破損に注意が必要です。マウスピースをなくしてしまうと、作り直しに時間がかかり、治療が一時的に中断することもあります。
不適切な保管方法によるトラブルとして、以下が挙げられます。
- ティッシュに包み、誤って捨ててしまった
- ポケットに直接入れてしまい、変形・破損した
- 不適切なつけ外し方ことで変形・破損した
- 夏場の車内や暖房の近くなど、高温の場所で変形した
マウスピースを外した際は、専用のケースに保管しましょう。小さな子供やペットのいる家庭では、手の届かない安全な場所に置くことも大切です。
④アフターケアを怠らない
インビザライン治療が完了しても、歯並びを安定させるには定期的なアフターケアが欠かせません。歯は矯正直後、周囲の骨や歯ぐきがまだ安定しておらず、少しの力でも動きやすい状態にあります。そのため、リテーナーを正しく使い続けることが重要です。
使用時間を守り、夜間の装着を習慣化することで後戻りを防ぎやすくなります。定期的に歯科医院で健診を受け、咬み合わせやリテーナーの状態を確認しましょう。歯ぎしりや食いしばりがある場合は、リテーナーの再調整や噛み合わせのケアが必要になることもあります。
治療後のケアを怠らず続けることで、健康的で美しい歯並びを長く維持できます。
インビザラインの費用相場
インビザライン治療は、見た目や機能を整えるための自由診療です。費用は決して安くありませんが、内訳や支払いの流れを知っておくことで、安心して治療を進めることができます。
ここでは、費用と支払い方法について、以下の3つを解説します。
- 費用相場
- 追加費用がかかるケース
- 医療費控除・分割払い・デンタルローンの活用
費用相場
インビザラインの費用は、歯並びの状態や治療範囲によって変わります。保険が適用されない自由診療のため、歯科医院ごとに料金設定が異なる点にも注意が必要です。
一般的な費用相場は、以下のとおりです。
| 治療の種類 | 費用の目安(税込) | 内容の特徴 |
| 全体矯正 | 約80〜100万円 | 歯列全体を動かし、噛み合わせまで整える |
| 部分矯正 | 約20〜40万円 | ・前歯など、気になる一部分のみを整える ・短期間での改善が可能 |
これらの費用には、一般的に次のような項目が含まれています。
- レントゲン撮影や3Dスキャン(iTeroなど)を用いた検査費用
- オーダーメイドで作るマウスピース作製料
- 通院時の診察やマウスピースの確認、口腔内チェックなどの費用
- 保定装置(リテーナー)料
歯科医院によっては、これらをすべて含んだトータルフィー制度(総額固定制)を採用している場合もあります。契約前に料金体系を確認しましょう。
追加費用がかかるケース
インビザラインでは、治療内容や経過によって追加費用が発生する場合があります。
主な追加費用の発生ケースは次のとおりです。
- 抜歯やIPR(歯の研磨)が必要な場合
- 虫歯や歯周病の治療が必要な場合
- マウスピースの紛失・破損
- 治療計画の修正(リファインメント)
リファインメントについては、追加費用が発生する回数や条件を事前に確認しておくことをおすすめします。
医療費控除・分割払い・デンタルローンの活用
インビザラインは医療費制度や支払い方法を上手に活用することで、無理のないプランで治療を続けることが可能です。
主なサポート制度と支払い方法には以下があげられるので、参考にしてみてください。
| 支払い方法・制度 | 特徴・ポイント |
| 医療費控除 | ・確定申告を行うことで、支払った医療費の一部が戻ってくる制度 ・噛み合わせの改善など、治療目的の矯正であれば対象になる場合がある |
| 院内分割払い | ・クレジットカードを使わずに分割で支払いができる制度 ・金利や手数料がかからない場合もあり、無理なく治療を進められる |
| デンタルローン | ・銀行や信販会社が提供する歯科治療専用のローン ・クレジット分割より金利が低めで、月々の支払い負担を軽減できる |
利用条件や金利、対象範囲は歯科医院によって異なるため、カウンセリング時に確認しましょう。
まとめ
インビザラインは、装置が目立たず、普段通りの食事や歯磨きができるため、生活に負担をかけずに続けやすい矯正方法です。1日20〜22時間程度の装着を守るなど、自己管理が治療成功の鍵となります。
治療期間や費用、ご自身に合うかどうかを知るためにも、まずは歯科医師に相談してみましょう。シミュレーションで治療後の歯並びを確認しながら、納得のいく計画を立てることが大切です。
インビザラインを検討している方は、お近くの歯科医院に相談してみましょう。
参考文献
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