体の痛みや腫れ、熱っぽさなどの原因として炎症性サイトカインという物質が存在します。本来、炎症性サイトカインは、ウイルスなどから体を守る免疫システムの司令官です。しかし、バランスを崩して暴走すると、関節リウマチなどの自己免疫疾患や気管支喘息などのアレルギー、がんなどのさまざまな病気の引き金になります。
この記事では、炎症性サイトカインの主な種類や働き、体への影響などを解説します。
炎症性サイトカインは体内の炎症を引き起こす原因
炎症性サイトカインは、炎症の中心的な役割を担っている物質です。体の痛みや腫れ、熱っぽさを感じるとき、体内では炎症が起きています。炎症は体を守るための反応ですが、ときに不快な症状の原因にもなります。
サイトカインは、細胞から分泌されるタンパク質の一種で、細胞間の情報伝達を担っています。炎症性サイトカインは、本来、ウイルスなどの異物から体を守ったり、傷ついた組織を修復したりします。しかし、過剰に働いたり、コントロールを失ったりすると自分の体を傷つけてしまいます。
ここでは、炎症性サイトカインの主な種類と役割、善玉サイトカインと悪玉サイトカインの違いを説明していきます。
炎症性サイトカインの主な種類と役割
炎症性サイトカインは多くの種類があり、それぞれ異なる役割を持ちつつ、互いに連携して働いています。代表的なサイトカインは以下のとおりです。
- インターロイキン(IL):主に白血球同士の情報伝達を担う
- インターフェロン(IFN):ウイルスやがん細胞の増殖を抑えたり免疫細胞を活性化したりする
- 腫瘍壊死因子(TNF):がん細胞を壊死させる因子として発見
- ケモカイン:特定の細胞を炎症部位に誘導する働きを持つ
続いて、各サイトカインを細分化して、特徴を以下の表にまとめました。
| 種類 | 代表例 | 特徴や働き |
|---|---|---|
| インターロイキン | IL – 1 |
|
| IL-2 |
|
|
| IL-6 |
|
|
| IL-10 | 過剰な免疫反応を抑制 | |
| IL-12 | 免疫細胞(NK細胞、T細胞)の活性化 | |
| インターフェロン | IFN-α、IFN – β |
|
| IFN – γ |
|
|
| 腫瘍壊死因子 | TNF – α |
|
| ケモカイン | CXCケモカイン | 好中球の遊走や活性化を誘導 |
これらのサイトカインが適切に働き、人間の体は感染症などから守られています。
善玉サイトカインと悪玉サイトカインの違い
サイトカインは、炎症性サイトカイン=悪玉、抗炎症性サイトカイン=善玉と説明される場合があります。悪玉だからといって一概に悪いわけではなく、両者のバランスが大切です。
炎症性サイトカイン(悪玉)は、炎症を起こすアクセル役とイメージしてください。主なサイトカインはTNF‐α、IL‐1、IL‐6などが該当します。抗炎症サイトカイン(善玉)は、炎症を抑えるブレーキ役になります。主なサイトカインはIL‐10、TGF‐βなどです。
通常、体に異変が起きると炎症性サイトカイン(アクセル役)が働き、免疫システムが働きはじめます。問題が解決したあとは、抗炎症性サイトカイン(ブレーキ役)が働いて過剰な反応を鎮め、体を元の状態に戻します。
しかし、アクセルが必要以上に踏まれ続けたり、ブレーキが効かなくなったりすると、炎症が長く続く慢性炎症につながります。
炎症性サイトカインが関連する病気
ここでは、炎症性サイトカインが関連する病気をいくつか紹介します。
- 急性炎症・感染症
- 自己免疫疾患
- アレルギー疾患
- がん
- サイトカインストーム
急性炎症・感染症
けがをした部位が赤く腫れて熱を持ったり、感染症で高熱やだるさが出たりするのは、急性炎症という正常な防御反応です。このとき、体内では炎症性サイトカインが活発に働いています。
発熱や悪寒は、炎症性サイトカインが、脳幹部にある体温調節中枢を介して体温を上げることで起こります。ウイルスの増殖を抑え、免疫細胞の働きを活性化させるための働きです。
痛みや腫れは、炎症性サイトカインが血管を広げて血流を増やし、免疫細胞を患部に集めることで起こります。全身の倦怠感は、免疫反応にエネルギーを集中させ、安静を促すために発生します。
自己免疫疾患
自己免疫疾患は、免疫システムが誤って自分の正常な細胞や組織を傷つけてしまう病気です。この病気には、炎症性サイトカインが関わっています。
特定の炎症性サイトカインが常に多く作られ続けると、体のさまざまな場所で慢性炎症が続きます。結果的に、以下の表のように多様な症状を引き起こします。
| 代表的な自己免疫疾患 | 主な症状 | 主に関わるサイトカイン |
|---|---|---|
| 関節リウマチ | 関節の痛み・腫れ・変形 | TNF-α、IL-6 |
| 炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎) | 腹痛・下痢・血便 | TNF-α、IL-6など |
| 多発性硬化症 | しびれ・筋力低下・視力障害・歩行障害 | TNF-α、IL-1など |
| 全身性エリテマトーデス | 発熱、関節痛、発疹(蝶形紅斑) | さまざまなサイトカイン |
多発性硬化症では中枢神経、全身性エリテマトーデスでは全身の臓器において、サイトカインが過剰に働いてしまいます。
アレルギー疾患
花粉症や気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患も、免疫システムの過剰な反応により起こります。アレルギー疾患は、本来は無害な物質(アレルゲン)に過剰に反応してしまう状態です。
アレルギー反応では、なかでもIL-4、IL-5、IL-13といった種類のサイトカインが中心となり、アレルギー症状を引き起こします。アレルギー性鼻炎は、IL-4などが好塩基球や肥満細胞に働きかけてヒスタミンという物質の放出を促すことで、鼻の粘膜に炎症が起きます。
気管支喘息は、IL-5などが好酸球(白血球の一種)を気道に集め、慢性的な炎症が起きて気道を狭くして起こります。アトピー性皮膚炎は、IL-4やIL-13が皮膚のバリア機能を弱め、外部刺激に敏感な状態にして炎症を悪化させることで引き起こされます。
がん
がんと炎症性サイトカインの関係は複雑で、がんの発生を促す側面と、がんに抵抗する側面の両方の性質を持ちます。
がんの発生を促す側面は、慢性的な炎症が長期間続いてる場面が該当します。細胞が常に傷ついては修復を繰り返す過程が続くと、遺伝子に変異が起きやすくなります。この状態は、がん細胞を生まれやすくしてしまうのです。
一部のがんは炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-αなど)を利用して、血管新生や転移を促進します。がんの組織周辺では、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインの複雑な相互作用で免疫反応が生じております。近年の免疫チェックポイント阻害薬などによるがん免疫療法は、サイトカインのバランスを利用した治療です。
一方で、免疫システムががん細胞に抵抗する際にも、サイトカインは重要です。インターフェロン(IFN-γ)などのサイトカインは、免疫細胞を活性化させてがん細胞を見つけて抵抗する力を高めます。しかし、がん細胞も自ら免疫の働きを抑えるサイトカイン(TGF-βなど)を放出し、免疫細胞から逃れようとします。
サイトカインストーム
サイトカインストームは、免疫システムが制御不能となり、炎症性サイトカインが大量放出され続ける危険な状態です。この状態は、自分の正常な臓器まで傷つけ始めて、体に大きいダメージを与えます。主に重篤な感染症(新型コロナウイルス感染症など)や、がん治療の過程で起こることが知られています。(※1)
サイトカインストームは、最初に高熱や強い倦怠感、筋肉痛などインフルエンザ様症状が現れます。続いて呼吸のしづらさや血圧の低下による意識障害などが見られます。さらに、肺や心臓などの臓器が機能しなくなる(多臓器不全)に陥るケースもあります。
サイトカインストームは比較的まれな病態ですが、重症感染症や特定の免疫療法を実施しているときには注意が必要です。
炎症性サイトカインを抑える治療と日常のケア
炎症性サイトカインが関わる疾患の治療の主役は薬ですが、生活習慣を見直すことも大切です。ここでは、炎症性サイトカインの治療や費用、生活習慣など日常生活に関わるテーマを解説します。
- 炎症性サイトカインを標的とした治療法(生物学的製剤・JAK阻害薬など)
- 治療に伴う副作用
- 知っておきたい医療費支援制度(高額療養費制度など)
- 健康的な生活習慣の重要性
炎症性サイトカインを標的とした治療法(生物学的製剤・JAK阻害薬など)
関節リウマチなどの自己免疫疾患では、特定の炎症性サイトカインをピンポイントで抑える薬(生物学的製剤・JAK阻害薬など)が治療に使われています。
生物学的製剤は、過剰に作られたTNF-αなどの炎症性サイトカインや、その受容体に結合し、働きをブロックします。主に注射剤が使用されており、TNF-α阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプトなど)、IL-6阻害薬(トシリズマブなど)、IL-17阻害薬など、複数のタイプがあります。
JAK阻害薬(ジャックそがいやく)は、JAK(ヤヌスキナーゼ)という情報伝達経路をブロックします。JAKは炎症を起こしたいときに使われる細胞内の経路です。JAK阻害薬は、複数のサイトカインからの指示をまとめて遮断できる点が特徴です。主に飲み薬として使用されます。
治療に伴う副作用
生物学的製剤やJAK阻害薬は、注意が必要な副作用があります。炎症性サイトカインは、本来免疫システムの一部です。しかし、薬でその働きが抑えられると、感染症にかかりやすくなる可能性があります。特に注意が必要な感染症は以下の通りです
- 結核の再活性化(治療前にスクリーニング検査が必要)
- 帯状疱疹
- ニューモシスチス肺炎(免疫抑制が強い場合)
ほかに、注射部位反応やアレルギー反応も主な副作用としてあげられます。
注射部位反応は、生物学的製剤を注射した際に、注射場所が赤くなったり腫れたりする反応ですを指します。
アレルギー反応では、薬の投与中や投与後に発疹や息苦しさなどの急性症状が出る状態です。薬によっては、肝臓や腎臓、コレステロール値などに影響がでることもあります。
治療中は定期的に診察や検査を行い、治療を継続できるよう慎重に管理します。もし治療中に発熱や咳が続く、いつもと違う体調の変化を感じた場合は、すぐに主治医や医療機関に相談することが重要です。
知っておきたい医療費支援制度(高額療養費制度など)
炎症性サイトカインの治療は、医療費が高額になる場合があります。しかし、日本には医療費の負担を軽減する公的な制度が複数用意されています。
高額療養費制度は、1か月の医療費の自己負担額が、所得などに応じた上限額を超えた場合に、あとから申請すれば払い戻しを受けられる制度です。事前に限度額適用認定証の交付を受けておくと、医療機関での支払いを上限額までに抑えることも可能です。
難病医療費助成制度は、潰瘍性大腸炎やクローン病など、国が指定する難病(指定難病)と診断された場合に利用できます。所得に応じて自己負担の上限額が決められ、医療費の助成が受けられます。医療費控除は、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費の合計が、一定額を超えた場合に、所得税や住民税が軽減される制度です。
健康的な生活習慣の重要性
生活習慣の見直しは、体内の炎症を軽くして治療を支えます。無理のない範囲で、以下に示す内容に取り組んでみましょう。
- バランスの取れた食事:食物繊維が豊富な野菜や海藻・きのこ類、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を積極的に摂取する
- 質の高い睡眠:毎日できるだけ同じ時間に寝て決まった時間に起きる
- 適度な運動:ウォーキングなどの適度な運動は心身のリフレッシュにつながる
- ストレス管理:ゆっくり入浴するなど自分に合った方法で心と体をリラックスさせる
- オメガ3脂肪酸(青魚、亜麻仁油など)の摂取
- ポリフェノール(緑茶、ベリー類など)摂取による抗炎症作用
- 過度な飲酒の回避(アルコールは炎症を促進するため)
- 腸管免疫とサイトカインの関係が深いため、腸活も重要
健康的な生活習慣は、糖尿病に伴う歯周炎や脳卒中など、さまざまな病気のリスク管理にもつながります。小さなことでも、日々の積み重ねが、長期的に自分の体調を支えることにつながります。
まとめ
炎症性サイトカインは、炎症を促すアクセル役と、炎症を抑えるブレーキ役のバランスが保たれていることが大切です。
このバランスの乱れが、原因不明の痛みや不調に関係しているかもしれません。現在は、炎症性サイトカインを標的とした治療法が登場しています。加えて、日々の食事や睡眠、ストレス管理といった生活習慣を見直すことが、体調を整えるうえで大切です。
気になることがあれば、かかりつけ医に相談してみましょう。
参考文献
- Jarczak D, Nierhaus A.Cytokine Storm-Definition, Causes, and Implications.Int J Mol Sci,2022,23(19),11740.
