「歩いたり椅子から立ちあがったりしたときに、突然、膝が固まって痛みが出て曲がらなくなった」という経験はありませんか。それまで動いていた膝が急に曲がらなくなると、不安になるかもしれません。
この記事では、膝が突然曲がらなくなる原因や応急処置、治療法を解説します。ご自身の膝に何が起きているのかを理解し、膝の健康を守る第一歩を踏み出しましょう。
膝が突然曲がらない主な原因
膝が曲がらない原因は、大きく2つに分けられます。関節の隙間に軟骨や骨のかけらが挟まってしまう機械的なロックと、病気によって起こる急な強い炎症による痛みと腫れが挙げられます。
代表的な病気は以下の6つです。
①半月板損傷
②変形性膝関節症
③痛風
④偽痛風
⑤前十字靭帯損傷
⑥関節リウマチ
⑦関節内遊離体
①半月板損傷
膝が突然曲げられなくなる原因の一つに半月板損傷があります。
半月板は、膝関節の中にあるC型の軟骨組織で、荷重を分散し衝撃を吸収する役割があります。損傷すると、裂けたり欠けたりした部分が関節の隙間に入り込み、膝が動かなくなるロッキングという状態を起こすことがあります。
ロッキングは、膝が特定の角度で固まってしまい、それ以上曲げたり伸ばしたりできなくなる症状です。膝が固まってしまうため、歩行中に突然動けなくなることもあります。
半月板損傷の症状には、ロッキングに加えて痛み・腫れ・熱感なども挙げられます。膝関節の隙間を押すと、痛みが出ることもあるでしょう。
半月板損傷の主な原因は、外傷性損傷と変性損傷の2つです。スポーツによる急な方向転換やひねりなどの動作で起こるのが外傷性損傷です。変性損傷は、加齢に伴い弾力感が失われた半月板が、日常生活のわずかな動作でダメージを受けることを指します。
スポーツ中に突然膝に痛みを覚えたり、40代以上の方で急に膝が曲がらなくなったりしたら、半月板が損傷しているかもしれません。
②変形性膝関節症
変形性膝関節症は、主に加齢によって膝の関節軟骨がすり減り、骨の変形が進んでいく病気です。進行すると、関節の動く範囲(可動域)が狭くなり、膝をスムーズに曲げ伸ばししにくくなります。
変形性膝関節症は、軟骨がすり減ったあとに骨棘を形成することから始まります。やがて慢性的な炎症が起こり、関節を包む袋(関節包)や周囲の組織が硬くなり、膝が曲がりにくくなることがあります。
症状が進行すると、日常生活に大きな支障をきたしかねません。大腿骨と脛骨の間の軟骨がなくなり、骨同士がぶつかると可動域の制限や激しい痛みで歩行が困難にもなります。悪化して膝の可動域が狭くならないよう、早期からの適切な管理が重要です。
③痛風
痛風は、血液中の尿酸値が高くなることで尿酸結晶が関節内に沈着し、急性の炎症を引き起こす病気です。膝関節に発症した場合、関節内に強い腫れや熱感が生じ、わずかな動きでも激痛を伴うため、膝を曲げることが困難になります。
発作は突然起こることが多く、歩行や立ち座りといった日常動作にも大きな支障をきたします。治療せずに放置すると発作を繰り返し、関節機能の低下につながるため、早期の診断と尿酸値の管理が重要です。
④偽痛風
膝が突然曲がらない場合は、偽痛風になっているかもしれません。
偽痛風は、関節の中にピロリン酸カルシウムという結晶が沈着し、炎症を引き起こす病気です。ピロリン酸カルシウムは加齢に伴い沈着がみられるようになり、60〜80歳の高齢者で多く発症します。(※1)
偽痛風はさまざまな部位で発症しますが、膝関節に発症することが最も多く、前触れなく激しい痛みと腫れが起こります。(※2)炎症が強く、痛みで膝を全く動かせなくなることが特徴です。
⑤前十字靭帯損傷
前十字靭帯損傷も、膝が突然曲がらないときに疑われる疾患の一つです。
前十字靭帯は、大腿骨と脛骨をつなぎ、膝の前後方向への安定性を保つ靭帯です。スポーツ活動中のジャンプからの着地や急な方向転換、相手選手との接触などで膝に強い力が加わった際に断裂することがあります。
前十字靭帯損傷の主な症状は以下のとおりです。
- ケガをした瞬間に「ブチッ」という断裂音を感じることがある
- 数時間以内に膝がパンパンに腫れ上がる(関節内に出血がたまるため)
- 激しい痛みで膝を動かせず、体重をかけて立つことも困難になる
- 急性期の痛みが落ち着いたあとも膝がグラグラする、不安定感が残る
数週間すると痛みが改善へと向かい、歩けるようになる傾向です。治ったと自己判断してしまう方もいますが、一度断裂した前十字靭帯が自然に元の状態へ修復することは極めて困難です。放置すると膝の不安定感が残り、半月板損傷や軟骨損傷などを引き起こし、ロッキングが生じるリスクがあります。
⑥関節リウマチ
突然膝が曲がらなくなる原因は、関節リウマチの可能性もあります。
関節リウマチは、免疫システムの異常によって、自分自身の関節にある滑膜を異物とみなして攻撃し、ひいては関節ごと破壊してしまう自己免疫疾患です。慢性的な炎症が続くと、痛みや腫れが起こり、やがて骨や軟骨が破壊されて関節が変形することで、膝の屈伸がしにくくなります。
ほかの膝の病気と異なり、関節リウマチは全身性の症状が現れることが特徴です。朝のこわばり、対称性・多発性の関節炎などの関節の症状だけでなく、微熱や全身のだるさ、食欲不振などの症状を伴うこともあります。
⑦関節内遊離体
関節内遊離体は、骨や軟骨のかけらが関節内にはがれ落ちる状態で、放置すると突然膝が曲がらなくなることがあります。骨や軟骨のかけらが関節の中をねずみのように動き回る状態から、関節ねずみとも呼ばれます。
この破片が、関節の隙間に挟まると、突然膝が固まり動けなくなることがあります。関節内遊離体の場合は、以下の経過をたどる傾向です。
- 歩行中や立ち上がる際など、何の前触れもなく突然膝が動かなくなる
- 膝を動かそうとすると、引っかかりや痛みを覚える
- 膝を少し動かしたり体勢を変えたりすると、動かせるようになることがある
骨や軟骨が剥がれる原因としては、スポーツ外傷や転倒、離断性骨軟骨炎などが挙げられます。症状が一時的に改善しても、破片が関節内に存在する限り、ロッキングを繰り返す可能性があります。膝が曲がらなくなったら、原因を特定するために医療機関を受診しましょう。
膝が突然曲がらないときの対処法

膝が突然曲がらなくなったときに自己判断で誤った対処をすると、膝関節の損傷を悪化させる恐れがあります。回復を遅らせる原因になりかねないため、以下の方法で対処しましょう。
- 無理に動かさず安静にする
- 痛みや腫れがある場合は冷やす
- 整形外科を受診する
無理に動かさず安静にする
膝が突然曲がらなくなったとき優先すべきことは、無理に動かさず安静にすることです。安静時にはクッションなどを使用し、楽な姿勢を取ることが大切です。
膝が動かないからといって、力ずくで曲げたり伸ばしたりする行為は避けましょう。痛みを感じない場合であっても、半月板損傷などによるロッキングが起こっている可能性があります。無理に膝を曲げると、半月板のダメージを悪化させかねないため注意してください。
痛みを伴う場合は、安静にするだけでなく、次に説明するアイシングなどの対策も取りましょう。
痛みや腫れがある場合は冷やす
膝が曲がらないだけでなく、関節に熱っぽさやパンパンに張った腫れ、激しい痛みがある場合、急性の炎症が起きているかもしれません。
膝に炎症反応が起きているときに推奨される対策は、患部を冷やすアイシングです。(※3)アイシングを行うことで、血管を収縮させて炎症や内出血を抑え、痛みの感覚を一時的に和らげる効果が期待できます。
正しいアイシングの手順は、以下のとおりです。
- 氷のうや、氷と少量の水を入れたビニール袋を用意する
- 用意した氷のうをタオルなどで包み、痛みや腫れが強い部分に当てる
- 1回あたり15〜20分を目安に冷やす
冷やしすぎて皮膚の色が白色や紫色に変わった場合は中止してください。急な強い痛みと腫れに対しては、温めるのではなく冷やすことが基本です。
整形外科を受診する
膝が突然曲がらなくなるという症状は、関節内部に問題が起きていることを示すサインです。応急処置で痛みが和らいだとしても、整形外科を受診しましょう。半月板損傷や靭帯損傷、関節内遊離体など、専門的な診断と治療が必要な可能性があります。
しばらくして動くようになったとしても、根本的な原因が解決したわけではありません。関節内で挟まっていた組織が一時的に外れただけで、再発のリスクは高い状態です。
症状を放置した結果、関節の状態が徐々に悪化し、治療の選択肢が狭まったり、複雑な治療が必要になったりするケースもあります。ご自身の膝の機能を長く健康に保つためにも、自己判断で放置することは避けてください。
突然膝が曲がらない場合の診断方法
膝が突然曲がらなくなった場合、整形外科では、問診から検査までを段階的に行い、膝の中で何が起きているのかを総合的に判断します。
問診では、いつ何をしていて症状が出たか、受傷時に「ブチッ」という音がしなかったか、過去に膝のケガがあったかなどを聞きます。問診のあとは視診や触診を行い、膝を見たり触ったり、慎重に動かしながら、以下の点を確認することが一般的です。
- 腫れや熱感、押して痛む場所(圧痛点)の有無
- 膝がどの角度で動かなくなるか(ロッキングの確認)
- 関節の不安定性(グラグラしないか)
触診後は、レントゲン検査やMRI検査、超音波(エコー)検査による画像診断が行われます。画像診断により、骨の変形や軟骨のすり減り具合、半月板・靭帯・軟骨の損傷、関節液の溜まり具合などを確認可能です。
画像検査で診断が難しかったり、特定の病気を疑ったりする場合は、血液検査・関節液検査なども行われます。関節リウマチなどの自己免疫疾患や、偽痛風の原因となる結晶の有無などが調べられるでしょう。
膝が曲がらない場合の治療方法
膝が突然曲がらない場合の治療法として、以下の内容を解説します。
- 保存的療法
- PRP療法など再生医療
- 手術療法
保存的療法
膝が突然曲がらなくなったら、体への負担が少ない保存的療法から始めるのが基本です。
保存的療法は、手術以外の方法で症状の改善を目指す治療の総称です。膝が曲がらない原因となっている炎症や痛みを和らげ、膝関節の機能回復を促すことを目的とします。症状が比較的軽い、急性の炎症が起きているなどの場合に、まず選択される方法です。
膝が曲がらないときの保存的療法には、薬物療法や物理療法、装具療法などがあります。
痛みや炎症に対して行われるのは、消炎鎮痛剤の服用や塗り薬の使用などの薬物療法です。痛みが落ち着いたあとは、体を温めたり電気を流したりする物理療法や、筋力トレーニング・ストレッチなどでの運動療法で症状の改善を目指します。関節がグラグラして不安定な方には、サポーターなどの装具で安定させる装具療法が行われることがあります。
PRP療法など再生医療
保存的療法で十分な効果が得られないものの、手術は避けたいという方のために、再生医療という新しい選択肢も登場しています。代表的なものが、ご自身の血液が持つ治癒能力を活用するPRP(多血小板血漿)療法です。
PRP療法の手順は以下のとおりです。
- 患者さん自身の血液を採血する
- 遠心分離機にかけ、血小板を抽出する
- 血小板が濃縮された液体(PRP)を、痛みの原因となっている膝関節に注射する
血小板には、組織の修復を促す成長因子が豊富に含まれています。PRP療法はご自身の血液成分を用いるため、アレルギーなどの拒絶反応が起こるリスクは低いとされていますが、注射部位の一時的な痛みや腫れ、内出血などの副作用が生じる可能性があります。変形性膝関節症や半月板損傷などに対して、痛みの軽減や組織修復の促進が期待されています。
PRP療法は、保存的療法では痛みが改善しない方や、年齢や持病のために手術が難しい方、スポーツなどへの早期復帰を目指したい方に適している可能性があります。
ただしPRP療法は健康保険が適用されず、全額自己負担の自由診療となります。費用は医療機関によって異なりますが、一般的に数万円〜数十万円程度の標準費用がかかることを理解しておきましょう。治療を受けられる医療機関が限られていたり、自己負担額が大きかったりする点を理解しておきましょう。
手術療法
保存的療法を一定期間続けても症状が改善しなかったり、半月板が大きく断裂したりしている場合は、手術療法が検討されます。主な手術療法を以下の表にまとめました。
| 手術の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 関節鏡手術 | 小さな内視鏡カメラを関節内に挿入し、骨や軟骨のかけらを取り除いたり、半月板の損傷部を縫合したりする |
| 人工膝関節置換術 | 膝関節の一部もしくは全体を切除し、金属やポリエチレンなどの人工物に置き換えて痛みや関節機能を再建する |
関節鏡手術は、手術部位が小さいため体への負担が小さいことがメリットです。膝が曲がらない原因が半月板損傷などによるロッキングの場合は、関節鏡手術で治療できる可能性があります。変形性膝関節症などで関節変形がひどいときは、人工膝関節置換術が行われます。
まとめ
膝が突然曲げ伸ばしできなくなる症状は、半月板損傷や変形性膝関節症など、膝関節の内部でトラブルが起きているサインです。無理に動かしたり、「そのうち治るだろう」と自己判断で放置したりすると、関節の状態を悪化させてしまう可能性があります。
大切なことは、整形外科を受診して診断を受けることです。原因を特定し、適切な治療を早期に開始することが、膝の機能を守り、今後の生活の質を保つために重要になります。突然の膝の痛みや動かしにくさで不安を感じたら、まずは専門医に相談しましょう。
参考文献
Shaheen Jadidi, Aaron D Lee, Eliza J Pierko, Haemi Choi, Nathaniel S Jones.Non-operative Management of Acute Knee Injuries.Curr Rev Musculoskelet Med,2024,17,1,p.1-13.
