最終医学的確認日:2026年10月
健康診断で高血圧を指摘されても、自覚症状がないことを理由に改善を後回しにしていませんか?
高血圧は、日本の成人の約3人に1人、推定4300万人が該当するとされる病気です。(※1)気づかないうちに血管を傷つけることで動脈硬化を進行させ、脳卒中や心筋梗塞の原因となります。
この記事では、高血圧の原因と症状、放置によるリスクや治療について解説します。将来の合併症を防ぎ、健康的な生活を送るために知識をつけて対策しましょう。
高血圧とは?5つの基礎知識
高血圧とは、血圧が基準値よりも高い状態が続く病気です。血圧は、心臓が血液を全身に送り出す際に血管の壁にかかる圧力を指します。
多くの場合、高血圧は自覚症状がありません。しかし、放置しているうちに血管が傷つき、動脈硬化が進行して、心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気を引き起こすことがあります。高血圧は『サイレントキラー』と呼ばれ、自覚症状がないまま血管を静かに蝕み、ある日突然、脳梗塞や心筋梗塞として姿を現すイメージです。
高血圧に関する以下の5つの基礎知識を解説します。
- ①高血圧の診断基準(Ⅰ度〜Ⅲ度)
- ②高血圧の原因
- ③原因で異なる高血圧の種類
- ④高血圧の症状
- ⑤血圧で分類される高血圧のタイプ
①高血圧の診断基準(Ⅰ度〜Ⅲ度)
高血圧の診断基準は、診察室血圧(病院で測定)と、家庭血圧(自宅で測定)で異なります。診察室では緊張などから血圧が高めに出る白衣高血圧と呼ばれる現象があるからです。
日本高血圧学会が示す基準では、以下の表のように血圧の値により重症度が分類されています。(※1)
| 分類 | 診察室血圧(mmHg)収縮期血圧/拡張期血圧 | 家庭血圧(mmHg)収縮期血圧/拡張期血圧 |
|---|---|---|
| 正常血圧 | 120未満/80未満 | 115未満/75未満 |
| 正常高値血圧 | 120〜129/80未満 | 115〜124/75未満 |
| 高値血圧 | 130〜139/80〜89 | 125〜134/75〜84 |
| Ⅰ度高血圧 | 140〜159/90〜99 | 135〜144/85〜89 |
| Ⅱ度高血圧 | 160〜179/100〜109 | 145〜159/90〜99 |
| Ⅲ度高血圧 | 180以上/110以上 | 160以上/100以上 |
一般的に、診察室血圧で上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。
自宅で測定する家庭血圧は、より厳しい基準の収縮期血圧135mmHg以上・拡張期血圧85mmHg以上が高血圧となります。Ⅰ度〜Ⅲ度という分類は、重症度の目安です。
②高血圧の原因
高血圧は、複数の要因が絡み合って発症すると考えられています。主な原因は、遺伝的要因と環境的要因の2つに分けられます。
親から受け継ぐ体質(遺伝的要因)も、高血圧のなりやすさに関わっています。特定の病気が原因ではない高血圧(本態性高血圧)では、発症への遺伝的要因の影響は30〜70%程度と推定されています。(※1)
日々の生活習慣(環境的要因)は、血圧に影響を与えます。塩分の過剰摂取や肥満、運動不足、喫煙などは高血圧のリスクを高めるため注意が必要です。(※2,3)飽和脂肪酸が豊富な高脂肪食を慢性的に摂取することも、高血圧のリスクを高めます。(※4)
③原因で異なる高血圧の種類
高血圧は、原因によって本態性高血圧と二次性高血圧の2種類に分けられます。
本態性高血圧とは、特定の病気が原因ではなく、遺伝的な体質に塩分の摂りすぎや肥満、ストレスなど複数の生活習慣が組み合わさり起こる種類です。治療は生活習慣の改善と、降圧薬による薬物療法が中心となります。
二次性高血圧とは、腎臓の病気やホルモンの異常など、特定の病気が原因で血圧が高くなっている状態です。高血圧全体の1割以上がこのタイプとされています。(※1)原因とされる病気を治療することで、血圧が正常に戻る可能性があります。二次性高血圧の代表的な原因として、腎血管性高血圧、原発性アルドステロン症、睡眠時無呼吸症候群などがあります。若年での高血圧や、複数の薬でも血圧が下がりにくい場合は、これらの可能性も検討します。
若い年齢で高血圧を指摘された方や、急に血圧が高くなった方、複数の薬を飲んでも血圧が下がりにくい方などは、二次性高血圧の可能性があります。
④高血圧の症状
高血圧は、血圧がかなり高い状態であっても、ほとんど自覚症状が現れない傾向です。症状がないために、健康診断で指摘されても放置してしまいがちです。放置している間に血管の壁は傷つけられ、動脈硬化が徐々に進行していきます。
高血圧の状態が長く続いて心臓や脳、腎臓などの臓器に負担がかかると、以下のような症状が現れることがあります。
- 頭痛、頭重感
- めまい、ふらつき
- 肩こり
- 動悸、息切れ
- 耳鳴り
- 手足のむくみ
ただし、上記の症状は高血圧に特有のものではなく、ほかの病気でも起こりえます。症状の有無で判断するのではなく、定期的に血圧を測定して自分の数値や変化を正確に把握することが大切です。
気になる症状がある方は、関連記事「高血圧の症状チェック|頭痛・動悸・むくみなど注意すべきサイン」もあわせてご覧ください。
⑤血圧で分類される高血圧のタイプ
高血圧は、一日を通した血圧の変動パターンや測定の状況によって、いくつかのタイプに分けられます。自分のタイプを把握することは、隠れたリスクを発見し、適切な対策を立てるうえで重要です。
主なタイプは以下のとおりです。
- 持続性高血圧:医療機関や自宅でも血圧が基準値より高い状態
- 早朝高血圧:起床前後に血圧が急上昇する状態
- 夜間高血圧:睡眠中や夜間に血圧が下がらない状態
- 白衣高血圧:自宅で測ると正常だが病院で測ると血圧が高くなる状態
- 仮面高血圧:病院で測ると正常だが自宅や職場での血圧が高い状態
高血圧が関与する3大合併症
高血圧を放置すると起こりうる、代表的な以下の3つの合併症について解説します。
- ①脳卒中(脳梗塞・脳出血)
- ②心筋梗塞・心不全
- ③慢性腎臓病(CKD)
①脳卒中(脳梗塞・脳出血)
高血圧に関与する3大合併症の一つが、脳卒中です。
脳の血管は細く繊細なため、高血圧の影響を受けやすいです。高い圧力がかかり続けると、脳の血管の壁は次第に硬く、もろくなっていきます。これが動脈硬化です。脳の血管で動脈硬化が進むと、脳卒中(脳梗塞や脳出血)という症状を引き起こします。
脳梗塞は、動脈硬化で狭くなった血管の壁に、血の塊(血栓)が詰まる病気です。血流が途絶え、脳に酸素などが届かなくなることで、脳細胞が壊死します。塩分の多い食事だけでなく、高脂肪食を日常的に摂ることも、動脈硬化を早める一因とされています。(※4)
脳出血は、高い圧力によりもろくなった血管が、圧力に耐えきれず破れてしまう病気です。脳の中で出血が起こると、あふれた血液が周りの脳細胞を圧迫して障害を引き起こします。
特に脳卒中は命を落とす危険性が高く、一命をとりとめても以下のような後遺症が残ることが多いです。
- 片麻痺:体の片側に麻痺が残る
- 失語症:言葉がうまく話せなくなる、理解できなくなる
- 高次機能障害:記憶が障害される
脳卒中にならないよう、高血圧の方は早めに医療機関を受診しましょう。
②心筋梗塞・心不全
心筋梗塞・心不全も高血圧が関与する合併症です。
血圧が高い状態では、血液を押し出すのにより強い力が必要なため、心臓に常に大きな負担がかかっています。
高血圧が続くと、心臓の筋肉は次第に分厚く硬くなっていき、心肥大と呼ばれる状態になります。心肥大は心臓の拡張・収縮を妨げ、ポンプ機能を徐々に低下させるため危険な状態です。
結果的に、全身に満足に血液を送れなくなる心不全という状態に陥ります。心不全になると、少し動いただけで息切れや、足のむくみなどの症状が現れます。
高血圧は、心臓自身に栄養を送る冠動脈の動脈硬化も進行させるため、狭心症や心筋梗塞を引き起こす要因です。狭心症は、冠動脈が動脈硬化で狭くなり、心臓への血流が一時的に不足する状態です。運動時などに胸の痛みや圧迫感を引き起こします。
心筋梗塞は冠動脈が血栓などで詰まり、心臓の筋肉が壊死する状態です。突然激しい胸の痛みに襲われ、命に関わります。
③慢性腎臓病(CKD)
高血圧になると、慢性腎臓病(CKD)の発症および重症化のリスクとなります。
腎臓は、毛細血管が集まった臓器であり、血液をろ過して老廃物や余分な塩分・水分を尿として排出する、フィルターの役割を持ちます。
高血圧が続くと、腎臓の細い血管にも常に高い圧力がかかり、動脈硬化が進みます(腎硬化症)。血管が硬く狭くなり、ろ過機能も徐々に低下していくでしょう。この状態を慢性腎臓病(CKD)といいます。
腎機能低下と高血圧には悪循環になりやすい関係性があります。高血圧が腎臓の細い血管を傷つけ腎機能を低下させると、塩分や水分の排出がうまくいかなくなります。体内に余分な水分がたまると血液量が増え、さらに血圧が上昇し、ますます腎機能を悪化させます。
この悪循環が腎機能の低下をさらに進め、腎臓がほぼ機能しなくなると末期腎不全となります。末期腎不全になると、老廃物や余分な水分を除去するために、人工透析治療や腎移植が必要です。人工透析治療は、生涯にわたり継続しなければなりません。
高血圧の検査方法
高血圧の検査は、血圧計で数値を測るだけではありません。治療方針や高血圧に至った原因、ほかの病気がないかなどを知るために、以下の表のような検査をする場合があります。
| 検査の種類 | 確認する点 |
|---|---|
| 血液検査 |
|
| 尿検査 |
|
| 心電図検査 | 高血圧による心肥大の兆候を調べる |
| 頸動脈エコー検査 |
|
高血圧の検査の多くは、保険診療で受診可能です。自己負担額は1〜3割で抑えられるため、高血圧の原因を知りたい方は、医療機関で検査を受けることをおすすめします。
高血圧の治療とセルフケアの5つの柱
高血圧の治療は、生活習慣の改善と薬物療法が基本です。これから解説する以下の5つのポイントは、自宅で取り組みやすいセルフケアです。
- ①家庭血圧の正しい測り方と記録のポイント
- ②減塩とDASH食による食事療法
- ③続けやすい運動療法
- ④禁煙・節酒
- ⑤降圧薬の種類と服薬のポイント
①家庭血圧の正しい測り方と記録のポイント
高血圧のセルフケアの方法として、家庭での血圧測定が挙げられます。血圧を測定する際は、以下の点に注意してください。
- 測定する部屋は快適な室温か
- 測定前に1分程度椅子に座り安静にしたか
- 椅子に深く腰かけ背もたれに軽く寄りかかっているか
- 足を組まず両足を床につけているか
- 腕帯(カフ)を心臓と同じ高さに調整できているか
- 測定中に体を動かしたり会話をしたりしていないか
自宅で血圧を測る家庭血圧の記録は、治療方針を決めるうえで重要な情報です。診察室では緊張する方でも、家庭であればリラックスした状態の血圧を知れるためです。毎日(朝・夜)の血圧測定を習慣にしましょう。
朝の測定は、起床後1時間以内、かつ朝食や降圧薬を飲む前をおすすめします。尿が溜まっていると交感神経が刺激され、血圧が高めに出てしまうため排尿は済ませてください。脳梗塞や心筋梗塞は起床後に起こりやすいので、この時間帯の血圧の把握は重要です。
夜の測定は、寝る前に行いましょう。入浴や飲酒後は血圧が変動しやすいので、リラックスした状態で測ることが重要です。
測定は、朝晩各2回行い、数値を血圧手帳やスマートフォンのアプリに記録してください。変化をグラフなどで可視化すると、治療の効果が実感でき、モチベーション維持にもつながります。
日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、治療で目指す血圧(降圧目標)を、年齢にかかわらず診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満としています。(※1)
②減塩とDASH食による食事療法
高血圧の生活習慣改善において、減塩を心がけた食事療法は効果を期待できる方法の一つです。食塩の過剰摂取は、体内に水分を引き込み血液量を増やすため、血圧を上昇させるからです。
日本高血圧学会では、1日の食塩摂取量を6g未満にすることを推奨しています。(※1)減塩の工夫例を以下に挙げました。
- ラーメンやうどんの汁は全部飲まずに残す習慣をつける
- 醤油やソースは小皿に入れてからかける
- 香辛料、香味野菜(しょうが、ねぎ)、柑橘類、だしの旨味を活用する
- 漬物、ハム、練り物など加工食品の頻度を減らす
減塩と並行して推奨されているのが「DASH食(ダッシュしょく)」という食事法です。DASH食は、血圧を下げる効果のあるカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを積極的に摂る方法です。
DASH食で推奨されている食品としては、野菜や果物、青魚、低脂肪の乳製品、ナッツ類・豆類などが挙げられます。一方、飽和脂肪酸が多い高脂肪食は、高血圧のリスクを高めるため控えましょう。バランスの良い食事は健康を守るための基本です。
カリウムを多く含む食品と取り入れ方は、関連記事「高血圧対策にカリウムは有効?取り入れるべき食品と注意すること」で詳しく紹介しています。
③続けやすい運動療法
適度な運動は、血流を改善して持続的な降圧効果が期待できます。体重管理やストレス解消にもつながり、高血圧に対して良い影響をもたらします。
ただし、無理なく続けられる運動を行うことが大切です。少し早歩きのウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水中運動などが例として挙げられます。運動の強度は、息が弾むが会話は楽しめる程度が適しています。
運動は、できれば毎日、少なくとも週に3日以上を目指しましょう。1日合計で30分以上がおすすめですが、時間がなければ10分の運動を3回のように分割しても良いです。
すでに心臓や腎臓に合併症がある方は、運動が負担となる場合もあるので、自分に合った運動の種類や強度を主治医に相談しましょう。
④禁煙・節酒
喫煙と過度な飲酒は、高血圧のリスク要因です。生活習慣を見直す際には、この2つへの対策は必須です。
タバコを1本吸うと、ニコチンの作用で血管が収縮し、血圧と脈拍が一時的に上昇します。喫煙習慣がある方は、1日中何度も血管に強いストレスをかけています。血管へのストレスは動脈硬化を進行させ、血液がドロドロになり、血栓(血の塊)ができやすくなるでしょう。
高血圧の方が喫煙を続けることは、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高める行為になります。自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来など専門家のサポートを受けてみましょう。
長期間にわたる過度な飲酒も、血圧を上昇させる可能性があります。飲酒の習慣がある方は、以下の適量を守ることが大切です。
- ビール:中瓶1本(500mL)
- 日本酒:1合(180mL)
- ウイスキー:ダブル1杯(60mL)
- ワイン:グラス2杯(200mL)
女性やアルコールに弱い方は、上記の量より少なく見積もってください。また、週に1〜2日はお酒を飲まない「休肝日」を設けましょう。
食事や運動、睡眠など、高血圧を予防するための生活習慣のポイントは、関連記事「高血圧を予防するには?食事や生活習慣のポイントを解説」もあわせてご覧ください。
⑤降圧薬の種類と服薬のポイント
生活習慣の改善を続けても血圧が目標値まで下がらない場合や、合併症のリスクが高い場合には、降圧薬による薬物療法が適用されます。降圧薬の種類は複数あり、患者さんの年齢、合併症の有無、体質に合わせて最適な薬が選択されます。
主な降圧薬の種類と働きを、以下の表にまとめました。
| 薬の種類 | 働き |
|---|---|
| カルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害薬 | 血管を広げて血圧を下げる |
| β遮断薬 | 心臓の過剰な働きをしずめる |
| 利尿薬 | 余分な水分や塩分を尿として排出する |
受診後、医師の指示通りに毎日薬を飲み続けることが大切です。血圧が下がったからといって、自己判断で薬の量を減らしたり、飲むのをやめたりすることは良くありません。急な中断は、血圧が急激に上昇するリバウンド現象を招き、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こすことがあります。
もし副作用が気になる場合や、飲み忘れた場合は、自分で判断せず主治医や薬剤師に相談してください。
まとめ
高血圧は自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに心臓や脳、腎臓といった臓器に静かにダメージを与えていきます。
治療のポイントは、減塩や運動など日々の生活習慣の見直しと、医師の指示通りに薬を飲み続けることです。健康診断で高血圧を指摘された方や、体のことが気になり始めた方は、家庭で血圧を測る習慣から始めてみましょう。
不安な点があれば、かかりつけ医などに相談してください。健康な生活をこれからも送れるよう、無理なく生活習慣を改善することが大切です。




