「親知らずは抜くのが当たり前」と思っていませんか?親知らずは治療しなくても良い場合があり、抜いてから後悔することは避けたいですよね。
この記事では「抜くべき親知らず」と「抜かずに残すべき親知らず」の明確な判断基準を解説します。
ご自身の親知らずは抜くか残すか、後悔しないために正しい知識を身につけ、最適な選択をしましょう。
目次
親知らずは必ず抜く必要はない?
親知らずは口の中で問題を起こさなければ、抜かずに残すことが可能です。日本歯科医師会の公式HPでも、必ずしも抜歯する必要はなく、場合によっては残しておいた方がよいとされています。(※1)
歯科医院ではレントゲン撮影やCT検査により、親知らずの位置・生え方・周囲の状態など詳細に診断できます。診断結果で即時抜歯が不要でも、将来の虫歯、歯周病、周囲組織の炎症などのリスクがあります。
一度診察しただけで安心せず、定期的に歯科検診を受けましょう。
親知らずを抜かなきゃよかったと後悔する4つの理由
ここでは、抜歯後に後悔する理由としてよく挙げられる4つのトラブルについて、原因と対処法を詳しく解説します。
①痛みや腫れ
②神経麻痺
③ドライソケット
④抜歯後の口臭
①痛みや腫れ
親知らずは歯を抜く際に歯ぐきを切ったり、あごの骨を削ったりするため、多くの人が痛みや腫れを感じます。下の親知らずは、あごの骨が硬く厚いため抜歯が難しくなりがちで、上の親知らずより症状が強く出ることがあります。
痛みは抜歯当日から翌日にかけてがピークとなり、そのあとは徐々に和らぎますが、痛みが強い場合は痛み止めを使用しましょう。
腫れのピークは抜歯後2~3日目になることが多く、1週間ほどで少しずつ引いていきます。
②神経麻痺
下の親知らずを抜いたときに、まれに神経麻痺が起こる可能性があります。
親知らずの根のすぐ近くには、下顎管(かがくかん)という太い神経や血管が通っています。下顎管には下唇やあごの皮膚の感覚をコントロールする役割があり、傷つけると神経麻痺が起こる可能性があるため注意が必要です。
| 麻痺が起こる可能性のある部位 | 主な症状 |
| 下唇、あごの皮膚 | ・触っても感覚が鈍い ・ピリピリとしびれる |
| 舌 | ・味覚が分かりにくくなる ・感覚が鈍くなる |
多くの場合、神経麻痺の症状は数週間〜数ヶ月で自然に回復に向かいます。しかし、ごくまれに症状が長く残ってしまうことも可能性もゼロではありません。
③ドライソケット
ドライソケットとは、抜歯した穴をふさぐはずのかさぶた(血餅)がうまくできなかったり、取れてしまったりすることです。血餅(けっぺい)は傷口を保護し、治りを助ける大切な役割があるため、正常に作られないと強い痛みが続きやすくなります。
血餅が剥がれると、あごの骨がむき出しになり、細菌に感染すると強い痛みを引き起こします。ドライソケットは、強いうがいで血餅が流れたり、喫煙による血行不良などが原因で起こりやすくなります。抜歯が困難で骨へのダメージが大きい場合は、血餅ができにくく注意が必要です。
強い痛みが続く場合は、我慢せずに必ず歯科医院を受診しましょう。
④抜歯後の口臭
親知らずを抜いたあと、一時的に口臭が気になることがあります。口臭は傷口が治っていく過程で起こりやすい現象です。
口臭の原因は、抜歯したあとの穴に食べかすが溜まり、細菌が分解するときに臭いが発生するためです。口臭が気になるときは、歯磨きを丁寧にし、口の中を清潔に保ちましょう。
口臭は、歯ぐきが盛り上がってきて穴がふさがるにつれて改善します。
目安としては、1~2週間ほどで自然に気にならなくなることがほとんどです。強い痛みとともに膿のような臭いが続く場合は、傷口が感染している可能性もあるため、早めに歯科医院へ相談してください。
親知らずを抜く判断基準
親知らずは、レントゲン撮影などを使い、生え方や周囲の歯との関係、将来のリスクを判断します。そのうえで抜歯すべきか、経過を観察するかを慎重に判断していくのです。
ここでは「①抜かなくても良い親知らず」「②抜いたほうが良い親知らず」の判断基準となるポイントを解説します。
①抜かなくても良い親知らず
親知らずが口の中で問題を起こしておらず、将来的なリスクも低い以下のケースでは、無理に抜歯をする必要はありません。
- まっすぐきれいに生えている
- 歯磨きが問題なくできる
- 周囲の歯や組織に悪影響がない
- 骨の中に完全に埋まっている
口の中の環境は年齢とともに変化するため、歯科医院での定期的なチェックを続けることが大切です。
②抜いた方が良い親知らず
たとえ今は痛みがなくても、将来トラブルの原因になることが予測される場合は、抜歯する可能性があります。親知らずが以下のような状態は、抜歯を検討し、歯科医師に相談してください。
- 虫歯や歯周病になっている
- 横向きや斜めに生えている
- 歯ぐきの炎症(智歯周囲炎)を繰り返す
- 歯並び全体に悪影響を与えている
最終的には、患者さんの健康状態なども考慮して判断します。親知らずがどの状態に当てはまるか、歯科医院で確認してもらいましょう。
親知らずを抜いて後悔しない方法
親知らずの抜歯で「抜かなければよかった」と後悔しないためには、治療前の準備が重要です。後悔しないために、意識したいポイントは以下のとおりです。
- 信頼できる歯科医師・歯科医院を選ぶ
- 治療内容を十分に理解する
- 抜歯後の症状を和らげる選択肢を知る
- 万全の体調で治療に臨む
親知らずの治療は、経験が豊富でレントゲンやCT撮影など、設備が整っている歯科医院に相談しましょう。CT撮影で歯と神経の位置関係を立体的に把握でき、神経麻痺のリスクを最小限に抑えられます。
抜歯に伴うリスクを事前に確認し、わからないことや不安な点は解消してから治療を受けるようにしましょう。
親知らずを抜くときに注意すること
親知らずの治療後、回復を順調に進めるためには抜歯前の過ごし方がとても大切になります。痛みや腫れを最小限に抑えるためにも、前日はしっかりと睡眠をとり、体調を整えましょう。
他の病気などで常服薬がある場合は歯科医師に伝えてください。薬に血が止まりにくい作用があると、抜歯後に影響が出る可能性もあるため注意が必要です。
抜歯後に気をつけること
抜歯後のトラブルを防ぎ、傷の治りを助けるために気をつける点があります。
抜歯当日は飲酒や激しい運動、長時間の入浴は避けましょう。血の巡りが良くなると、痛みが増したり血が止まりにくくなったりします。処方された抗生物質や痛み止めは、医師の指示通りに服用してください。
抜歯後に強い痛みが続いたり、出血が止まらなかったりするなど、異常を感じた場合はすぐに歯科医院へ連絡しましょう。
親知らずの抜歯方法
親知らずの抜歯方法は歯の生え方によって大きく異なります。歯の頭が歯ぐきからしっかり出て、まっすぐ生えている場合は、他の歯を抜く処置と変わりません。
麻酔をしたあと、専用の器具を使って歯をつかみ、脱臼させて抜き取ります。処置時間は15分程度で終わることが多く、体への負担も比較的少ないです。
歯が横向きに生えていたり、骨の中に埋まっていたりする場合は、より丁寧な処置が求められる外科的抜歯で治療します。外科的抜歯は、一般的に以下の手順で進められます。
- 麻酔を打つ(局所麻酔)
- 歯ぐきを切開し、骨に埋まっている親知らずを見える状態にする
- 周囲の骨の削除や歯を小さく分割する
- 分割した歯を抜き取る
- 抜いたあとの穴をきれいに洗浄し、切開した歯ぐきを糸で縫合する
処置時間は30分〜1時間程度かかることが一般的です。
まとめ
親知らずを抜いて後悔する理由の多くは、抜歯後の痛みや腫れ、しびれ、ドライソケットなどのリスクを十分に理解しないまま治療を受けてしまう点にあります。親知らずは必ず抜く必要があるわけではなく、状態によっては経過観察が可能なケースもあります。
一方で、将来的なトラブルが予測される場合には抜歯が適切となることもあります。後悔を防ぐためには、親知らずの状態とリスクを事前に把握し、歯科医師と相談したうえで納得して判断することが大切です。
抜歯は信頼できる歯科医師のもとで治療内容を十分に理解し、後悔のない選択をすることが大切です。
参考文献
日本歯科医師会.「親知らず – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020」
この記事を監修した医師
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医療法人あかり会歯科
脇田奈々子
大阪大学歯学部卒業後、同大学予防歯科学教室にて医員として勤務。
「口元の健康と美を通じて、最後まで美味しく食べ、自信を持って笑える人生」をサポートすることを理念としている。