「くも膜下出血ってどんな病気なんだろう」「治療はできるのかな」と悩みますよね。
くも膜下出血は、命に直結する危険な病気で日本では年間約1万人が亡くなっています。(※1)
この記事では、くも膜下出血の症状や原因、予防方法まで詳しく解説します。万が一のときに備え、正しい知識を身につけていきましょう。
くも膜下出血とは
くも膜下出血は、脳の表面で突然出血が起こる、命に関わる病気です。
私たちの脳は、外側から硬膜(こうまく)、くも膜、軟膜(なんまく)という3層の膜で守られており、くも膜と軟膜の間の空間で出血が起こる状態です。一度出血が起こると血液が脳の広範囲に広がり、脳全体を強く刺激します。その刺激により、脳圧が急激に上昇し、突然の激しい症状を引き起こします。
主な症状
くも膜下出血の症状は、前触れもなく突然現れる特徴があります。
代表的な症状を、以下の表にまとめました。
| 症状 | 詳細 |
|---|---|
| 突然の激しい頭痛 | 後頭部をバットで殴られたような、経験したことのないような強烈な痛み※ただし、出血が軽微な場合は「いつもの片頭痛とは違う」程度の痛みの場合もある |
| 吐き気・嘔吐 | ・頭痛とほぼ同時に、こみ上げてくるような強い吐き気 ・何度も嘔吐してしまう |
| 意識障害 | ・意識がもうろうとする ・呼びかけへの反応が鈍くなる |
| 首の痛み(頸部硬直) | ・首の後ろに強い痛みやこわばりを感じる ・首の後ろが硬くなる |
| 目の奥の痛み・違和感 | ・目がえぐられるような痛み ・物が二重に見える |
主な原因
くも膜下出血の原因のほとんどは、脳動脈瘤という血管のこぶの破裂によるものです。(※2)こぶの壁は正常な血管よりも薄く、もろくなっています。高血圧などによって血管に強い圧力がかかり続けると、耐えきれずに破裂し、くも膜下腔へ出血が広がります。
そのほかに、交通事故や転倒などで頭を強く打ちつけた際の頭部外傷や生まれつき脳の動脈と静脈が、毛細血管を介さずに異常な血管の塊で直接つながっている脳動静脈奇形なども出血の原因となることがあります。
※頭を強く打ったことによる外傷性くも膜下出血は、動脈瘤破裂とは区別されます。
注意すべき前兆症状
くも膜下出血は、本格的な発作が起こる数時間〜数日前に、前兆症状が現れることがあります。特に注意すべき前兆症状は、主に以下の2つの症状です。
| 注意すべき前兆症状 | 特徴 |
|---|---|
| 警告頭痛 | ・脳動脈瘤から少量の血液が漏れたり、動脈瘤が周囲を圧迫することで起こる ・突然始まり、数時間〜数日で治まることがある ・「いつもと違う痛み」「何かおかしい」と感じる ・吐き気やめまいを伴うこともある |
| 眼の症状 | ・動眼の神経を圧迫することで起こる ・片方のまぶたが突然、意思とは関係なく下がってくる ・物が二重に見える |
これらの症状は一時的に良くなることがあるため、自己判断で問題ないと判断してしまうのは危険です。警告症状は、出血が起こるサインであることを覚えておきましょう。
脳出血との違い
くも膜下出血と脳出血は、どちらも脳の血管が破れて出血する病気ですが、出血する場所や原因、症状の傾向に違いがあります。
それぞれの違いについて、以下の表にまとめました。
| 項目 | くも膜下出血 | 脳出血 |
|---|---|---|
| 出血する場所 | 脳の表面を覆うくも膜の下の空間 | 脳の組織の中(脳実質内) |
| 主な原因 | 脳動脈瘤の破裂がほとんど | 高血圧が原因で脳の細い血管が破れることが多い |
| 症状の傾向 | 突然の激しい頭痛、嘔吐、意識障害が中心 | 頭痛に加え、体の片側の麻痺やしびれ、ろれつが回らないといった巣症状(そうしょうじょう)が出やすい |
くも膜下出血でも出血が脳の中にまで及ぶと、麻痺などの症状が出ることがあります。症状だけでどちらの病気かを見分けることは難しく、頭部CTなどの画像検査が必要です。
くも膜下出血のリスク
くも膜下出血のリスクは、主に以下の要因が関わっています。
- 高血圧
- 喫煙
- 家族歴・遺伝
要因が複数重なることで、発症の可能性を高めてしまう可能性があります。それぞれのリスクについて、具体的に解説していきます。
高血圧
高血圧は、くも膜下出血を引き起こす危険因子です。高血圧とは、血管の内側に常に強い圧力がかかり続けている状態です。この強い圧力が、血管の壁を少しずつ傷つけ、硬くしていき、脳の血管に脳動脈瘤があった場合、破裂させる可能性があります。
喫煙
喫煙も、くも膜下出血のリスクを高める生活習慣の一つです。タバコに含まれるニコチンなどの多くの有害物質は、血管の内側の壁を直接傷つけ、血管を硬くもろい状態に進行させます。
さらに、喫煙には血圧を一時的に上昇させる作用もあり、より血管への負担がかかることで出血のリスクが高まります。
家族歴・遺伝
ご家族や兄弟姉妹、お子さんなどにくも膜下出血を経験した方がいる場合、自身の発症リスクが高くなるといわれています。(※3)原因として、脳動脈瘤ができやすい体質が、遺伝的に関わっている可能性があります。
ただし、遺伝だけですべてが決まるわけではなく、食生活や喫煙、飲酒といった生活習慣も関わることで、リスクが高まります。
くも膜下出血の検査と診断方法
くも膜下出血が疑われる場合、早めに診断を確定させ、治療方針を決める必要があります。検査の目的は、出血の有無と場所の確認をすることと、出血原因を特定する検査の2つがあります。
それぞれの検査について以下の表にまとめました。
| 検査の目的 | 検査方法 | 詳細 |
|---|---|---|
| 出血の有無と場所を確認する | 頭部CT検査 | ・短時間で脳内の様子を撮影できる ・くも膜下に出血があれば白く写る |
| 出血原因を特定する | 頭部CT血管撮影 | ・点滴で造影剤を使い、脳の血管を立体的に映し出す ・破裂した脳動脈瘤の場所や大きさ、形などを詳しく調べる |
| 頭部MR血管撮影 | ・磁気の力を利用して、脳の血管の状態を調べる ・動脈瘤などの血管の異常を見つける |
|
| 脳血管造影検査 | 足の付け根などからカテーテルという細い管を脳の血管まで進め、造影剤を注入して撮影する |
くも膜下出血を発症した直後は、体内の状態が変化し、血液が固まりやすい状態になることがあるため、画像検査と並行して、血液検査を行うこともあります。
くも膜下出血の治療方法
くも膜下出血の治療は、基本的に公的医療保険の対象となります。ここでは、標準的な治療法について解説します。
開頭クリッピング術
開頭クリッピング術は、頭の骨を一時的に開け、顕微鏡で脳を拡大しながら、出血源である脳動脈瘤を処置する手術です。
治療の主な流れは、以下のとおりです。
| 流れ | 詳細 |
|---|---|
| ①全身麻酔 | 完全に眠った状態で手術を行う |
| ②頭皮の切開と開頭 | 頭髪の生え際など、傷跡が目立たない部分の皮膚を切り、頭蓋骨の一部を慎重に外す |
| ③動脈瘤への到達 | 脳を傷つけないよう、脳の自然な隙間を丁寧に広げながら、目的の脳動脈瘤を探す |
| ④クリッピング | 動脈瘤の根元部分を、チタンなどで作られた専用の小さなクリップで挟み、動脈瘤への血流を完全に遮断する |
| ⑤閉頭 | 外した頭蓋骨を元の位置に戻して固定し(※)、皮膚を縫い合わせる ※脳の腫れが強い場合など、一時的に骨を戻さないケースもある |
開頭クリッピング術は、医師が動脈瘤を直接確認しながら操作できるため、確実性が高く、根治が期待できます。
一方で、頭を開けることで、手術時間も長くなることや脳に直接触れることによるリスクも伴うため、コイル塞栓術に比べて身体への負担が大きくなる傾向があります。
コイル塞栓術
コイル塞栓術は、頭を開けずにカテーテルという細い管を使って、血管の内側から脳動脈瘤を治療する方法です。
コイル塞栓術の主な流れを以下の表にまとめました。
| 流れ | 詳細 |
|---|---|
| カテーテルの挿入 | 全身麻酔を行い、太ももの付け根にある太い動脈からカテーテルを挿入する |
| 動脈瘤への到達 | レントゲンで血管を透視しながら、カテーテルを首、脳の血管へと進め、先端を脳動脈瘤まで到達させる |
| コイルの充填 | カテーテルを通して、コイルを動脈瘤の中に少しずつ送り込んでいく |
| 血流の遮断 | 動脈瘤の中をコイルで隙間なく満たし、内部の血液の流れを止める |
コイル塞栓術は、頭にメスを入れないため身体への負担が少なく、入院期間も比較的短くなるというメリットがあります。
ただし、動脈瘤の形によってはコイルがはみ出しやすく、うまく詰められない場合や、時間が経つと詰めたコイルが縮んで隙間ができ、再治療が必要になる可能性もあります。
リハビリテーション
くも膜下出血は、手足の麻痺、言葉の障害、記憶や注意力の低下といった後遺症が残ることがあります。
リハビリテーションは、後遺症による障害を可能な限り回復させ、再びその人らしい生活を取り戻すために必要な治療です。
リハビリテーションは、主に以下の段階に分けられます。
| リハビリ段階 | 詳細 |
|---|---|
| 急性期リハビリ | ・手術後、集中治療室(ICU)にいる段階から始まる ・意識がはっきりしない状態でも、関節が硬くなるのを防ぐために手足を動かしたり、ベッドの上で座る練習をしたりする |
| 回復期リハビリ | ・全身の状態が安定したら、リハビリテーションを専門に行う病棟や病院へ移る ・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった専門家がチームを組み、歩行訓練や着替えなどの日常生活動作、言葉や飲み込みの訓練などを集中的に行う |
| 生活期(維持期)リハビリ | ・自宅へ退院したあとも、機能の維持・向上を目指してリハビリを続ける ・必要に応じて、外来リハビリや訪問リハビリ、デイケアなどの介護保険サービスを利用する |
くも膜下出血後の回復には長い時間が必要です。ご本人もご家族も焦らず、専門家のサポートを受けながら、一歩ずつ着実に進んでいくことが大切です。
くも膜下出血の合併症
くも膜下出血の治療は、いくつかの注意すべき合併症が起こる可能性があります。出血した血液そのものが、脳にさまざまな影響を及ぼすために起こります。
ここでは、代表的な3つの合併症について詳しく解説します。
- 脳血管攣縮(れんしゅく)による脳梗塞
- 水頭症
- 再出血
脳血管攣縮(れんしゅく)による脳梗塞
脳血管攣縮とは、くも膜下出血が起きた数日後(特に、4日目〜14日目の間)に起こりやすい合併症で、脳の血管がけいれんを起こしたように、異常に細く縮んでしまう状態です。血管が細くなると、血液が十分に届かなくなり、脳梗塞となり、脳細胞が酸素不足や栄養不足に陥ります。
脳血管攣縮が起こると、主に症状が現れることがあります。
- 手足の麻痺やしびれが急に出てくる、またはひどくなる
- 言葉が話しにくくなる、ろれつが回らない
- 意識の状態がぼんやりして、呼びかけへの反応が鈍くなる
水頭症
水頭症とは、脳の中にある脳室という空間に脳脊髄液が過剰にたまる状態です。くも膜下出血が起こると、出血した血液が脳脊髄液の通り道を塞いだり吸収部位を詰まらせたりして、脳室内に脳脊髄液が貯留し、脳が内側から圧迫されます。
水頭症は発症直後に起こる急性水頭症と、数週間〜数か月後に出現する正常圧水頭症(遅発性水頭症)に分けられます。
急性水頭症では、頭痛や吐き気などの頭蓋内圧亢進症状が目立つことが多いです。これに対して正常圧水頭症では、歩行障害(歩幅が狭くなりすり足になる)、認知機能障害(物忘れや意欲低下)、排尿障害(頻尿や尿失禁)の3徴候が特徴です。
ガイドラインでは、これらのうち1つ以上の症状がみられる場合、正常圧水頭症疑いと診断します。(※4)
再出血
再出血は、命に直結する合併症の一つです。一度破裂した脳動脈瘤の壁は、もろい状態になっており、血圧のわずかな変動などをきっかけに、再び破裂してしまうことがあります。
くも膜下出血は最初の出血後から24時間以内に再出血が起こりやすく、生存や後遺症に影響を与えるといわれています。(※5)
まとめ
くも膜下出血は、命に関わる病気であり、早期発見・早期治療が必要です。
また、発症には高血圧や喫煙などの生活習慣が深く関わっており、治療が大変な病気だからこそ、日頃からの予防が何より大切です。不安なことがあれば、早めに専門医に相談しましょう。
参考文献
- 日本生活習慣病予防協会.「脳血管疾患による年間死亡者数は、10万7,481人 令和4年(2022)「人口動態統計(確定数)の概況」より | 生活習慣病の調査・統計 | 日本生活習慣病予防協会」
- Lv B, Lan JX, Si YF, Ren YF, Li MY, Guo FF, Tang G, Bian Y, Wang XH, Zhang RJ, Du ZH, Liu XF, Yu SY, Tian CL, Cao XY, Wang J.Epidemiological trends of subarachnoid hemorrhage at global, regional, and national level: a trend analysis study from 1990 to 2021.Mil Med Res,2024,11,46.
- Zuurbier CCM, Bourcier R, Constant Dit Beaufils P, Redon R, Desal H, Bor ASE, Lindgren AE, Rinkel GJE, Greving JP, Ruigrok YM.Number of Affected Relatives, Age, Smoking, and Hypertension Prediction Score for Intracranial Aneurysms in Persons With a Family History for Subarachnoid Hemorrhage.Stroke,2022,53(5),1645-1650.
- 日本正常圧水頭症学会:「特発性正常圧水頭症(iNPH)と類似疾患との鑑別診断」
- Lu VM, Graffeo CS, Perry A, Carlstrom LP, Casabella AM, Wijdicks EFM, Lanzino G, Rabinstein AA.Subarachnoid hemorrhage rebleeding in the first 24 h is associated with external ventricular drain placement and higher grade on presentation: Cohort study.J Clin Neurosci,2020,81,180–185.
