目次
はじめに
水虫は「痒い」だけだと思っていませんか?「痒み」は水虫の初期症状。悪化してしまうと、痛みや腫れはもちろん、切断に至ったケースもあります。日常生活のほとんどの機会で感染の可能性があり、治療にも時間のかかる水虫。どのような予防策や治療法が有効なのでしょうか?
今号では、「皮膚真菌症の診断・治療ガイドライン(2009)」の作成メンバーで、真菌症の診療マニュアルや「水虫治療・予防の7カ条」を提唱するなど関連著書の執筆に数多く携わる「お茶の水真菌アレルギー研究所」所長の比留間政太郎先生にお話を伺いました。
Q1 足の水虫が増えるのは、やはり湿度が高い時期でしょうか?
そうですね、だいたい気温が上がる5月の連休明け辺りから、夏の終わりにかけて水虫が増殖しやすくなります。
ただ、最近は、秋から冬の、本来水虫の症状が出にくい季節にも、水虫に悩んで来院される方がいらっしゃいます。特に女性は、ブーツの流行で冬でも水虫に悩む方が多いですね。家族に1人水虫の人がいれば、家族みんなに移る可能性は高い。今は、1年を通して、水虫対策に努めるべきだと思います。
Q2 水虫を持っている人は、どれくらいいるのでしょうか?
40歳を過ぎれば、3人に1人ともいわれています。非常にポピュラーな疾患であることは間違いありません。
Q3 症状は、「かゆみ」ですか?

水虫の原因は、白癬菌というカビの一種です。白癬菌に感染すると、それが皮膚の一番外側の角質層に入り込みます。その時、角質層に対して起こったアレルギー反応で、かゆみや水ぶくれが生じます。
水虫というと一番先に頭に浮かぶ「かゆみ」は、この感染し始めの頃に起こる症状。水虫の持ち主の大半が、何年も水虫を角質層に住み着かせている人ですが、その期間が長くなると、かゆみなどの症状は出てきません。皮膚がカサカサしたり、白くなったりする程度です。爪に白癬菌が住み着く「爪水虫」になると、ほとんど症状はないのです。そのため、本当は水虫があるのに、「自分は大丈夫」と思っている人が少なくありません。
Q4 水虫はどうやって広がっていきますか?
患部と患部が触れ合って、直接感染するケースはまれで、大半は、間接感染です。水虫が住む角質層がはがれ落ち、それを踏んで感染するパターンです。家の中ではお風呂のマット、タオル、スリッパ、はだしで歩いた床など、感染する可能性のある場所があちこちにあります。
Q5 水虫を予防するにはどうすればいいですか?
水虫の人がすでに家族内に居る場合、最も効果的なのは、その人の水虫の治療をすることです。治療法は後で詳しく説明しますが、かなりの時間を要することを覚悟してください。感染したばかりなら3〜6カ月、それ以上なら1〜2年はかかります。それでも治れば御の字。治らない人も少なくありません。
そこで、これ以上水虫をひどくしないための手を打ちます。とにかく、足をよく洗うことです。足の指を1本ずつ、石けんであわ立てて丁寧にやさしく洗ってください。白癬菌が付着したまま1〜2日置くと、角質層に入り込むと考えられています。酔っ払ってお風呂に入らずバタンキューというのは、水虫への感染を高める行為です。
Q6 足の水虫の治療はどういう方法がありますか?
今は、有効な塗り薬が出ていますので、それを使うといいでしょう。患部だけではなく、足全体に塗ります。タイミングは、風呂上りが一番です。薬のベタベタ感が嫌な人は、塗った後、ティッシュペーパーでふき取っても構いません。薬の成分が浸透しているので、薬の効果が失われるわけではないからです。
スイッチOTCといって、以前は病院で処方していた塗り薬が、水虫の場合、市販でも購入できます。ただし、薬を塗る期間が何カ月、何年とかかることを考えると、病院で処方してもらった方が経済的に楽です。というのも、新しいタイプの水虫薬は、市販で購入した場合、結構な金額がする上、両方の足全体に十分に塗ろうと思うと、1カ月で3本は必要です。もし、病院での処方なら、保健が適用されるので、かなり安くなります。
なお、爪の水虫の場合は、市販薬がありません。病院で処方される薬のみとなります。
Q7 水虫と間違えやすい疾患はありますか?
あります。たとえば、掌蹄膿庖症(しょうせきのうほうしょう)です。水虫は指と指の間にできやすいですが、掌蹄膿庖症はどちらかとういと、足の土踏まず、手のひらのふくらみのある部分などに季節にかかわりなく起こります。
また、あせものような小さな水ぶくれである「汗疱」、表皮が白くふやけたようになる「カンジダ性指間ビラン」など。薬の費用の問題もありますが、水虫が気になったら、最初は皮膚科で本当に水虫かどうかを確認してもらうことをお勧めします。水虫への対処を間違えたり、ひどくなるまで放っておいたために、靴が履けないほど足が腫れあがり、痛みで病院に入院する人も、毎夏数人は診ています。
Q8 水虫がある場合、病院には定期的に通わなくてはなりませんか?
糖尿病の人は、水虫に気付かなかったばかりに、足が壊疽を起こし(腐ってしまうこと)、切断に至るケースもあります。免疫力が低いので水虫の白癬菌に弱く、本来は軽い疾患である水虫が、足切断という大事を招くのです。症状がなくても、1〜2カ月に一度、1〜2年間は定期的に通院しましょう。
Q9 子供も水虫になりますか?
大人よりは可能性は低いですが、子供も水虫になります。親から子へ、と水虫が受け継がれるケースが多いです。
Q10 先生の美学を教えてください。
シンプルであることです。患者さんを診る時も、普段の生活でも、常にそれを心掛けたいと思っています。