「年のせいだから」「いつものことだから」と膝の痛みを我慢していませんか。膝の痛みの原因は一つではなく、変形性膝関節症から、放置すると危険な関節リウマチや感染症まで多岐にわたります。
この記事では、膝の痛みの原因として考えられる病気と対処法を解説します。症状が悪化する前に、正しい知識でご自身の膝を守り、早めに原因を知ることで適切なケアで膝の健康を保ちましょう。
膝の痛みの原因として考えられる病気
膝の痛みの原因となる病気には、加齢に伴い多くなるものから、関節リウマチや感染症まであります。代表的な病気として、以下の4つを解説します。
①変形性膝関節症
②半月板損傷
③靭帯損傷
④その他の疾患
①変形性膝関節症
変形性膝関節症は、膝の痛みを引き起こす原因として最も頻度の高い病気です。(※1)膝関節のクッションの役割を担う関節軟骨が、長年の負担や加齢、体重増加などですり減ることで発症します。骨同士が直接こすれ合い、関節に炎症が起きて痛みや腫れが現れます。
変形性膝関節症の代表的な症状は、以下のとおりです。
- 動き始めの痛み
- 階段昇降時の痛み
- 膝のこわばり
- 膝に水がたまる(関節水腫)
病状が進行すると、安静にしていても痛みが続いたり、O脚のように膝が変形したりすることもあります。
②半月板損傷
膝の痛みがある場合、半月板が損傷している可能性があります。
半月板は、膝関節の大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にある三日月形の軟骨組織です。衝撃を吸収するクッションであり、関節を安定させる重要な役割を担っています。
スポーツや事故などで膝に強い捻りの力が加わり半月板が損傷するのが、半月板損傷です。半月板は、急な方向転換やジャンプの着地などの動作で損傷しやすいです。加齢とともに半月板も脆くなるため、高齢の方は日常生活の動きでも傷つくことがあります。
半月板損傷の主な症状は、膝の屈伸時の引っかかり感や痛み、ロッキング(膝が急に動かなくなる)などです。膝が腫れたり、歩行中に膝くずれが起こったりすることもあります。
これらの症状は、日常生活に支障をきたしかねません。損傷の程度が軽ければ安静やリハビリで改善しますが、症状が続く場合は手術が検討されるでしょう。
③靭帯損傷や腱の炎症
靭帯損傷も膝が痛いときの原因の一つです。
膝関節は、骨と骨とを繋ぎとめる靭帯によって安定性が保たれています。スポーツや交通事故などで強い力が加わり、靭帯が伸びたり切れたりするのが靭帯損傷です。靭帯損傷になったときは断裂音が鳴り、激しい痛みや腫れ、膝のぐらつきなどが現れます。
ランニングやジャンプといった動作の繰り返しによる膝の使いすぎ(オーバーユース)も、痛みの原因です。腸脛靭帯炎(ランナー膝)や鵞足炎(がそくえん)などにつながり、適切なケアを行わないと痛みが慢性化することがあります。
④その他の疾患
膝の痛みは、加齢やケガだけが原因とは限らず、以下のような病気の可能性もあります。
| 病名 | 主な特徴 |
|---|---|
| 関節リウマチ | ・朝起きたときに手がこわばる ・膝だけでなく複数の関節が左右対称に腫れて痛む |
| 痛風・偽痛風 | ・関節内に尿酸などの結晶がたまり、突然激しい炎症を起こす ・足の親指の付け根や膝にも多く発症し、赤く腫れあがり激痛が走る |
| 化膿性関節炎 | ・細菌が関節内に入り込んで感染した状態 ・強い痛み、腫れ、熱感を伴い、高熱が出ることもある ・関節が破壊される危険があるため、緊急の治療が必要 |
| ベーカー嚢腫 | ・膝の裏側にある滑液包に関節液がたまり、こぶのように腫れる ・痛みがないことも多いが、圧迫感や違和感の原因になる |
| その他 | ・鵞足炎や滑液包炎 |
これらの病気の鑑別には、専門的な検査や治療が必要です。急激な腫れや激痛、発熱を伴う場合は、医療機関を受診しましょう。
すぐに受診すべき膝の症状
強い炎症が起きている、日常生活に支障をきたしているなど、すぐに受診すべき膝の症状もあります。受診を急ぐ代表的な膝の症状は、以下のとおりです。
- 安静時や夜間も痛む
- 膝が腫れて熱を持つ
- 歩行や階段昇降が困難である
安静時や夜間も痛む
動いているときだけでなく、座ったり横になったりする際にも現れる膝の痛みは、注意が必要なサインです。治療が必要な病気が隠れていることも考えられるため、すみやかに医療機関を受診しましょう。
安静時の痛みは、膝の関節内で強い炎症が起きている可能性を示しています。夜中に痛みで目が覚めてしまう、眠れないなどの症状は、使いすぎによる筋肉の疲れではありません。変形性膝関節症や関節リウマチ、痛風・偽痛風、化膿性関節炎などの場合があります。
安静にしていても続く痛みは、体からの危険信号と捉えてください。
膝が腫れて熱を持つ
すぐに受診すべき膝の痛みの症状として、腫れて熱を持つことが挙げられます。
膝が腫れている、触ってみると明らかに熱っぽいなどの症状は、関節内で強い炎症が起きている状態です。炎症が起きることで、関節液が過剰につくられたり、出血して膝が腫れあがったりします。
膝が赤みを帯びている場合は、細菌感染による化膿性関節炎の可能性もあります。化膿性関節炎になると、細菌によって関節軟骨が破壊され、後遺症が残る危険性もあるため、早めの受診が必要です。
膝に炎症が起きているかどうかは、左右の見た目の違いや感触、熱感などをチェックしましょう。
ただし、自己判断で湿布だけで済ませてしまうと、根本的な原因を見逃すことになりかねません。腫れと熱感は、関節内部の異常を知らせるサインであるため、医療機関での診断が不可欠です。
歩行や階段昇降が困難である
歩行や階段昇降が困難になり、日常生活に支障が出ている場合、症状がかなり進行しているかもしれません。変形性膝関節症や半月板・靭帯損傷などが悪化し、関節の構造に問題が生じている可能性があるため、早めに医療機関を受診しましょう。
特に注意したいのが、痛みと筋力低下の悪循環です。痛みをかばって不自然な歩き方を続けると、膝周りの筋肉が正しく使われなくなり、徐々に衰えてしまいます。膝関節を支える力が弱まるため、膝が不安定になり、さらに痛みが増すという負のスパイラルに陥ります。
また、痛いから動きたくないという気持ち(運動恐怖症)が、筋力低下を加速させてしまうこともわかっています。(※2)以下の症状がある場合は受診を検討しましょう。

- 手すりを使わないと、階段の上り下りが不安である
- 歩いている最中に、急に膝がガクッと崩れる感じがする
- 椅子から立ち上がるときに、机や手すりで身体を支える必要がある
- 信号が変わりそうで小走りしようとしても、痛みで走れない
- 膝をついたり、正座をしたり、膝の屈曲動作で痛みがでる
このような状態を放置すると、活動範囲が狭まり、筋力も低下してしまいます。早期に診断を受け、リハビリテーションなどで筋力を維持・向上させることが、今後の生活の質を保つために重要です。
膝が痛いときの病院での検査方法
膝の痛みで病院を受診すると、痛みの原因を特定するための検査が行われます。病院での主な検査方法は、以下のとおりです。
- 問診と身体診察(視診・触診)
- レントゲン検査
- 超音波検査
- MRI検査
問診と身体診察(視診・触診)
問診は、医師が診断の手がかりを得るための検査です。いつから・どこが・どんなときに痛むのか、ケガ・病気・スポーツ歴などがないかを詳細にお聞きします。
身体診察では、膝の腫れや熱っぽさ、変形の有無をみたり触ったりして確認します。膝の曲げ伸ばしなどを行うことで、可動域や安定性に問題がないかを調べることが可能です。
問診と身体診察で原因の見当をつけたうえで、レントゲン検査やMRI検査で膝の内部の状態を詳しく評価します。
レントゲン検査・超音波検査・MRI検査
レントゲン検査では、骨の変形や軟骨のすり減りなどを評価し、変形生膝関節症の進行度を判断します。
超音波検査では、半月版から内外側側副靭帯などの軟部組織の状態を主に評価します。
MRI検査は、レントゲンには映らない組織をみるための精密検査です。半月板や靭帯の損傷、軟骨の状態などを詳細に確認する目的で使用されます。
関節リウマチや痛風、細菌感染などが疑われる場合には、血液検査や、膝にたまった水を注射器で抜いて調べる関節液検査を追加することもあります。検査結果を総合的に判断し、膝の痛みの原因を特定します。
膝の痛みの治療法
膝の痛みの治療法は一つではなく、症状の程度や原因、生活スタイルに合わせて最適な方法をみつけていくことが大切です。
代表的な治療法は以下の4つです。
①関節注射
②リハビリテーション・運動療法
③手術
④再生医療
①関節注射
関節注射にはいくつかの種類があり、症状や炎症の程度に応じて使い分けられます。代表的なものとして、ヒアルロン酸注射やステロイド注射があります。
ヒアルロン酸注射は、関節の動きを滑らかにし、クッション機能を補うことで、痛みの軽減を目的とした治療です。一方、ステロイド注射は炎症を強力に抑える作用があり、痛みや腫れが強い場合に選択されることがあります。
いずれも外来で短時間に行える治療ですが、効果の持続期間には個人差があります。そのため、症状に応じて注射の種類や頻度を調整しながら治療を行います。
②リハビリテーション・運動療法
膝の痛みを改善し、再発を防ぐためには、リハビリテーションや運動療法が重要です。中でも、体重の衝撃を吸収する大腿四頭筋を鍛えることは、膝関節の安定性を高め、関節軟骨や半月板への負担を軽減するため、痛みの緩和につながります。
運動療法には、筋力トレーニングだけでなく、バランストレーニング、ストレッチ、関節の可動域を保つ運動など、さまざまな方法があります。自宅では、椅子に座って5秒間膝を伸ばす運動や、床に座って膝の下に丸めたタオルを入れ、5秒間押しつぶす運動などがおすすめです。痛みを感じない範囲で、毎日少しずつ継続することが大切です。
ただし、自己流で行うとフォームが崩れ、かえって膝を痛める可能性があります。医師や理学療法士に相談し、ご自身に合った運動内容や強度について指導を受けるようにしましょう。
③手術
筋力トレーニングや注射などの保存療法を数か月続けても痛みが改善せず、日常生活に支障が出ている場合には、手術が検討されます。
手術を行うことで、痛みが緩和され、生活の質(QOL)の向上が期待できます。膝の痛みに対する代表的な手術を以下の表にまとめました。
| 手術の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 関節鏡視下手術 | ・小さなカメラを関節内に入れ、モニターで確認しながら、傷ついた半月板や軟骨を処置する ・傷口が小さく、体への負担が少ないのが利点 |
| 高位脛骨骨切り術 | ・O脚などで膝の内側に偏った体重のかかり方をすねの骨の一部を切って矯正する ・自身の関節を温存できるため、若い方に適している |
| 靭帯再建術 | ・損傷した靭帯を、自身の腱や人工靭帯を用いて再建する手術 ・前十字靭帯、内側膝蓋大腿靭帯、内側側副靭帯などが対象となる ・膝の不安定性を改善し、スポーツや日常動作の安定性向上が期待できる |
| 人工膝関節置換術 | ・傷んでしまった関節の表面を削り、金属やポリエチレンなどでできた人工物に置き換える ・除痛効果が高い |
近年では、痛みの原因となる異常な血管をカテーテルで詰める膝動脈塞栓術といった治療法も研究されています。(※4)どの手術が最適かは、年齢や活動量、膝の状態によって異なるので、医師と相談しながら決めましょう。
④再生医療
膝の痛みに対する治療法として、再生医療も注目を集めています。
再生医療は、患者さん自身の血液や脂肪などを使い、体本来の治癒力を高めることで、痛みや炎症の改善を目指す新しい治療法です。自分の体の一部を利用するため、アレルギー反応などのリスクは軽減されますが、効果には個人差があり、施術に伴う一時的な痛みや内出血が生じる可能性があります。
主な再生医療の種類は以下のとおりです。
- PRP(多血小板血漿)療法
- APS(自己タンパク質溶液)療法
- 間葉系幹細胞治療
これらの治療は日帰りで実施できることが多いですが、注射部位の痛みや腫れ、感染症などのリスク・副作用を伴う場合があります。また、健康保険が適用されない自由診療のため、治療費は全額自己負担となります。
PRP療法で約3〜20万円/回、APS(自己タンパク質溶液)療法で約30万円/回、間葉系幹細胞治療で約100〜300万円/回です。
まとめ
「安静にしていても痛む」「腫れて熱を持つ」などの膝の症状は、放置すると悪化し、治療が長引く可能性もあります。
膝の痛みの原因を特定するには、整形外科などの専門医に相談することが大切です。ヒアルロン酸注射や筋力トレーニング、再生医療など、患者さんごとに最適な治療法を提案してもらえる可能性があります。
膝のつらい痛みに悩まされている方は、近くの整形外科を受診してください。
参考文献
- World Health Organization:「Osteoarthritis」.
- Nunes GS, Pellenz MM, Piussi JB, Wageck B, Signori LU, Solner MW, Dangui AJM. “Which factors correlate with muscle strength capacity in people with patellofemoral pain? A systematic review with meta-analysis.” The Knee 60, no. (2026): 104358.
Collettini F, Fleckenstein FN, Winkler T, Wirtz DC, Perka C, Gebauer B. “Transarterial Embolization in Osteoarthritis of the Knee: Mechanism of Action and Current Results.” Deutsches Arzteblatt international, no. Forthcoming (2026): .
