健康診断で「血糖値が高め」と言われて、不安を感じたことはありませんか?
自覚症状がないと放置しがちですが、高い血糖値は体が発している危険サインかもしれません。糖尿病は、血管や臓器にゆっくりと負担をかけ、放置すれば心筋梗塞や脳梗塞、失明や腎不全などの重大な疾患へ進行する可能性があります。
この記事では、「空腹時血糖値」や「HbA1c」の検査項目が何を示しているのか、結果をどう読み取れば良いのかをわかりやすく解説します。検査の意味を理解することで、自分の体の状態を正しく把握し、早めに健康を取り戻す一歩を踏み出しましょう。
糖尿病検査について:主な検査方法
糖尿病は、いくつかの検査を組み合わせて、血糖値が高い状態が慢性的に続いているかを確認し、総合的に判断します。
糖尿病の診断で中心となる主な検査は以下の3つです。
- ① 空腹時血糖値検査
- ② 75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)
- ③ HbA1c(ヘモグロビンA1c)
①空腹時血糖値検査|基準値と高血糖かどうかをチェックする
空腹時血糖値検査は、ご自身の基礎的な血糖値がわかる糖尿病の診断で基本的な検査です。この検査では、10時間以上食事をとらない「空腹」の状態で採血し、血液中に含まれるブドウ糖の濃度を測定します。
検査結果は、以下の基準値で評価されます。(※1)
| 状態 | 空腹時血糖値(mg/dL) |
| 正常型 | 110未満 |
| 境界型(糖尿病予備群) | 110~125 |
| 糖尿病型 | 126以上 |
「境界型」は、いわゆる糖尿病予備群です。まだ糖尿病ではありませんが、将来的に移行する可能性が高い状態を指します。この段階で生活習慣を見直すことが、糖尿病の発症を防ぐ鍵となります。
血糖値とあわせて中性脂肪(トリグリセリド)の値にも注目しましょう。これらを組み合わせることで、インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)の程度をより詳しく把握できます。
最近の研究では、「空腹時血糖値と中性脂肪を組み合わせた指標(TyG)」が、将来の腎臓病など重い合併症のリスク予測に役立つ可能性も示されています。(※2)
②75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)|食後の血糖値の上昇を調べる
75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)は、食後の血糖値の変動を詳しく調べるための精密検査です。空腹時血糖値が正常でも、食後に血糖値が急上昇する「隠れ糖尿病」を見つけるのに役立ちます。
特に、健康診断で空腹時血糖値が「境界型」の方に推奨される検査です。ブドウ糖を摂取したあとに、体がどれだけうまく糖を処理できるか(耐糖能)を評価します。
検査は、以下の手順で進められます。
- 空腹時の採血:空腹の状態で採血し基礎となる血糖値を測定
- ブドウ糖液の摂取:75gのブドウ糖が含まれた甘い液体を摂取
- 摂取後の採血:30分後、1時間後、2時間後に再度採血し血糖値の変動を追跡
この検査で重要となるのが、ブドウ糖を飲んでから2時間後の血糖値です。以下の基準値によって評価されます。(※1)
| 状態 | 2時間後の血糖値(mg/dL) |
| 正常型 | 140未満 |
| 境界型(糖尿病予備群) | 140~199 |
| 糖尿病型 | 200以上 |
③HbA1c(ヘモグロビンA1c)|過去1〜2か月の平均血糖値を確認できる
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、過去1〜2か月間の平均的な血糖状態を確認できる検査です。血糖値は食事や運動によって常に変動しますが、HbA1cは食事の影響を受けにくく、長期的な血糖コントロールの状態を知るのに役立ちます。
赤血球には酸素を運ぶ「ヘモグロビン」が含まれています。血液中のヘモグロビンに糖が結合することでHbA1cが生じるため、値が高いほど血糖が高い状態が続いていることを意味します。
HbA1cは、健常範囲や糖尿病診断の目安として以下の基準値で用いられます。(※1)
正常値:5.6%未満
5.6~6.4%:糖尿病予備群(境界型)
6.5%以上:糖尿病型
| 状態 | HbA1c(%) | 判定・目標 |
| 正常値の目安 | 6.0~6.4 | 健常範囲 |
| 糖尿病型 | 6.5以上 | 糖尿病と診断される可能性 |
HbA1cを良好に保つことは、血糖値を下げるだけでなく、全身の炎症を防ぐ意味もあります。高血糖が続くと体内で慢性的な炎症が起こり、血管を傷つけて心筋梗塞や脳梗塞などの合併症につながると考えられています。
近年の研究では、一部の糖尿病治療薬が血糖を下げると同時に、この炎症を抑えて心臓や腎臓を守る作用を持つことも報告されています。(※3)定期的にHbA1cを確認し、安定した血糖管理を心がけましょう。
腎保護の根拠:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2024816?utm_source=chatgpt.com
検査結果でわかる血糖値の状態
糖尿病に関連する検査結果は、血糖値の状態に応じて「①正常型」「②境界型(糖尿病予備群)」「③糖尿病型」の3つに分類されます。
自分がどの段階にあるかを知ることは、将来の健康リスクを早期に把握し、適切な対策をとるために重要です。それぞれの状態の特徴と対処法を解説します。
①正常型|血糖値が安定している状態
「正常型」とは、血糖値が安定しており、糖をエネルギーに変えるインスリンが適切に働いている状態を指します。現時点で糖尿病の心配は少ないものの、生活習慣の乱れによって将来的に血糖値が上昇する可能性はあります。
主な基準値は以下のとおりです。(※1)
| 検査項目 | 基準値 |
| 早朝空腹時血糖値 | 110mg/dL未満 |
| 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値 | 140mg/dL未満 |
| HbA1c(ヘモグロビンA1c) | 5.6%未満 |
血糖値が正常でも、油断は禁物です。高血糖は動脈硬化を進める原因となり、将来的な心疾患や脳血管障害のリスクにつながります。バランスの良い食事や適度な運動、体重管理、定期的な健康診断を続けることが、健やかな体を守る方法です。
②境界型(糖尿病予備群)|生活習慣の改善が必要
「境界型」は、放置すれば数年のうちに糖尿病へ進行する可能性が高く、体からの警告サインと受け止める必要があります。インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」や、分泌量の低下が始まっており、自覚症状がなくても血管への負担は生じています。
境界型の主な基準値は以下のとおりです。
- 早朝空腹時血糖値 110mg/dL以上 126mg/dL未満
- 75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)2時間値 140mg/dL以上 200mg/dL未満
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー) 5.6%以上 6.5%未満
境界型は生活習慣を整えることで、正常な血糖状態に戻れる可能性があります。まずは糖質の多いお菓子や甘い飲み物を控え、野菜から食べ始める「ベジファースト」を意識しましょう。
食事はよく噛んでゆっくり食べることが大切です。1日30分ほどのウォーキングなどを習慣化し、定期的に血糖値をチェックすることで、糖尿病への進行を防ぐことができます。
③糖尿病型|医師の診断と治療が必要
「糖尿病型」は、血糖値が慢性的に高い状態が続いており、医学的に糖尿病と診断される段階です。糖尿病型を放置すると、高血糖が全身の血管をじわじわと傷つけ、さまざまな合併症を引き起こす危険性が高まります。
以下のいずれかに当てはまる場合、糖尿病型と判断されます。
- 早朝空腹時血糖値 126mg/dL以上
- 75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)2時間値 200mg/dL以上
- 随時血糖値(食事時間に関係なく測定) 200mg/dL以上
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー) 6.5%以上
診断は一度の検査だけでなく、再検査やHbA1cとの組み合わせで総合的に行われます。
糖尿病の三大合併症は、網膜症・腎症・神経障害です。インスリン抵抗性が強い人ほど腎臓の機能低下を起こす「慢性腎臓病」のリスクが高まることが報告されています。(※2)
合併症を防ぐためには、早期の治療開始が重要です。食事や運動療法を基本に、必要に応じて薬を併用し、血糖値を安定させることが目標となります。適切な治療を継続することで、日常生活に支障が出にくくなる場合があります。
糖尿病と診断された場合の治療ステップ
糖尿病の治療は、目の前の血糖値を下げることが目的ではありません。血糖値を適正にコントロールすることで遠い将来に発症するかもしれない合併症を未然に防ぎ、健康な生活を長く続けることが目標です。治療は大きく分けて、以下の3つのステップで構成されます。
- 1. 食事療法と運動療法で生活習慣を改善する
- 2. 薬物療法で血糖値をコントロールする
- 3. 定期検査で合併症を早期発見・予防する
食事療法と運動療法で生活習慣を改善する
糖尿病治療の基本は、食事療法と運動療法です。薬を使うようになっても、これらを続けることが血糖コントロールの基礎になります。糖尿病は生活習慣と深く関係しているため、毎日の積み重ねこそが改善の鍵です。食事では、次の点を意識しましょう。
- 主食・主菜・副菜をそろえたバランスの良い食事
- 野菜など食物繊維の多い食品を最初に食べる
- ゆっくり噛んで食べ過ぎを防ぐ
- 自分に合ったエネルギー量を守る
必要なカロリーは体格や活動量によって異なるため、医師や管理栄養士に相談して目安を確認します。運動を習慣化することが大切であり、ウォーキングなどの有酸素運動を週150分を目安に行うと効果が期待できます。
食後30分〜1時間の運動は、血糖値の上昇の抑制につながる可能性があります。心臓などに持病がある方は、医師と相談したうえで無理なく取り組みましょう。
薬物療法で血糖値をコントロールする
食事療法と運動療法を続けても血糖値が十分に下がらない場合は、薬物療法を行います。薬は生活習慣の改善を支えるものであり、血糖値を安定させて合併症の進行を防ぐ目的で使用されます。
糖尿病の薬には「飲み薬」と「注射薬」の2種類があり、それぞれの特徴を以下の表でまとめています。
| 種類 | 主な働き | 特徴 |
| 飲み薬(経口血糖降下薬) | ・インスリンの分泌を促す ・効きを良くする ・糖の吸収を緩やかにする ・尿から糖を排出する | 血糖値の変動や体の状態に合わせ、複数の薬から適したものを選択 |
| 注射薬(インスリン製剤・GLP-1受容体作動薬) | ・不足したインスリンを補う ・血糖値に応じて分泌を助ける | 飲み薬で血糖値が安定しない場合や、インスリンの分泌が低下しているときに使用 |
近年は、血糖を下げるだけでなく、心臓や腎臓などを守ることを目的とした薬も登場しています。SGLT2阻害薬には、体内の「慢性的な炎症」を抑える働きがある可能性が報告されています。(※3)
この炎症は血管を傷つけ、動脈硬化や臓器障害を進める要因になるため、炎症を抑えることが心臓の保護につながると考えられています。薬を安全に使うためにも、自己判断で中断や変更をせず、医師や薬剤師に相談しましょう。
定期検査で合併症を早期発見・予防する
糖尿病治療で重要なのは、血糖値を安定させ、合併症を早期に発見・予防することです。高血糖が続くと全身の血管が傷つき、目や腎臓、神経、心臓、脳などに深刻な障害を引き起こします。合併症は自覚症状が出にくいため、定期的な検査が欠かせません。
糖尿病による主な合併症と特徴を以下の表にまとめています。
| 合併症 | 主な影響 | 検査・予防ポイント |
| 網膜症(目) | 進行すると失明の危険 | 定期的な眼底検査を受ける |
| 腎症(腎臓) | 悪化で人工透析が必要 | 尿検査で早期発見 |
| 神経障害 | 手足のしびれや痛み | 血糖コントロールを継続する |
| 動脈硬化(大血管) | 心筋梗塞や脳梗塞を誘発 | 定期的な血圧・脂質の管理 |
妊娠を考えている方では、血糖コントロールが胎児の心臓機能に影響する可能性が示されています。(※4)合併症が進行する前に定期検査を受け、体の変化を早めに把握することが健康を守る第一歩です。
まとめ
健康診断で示される血糖値やHbA1cの数値は、自覚症状のない糖尿病のリスクを知らせる体からの大切なサインです。なかでも境界型(糖尿病予備群)は、生活習慣を見直すことで、将来の糖尿病を防げる可能性があります。
糖尿病と診断された場合は、早めに食事や運動などの生活習慣を改善しましょう。必要に応じて薬を取り入れることで、合併症の発症を抑え、健やかな生活を続けることができます。
まずはご自身の検査結果を改めて確認し、少しでも気になる点があれば、放置せずに医療機関へ相談してみてください。
参考文献
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
- Li X, Wang Y. “Associations of the TyG index with albuminuria and chronic kidney disease in patients with type 2 diabetes.” PloS one 19, no. 10 (2024): e0312374.
- Dihoum A, Brown AJ, McCrimmon RJ, Lang CC, Mordi IR. “Dapagliflozin, inflammation and left ventricular remodelling in patients with type 2 diabetes and left ventricular hypertrophy.” BMC cardiovascular disorders 24, no. 1 (2024): 356.
- Skovsgaard CB, Møller A, Bjerre JV, Kampmann U, Kyng KJ. “Diabetes in pregnancy and offspring cardiac function: a systematic review and meta-analysis.” Frontiers in pediatrics 12, no. (2024): 1404625.
この記事を監修した医師
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医療法人社団 日敏会
浜野長嶋内科 理事長・院長長嶋 理晴
平成23年に先代である父の跡を継ぎ院長に就任。専門は糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病。
「薬の処方だけでなく、患者さんが病気と前向きに向き合えるサポート」を信条とし、分かりやすい説明と話しやすい環境づくりに尽力し、地域に根ざした医療を提供。