糖尿病と診断されたとき、「もう治らないのだろうか」と不安な気持ちになっていませんか。現在の医学で糖尿病の完治は難しいですが、適切な治療と生活習慣の見直しによって、薬が不要になる状態を目指すことは可能です。
この記事では、糖尿病の主な治療法から自宅でできる対処法までを詳しく解説します。健康を取り戻せるよう、糖尿病と上手に付き合うための知識を身につけましょう。
糖尿病は自然に治る?
糖尿病は自然に治ることはありません。生活習慣の改善や薬物療法を行なっても、症状がほとんどなくなることはありますが、完治することも困難です。糖尿病治療に関して、以下の4つの基本的な知識を詳しく解説します。
- ① 糖尿病が治らない理由
- ② 完治・寛解・改善の違い
- ③ 寛解・改善しやすい人の共通点
- ④ 糖尿病の治療目標
①糖尿病が治らない理由
糖尿病が治らないのは、治療により血糖値などが改善しても、病気の原因がなくなった状態(完治)にならないためです。
糖尿病は、血糖値をコントロールするホルモン(インスリン)が十分に分泌されなかったり、インスリンが効きにくかったりする病気です。インスリンを分泌するすい臓の細胞を壊す病気や、生活習慣の乱れによって発症します。
薬の服用と生活習慣の改善によって、血糖値が正常に戻り、病気が治ったようにみえることがあります。しかし、元の生活に戻ると再び症状が現れるので、医学的には糖尿病が治ったといえません。症状が消失し、病気が治ったようにみえる状態を寛解と呼びます。
②完治・寛解・改善の違い
糖尿病は治療によって寛解・改善することはあっても、完治しない病気です。それぞれの言葉の意味の違いを以下の表にまとめました。
| 用語 | 状態 |
| 完治 | ・病気が完全に治り治療の必要がない状態 ・再発の心配もない |
| 寛解 | ・薬物療法なしで血糖値が正常範囲内にコントロールされている状態 ・生活習慣が乱れると再発する可能性がある |
| 改善 | ・治療によって、血糖値が良好になっている状態 ・寛解と同じく再発のリスクがある |
糖尿病の治療を受ける際は、医師が使うそれぞれの言葉の定義を理解しておくことが大切です。
③寛解・改善しやすい人の共通点
糖尿病が寛解・改善しやすい方の共通の傾向として、以下の項目が挙げられます。
- 早い段階で病気を発見し治療を始めた
- 肥満体型の人が体重管理に成功した
- 食生活や運動習慣を大幅に改善した
- 合併症予防に対する意識が高かった
糖尿病の原因となった生活習慣の乱れを大きく改善できた人ほど、糖尿病が寛解・改善しやすくなることがわかるでしょう。海外の研究でも、糖尿病発症後、1年間で体重を10%以上減らした人は寛解の確率が高い結果が報告されています。(※1)
糖尿病と診断された場合は、生活習慣を大きく改善する意識を持ってください。
④糖尿病の治療目標
糖尿病治療の目標は、完治ではなく寛解です。血糖値を正常に戻し、神経障害・網膜症などの合併症や生活の質(QOL)の低下を防ぐことを目指します。合併症やQOLの低下がなければ、健康寿命(日常生活が制限されることなく生活できる期間)も長くなるでしょう。
糖尿病診断ガイドライン2024によると、合併症を防ぐための一般的な基準は、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値が7.0%未満とされています。(※2)ただし、年齢やほかの病気の有無、使用している薬剤などによって、一人ひとり目標値は異なります。
糖尿病の改善を目指すためのポイント4つ
糖尿病の改善を目指すためのポイントとして、以下の4つを詳しくお伝えします。
- ① 定期的な血糖値のチェック
- ② 食事療法
- ③ 運動療法
- ④ 薬物療法
①定期的な血糖値のチェック
糖尿病を改善するには、定期的に血液検査を受け、体の変化を確認することが大切です。血糖値は多少高くても症状として現れず、自覚できないためです。
血液検査では、血糖値だけでなくHbA1cの値も確認します。HbA1cは過去1〜2か月の血糖値の平均を示し、一時的な血糖値の変動に左右されないため、自身の状態を把握するうえで適した指標です。合併症予防には、HbA1cを7.0%未満に抑えることが大切です。(※2)
定期的に血糖値やHbA1cの値をチェックすることで、糖尿病の悪化や合併症の発症を早期に発見できるでしょう。自宅でも簡易的に血糖値を測定できるので、日々の食事や活動による変動を記録しておくことも重要です。
②食事療法
食事療法は、糖尿病治療の重要な柱です。良い薬を使っても、食生活が乱れていては十分な効果は得られません。食生活を改善することで血糖値の急激な上昇を抑え、安定した状態を保つことが食事療法の目標です。
食事療法のポイントを表にまとめました。
| 項目 | 方法 |
| 糖質の量と質を意識する | ・ジュースやお菓子を控えめにする ・ご飯やパンなどの主食は、抜くのではなく適量を守る ・食物繊維が豊富な低GI食品(玄米・雑穀米・全粒粉パンなど)を選ぶ |
| 食べる順番を工夫する | ・最初は野菜・きのこ類(食物繊維)を食べる ・野菜・きのこ類のあとに肉・魚(たんぱく質)を食べる ・最後にご飯・パン(炭水化物)を食べる |
| バランスの良い食事を心がける | 主食(エネルギー源)・主菜(体を作る)・副菜(体の調子を整える)を基本とし、栄養バランスを整える |
| 規則正しい食生活 | ・1日3食をなるべく決まった時間に、腹八分目を意識して食べる ・満腹感が得られるよう、よく噛んでゆっくり食べる |
食事療法は独学ではなく、医療機関で指導を受けることをおすすめします。個々の生活スタイルや好みに応じて、適した食事の仕方を提案してもらえるでしょう。
③運動療法
食事療法と並行して適度な運動を取り入れることで、血糖値を下げられ、糖尿病の治療効果が高まります。(※3)おすすめの運動は、以下のとおりです。
- 有酸素運動 ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳
- 筋トレ スクワットやダンベル体操、腕立て伏せ、腹筋
有酸素運動は、血液中のブドウ糖をエネルギーとして消費するため、血糖値の上昇を直接的に抑えられます。厚生労働省のe-ヘルスネットによると、週に150分間以上の運動を行うか、週3回以上の全身を使った有酸素運動が推奨されています。
筋トレにより筋肉量が増えると、基礎代謝が上がり、インスリンが効きやすい体質への変化が可能です。血糖値が上がりにくくなるため、有酸素運動と並行して取り入れましょう。連続しない日程で週に2〜3回の実施がおすすめの頻度です。
ただし、血糖値の状態や合併症の有無によっては、運動が制限されたり、避けるべき運動があったりします。運動療法を始める前には、必ず主治医に相談し、ご自身に適した運動の種類や強度を確認してください。
④薬物療法
食事療法や運動療法を十分に行なっても血糖値のコントロールが難しい場合、薬物療法を組み合わせて治療を進めます。薬は、あくまで食事や運動の効果を補い、目標達成をサポートするためのものです。生活習慣の改善と薬物療法を両輪で進めていくことが重要です。
糖尿病の初期段階では、薬の力を借りて一時的にすい臓を休ませることで、すい臓の機能回復が期待できる場合もあります。その結果、血糖値が安定し、将来的に薬の量を減らしたり、不要になったりする可能性も十分にあります。
最近では、血糖値を下げるだけでなく、体重減少効果が期待できるGLP-1受容体作動薬なども広く使われるようになりました。しかし、GLP-1受容体作動薬は、脂肪だけでなく筋肉などの除脂肪体重も一緒に減ってしまいます。(※4)
筋肉量が減ると基礎代謝が低下し、長期的に見て身体機能に影響を及ぼす可能性も考えられるため注意してください。治療方針は、主治医とよく相談したうえで決定することが大切です。
糖尿病に関するよくある質問
糖尿病に関するよくある質問として、以下の5つに回答します。
- ① 糖尿病はどのような検査で調べられる?
- ② 糖尿病の薬は一生続けなければならない?
- ③ 糖尿病の薬にはどんな種類がある?
- ④ 治療を始めてから寛解するまでの期間は?
- ⑤ 糖尿病を完治できる治療法は今後出てくる?
①糖尿病はどのような検査で調べられる?
糖尿病の検査をする際は、主に血液検査と尿検査が行われます。代表的な検査項目は、以下の表のとおりです。
| 検査の種類 | 内容・目的 | 基準値の目安(※2) |
| 空腹時血糖値 | 10時間以上食事をしていない状態での血糖値であり、すい臓の基礎的な力を評価する | ・正常型:110mg/dL未満 ・境界型:110〜125mg/dL ・糖尿病型:126mg/dL以上 |
| HbA1c | 過去1〜2か月間の血糖値の平均を反映した値 | 6.5%以上で糖尿病が強く疑われる |
| 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT) | ・ブドウ糖液を飲んだあとの血糖値の変化を調べ、糖を処理する能力を評価する ・空腹時血糖値では見つからない食後高血糖を発見できる | 2時間後の値が以下のとおり ・正常型:140mg/dL未満 ・境界型:140〜200mg/dL ・糖尿病型:200mg/dL以上 |
| 尿検査 | 尿の中に糖(尿糖)や、腎臓のダメージを示すタンパク質(アルブミン)が出ていないか調べる | 尿糖が陽性判定 |
これらの検査は、一度の結果だけで診断が確定するわけではありません。症状の有無や再検査の結果などをあわせて、慎重に診断されます。
血糖値が高い状態は自覚症状がないことも多いため、定期的に検査を受けてご自身の体の状態を正確に把握することが、治療の第一歩です。
②糖尿病の薬は一生続けなければならない?
糖尿病の薬は多くの場合で一生続けなければなりませんが、生活習慣を見直すことでやめられる患者さんもいます。治療によりすい臓の機能が回復し、薬を中止しても血糖値が正常値の範囲内であれば、薬は不要です。
ただし、糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本であり、薬はあくまでその手助けをすることが役割です。自己判断で薬をやめてしまうと、血糖値が再び悪化し、静かに血管へのダメージが進行してしまう危険性があります。
薬を減らしたり、やめたりできるかどうかは、必ず主治医と相談しながら慎重に判断しましょう。
③糖尿病の薬にはどんな種類がある?
糖尿病の薬には、飲み薬(経口血糖降下薬)と注射薬の2つがあります。それぞれの薬の役割は以下のとおりです。
| 薬の種類 | 役割 |
| 飲み薬 | ・インスリンの分泌を促す ・インスリンの効きを良くする ・糖の吸収を遅らせる ・尿から糖を排出する |
| 注射薬 | ・インスリン製剤:不足しているインスリンを直接体内に補う ・GLP-1受容体作動薬:血糖値が高いときにインスリンの分泌を促す |
ご自身の体の状態に合う種類を選択したり、複数を組み合わせたりすることで、より上手に血糖値をコントロールすることが可能です。
④治療を始めてから寛解するまでの期間は?
治療を始めてから寛解に至るまでの期間は、発見されたときの状態や治療への取り組みによって大きく異なります。早い方であれば、生活習慣の改善を始めて数か月〜1年ほどで血糖値に良い変化が見られます。
すぐに結果が出なくても、焦らず根気強く治療を続けることが大切です。食事や運動の習慣を続けることで、体は着実に良い方向へ向かっていきます。体重やHbA1cの数値に少しでも変化が見られれば、治療継続の大きな励みになるでしょう。
⑤糖尿病を完治できる治療法は今後出てくる?
自分の免疫がすい臓のβ細胞を壊してしまうことで発症する1型糖尿病の治療研究は、世界中で進められています。現在のインスリン治療は、生存に不可欠な対症療法であり、病気そのものは治せません。
しかし、すい臓の機能を取り戻すことを目指した、以下のような先進的な研究が進められています。
| 研究名 | 内容 |
| 再生医療 | iPS細胞(人工多能性幹細胞)からインスリンを作り出すβ細胞を作り出し、患者に移植する(※5) |
| バイオ人工膵島移植 | 医療用に管理されたブタのすい臓から取り出したインスリンを出す細胞の集まりを移植する(※6) |
| オミックス解析 | 遺伝子やタンパク質などを網羅的に解析し、病気の根本的な原因やメカニズムを解明する(7) |
これらの先進的な治療法が実用化されるまでには時間が必要ですが、将来的には糖尿病治療を大きく変える可能性を秘めています。
まとめ
糖尿病は一度発症すると完治はしませんが、食事や運動といった生活習慣を継続的に見直すことで寛解できる可能性があります。血糖値を良好にコントロールし、薬なしでも改善を目指すことは十分に可能です。
糖尿病を治療するうえで大切なことは、合併症を予防し、健康な生活を送ることです。糖尿病と診断されたら一人で抱え込まず、まずは主治医とよく相談し、食事療法や運動療法を中心に治療を始めましょう。
参考文献
- Wu H, Yang A, Lau ESH, Zhang X, Fan B, Ma RCW, Kong APS, Chow E, So WY, Chan JCN, Luk AOY.1-year weight change after diabetes diagnosis and long-term incidence and sustainability of remission of type 2 diabetes in real-world settings in Hong Kong: An observational cohort study.PLOS Medicine,2024,21,1,e1004327.
- 一般社団法人 日本糖尿病学会:「糖尿病診療ガイドライン2024」
- Zhang Y, Yang Y, Huang Q, Zhang Q, Li M, Wu Y.The effectiveness of lifestyle interventions for diabetes remission on patients with type 2 diabetes mellitus: A systematic review and meta-analysis.Worldviews on Evidence-Based Nursing,2023,20(1),64-78.
- Ceasovschih A, Asaftei A, Lupo MG, Kotlyarov S, Bartušková H, Balta A, Sorodoc V, Sorodoc L, Banach M.Glucagon-like peptide-1 receptor agonists and muscle mass effects.Pharmacological Research,2025,220,107927.
- Migliorini A, Nostro MC, Sneddon JB.Human pluripotent stem cell-derived insulin-producing cells: A regenerative medicine perspective.Cell Metab,2021,33(4),p.721-731.
- Kim BJ, Shin JS, Min BH, Kim JM, Park CG, Kang HJ, Hwang ES, Lee WW, Kim JS, Kim HJ, Kwon I, Kim JS, Kim GS, Moon J, Shin DY, Cho B, Yang HM, Kim SJ, Kim KW.Clinical Trial Protocol for Porcine Islet Xenotransplantation in South Korea.Diabetes Metab J,2024,48(6),1160-1168.
この記事を監修した医師
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医療法人社団 日敏会
浜野長嶋内科 理事長・院長長嶋 理晴
平成23年に先代である父の跡を継ぎ院長に就任。専門は糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病。
「薬の処方だけでなく、患者さんが病気と前向きに向き合えるサポート」を信条とし、分かりやすい説明と話しやすい環境づくりに尽力し、地域に根ざした医療を提供。