立ち上がりや階段でズキッと走る膝の内側の痛みを「年のせいだろうか」と考えていませんか。その痛みは、若い方からご高齢の方まで誰にでも起こりうる、体からの病気のサインです。
この記事では、膝の内側に痛みが生じる代表的な疾患やセルフケア、治療法を解説します。あなたの痛みの原因を理解し、今後の対応を考えるきっかけにしてください。
膝の内側が痛む主な原因疾患
膝の内側の痛みは、若い方から高齢の方まで幅広い年代で起こりうる症状です。原因はさまざまあり、以下のような4つの疾患が考えられます。
①鵞足炎
②変形性膝関節症
③内側側副靭帯損傷
④半月板損傷
⑤Hunter管症候群
①鵞足炎
膝の内側から少し下で、すねの骨の上あたりが痛いと感じる場合、鵞足炎が疑われます。鵞足とは、大腿骨の内側から脛骨・腓骨に付着する3本の腱のことです。(※1)
鵞足炎は、ランニングやジャンプ、階段の昇り降りなどの膝の曲げ伸ばしにより鵞足の滑液包に炎症が起きる症状です。膝の繰り返しの使用により、滑液包に負荷がかかることで生じます。スポーツをする方や変形性膝関節症のある中高年に多くみられます。
主な症状は、運動中や運動後の痛み、患部を押したときの鋭い痛み(圧痛)、腫れ、熱感などです。初期は運動しているときにだけ痛みますが、悪化すると安静時や歩行時にも痛みが続くようになります。
②変形性膝関節症
50代以上の方で、立ち上がりや歩き始めに膝の内側が痛い場合は、変形性膝関節症の可能性が考えられます。
変形性膝関節症は、加齢や体重の増加などで膝関節のクッションである軟骨がすり減り、関節に炎症や変形が起こる病気です。(※2)主な症状には、以下のようなものがあります。
- 動作開始時の痛み
- 特定の動作での痛み
- 可動域の制限
- 関節の腫れ
変形性膝関節症が進行すると、安静にしていても痛みが取れなくなったり、O脚変形が目立つようになったりします。
③内側側副靭帯損傷
スポーツ中や転倒した際に膝を強くひねり、内側に痛み・腫れ・不安定感が出た場合は、内側側副靭帯損傷が考えられます。
内側側副靭帯は、膝の内側で大腿骨と脛骨を連結させている組織です。内側から外側へ向かう強い力が加わったときに損傷しやすく、靭帯損傷のなかでも頻度の高いスポーツ外傷の一つです。(※3)
膝内側側副靱帯損傷が起こりやすい場面には、サッカーやラグビーなどでの接触プレー、スキーでの転倒、交通事故などがあります。
発症すると、痛みや腫れ、可動域制限などが現れます。損傷の程度が重い場合は、膝がぐらぐらする、歩いていると膝が抜ける感じがするなどの不安定感を覚えることもあるでしょう。
④半月板損傷
膝の内側が痛いときは、半月板損傷に至っている可能性があります。
半月板は、大腿骨と脛骨の間にあるC型の軟骨組織です。膝への衝撃を吸収したり、関節の動きを滑らかにして安定させたりする役割を持っています。
半月板は膝の内側と外側に一つずつあり、内側の半月板を損傷すると、膝の内側に痛みが出ます。痛み以外では、膝の引っかかり感やロッキング、関節の腫れなどが主な症状です。ロッキングとは、膝の曲げ伸ばしができなくなる状態を指します。
半月板損傷の主な原因は、スポーツなどによる外傷です。ジャンプの着地やキックの動作の繰り返しなどで起こります。ただし、40歳以上の方は、健康であっても半月板の変性が進んでおり、少しの動作・ケガで損傷しやすいため注意が必要です。(※4)
⑤Hunter管症候群
Hunter管症候群は、別名「伏在神経障害」とも呼ばれ、大腿内側にあるHunter管(内転筋管)で伏在神経が圧迫・刺激されることで生じる病態です。膝の内側から下腿内側にかけて痛みやしびれ、違和感が現れ、膝関節そのものに明らかな異常がなくても、膝を曲げにくい、動かすと痛みが出るといった症状を伴うことがあります。
変形性膝関節症などの関節疾患や腰椎ヘルニアなどと誤診されやすいため、原因として神経の関与を考慮することが重要です。
膝の内側の痛みの応急処置とセルフケア
膝の内側が痛いときは、以下のような応急処置とセルフケアを行いましょう。
- 急性期は冷やす、慢性期は温めて血行を促進する
- 膝の内側に負担をかけないストレッチを行う
- サポーターやインソールで膝の内側を保護する
急性期は冷やす、慢性期は温めて血行を促進する
スポーツで膝をひねったり転んでぶつけたりした直後など、原因がはっきりしている急な内側の痛みには冷却が基本です。冷却により炎症が起きている部分の血管を収縮させ、腫れや内出血を最小限に抑えることで、鎮痛効果が期待できます。
膝が腫れて熱を持っている、ズキズキと脈打つように痛むなどの場合も急性期と考え、冷やしましょう。一般的に、受傷後48〜72時間以内の冷却が基本です。
膝を冷やす手順は、以下のとおりです。
強い腫れや熱感などの急性期症状が落ち着いてきたら(目安として受傷後数日〜1週間以降)、患部を温めて血行を促しましょう。温めることで血行が促進され、筋肉の緊張を和らげて組織の回復を助けます。朝起きたときに関節がこわばる、動かし始めが痛いなどの症状に推奨されます。
患部を温める際は、38〜40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり入浴するのが手軽な方法です。ホットパックや蒸しタオル、カイロなどで膝全体を優しく温めるのも良いでしょう。
膝の内側に負担をかけないストレッチを行う
痛みがない範囲でゆっくりと筋肉を伸ばすストレッチは、膝への負担を減らすセルフケアです。太ももの裏側や内側、前側の筋肉をほぐすことで、痛みの緩和が期待できます。
膝の痛みの原因は、膝そのものではなく、周囲の筋肉の硬さにあることが多いです。特に太ももの筋肉が硬くなると、膝関節の動きがぎこちなくなり、歩行や階段昇降のたびに内側へ過剰なストレスがかかってしまいます。
膝周辺の筋肉のストレッチ手順を以下の表にまとめたので、参考にしてください。
| 筋肉の種類 | 手順 |
|---|---|
| 太ももの裏側(ハムストリング) |
1.
椅子に浅く座り、片方の足を前にまっすぐ伸ばす
2.
かかとを床につけたまま、つま先は天井に向ける
3.
背筋を伸ばしたまま骨盤から体を前に倒し、太ももの裏を伸ばす
|
| 太ももの内側(内転筋) |
1.
あぐらをかくように座り、両足の裏を合わせる
2.
両手でつま先を持ち、背筋を伸ばす
3.
ゆっくりと両膝を床に近づけるように、股関節を開いていく
|
| 太ももの前側(大腿四頭筋) |
1.
壁や椅子に手をついて体を支え、まっすぐ立つ
2.
片方の足首を持ち、かかとをお尻にゆっくりと引き寄せる
|
サポーターやインソールで膝の内側を保護する
サポーターやインソールで膝の内側への負担を減らすことは、日常生活や運動の際の痛みへの対策です。
膝サポーターは、関節のグラつきを抑え、歩行時の安定感を高めてくれるアイテムです。装着しているという意識が働くことで、膝をかばうような無理な動きを減らす効果も期待できます。装着しているだけで、心理的な安心感にもつながるでしょう。
ドラッグストアなどでさまざまな種類が販売されていますが、締め付けが強すぎるサポーターは血行障害の原因になります。ご自身の膝周りのサイズを測り、適切な種類を選ぶことが大切です。
靴の中に入れるインソールは、体重のかかり方を補正し、膝への負担を軽減するのに役立ちます。クッション性があり、衝撃吸収の役割も持ちます。使用しても痛みが変わらない、悪化する場合は、原因がほかにある可能性が高いため、専門医の診察を受けましょう。
膝の内側が痛いときの診断方法
膝の内側が痛いときの診断の流れとして、受診の目安とレントゲン・MRI検査を解説します。
受診の目安
- 以下のような症状が一つでも当てはまる場合は、変形性膝関節症や半月板損傷などの病気かもしれません。
- 痛みが続いている、または悪化している
- 膝の内側が腫れている、熱っぽい
- 日常の動作に支障が出ている
- 膝の動きがおかしい
- 膝が不安定で力が抜ける感じがする
- じっとしていても痛む(安静時痛)
「そのうち治るだろう」と我慢せず、早めに整形外科を受診しましょう。
自己判断で様子を見ていると、痛みが長引いたり、関節への負担が増えたりすることがあります。
これからも快適な日常生活を送るために、早めに専門医へご相談ください。
レントゲン・MRI検査
整形外科では、まず医師が患者さんからお話を聞き(問診)、膝を直接触って動きや痛みの場所を確認します(触診)。そのうえで、膝の内部の状態を詳しく調べるために、必要に応じてレントゲン検査やMRI検査を行います。
レントゲン検査は、患部にX線を照射し、骨の状態を確認する方法です。骨の形や変形、軟骨のすり減り具合などを評価し、変形性膝関節症の進行度や骨折の有無を検査します。
関節軟骨の損傷や半月板・靭帯の損傷の有無、筋肉・腱の炎症の確認には、MRI検査が使われます。MRI検査は、レントゲンでは異常を発見できない場合や、スポーツ外傷の診断の際に役立つ手法です。
診察で得られた情報と画像検査の結果を総合的に分析することで、膝の内側の痛みの原因を特定します。
膝の内側が痛い場合の病院での治療法
膝の内側が痛い場合の治療法には、薬物療法と手術療法、理学療法の3種類があります。それぞれの治療法を詳しく解説します。
薬物療法
薬物療法は、薬の力を利用して膝の内側の痛みを和らげ、炎症を抑えることを目的とした治療です。症状を緩和するための対症療法ですが、痛みの軽減によりリハビリテーションなどのほかの治療にも前向きに取り組めるようになります。
薬物療法の主な種類は、内服薬・外用薬・関節内注射です。
・内服薬
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などを服用することで、痛みを和らげる効果が期待できますが、効き目には個人差があります。
また、胃腸障害などの副作用がある点には注意が必要です。
・外用薬
湿布や塗り薬など、痛みのある部分に直接貼ったり塗ったりする薬です。皮膚から成分が吸収されて局所的に作用するため、内服薬よりも全身への副作用が少ない特徴があります。
・関節内注射
関節液の成分に近いヒアルロン酸を膝関節内部に注射する方法です。関節の動きを滑らかにし、痛みを和らげる効果が期待できますが、効き目には個人差があります。強い痛みや腫れがみられる場合は、ヒアルロン酸ではなくステロイドが注射されるケースもあります。
医師が診察をおこない、患者さん一人ひとりの症状や体の状態に合わせて適切な薬を処方・使用します。
手術療法
薬物療法を数か月続けても膝の内側の痛みが改善せず、日常生活に大きな支障が出ている場合は手術療法が検討されます。
代表的な手術と特徴を、以下の表にまとめました。
| 手術の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 関節鏡下手術 | 関節鏡と呼ばれる内視鏡を膝関節に挿入し、カメラの映像を見ながらすり減った軟骨の破片や損傷した半月板を取り除く手術 |
| 高位脛骨骨切り術 | すねの骨の一部に切りこみを入れ、関節の傾きを調整することで偏った荷重負荷を矯正する手術 |
| 人工膝関節置換術 | 関節の一部もしくは全体を切除し、金属やポリエチレンなどの人工物に置き換える手術 |
症状が軽度の場合は関節鏡下手術が行われ、重度になるにつれて高位脛骨骨切り術や人工膝関節置換術が適用されます。活動性の高い若い方には、関節を温存できる関節鏡下手術や高位脛骨骨切り術が推奨されます。
それぞれの手術のメリット・デメリットはさまざまです。手術が必要な方は、専門の医師に相談しながら最適な治療法を模索することが大切です。
理学療法
膝の内側が痛む場合、病院で行われる治療法の一つに理学療法があります。理学療法では、膝そのものだけでなく、太ももや股関節まわりの筋力や柔軟性、体の使い方を評価したうえで治療が行われます。
痛みを和らげるためのストレッチや筋力トレーニング、関節の動きを改善する運動、歩き方や姿勢の指導などが中心です。これにより膝への負担を減らし、日常生活での痛みの軽減や再発予防を目指します。
まとめ
膝の内側の痛みと一言でいっても、その原因は筋肉の炎症から関節の変形、靭帯・半月板の損傷までさまざまです。原因に応じて適切な対処法も変わるため、自己判断で放置してしまうと、かえって症状を悪化させることにもなりかねません。
痛みが長引く、腫れや熱感がある、歩行に支障が出るなどの場合は、我慢せずに整形外科を受診しましょう。医療機関で検査を受けることで、適切な治療法を提案してもらえます。
参考文献
公益社団法人 日本整形外科学会:「半月[板]損傷」.
