大腸ポリープは、大腸の内側の粘膜にできる小さな隆起(いぼのような病変)です。多くは良性ですが、種類によっては将来がん化する可能性があるため注意が必要です。
しかも大腸ポリープは自覚症状がほとんどなく、気づかないまま見つかるケースも少なくありません。
この記事では、大腸ポリープの原因・症状・放置するリスク、治療や検査の考え方まで、専門的な視点でわかりやすく解説します。
目次
大腸ポリープとは何か|がん化との関係
大腸ポリープと聞くと、「もしかして、がんになるのでは?」とご心配になるかもしれません。大腸ポリープは、大腸の粘膜の表面にできるイボのような盛り上がりの総称です。
その多くは良性ですが、中には将来がんになる可能性があるものも存在します。
大腸がんは日本では特に患者数の多いがんです。しかしポリープの段階で早期に発見し、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)で切除することで、将来の大腸がんのリスクを低減できます。
ここでは、大腸ポリープの詳細についてより詳しく見ていきましょう。
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)についての詳細はコチラ⇒「大腸カメラとは?検査の目的と受けるべきタイミングをわかりやすく解説」
良性と悪性の違い
大腸ポリープは、その性質から「腫瘍性ポリープ」と「非腫瘍性ポリープ」の2種類に大きく分けられます。
| ポリープの種類 | 主な特徴 | がん化の可能性 |
|---|---|---|
| 非腫瘍性 | 炎症や細胞の過形成が原因でできる | ほとんどない |
| 腫瘍性(良性) | 腺腫と呼ばれ、がんの前段階 | 時間をかけてがんになることがある |
| 腫瘍性(悪性) | すでにがん細胞を含んでいる状態(大腸がん) | – |
「非腫瘍性ポリープ」は、基本的にがん化の心配はほとんどありません。
ただし、非腫瘍性の一つである過形成性ポリープは、サイズが10mmを超えると、がんへ移行するリスクが指摘されています。
一方で「腫瘍性ポリープ」は、良性の「腺腫」と悪性の「がん」に分けられます。この腺腫こそが、大腸がんの主な原因となるポリープです。
内視鏡検査の際に「このポリープは良性ですか?」とよく質問されますが、見た目だけでは100%の判断はできません。最終的には、切除した組織を顕微鏡で詳しく調べる「病理組織検査」によって診断が確定します。
ポリープの治療では、正確な評価と診断に基づき、適切な治療方針を決めることが何よりも重要です。
大腸がんの前がん病変とは
「前がん病変」とは、現時点ではがんではないものの、放置すると将来がんになる可能性が高い状態を指します。大腸がんの場合、この代表格が「腺腫」という種類の良性ポリープです。
多くの大腸がんは、以下のステップを数年から十数年という長い時間をかけて進行すると考えられています。
- 1.正常な粘膜に腺腫が発生する
- 2.腺腫が少しずつ大きくなる
- 3.腺腫の一部で細胞が変化し、がん化する
つまり、がんになる前の「腺腫」の段階で発見し、内視鏡で切除することが、大腸がんを未然に防ぐための効果的な予防策なのです。
ただし、ごくまれに腺腫の段階を経ずに、正常な粘膜から直接がんが発生するタイプ(de novoがん)もあります。このタイプは進行が速い傾向があるため、やはり定期的な内視鏡検査による早期発見が重要となります。
放置するとどうなるか
がん化する可能性のある大腸ポリープ(とくに腺腫)を放置すると、リスクが高まります。
ポリープはゆっくり大きくなり、サイズが大きいほどがんが含まれる可能性が上がります。10mmを超えるとリスクが上がり、20mmを超えるとがんの可能性がさらに高くなるとする報告もあります。(※1)
早期であれば内視鏡で治せることが多いのに対し、進行してしまうと開腹手術や抗がん剤が必要になることがあり、体への負担が大きくなります。
大腸ポリープは自覚症状がほとんどないため、放置せず、定期的に検査を受けることが大切です。
大腸ポリープの原因・リスク
大腸ポリープができる原因は一つではありません。
日々の食事や生活習慣、年齢、遺伝的な要因などが複雑に絡み合って発生すると考えられています。
食生活・飲酒・喫煙など生活習慣
日々の生活習慣は大腸の健康に直結します。とくに食生活の乱れは、大腸ポリープのリスクを高める代表的な要因です。赤身肉や加工肉、脂っこい食事を多くとると、腸内で有害物質が増えやすくなります。一方で、野菜や果物などの食物繊維が不足すると、便が腸に長くとどまり、粘膜を刺激します。
大量の飲酒は大腸の粘膜を傷つけ、喫煙は有害物質が血流に乗って大腸細胞にダメージを与えることが知られています。
加齢・遺伝・家族歴
大腸ポリープのリスクは、年齢や家族歴とも関係します。特に50歳以降は増えやすいため注意が必要です。
また、親や兄弟姉妹に大腸がんの方がいる場合は、より早めに大腸内視鏡検査を検討すると安心です。目安として40歳前後で一度受けておくとよいでしょう。
肥満・糖尿病など併存疾患
特定の病気や身体の状態も、大腸ポリープのリスクを高めます。代表的なのが肥満です。特に内臓脂肪が多いタイプはリスクが高く、インスリン抵抗性や慢性的な炎症が起きやすくなり、大腸粘膜に影響すると考えられています。
肥満と関係の深い2型糖尿病も、ポリープや大腸がんの発生率が上がることが知られています。運動不足は腸の動きを鈍らせ、便通を悪化させ、肥満にもつながるため、間接的にリスクを押し上げます。
大腸ポリープの症状
「ポリープができたら、お腹が痛くなるのでは?」と心配される方は少なくありません。しかし、大腸ポリープの多くは、特に初期の小さい段階では自覚症状がほとんどないのが実情です。
ここでは無症状が多い理由や、進行するとどのような症状が出るのかを見ていきましょう。
無症状が多い理由
大腸ポリープがあっても、はじめのうちは症状が出ないことがほとんどです。その理由は、ポリープの「大きさ」と、大腸という臓器の「構造」に大きく関係しています。
できたばかりのポリープは数ミリ程度と非常に小さいです。大腸の内部は直径5cmほどの広い空間なので、便が通過するのを邪魔することはありません。
また、大腸の粘膜には、痛みを感じるための神経(痛覚神経)がほとんどありません。そのため、ポリープができて粘膜が傷ついても、痛みとして自覚することはほぼないのです。
このように、症状が出ないまま大腸ポリープは数年から十数年かけてゆっくり成長します。健康診断の便潜血検査で初めて異常を指摘される方が多いのはこのためです。
血便・便潜血陽性
ポリープが少しずつ大きくなると、その表面はもろくなります。そして、硬い便が通過する際にこすれて、じわじわと出血することがあります。これが代表的な症状である「血便」です。
血便には、目に見えるものと見えないものがあります。肉眼でわかる血便(肉眼的血便)では、排便時にトイレットペーパーに赤い血がついたり、便器が赤く染まったりします。肛門に近い直腸やS状結腸にポリープがある場合に見られやすい症状です。痔の出血と自己判断して放置してしまうケースが多く、注意が必要です。
目に見えない血便(便潜血)とは、見た目ではわからなくても、便の中にごく微量の血液が混じっている状態です。健康診断などで行われる便潜血検査で「陽性」と判定されることで気づきます。
便通異常(便秘・下痢)
ポリープがさらに大きくなり、腸の内側を塞ぐようになると、便の通りが悪くなります。その結果、これまでになかった便通の異常として症状が現れることがあります。
【具体的な症状の例】
- ・急に頑固な便秘になった
- ・便秘と下痢を繰り返すようになった
- ・便が鉛筆のように細くなった
- ・排便後も便が残っている感じがする(残便感)
- ・お腹が張って苦しい感じがする(腹部膨満感)
大腸内視鏡検査が推奨される理由と検査の流れ
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は、大腸ポリープを見つけるうえで最も重要な検査です。大腸の中を直接観察でき、ポリープの大きさや形といった情報をその場で確認できます。
検査中に治療が必要なポリープを見つけた場合、多くはその場で切除できます。検査と治療を同時に完結できる点も、大腸内視鏡の大きな利点です。
検査を受けるべきタイミング
大腸ポリープに自覚症状はほとんどありません。そのため、以下のような状況に該当する方は、症状がなくても積極的に大腸内視鏡検査を検討することをおすすめします。
大腸内視鏡検査を受けた方がいい人
- ・40歳以上で一度も大腸内視鏡検査を受けたことがない
- ・便潜血検査で「陽性」と判定された
- ・親・兄弟姉妹など血縁者に大腸がんや大腸ポリープの方がいる
- ・血便や残便感など気になる症状がある
検査当日の流れ
大腸内視鏡検査は、基本的に以下の流れで行われます。
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1前日
消化の良いお食事を摂り、夜からは絶食していただきます。
-
2当日午前
下剤(腸管洗浄液)を1〜2リットル服用し、腸の中をきれいにします。
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3検査 (所要時間:15〜30分程度)
左側を下にした姿勢で横になっていただき、肛門から内視鏡を挿入して検査を行います。
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4結果説明
検査終了後、医師から画像を見ながら結果のご説明をいたします。ポリープを切除した場合は、病理組織検査の結果を後日改めてご確認いただきます。
なお、鎮静剤(眠くなる薬)を使用して検査を受けることも多く、痛みや不快感を軽減することが可能です。鎮静剤を使用した場合は、当日の車の運転はできません。
費用の目安
大腸内視鏡検査は保険適用となる場合がほとんどです。3割負担の場合の費用目安は以下の通りです。
- 観察のみ
- 5,000〜8,000円程度
- ポリープ切除を行った場合
- 15,000〜30,000円程度
大腸ポリープの治療
近年の内視鏡技術の進歩により、体の負担が少ない治療が中心となっています。大腸ポリープの多くの場合、入院せずに日帰りで治療を終えることも可能です。
ここでは、代表的な内視鏡治療の方法について、それぞれの特徴やどのようなポリープに適しているのかを、医師の視点から詳しく解説します。
- ポリペクトミー
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ポリペクトミーは、「茎(くき)」があるタイプのポリープに対して行われる、基本的な切除方法です。
内視鏡の先端からスネアと呼ばれる金属製の輪(わっか)を出し、ポリープの根元にある茎の部分に正確にひっかけます。スネアをゆっくりと締め付けながら高周波電流を流し、ポリープを焼き切ります。熱によって血管が焼灼されるため、出血を抑える効果もあります。
切除したポリープは、専用の器具を使って体外へ回収します。そして、がん細胞が含まれていないかなどを顕微鏡で詳しく調べる「病理組織検査」に提出します。
比較的小さなポリープでは、電流を流さずに切除する「コールドポリペクトミー」という方法も選択されます。
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR)
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内視鏡的粘膜切除術(EMR:Endoscopic Mucosal Resection)は、茎がなく平坦な形や、少し盛り上がった形のポリープに対して行われる標準的な治療法です。
ポリープの下にある粘膜下層という層に、生理食塩水などの液体を注入します。これによりポリープ全体が人工的に浮き上がり、安全に切除するための土台ができます。
十分に浮き上がって切除しやすくなったポリープ全体を、スネアで根元からしっかりと捉えます。高周波電流を流してポリープを焼き切ります。
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
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内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic Submucosal Dissection)は、EMRでは一括で取り除くことが難しい、大きな平坦なポリープや、がんが疑われる病変に対して行われる、より高度な治療法です。
EMRと同様に、病変の下の層に液体を注入して浮き上がらせます。内視鏡の先端から出す専用の電気メスで、病変の周りの粘膜に印をつけ、その印に沿って少しずつ切開していきます。
粘膜の下の層を丁寧に剥がすようにして、病変を一枚のシートのように切り取ります。
ESDは、大きな病変でも一つのかたまりとして確実に切除できるため、正確な病理診断につながるという大きな利点があります。
ただし、高度な技術を要するため治療時間が長くなり、出血や穿孔(腸に穴が開くこと)のリスクもEMRより高くなるため、入院が必要となることが一般的です。
大腸ポリープの予防方法
大腸ポリープの予防は、生活習慣の改善(一次予防)と検査による早期発見(二次予防)の両方が重要です。
一次予防としては、食物繊維(野菜・果物・海藻など)を意識して増やし、赤身肉や加工肉、脂肪の多い食事は控えることが推奨されます。加えて、ウォーキングなど継続しやすい運動を取り入れると、便通や体重管理にもつながります。
二次予防では、大腸内視鏡検査が中心になります。大腸ポリープは自覚症状がないことも多いため、検査で見つけて小さいうちに切除することが有効です。切除後も再発する場合があるため、医師が勧める間隔で定期的にフォローしましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 大腸ポリープは自然に消えますか?
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腫瘍性ポリープ(腺腫)は自然に消えることはなく、放置するとゆっくりと大きくなります。非腫瘍性ポリープの一部(過形成性ポリープなど)も同様に、自然消退は基本的に期待できません。発見された場合は、医師の判断に基づいて切除するかどうかを決めることが大切です。
Q. 大腸ポリープは何mm以上で切除が必要ですか?
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目安として、5〜6mm以上の腺腫は切除を検討することが多く、10mm以上のポリープはがんのリスクが高まるため原則として切除が推奨されます。ただし、サイズだけでなくポリープの形や表面の状態によっても判断が変わるため、最終的には担当医と相談のうえで決定します。
Q. 切除後、すぐに日常生活に戻れますか?
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日帰りで行われるポリペクトミーやEMRの場合、多くのケースで翌日から通常の生活が可能です。
ただし、切除後数日間は出血を防ぐために激しい運動・飲酒・刺激物の摂取を避ける必要があります。また、大きなポリープを切除した場合や入院が必要なESDの場合は、医師の指示に従ってください。
Q. 大腸ポリープは再発しますか?
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一度ポリープを切除した方は、新たなポリープができやすい傾向があります。切除後1〜3年以内に内視鏡検査を受けることが推奨されており、その後も定期的な検査(経過観察)を続けることが大腸がん予防において重要です。具体的な検査間隔は、切除したポリープの種類・数・サイズによって異なります。
Q. 大腸ポリープは遺伝しますか?
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一般的な大腸ポリープ(腺腫)自体が直接遺伝するわけではありませんが、大腸ポリープや大腸がんになりやすい体質は遺伝的な影響を受けることがあります。親や兄弟姉妹に大腸がん・大腸ポリープの方がいる場合は、40歳より早い時期(35〜40歳頃)に大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。
なお、「家族性大腸腺腫症」や「リンチ症候群」など、遺伝性のポリープ・がんが多発する疾患もあります。これらが疑われる場合は、専門医への相談をお勧めします。
Q. 便潜血検査が陽性でした。すぐ大腸がんということですか?
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便潜血検査の陽性は、大腸がんを確定するものではありませんので、まずはご安心ください。痔や良性のポリープなど、さまざまな原因で陽性となることが多くあります。
ただし、陽性が出た場合は大腸内視鏡検査による精密検査を速やかに受けることが重要です。放置しないようにしてください。
まとめ
大腸ポリープの多くは自覚症状がないまま静かに進行し、中には将来がんになる可能性もあります。しかし大腸ポリープは、がんになる前の段階で発見し、内視鏡で切除することで、将来の大腸がんリスクを大幅に低減できます。
バランスの取れた食事や運動といった日々の生活習慣の見直しはもちろん大切ですが、中心となる予防策は、定期的な大腸内視鏡検査です。「症状がないから大丈夫」と自己判断せず、40歳を過ぎたら一度検査を受けてみてください。
参考文献
- Calderwood AH, Lasser KE, Roy HK. Colon adenoma features and their impact on risk of future advanced adenomas and colorectal cancer. World J Gastrointest Oncol, 2016, 8(12), 826-834.
