「頭痛の強さがいつもと違う」「突然症状が出て、すぐにおさまった」その症状、くも膜下出血の危険なサインかもしれません。
くも膜下出血は、突然の強い痛みや吐き気、嘔吐といった前兆が出ることがあり、見逃すと命に関わることがあります。
この記事では、くも膜下出血の特徴的な前兆や注意すべきケース、前兆を感じたときの対処法まで詳しく解説します。命を守るために、正しい知識を身につけて行動できるようにしましょう。
くも膜下出血とは
くも膜下出血は、脳を保護するくも膜という薄い膜の下で、突然出血が起こる病気です。脳の表面で血管が破れ、血液が広がってしまう状態を指します。出血の主な原因は、脳動脈瘤の破裂によるものが多く、原因の80〜90%以上ともいわれています。(※1)
くも膜下出血は命に関わる緊急性の高い病気で、処置が遅れると命を落とす危険性があり、たとえ一命をとりとめても、重い後遺症が残ることもあります。
くも膜下出血の前兆とは?受診を検討すべき症状
くも膜下出血は発症の数時間〜数週間前に、以下のような前兆のサインが出ることがあります。
- 警告頭痛(前駆頭痛)
- 吐き気・嘔吐
- 首の痛み(頸部硬直)
- 目の奥の痛み・目の違和感
- めまい・ふらつき
ここでは、それぞれの症状について詳しく解説します。
警告頭痛(前駆頭痛)
警告頭痛は、くも膜下出血の特徴的な前兆です。警告頭痛は、破裂しかけている脳動脈瘤からごく少量の血液が漏れ出すこと(前兆出血)で起こると考えられています。
警告頭痛の特徴を以下の表にまとめました。
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
| 突然始まる |
・何の前触れもなく、衝撃的な痛みが突然始まる ・痛みのピークが一瞬でやってくる |
| 経験したことのない強さ | 「後頭部をバットで殴られたような」「人生で経験したことがない」と表現されるほどの、激しい痛みを感じる |
| いつもと違う痛み | 片頭痛や緊張型頭痛とは質も強さも違うと感じる |
警告頭痛は、数分〜数時間で自然におさまることがあります。痛みが一時的に消えても油断はできません。
吐き気・嘔吐
強い吐き気や嘔吐が起こることも、くも膜下出血のサインの一つです。出血によって頭蓋骨の中の圧力が急激に高まり、脳の中心部にある嘔吐中枢が強く刺激されることで起こります。
くも膜下出血による嘔吐は、頭痛とセットで起こることがあります。食あたりや胃腸炎のようにお腹の不調がない場合でも、突然強い吐き気や嘔吐が現れます。また、吐き気の自覚がないまま、突然噴水のように勢いよく吐いてしまう噴出性嘔吐が起こる場合があります。
首の痛み(頸部硬直)
くも膜下出血では、首の後ろに強い痛みやこわばりを感じることがあります。くも膜の下の空間に出た血液が、脳から脊髄(せきずい)を覆っている髄膜(ずいまく)を刺激することで起こります。
寝違えや筋肉痛とは違う痛みや、首が前に曲げられなくなるほどの痛みといった特徴があります。
目の奥の痛み・目の違和感
脳動脈瘤が破裂する前に大きくなり、神経を圧迫することで、目にさまざまな症状が現れることがあります。
以下のような目の異常を感じた場合は、注意が必要です。
- 目の奥の痛み:片方の目の奥がえぐられるように、ズキズキと痛む
- 物が二重に見える(複視):片方の目が正常に動かなくなり、物が二重に見えるようになる
- まぶたが下がる(眼瞼下垂):片方のまぶたが垂れ下がり、目が開きにくくなる
- 左右の瞳の大きさが違う(瞳孔不同):左右の黒目の大きさが違う
めまい・ふらつき
くも膜下出血の前兆としてめまいが現れることがあります。
めまいの特徴は2種類あり、回転性めまいでは、自分自身や天井が高速で回っているように感じる症状です。浮動性めまいでは、船に乗っているように体が揺れたり、雲の上を歩いているような感じがあります。
ときには歩行障害も見られることがあり、まっすぐに歩けなかったり、足がもつれたりします。
くも膜下出血に注意すべきケース
くも膜下出血の前兆かもしれない症状が出たとき、特に注意が必要な方がいます。たとえ症状がそれほど強くなくても、「いつもと違う」と感じたら、これからご説明するケースに当てはまらないか確認してみてください。
普段の頭痛と痛みが異なる
くも膜下出血の前兆である警告頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛とは特徴が異なります。
特に注意すべき痛みの特徴は、以下のとおりです。
- 痛みの始まり方:何の前触れもなく、突然殴られたような衝撃的な痛みで始まる
- 痛みのピーク:痛み始めてから数分以内に、痛みの強さが最大に達する
- 痛みの質:これまでに一度も経験したことがないと感じる
- 伴う症状:吐き気や嘔吐、意識がもうろうとするといった症状が伴う
普段と違うと感じたら、放置せず、すぐに医療機関を受診してください。
生活習慣が悪い
生活習慣の乱れは、くも膜下出血のリスクを高める要素の一つです。
以下の習慣がある方は、血管に常に負担がかかり、脳動脈瘤ができやすい、あるいは破裂しやすい状態になっている可能性があります。
- 高血圧の放置
- 喫煙習慣
- 過度の飲酒
- 過度なストレスや睡眠不足
特に高血圧に関しては、脳卒中や脳卒中を含めた心血管イベントの最大の危険因子であるとされています。(※2)
血縁者で発症している
両親や兄弟姉妹、お子さんといった近い血縁者に、くも膜下出血やその原因となる脳動脈瘤を発症した方がいる場合、発症リスクは一般の方よりも高くなるといわれています。(※3)
体質的に血管の壁が弱い、あるいは動脈瘤ができやすいといった遺伝的な要因が関わっている可能性があります。
くも膜下出血の前兆を感じたときの対処法
くも膜下出血は、治療開始までの時間がその後の経過を左右します。前兆を感じたときの対処法を一緒に確認していきましょう。
自己判断は危険
くも膜下出血が疑われる症状を感じたとき、様子を見たり、市販薬で痛みを抑えたりする自己判断は危険です。くも膜下出血の前兆として現れる警告頭痛は、破裂しかけた脳動脈瘤から出血が起きたサインです。
くも膜下出血は最初の出血後〜24時間以内に再出血が起こりやすく、生存や後遺症に影響を与えるといわれています。(※4)
未治療のまま放置した場合、命に関わる可能性があるため、いつもと違う症状を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
救急車を呼ぶ判断基準
以下の項目に一つでも当てはまる症状があれば、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
- 経験したことのない、突然の激しい頭痛
- 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応がおかしい
- 頭痛と同時に、吐き気や激しい嘔吐がある
- けいれんを起こした
- ろれつが回らない、うまく言葉が出てこない
- 片方の手や足に力が入らない、しびれを感じる
- めまいでまっすぐ立っていられない、歩けない
- 物が二重に見える、片方のまぶたが突然下がってきた
救急車を呼ぶか判断に迷ったときは、♯7119(救急安心センター)に連絡し、緊急度を判断してもらいましょう。
何科を受診すべき?
くも膜下出血が疑われる場合、脳神経外科に受診することをおすすめします。くも膜下出血の診断には頭部CTなどの専門的な画像検査が必要であり、診断が確定すれば緊急手術が必要になる可能性があります。
病院を受診した際は、痛みの特徴や症状、経過時間、家族歴などを、医師に正確に伝えてください。夜間・休日の場合は、当番医や救急外来がある総合病院へ連絡しましょう。
まとめ
くも膜下出血の前兆は、経験したことのない激しい頭痛や症状として現れます。生活習慣が乱れている人や血縁者にくも膜下出血を発症している人は、リスクが高い傾向にあるため、より注意が必要です。
不安な症状があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。
参考文献
- 聖マリアンナ医科大学.「くも膜下出血-聖マリアンナ医科大学脳血管内治療科」
- 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会.「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕」
- Zuurbier CCM, Bourcier R, Constant Dit Beaufils P, Redon R, Desal H, Bor ASE, Lindgren AE, Rinkel GJE, Greving JP, Ruigrok YM.Number of Affected Relatives, Age, Smoking, and Hypertension Prediction Score for Intracranial Aneurysms in Persons With a Family History for Subarachnoid Hemorrhage.Stroke,2022,53(5),1645-1650.
- Lu VM, Graffeo CS, Perry A, Carlstrom LP, Casabella AM, Wijdicks EFM, Lanzino G, Rabinstein AA.Subarachnoid hemorrhage rebleeding in the first 24 h is associated with external ventricular drain placement and higher grade on presentation: Cohort study.J Clin Neurosci,2020,81,180–185.
