健診で異常を指摘されたり、お腹の張りが続いたりする経験はありませんか。大腸カメラ検査は、こうした症状の原因を明らかにし、大腸がんやポリープなどの早期発見につながる重要な検査です。
この記事では、大腸カメラ検査の目的や費用相場、検査を受けるタイミング、検査の流れまで解説します。安心して準備を進めるために、検査内容を正しく理解しましょう。
目次
大腸カメラとは?検査の目的と胃カメラとの違いを解説
大腸カメラとは、肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体を直接観察して異常を調べる検査です。一方、胃カメラは、観察部位や挿入経路が異なるため別の目的で使用されます。
ここでは、大腸カメラ検査の目的と胃カメラとの違いを解説します。
大腸カメラ検査の目的
大腸カメラは、大腸内の異常を見つけ、診断と治療を同時に行うことを目的とした検査です。大腸カメラ検査の主な目的は、以下のとおりです。
| 目的 | 内容 |
| 病気の発見・診断 | 大腸がん、ポリープなどの病変を直接確認する |
| 病理検査 | 疑わしい組織を一部採取し、治療の判断につなげる |
| 治療 | 可能な場合、見つかったポリープをその場で切除する(日帰り手術) |
大腸カメラは、病変の確認から治療まで一度に進められる点が大きな利点です。潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の診断にも用いられ、便秘や腹部膨満などの原因特定にも役立ちます。
胃カメラとの違い
胃カメラは、食道や胃、十二指腸などの上部消化管を観察する検査です。大腸カメラと同じ内視鏡を使った検査ですが、観察する部位や目的が異なります。
大腸カメラとの違いを、以下の表にまとめました。
| 項目 | 大腸カメラ | 胃カメラ |
| 観察部位 | 大腸(直腸~盲腸) | 食道・胃・十二指腸 |
| 挿入部位 | 肛門 | 口または鼻 |
| 検査時間 | 10〜20分程度 | 5〜10分程度 |
| 主な目的 | 大腸がん、ポリープ、炎症などの診断・治療 | 胃がん、胃炎、潰瘍などの診断 |
大腸カメラは、下剤を用いた腸の前処置が必要なため、検査後に腸の動きが一時的に乱れることがあります。しかし、胃カメラは、食事制限のみで事前準備の必要はほとんどありません。
どちらの検査も病気の早期発見に欠かせないため、症状に応じて使い分けましょう。
大腸カメラ検査の費用相場と保険適用
大腸カメラ検査の費用は、保険の適用有無や検査内容によって変わります。血便や腹痛などの症状が見られ、医師が必要と判断した場合は公的保険が適用されます。
症状がなく、自己判断で人間ドックを受ける場合は保険が適用されず、自費診療となります。自費診療の人間ドックの費用は、観察のみで2万〜3万円程度が相場です。
一方、症状があり医師が必要と判断した場合は保険適用となります。保険適用時の費用目安は以下のとおりです。
| 検査内容 | 1割負担 | 3割負担 |
| 観察のみ | 2,000円前後 | 5,000〜7,000円 |
| 組織検査 | 2,000〜5,000円 | 5,000〜15,000円 |
| ポリープ切除 | 7,000〜10,000円 | 20,000〜30,000円 |
費用は医療機関によって異なり、初診料・再診料や下剤、鎮静剤の費用が追加されることがあります。受診する医療機関によって総額が変動するため、事前に確認しておくと安心です。
大腸カメラでわかる主な疾患
大腸カメラでは、大腸の粘膜を直接観察して異常を確認できる検査です。先端に搭載された高性能カメラと照明により、腸壁の色調の変化や小さな隆起も詳しく観察できます。
大腸カメラでわかる主な疾患は、以下のとおりです。
①大腸ポリープ
②大腸がん
③炎症性腸疾患
④大腸憩室症
⑤虚血性腸炎
①大腸ポリープ
大腸ポリープは、大腸の内壁から突き出たイボのような形状の隆起物です。多くは良性ですが、腺腫性ポリープの一部は将来的にがん化する可能性があります。主な発生要因には、加齢や遺伝的な体質が関係すると考えられています。
初期には症状が出にくいものの、進行すると以下のような症状がみられる場合があります。
- 血便
- 便秘や下痢
- 慢性的な貧血
- 腹痛やお腹の張り
大腸ポリープを放置すると、大腸がんにつながりかねません。大腸カメラ検査を受けることで、発見したポリープをその場で切除できる場合もあり、予防の観点でも役立ちます。
②大腸がん
大腸がんは、50歳前後で増加し、男女ともに罹患率が高いがんの一つです。(※1)大腸の粘膜にできる悪性腫瘍で、S状結腸や直腸に発生しやすい傾向があります。
多くは腺腫性ポリープから進行するため、ポリープの段階での切除が予防につながるでしょう。
偏った食生活による肥満や運動不足のような生活習慣が主な原因です。治療法はがんの進行度によって異なり、内視鏡治療の他、以下のような選択肢が挙げられます。
| 治療法 | 内容 |
| 手術療法 | がん部分を切除する治療 |
| 化学療法 | 再発予防や進行がんに対して抗がん剤を使用する治療 |
| 放射線治療 | 腫瘍の縮小や症状の緩和を目的に行われる治療 |
治療法の選択は、医師と相談しながら、ご自身の状態に合った方法を検討しましょう。
③炎症性腸疾患
炎症性腸疾患(IBD)は、腸に慢性的な炎症を引き起こす難治性疾患の総称で、主に「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」を指します。どちらも症状が強く出る活動期と、症状が落ち着く寛解期を繰り返すのが特徴です。
発症は20代前後の若年層に多く、国が指定する難病に分類されています。これらの疾患の特徴と主な症状は、以下のとおりです。
| 疾患名 | 特徴 | 主な症状 |
| 潰瘍性大腸炎 | 大腸の粘膜層に炎症が起こり、直腸から口側へ連続的に広がる | 血便・下痢・腹痛 |
| クローン病 | 口から肛門までの消化管全域に炎症が生じる | 腹痛・下痢・発熱 |
潰瘍性大腸炎は比較的浅い粘膜層に炎症が起こるのに対し、クローン病は腸管壁の深い層まで炎症が及ぶ場合があります。どちらの疾患も原因は特定されていませんが、遺伝的要因や腸内環境の変化が関係すると考えられています。
早期に炎症を把握し、適切に治療することで、寛解期を長く維持することが可能です。
④大腸憩室症
大腸憩室症は、大腸の壁が袋状に外側へ突出する疾患で、加齢とともに発生頻度が高まります。原因として、便秘による腸内圧の上昇や、大腸壁の筋肉層の衰えが挙げられます。加えて、食物繊維の不足、運動量の低下、喫煙習慣などの生活習慣も発症リスクを高める要因となります。
多くは無症状のまま経過しますが、合併症が生じると急激な体調変化を引き起こす場合があります。主な合併症は、憩室炎と憩室出血の2つです。
憩室炎は、周期的な腹痛がみられ、炎症が強くなると持続的な痛みに変化します。憩室出血は、憩室が血管を損傷し、大量の血便が生じることがあります。炎症が重症化すると、腸管の穿孔や膿瘍形成を引き起こす危険があるので注意が必要です。
普段症状がなくても、腹痛や出血が見られた場合は速やかに医療機関を受診してください。
⑤虚血性腸炎
虚血性腸炎は、大腸への血流が一時的に低下することで、腸の粘膜に炎症や損傷が生じる疾患です。血流が行き届きにくい下行結腸からS状結腸に発生することが多く、安静にすることで数日〜1週間程度で症状が落ち着くことが多いですが、経過には個人差があります。
ただし、腸管壊死など重篤な合併症を引き起こすこともあり、注意が必要です。虚血性腸炎は、血管側と腸管側の要因が重なって関与します。代表的な要因は、以下のとおりです。
| 発症要因 | 内容 | 主な原因例 |
| 血流の低下 | 動脈硬化などにより血流が減少する | 高血圧・糖尿病・脂質異常症 |
| 腸管内圧の上昇 | 腸内の圧力が高まり、血管を圧迫する | 便秘・強いいきみ |
初期症状は、左下腹部の痛み・下痢などが同時に現れ、嘔吐や膨満感を伴うことがあります。症状が進むと腸管壊死に至り、腹部が板のように硬くなる場合があります。
大腸カメラを受けるべきタイミング
大腸カメラを適切なタイミングで受けることで、病気の進行を未然に防ぐことができます。以下の条件に当てはまる場合は、医療機関での受診を検討してください。
- 自覚症状がある場合
- 前回の健診から一定期間が経過している場合
- 家族に既往歴がある場合
自覚症状がある場合
大腸に自覚症状が現れているときは、病気が進行している可能性があるため、通常の検診間隔に関わらず速やかな受診が求められます。
以下の症状がみられる際は、大腸カメラ検査を検討してください。
- 血便
- 便秘や下痢を繰り返す便通異常
- 腹部の張りや腹痛
これらは、大腸がんを含む幅広い疾患に共通してみられます。症状を放置すると悪化する可能性があるため、早めの対応が必要になります。
前回の検査から一定期間が経過している場合
前回の大腸カメラ検査から一定期間が過ぎている場合、再検査の時期は前回の検査でポリープの有無によって異なります。
ポリープが見つからなかった場合は、5年おきの検査が一般的ですが、切除を行った場合は1-2年後の再検査が必要となる場合があります。特に悪性化のリスクが高いポリープが見つかった場合は、短い間隔での経過観察が必要になります。
初回切除後の1〜2年を基本とし、その後はリスクに応じて検査間隔が調整していきます。適切な感覚で検査を受けることで、大腸がんになるリスクを減らせるでしょう。
家族に既往歴がある場合
一般的に、40歳を過ぎたら大腸カメラ検査を受けることが推奨されています。家族に既往歴がある場合は、病変のリスクが高まるため、より早めの受診が欠かせません。
家族に大腸がん患者がいる場合は、30歳頃から検査を検討してください。また、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群が疑われる場合は、さらに早期の検査が必要になります。
これらの疾患は遺伝性のリスクが高いため、便潜血検査も受診し、継続的に経過を確認することが重要です。
大腸カメラ検査の流れと注意事項
大腸カメラ検査の流れを事前に理解しておくと、不安を軽減でき落ち着いて検査を受診できます。検査は大きく3つのステップに分かれており、準備から結果説明までの流れに沿って進みます。
①検査前日(下剤の服用と食事)
②検査当日(前処置から検査実施まで)
③検査後(診断と結果の説明)
①検査前日(下剤の服用と食事)
大腸カメラで正確な検査を行うためには、腸内を空の状態にして粘膜観察しやすくすることが欠かせません。検査前日は、医療機関の指示に従って食事制限と下剤の服用を行い、腸の準備を整えましょう。
前日の注意点として、食事は消化の良いものを中心にし、夕食は午後9時頃までに済ませてください。それ以降は検査が終わるまで固形物を控える必要があります。前日に摂取してよい食品と避けたい食品は、以下のとおりです。
| 項目 | 食品例 |
| 食べて良いもの | おかゆ、うどん、食パン、豆腐、卵、鶏ささみ、白身魚 |
| 避けるべきもの | きのこ類、海藻類、こんにゃく、種のある果物、玄米 |
水やお茶などの糖分を含まない飲み物であれば制限なく飲めるので、積極的に摂取してください。
検査前日は、事前に処方される下剤を就寝前に服用します。この下剤は腸の動き(蠕動運動)を活発化させ、翌朝の液体タイプの下剤(腸管洗浄剤)を効率よく作用させる役割があります。飲み忘れると腸の洗浄が不十分になり、検査の精度に影響するため、指示どおりに服用しましょう。
②検査当日(前処理から検査実施まで)
大腸カメラ検査は、来院後の準備から検査の終了まで決められた流れで進みます。検査当日の一般的な流れは次のとおりです。
- 受付後の問診で、当日の体調を確認する
- 便の状態を確認する
- 準備が整い次第、検査着に着替え、検査室に移動し内視鏡検査を開始する
検査開始前には、必要に応じて鎮静剤を投与することで、眠ったような状態で検査を受けることが可能です。検査は、左側を下にして横向きに寝た姿勢で行われ、肛門にゼリーを塗布したうえで内視鏡を挿入します。腸を膨らませる空気や二酸化炭素も併用し、鎮痛剤を使用する場合もありますので痛みを抑えながら進められるでしょう。
カメラは盲腸まで進み、大腸全体の粘膜を丁寧に観察します。検査時間は、通常10〜20分程度で、ポリープ切除や組織採取が必要な場合は追加の処置が行われるため、検査時間が延びることも把握しておきましょう。
③検査後(診断と結果の説明)
検査直後は、身体の状態を確認しながら安全に過ごすことが重要です。鎮静剤を使用した場合はベッドで1時間程度休み、意識状態や血圧が安定しているかを確認します。体調が整った後、診察室で医師から検査結果の説明があります。
説明では、大腸内の画像を確認しながら、ポリープ・炎症・潰瘍などの有無や特徴について解説があります。疑問点があれば、このタイミングで確認すると安心です。
ポリープを切除した場合は、切除部位の状態や当日の過ごし方の注意点なども説明されます。また、生検を行った際は組織を病理検査に提出し、2週間程度で結果が出ます。結果は後日の外来で説明されるため、案内された日時に受診してください。
検査後の注意事項として、以下の内容が伝えられます。
- 当日は自動車・バイク・自転車などの運転は控える
- 帰宅後の最初の食事は消化の良いものを選ぶ
- 入浴は避け、シャワーのみにする
これらを守らないと体調不良や事故につながる危険があるため、注意して過ごしましょう。
大腸カメラのよくある質問
大腸カメラを受ける際に、いくつかの不安や疑問が生じることがあります。ここでは、大腸カメラに関するよくある3つの質問に回答します。
- 合併症のリスクはあるか?
- 生理中でも検査は可能か?
- 検査でポリープが見つかったら?
合併症のリスクはあるか?
大腸カメラは安全性の高い検査ですが、まれに合併症が起こることがあります。
特にポリープを切除した際は、処置後に出血が続く場合があります。検査後に強い腹痛や出血が続く場合は、早めに医療機関へ連絡し、指示を受けてください。
生理中でも検査は可能か?
多くの医療機関で検査は可能です。ただし、施設によっては日程変更を勧められる場合もあるため、事前に確認しましょう。ただし、生理痛が強い場合や、貧血などで体調が優れない場合は無理をせず、日程変更を検討すると安心です。
検査でポリープが見つかったら?
検査中にポリープが見つかった場合の多くは、その場での切除が可能です。
処置は痛みを伴うことが少なく、高周波電流で焼き切る方法や、電気を使わずに切除する方法が用いられます。適切に治療を行えば問題なく経過することがほとんどのため、ポリープが見つかった場合でも過度に不安になる必要はありません。
まとめ
大腸カメラは、大腸の状態を直接確認でき、病変の早期発見に役立つ重要な検査です。検査前後の流れや注意点を理解することで、安心して受けられます。
リスクがゼロではないものの、適切な準備と医師のサポートがあれば安全に進められます。大腸がんの予防や健康管理のために、受診のタイミングに該当する方は早めに消化器内科へ相談してみてください。
参考文献
- 国立研究開発法人国立がん研究センター.「大腸:[国立がん研究センター がん統計]」